映画好きなら、誰もが一度はスクリーンの向こう側にいる映画俳優に憧れるもの。俳優にはひそかに「ドラマ俳優」と「映画俳優」の2種類があり、それぞれドラマ、映画とメインで活躍している場所が異なります。 たくさんの映画に出演する映画俳優になるにはどうしたらいいのか。映画俳優としての就職や、社会人からの転職は可能なのか。気になることはたくさんありますよね。給与や年収も気になることのひとつです。 俳優になるために欠かせない、最初の一歩についても解説しながら、俳優が役に向き合う記録をまとめた書籍や、演技の教科書などを紹介します。映画俳優になるために自分に必要なことを探せる記事です。
「俳優になる」、つまり「芸能人になる」というとテレビの仕事が主になるように思えるかもしれません。しかし「映画でよい演技をするあの役者さん、テレビでは見たことがない気がする……」そんなこともあるのではないでしょうか。
意外と知らない映画俳優の世界を覗いてみましょう。どうやったら映画俳優になれるのでしょうか。
映画俳優として仕事をしていく上で大切なことのひとつに「マネジメントしてくれる人を探す」というものがあります。つまり、所属事務所を見つけることです。もちろん自分で全ておこなっている俳優もいますが、勝手が分からない若手のうちは難しいでしょう。
俳優のマネジメント業は多岐にわたります。すでに決まっているスケジュールの管理をはじめ、映画を制作する側へ俳優を売り込んだり、俳優に合っていそうな役柄のオーディションを見つけてきたりといった「仕事探し」も担います。また、俳優に対して必要に応じてトレーニングをすることもあります。
これらを適切におこなってくれる事務所を見つけられれば、俳優はストレスをあまり感じずに仕事ができるでしょう。一方で、方針や仕事の仕方が合わない事務所に所属してしまうと辛いこともあるかもしれません。
映画に強いと言われている芸能事務所には、下記のような会社があります。
このような芸能事務所に所属するためには、オーディションがあることが少なくありません。憧れの俳優、好きな俳優が多く所属している事務所をまずは探してみましょう。
演技派と呼ばれる俳優の中には、映画やテレビなどとは異なるフィールドでキャリアをはじめる人も少なくありません。最も多いのは舞台演劇でしょう。学生のころから演劇活動をしていて劇団旗揚げに参加したり、オーディションなどを受けて希望する劇団に入団したりします。
演劇は数週間〜数カ月の稽古の後に数日〜数週間の上演期間があります。スケジュールは常に埋まっているわけではありませんし、稽古期間は報酬が出ないという劇団は少なくありません。
そのため、劇団の俳優として活動していくためにアルバイトをして生計を立てているという例は珍しくありません。演技が好きで上達する意思があることはもちろん、よい劇団や役に巡り会えるかによっても進路が変わってくる選択です。
いきなり芸能事務所に所属するのもの選択としてありですが、なかなかオーディションを通過できないという方は、まずは養成所に通うのがよいでしょう。演技のレッスンを通じて演技力を高めたり、俳優としての心構えなどを学ぶことができます。
俳優としての基礎的なスキルを身につけることができるため、まずは養成所に通う方は多くいます。
また養成所を運営する芸能事務所にそのまま所属できる可能性もありますので、迷っている方は通った方がよいといえるでしょう。
有名な養成所には下記のような場所があります。
養成所に入るには、書類審査や自己PRなどを通して入ることが可能です。芸能事務所とは違い、入所費用や月のレッスン費用などがかかるので、その点も比較しながら、自分が学びたいことを学べる養成所を選ぶことが大切です。
一部の大学や専門学校では演技を専攻することができます。このような学校に通いながら、少しずつ場数を踏み、活動の幅を広げていくという方法もあります。
学校に通うとお金はかかりますが、プロから直接しっかりとした教育を受けられること、進路について学校に相談できることといったメリットもあります。
映画俳優に限らず、芸能の仕事は一般的な仕事とは違い、年収だけでなく給与形態そのものが不透明ですよね。まずは芸能の仕事の給与形態について解説していきます。
芸能事務所や劇団によっては、出演料のみ支払われる場合があれば、事務所や劇団に関係する仕事以外はしてはいけない契約で一定の月額が支払われる場合もあります。さまざまなパターンがあるので、一概に言うことはできません。
◾️エキストラの場合
