華やかなイメージのある職業のひとつ「フラワーデザイナー」。花材を使ったアレンジメントを作り、人々の心を癒す職業です。その仕事内容は幅広く、花屋でお客さんの希望に合わせた花束を作ったり、イベント会場を花で彩ったり、結婚式のブーケを作ったりとさまざまです。 フラワーデザイナーになるためには、どのような資格やスキルが必要なのでしょうか?この記事では、フラワーデザイナーの気になる働き方、年収、フラワーデザイナーになるための方法などを解説します。フラワーデザイナーに関連するおすすめの書籍や参考書もあわせて紹介していきます。
依頼者の要望に合わせて花束やアレンジメントを作ったり、結婚式場やイベント会場などその空間にあった花のディスプレイを考え、花で空間を彩どる専門家、それがフラワーデザイナーです。 フラワーデザイナーの給与や年収は他の職業と比べて高くはありませんが、依頼者の心を豊かにできる仕事です。
まずはフラワーデザイナーの仕事内容からみていきましょう。
フラワーデザイナーの仕事は切り花を使った贈り物の花束作りから、空間を花で彩る大掛かりなものまで多岐に渡ります。依頼者の要望に合わせ、花をアレンジするのが役目といえるでしょう。
ギフトとしての花束やアレンジメントの制作を依頼される場合は、勤めている花屋に依頼されることが一般的です。「彼女に花束を贈りたい」「職場のお祝いで大きな花束を作ってほしい」といった個人に贈るサイズの依頼があげられます。
依頼者の予算や、贈る相手の好みの色、シーンに合わせたアレンジメントを作る必要があり、ラッピング技術も求められます。
対して、空間全体を彩る大掛かりなフラワーデザインは、結婚式の装飾やブーケ作りといったブライダル関係の装花作り、イベントの空間装飾といった仕事があげられます。
ブライダル関係のフラワーデザインをおこなう場合は、各結婚式場・ホテルと提携している花屋に依頼が届くことが一般的です。式場から依頼を受けたのち、新郎新婦やブライダルプランナーと打ち合わせをしながら、披露宴会場の装飾やブーケ、ブートニア作りをおこななっていきます。
商業施設やイベントの空間装飾は、花を使った空間装飾を専門としている会社に依頼が届き、クライアントの要望に合わせてフラワーデザインをしていきます。会場全体を花でコーディネートしたり、商業施設の入り口に季節の花を使ったディスプレイを制作したり。
イベントのイメージや予算に沿って、知識を生かしながら依頼に応えていきます。いずれの仕事内容も、花を使って人々の心を和ませたり喜ばせたりするのが目的です。
フラワーデザイナーの意外な特徴は、体力を使うということ。花を使うため華やかな印象を抱く人も多いですが、実は肉体労働の多い仕事です。朝は非常に早く、花の仕入れのため4時や5時に花市場に向かいます。さらに、花が傷まないよう気温の低い環境で働くことがほとんどです。
ほかにも、水の入ったバケツとともに花を移動・配達したり、1日中立ちっぱなしだったり、ブーケ制作にラッピング作業を行なったりと、体を使った仕事が多くあります。
フラワーデザイナーの働き方はさまざまありますが、大きく分けて4つがあげられます。
花屋スタッフとして勤務する場合は、早朝に花材を仕入れるなどの準備をし、花屋に訪れたお客さんの依頼に応えながら業務をこなしていきます。
花の管理や花束作り、アレンジメントのラッピングなどをおこなうため、フラワーデザイナーとして花に関わる上での基本を学べる場所でもあります。
花束作りなどの個人的な依頼のほか、結婚式場などと提携している花屋であれば、ブライダル業界のフラワーデザインを担当することも。また、花屋を自身で経営しながら働く場合は、フラワーデザイナーとして自身を売り込んでいく必要があり、営業力も大切となってきます。
イベント関係の装花作りを専門とする会社では、個人の贈り物としての花束作りといった小さな依頼はなく、花を使った空間装飾やディスプレイ制作など、大掛かりな仕事を受けるのが一般的です。
フラワーデザイナーの知識を生かしながら、クライアントの希望イメージや予算に合わせて装花を施していきます。
大掛かりな仕事のため1人で作業を完結させることはほとんどなく、チームで作業を行なっていくのが基本です。そのため、コミュニケーション能力も必要となります。ほか、切り花を使ったフラワーデザインだけでなく、寄せ植えや花壇の制作など、花の苗を使ったデザインも担当します。
この場合は、提携先の結婚式場やセレモニーホールなどから依頼が届き、依頼者の希望や予算に合わせてフラワーデザインをおこないます。
花材の仕入れといった花を扱う上での基本的な業務はもちろん、依頼者の心情に寄り添った装花づくりのセンス・ヒアリング力が必要となります。
ブーケ・ブートニアの意味や花の持つ意味など、冠婚葬祭に適した花についてなど、冠婚葬祭ならではの専門知識も身につけておく必要があります。
フラワーデザインを教える場合は、講師だけで仕事を取っていくことは難しいといわれています。自身で花屋を経営する傍ら、講師活動をおこなうことが一般的のようです。
自身でスクールを開くこともできますが、生徒集めも難しく、よほど知名度のあるフラワーデザイナーでない限り続けていくことは難しいといえるでしょう。
「フラワーデザインスクール」として開講しているスクールの講師として勤務し、曜日や時間に合わせてレッスンを担当するのが一般的。高いコミュニケーション能力も必要なほか、生徒のレベルや目標に合わせたレッスンをおこなう必要があります。
花屋に就職しスタッフとして働く場合は、年収平均は約250万円です。初任給は10万〜15万円程度と低めということもあり、就職先の花屋で経験を積み、独立を目指すという人も多いようです。
イベント装花専門や冠婚葬祭装花専門の会社に就職する場合でも平均年収はさほど変わらず、約260万円といわれています。正社員の月給は19万円〜26万円が相場のようです。ただし会社として体制が整っているため、年齢や役職に応じた昇給が期待できます。
フラワーデザインスクールで講師として勤務する場合、講師料は1時間5000円〜1万円が一般的といわれています。
フラワーデザイナーとして活躍するためには学歴などは関係ないことから、未経験から挑戦する人も多い職業です。未経験からフラワーデザイナーになりたいと考えている人のために、実際にフラワーデザイナーとして活躍する方々の現場の声を見てみましょう。
1.「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」オーナー・壱岐ゆかりさん
東京都渋谷区に位置する花屋「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」のオーナーを務めるフラワーデザイナー・フラワープランナーの壱岐ゆかりさん。インテリア、ファッションブランドのPR業という別業界から、未経験で花屋をオープンした方です。
2.フラワーデザイナー兼華道家・後藤亜希子さん
フラワーデザイナー、華道家の後藤亜希子さん。同じくフラワーデザイナーの楠木誠悟さんとともに2011年に花屋「BIONIC PLANTS」を東京都目黒区にオープンしました。非常にアーティスティックな作品が多く、中には華道を活かしたアレンジを施したものも。
3.テレビアナウンサーから未経験のフラワーデザイナーになった前田有紀さん
前田有紀さんは、テレビアナウンサーからフラワーアーティストへ転身し、自身で会社を起業。イベントにも多数出演しており、花と緑を生活に取り入れる方法などを提案しています。
参照:Yuki Maeda
実は、フラワーデザイナーになるために絶対に必要な資格、というものはありません。というものの、フラワーデザイナーとして活躍する上でスキルの証明となる2つの資格があり、いずれかを取得して活動している人がほとんどのようです。
2つの資格とは、日本フラワーデザイナー協会(NFD)が認定している「フラワーデザイナー資格検定試験」に合格して得られる民間資格と、「フラワー装飾技能士」というフラワーデザイナー業界で唯一の国家資格です。
「フラワー装飾技能士」は国家資格のため、専門性が高くスキルにおける信用度も高いのが特徴です。就職により有利な資格ともいえるでしょう。
ですが、一般的にはNFD認定のフラワーデザイナー資格を持っている人の方が多いよう。こちらは合格することで日本フラワーデザイナー協会の正会員として認定され、フラワーデザイナーの資格を活かせる職業の斡旋サービスを受けることができるなど、協会の恩恵にあずかれます。