エキストラ出演の場合は時給、もしくは提示された固定給であることが多いです。これは事務所への所属の有無に限らずです。
時給の場合は1000円〜5000円ほど、日給の場合も同程度の額になると考えてよいでしょう。エキストラの仕事の中には無給のボランティアとしての募集もあるので、詳細をきちんと確認しておきましょう。
◾️舞台仕事の場合
劇団に所属し、舞台に出演する場合は、ひとつの舞台ごとの給料が支払われることが多いです。顔合わせからセリフ合わせ、舞台稽古、1日の公演数が多いなどハードな仕事のひとつですが、たくさんの舞台に出演することで演技の仕事での生計を立てやすくなります。
◾️映画仕事の場合
映画仕事についても、舞台仕事同様に1本あたりの給料が支払われます。支払われる額は俳優の知名度や、映画製作費、役柄などによって異なるため、1本1万円〜500万円、俳優によっては1千万円などかなり幅があります。
国民的俳優であれば映画1本あたり1千万単位の支払いもあり得るでしょう。
給与形態からも分かるように、映画俳優の年収にはかなりばらつきがあります。
たとえば駆け出しでエキストラ出演などが多い場合は、俳優業での年収は約100万円ほどになることもあるため、生計を立てるためにアルバイトをしている方も少なくありません。
主役ではないものの役柄を得ることができれば、年収は300万〜500万円ほどになることもあり、俳優業だけで食べていくこともできるでしょう。
そして主役を勝ち取るような有名俳優であれば、1本の出演で500万円以上のギャランティが支払われるため、年間で数本出演すれば年収は1千万円以上となります。中には億を超えている方も少なくありません。
基本的に、映画俳優には就職という概念はありません。事務所や劇団への所属はありますが、そもそも芸能の仕事や給料は不安定ですし、毎月必ず仕事があるわけでもないからです。
憧れていた芸能の世界になかなか飛び込めないという方が気になっているのは、映画俳優からの就職や転職なのではないでしょうか。俳優として活動してきたけれど、鳴かず飛ばず。民間企業への就職や転職は可能なのでしょうか。
俳優として活動してきたけれど、年齢などのことも考えて民間企業への就職を考える方は少なくありません。就職先の職種はさまざまですが、俳優時代の経験を活かせるような職であればもちろん就職は可能でしょう。
たとえば下記のような仕事へ転職した方もいます。
営業職では俳優として必要な「相手の気持ちを汲み取る」コミュニケーション力などを活かすことができますし、プログラミングは独学でも一定の部分まで実力を高めることができます。
自分が興味のある分野であり、なおかつ今までの自分の経験を会社でどう活かすことができるかをアピールすれば就職はそう難しくはないでしょう。求人サイトを見ても、未経験での募集は数多く掲載されています。
いきなり就職は難しいし不安という方は、アルバイトや契約社員、派遣社員として働き始めるのもひとつの選択肢です。社会人経験がない場合、まずどのような仕事があるのか、一般的な社会人はどのように働いているかを知る必要があるからです。
中には芸能にはまったく関係のない企業ではなく、所属していた事務所の芸能マネージャーに転職する方もいます。
俳優と同じく、マネージャーの仕事も簡単な仕事ではありません。担当しているタレントのブランディングを考えながら仕事を割り振ったり、営業をおこなったり、スケジュール調整をしたりとかなり多くの業務をおこなう必要があります。また1日の勤務スケジュールもその日によって異なります。
ですが芸能の仕事をしていた方であれば、マネージャーとしては未経験でもタレント側の気持ちが分かったり、マネージャー業務への適応力も高かったりするので、民間企業よりは就職のハードルが低いかもしれません。
映画俳優を目指している人には、好きな俳優・目標にしたい俳優がいることでしょう。そういった先駆者たちを参考に、自分がなりたい俳優像について考えてみましょう。
あなたの好きな俳優はどうやって演技の仕事を始めたのでしょうか? 事務所にスカウトされてから勉強をはじめたという人もいれば、学生のころのサークル活動からのめり込んで本業にしてしまったという人もいるでしょう。
彼らは俳優業に至るまでの間でどのようなことを学び、考えてきたのでしょうか。またどのような舞台や作品を経験してきたのでしょうか。
俳優インタビューやエッセイなどを参考に、先輩俳優の仕事への向き合い方を学んでみましょう。
俳優になるために、自分に今足りないものは何だと思いますか? また、それはどうしてですか?