試験は、学科と実技の試験がそれぞれ設けられており、3級〜1級まで試験級が設定されています。受験するためには、3級では6カ月、2級は2年、1級は7年もの実務経験年数が必要となります。ただし、2級の合格者が1級を受ける際には必要実務経験年数が短縮され、実務経験2年以上で受験可能になります。
NFDの「フラワーデザイナー資格検定試験」を受験するためには、実務年数は必要ありません。
試験級は3級〜1級までで、いずれも学科と実技の試験が設けられており、3級から段階的に資格を取得していく必要があります。
実務年数は必要ないものの、2級以上を受験する場合には、ふたつの条件が課されます。
入会金・年会費を含め、レッスン料や受験料などを合わせると、1級会員になるまでに100万円近くの金額がかかるようです。
ほか、フラワーデザイナーとして活躍するためには、資格以外にも必要なスキルがたくさん。最も大切なのは、依頼者の要望を叶えるための「ヒアリング力」といえるでしょう。相手の要望を汲み取り、ブーケを作ったり、空間を花で彩ったりと、あくまで依頼者の希望を花を使って叶えるのがフラワーデザイナーの仕事です。
その上で、オリジナリティを感じられる美的センスや独創性をプラスし、相手の喜ぶアートのような作品を作ることが求められます。日頃からアートに触れるなど、センスを磨く努力も必要です。
フラワーデザイナーは実力主義の世界のため、資格を持っていなくても、フラワーデザイナーとしての知識や技術がともなっていれば名乗ることができる職業でもあります。
フラワーデザイナーになる際に学歴を問われることはほとんどありませんが、専門学校や通信講座などで花の知識を身につけるところから学ぶ必要があります。NFDのフラワーデザイナー認定資格を取得できる専修学校などに入れば、スムーズに資格獲得ができるでしょう。
花屋などでバイトしながら実際に花に触れ実技を学び、通信講座などで学科知識を身につけるという勉強方法も一般的のようです。
学歴や経歴が必要ないことから、未経験でも挑戦しやすい職業とされているフラワーデザイナー。やる気があれば、一般職で働く傍ら花の勉強をし、フラワーデザイナーを目指す、ということも可能です。
ただし、知識だけでなく経験年数やフラワーアレンジメントの実力によって活躍できるかどうかが決まってくるため、実務経験をしっかりと積むことが一番大切のようです。
「フラワーカラー検定」は、フラワーデコレーター協会(FDA)が認定する民間資格です。花と色彩の基本知識を身につけられます。フラワーカラーの資格を得ると、「フラワーカラーアドバイザー」に認定され、花に関するさまざまなシーンで「花の色合わせ」に関してアドバイスができるようになります。
花屋、園芸ショップ、押し花インストラクター、グリーンアドバイザーなどの仕事をしている人の受験が多いようですが、一般の人でも受験可能です。
「フローリスト検定」は、花屋と冠婚葬祭生花部門に特化した実務の基本ライセンスです。FDAが認定する民間資格で、5級〜1級の試験級が設けられています。検定に合格することで、花屋・冠婚葬祭の生花部門における専門知識やスキルの証明が得られます。
5級は、花屋で働く上で知っておきたい基本的な仕事内容について理解しているかどうか、4級〜3級は花束や枕花といったアレンジを短時間で作れるかどうかが判断基準になります。
2級〜1級はクライアントの要望に応えた冠婚葬祭の花アレンジが作れるかどうかが問われます。5級〜3級までは在宅で受験が可能です。
日本の伝統的な「生け花」をおこない、作品を生み出す職業が華道家です。プロの華道家として働いていく場合には、各流派に華道家と認められているかを表す「お免状」という資格が必要です。
お免状を取得するためには、どこかの流派へと入門し、修行を積んでいく必要があります。流派によってお免状取得までの年数は異なりますが、最低でも5年の修行が必要です。
レッスン料とは別で、お免状取得のための試験には5000円〜3万円の受験料がかかりますが、流派によっては試験を安く受けられる優遇措置をとっているところも。
プロの華道家として仕事を得られるようになるためには、流派の先生である「師範」などの階級の資格が必要になります。旅館やホテルのロビー、料亭の床の間などに花を生けるといった仕事が多く、実際にプロとして活躍できるのはほんの一握りです。
参照:ワゴコロ
フラワーデザイナーを目指すなら、第一に花の知識を身につける必要があります。実務経験も非常に大切ですが、本を通して、花の種類や、花の包み方など、実務のヒントになる知識を得るのがおすすめです。
フラワーデザイナーに関する本はさまざまありますが、資格取得を目指すなら、まずはNFDが出版している本を手に取ってみるのがいいでしょう。学科や実技試験でのヒントを得られるはずです。
さらにフラワーアレンジメントについて勉強したいという人は、花のラッピングの方法を紹介している本や、フラワーアレンジメントの技法について紹介した本を読んでみると、知識だけでなく、フラワーデザイナーとしてのセンスが身につくでしょう。
- 著者
- 社団法人日本フラワーデザイナー協会
- 出版日
フラワーデザインの資格認定をおこなっている日本フラワーデザイナー協会(NFD)が手がける、フラワーデザイナーのための入門書籍です。
「フラワーデザイナーになりたいけど、まずは何を学べばいいのかわからない……」というまったくの初心者さんにもおすすめの1冊。入門書として手に取っておきたい参考書です。
花の色合わせの基本や、形の基本といった、基礎知識が身につきます。写真やイラストが多く掲載されており、分かりやすいレイアウトも初心者にとってうれしいポイントです。
- 著者
- ["公益社団法人日本フラワーデザイナーキョウカイ", "公益社団法人日本フラワーデザイナーキョウカイ"]
- 出版日
NFDのフラワーデザイナー資格検定を受けるなら、ぜひ手に取っておきたい本書。資格検定の実技試験で出題された設問の、詳しい解説が掲載されています。
1〜3級で出された全ての設問に対しての完璧な作例を載せており、どんな風に作品を作ればよいのか、チェックポイントはどこなのかといった試験合格のためのヒントを手に入れることができます。
さらに、2016年度の学科試験の過去問も掲載。学科試験についても攻略が望めます。
- 著者
- 蛭田 謙一郎
- 出版日
フラワーデザイナーの資格試験はもちろん、実際にフラワーデザイナーになってからも使える1冊です。
本書では、花束やフラワーアレンジメントの制作時に役立つ、全体の形・バランスといったフォルム部分について学ぶことができます。誰が見ても「美しい」と感じる花束、アレンジメントの形を作るための方法を、美しい写真と図説で紹介しています。
作例は35点以上収録されており、各作品のプロポーションはもちろん、配色のポイント、そして作品を作る上でのテクニックまで解説しています。
- 著者
- 林 芳久
- 出版日
贈り物や飾りとして依頼者に花を楽しんでもらうためには、花の包み方もスキルアップする必要があります。花屋や専門学校に通い実践を積んでいる人にもおすすめしたい本です。
リボンの結び方やリボンを生かしたアレンジテクニックから、花束・アレンジメント・鉢物の包み方、さらにラッピング資材の基礎知識まで、花を包む上で知っておきたいテクニックが盛りだくさん。
工程やコツも細かく掲載されているため、実際に作りながら覚えていくことができます。
- 著者
- 学校法人伊東学園 テクノ・ホルティ園芸専門学校=監修
- 出版日
花の知識をもっとつけたい!という人にとって必携の花事典です。
全422種の花を「花材」「枝もの」「実もの」「グリーン」の4カテゴリーに分け、写真とともに特徴を紹介。花の色やサイズ、花言葉なども解説しており、実際にブーケやアレンジメントを制作する際にも役立ちます。各花の出回り時期を各ページに記載しているほか、索引も用意。「今の時期はどの花が流通しているのか」といったフラワーデザイナーとして仕事をする上で必要な基本情報が盛りだくさんです。
花のことを覚えたい初心者だけでなく、実務を重ねていく上でもためになります。
華やかな仕事に見えるフラワーデザイナーですが、実は体力勝負の仕事で、年収も比較的低めということが分かりました。それでも多くの人がフラワーデザイナーを目指すのは、人の心や生活に寄り添い癒しを与える仕事だからかもしれません。
フラワーデザイナーになるためには、経験を豊富に積み、技術やセンスを磨いていく必要があるようです。今回紹介した書籍などを参考にしながら、フラワーデザイナーという職業の理解を深めていってみてください。