自分のことは意外とよく分からないものです。メモとして「学びたいことリスト」を理由とともに書き出してみましょう。また、相談できる人がいるなら、客観的に見たときの課題を教えてもらうのもよいでしょう。
学びたいことや課題が見えてきたら、それらを克服するためにどうしたらよいのか考えてみましょう。あるものについては「学校に行く」「本を読む」などのしっかりとした勉強が求められるかもしれません。
一方、「とりあえず何か演技の体験をしてみる」「たくさん演劇や映画を見る」など、考えるだけでなく自分でやってみる必要があることもたくさんあります。
映画俳優の仕事を続けるなかで、順調な時よりも、うまくいっていない時の方が多いでしょう。俳優として自分はどんなスタンスで活動すればいいか迷ったら、いま活躍中の俳優のインタビューをたくさん読んでください。
ここではおすすめのインタビューをいくつかご紹介します。最後には合わせて読みたい書籍も紹介しているので、興味があればぜひ手にとってみてくださいね。
映画、ドラマ、CMなど今では幅広く活躍している俳優・太賀さん。順調なキャリアを築いてきたように思える彼ですが、実は19〜20歳のあいだは俳優業がうまくいかず、くすぶっていた時期もあったそう。
僕は自分がくすぶっていた頃、とにかくリサーチをしていました。いろいろな作品を観たり、沢山の人と会って話を聞いたりしながら、どういう流れがあって今の映画業界が成り立っているのかを自分なりに勉強したり。
自分の活動がなかなか日の目を見ないで苦しんでいる。そんな方にぜひ読んでいただきたいインタビューです。きっとヒントが見つかるはずです。
参照:type
俳優だけでなく、映画監督など活動の幅を広げている俳優・斎藤工さん。彼のインタビューでは、数年前まで働いていたアルバイトの経験を振り返りながら、現在の俳優業とはどんなものかを語っています。
自分のことなんて、案外、自分で理解していないものです。ですから“自分はこうだ”と思うほど、それを信用してはいけないと思っています。もしも、仕事や人間関係がうまくいかないのなら自己プロデュースを疑ったほうがいいかもしれませんね。
第一線で活躍する方が語る俳優業について知ることで、狭まっていた視界が開けることもあるかもしれません。
インターネット上に公開されている俳優のインタビューをまとめて読んだ後は、エッセイを手にとってみるのもおすすめです。俳優を志した理由や、仕事への姿勢、俳優として一歩進んだと感じた作品との出会いなど、インタビューには書かれていない内容になっていることでしょう。
- 著者
- 山崎 努
- 出版日
- 2013-10-10
1998年、新国立劇場開場記念としておこなわれた公演『リア王』。主演のリアを務めたのは俳優の山崎努氏です。
『俳優のノート』には、このときの山崎氏の日録が綴られています。役を受けてから台本を読み込み、稽古場に立つときにいったい何を考えていたのか。どうやって役を自分のものにしていったのか。本人のメモを元に構成されているので、ベテランの俳優がどう演じることに取り組んでいるのかが窺い知れる名著です。
俳優の蒼井優氏も10代のころから同書を読んで演技を学んでいたそうです。
参考: 蒼井優、「長いお別れ」で“大先生”山崎努との共演に「すごく意義がある」 : 映画ニュース - 映画com
事務所や劇団に所属したり、演技を学べる学校に通って実践的な演技を体に覚えさせたりしながら、その一方で、基礎的な体の使い方について体系的に学ぶことも映画俳優を目指すにあたって欠かせないことでしょう。
全身で役を演じるために必要な体の動かし方を学べる本を2冊ご紹介します。
- 著者
- 鴻上 尚史
- 出版日
演出家の鴻上尚史氏が書いた『発声と身体のレッスン』は、タイトル通り、発声や身体の基礎的な練習をする時に使える演技の教科書のひとつ。こちらは2002年に発売された初版の増補新版です。
上手な発声をするための姿勢や呼吸法などが丁寧に解説されており、同時に、各レッスンがなんのために必要なのかも知ることができます。
俳優志望の方だけでなく、人前で話すことを職業としているすべての人にとって有益な情報となっています。
発声や身体の使い方の基礎を学んだ後に読みたいのが『演技と演出のレッスン』。こちらも著者は演出家の鴻上尚史氏です。
- 著者
- 鴻上 尚史
- 出版日
演技力を技術として捉え、自分のものにしていくのに最適な1冊になっています。単なる演技としての技術の習得だけでなく、演じるとはどういうことか、演技の上手な俳優は台本をどう読み込みアウトプットしているのかについても書かれているため、演技に対しての認識も変わることでしょう。
一人で練習できる内容は少ないので、所属している劇団や、俳優志望の仲間とともに実践することをおすすめします。
演じる仕事のなかでも、特に映画に関心がある俳優志望者は、映画そのものについて知識をつけておくとよいでしょう。
- 著者
- 衣笠 竜屯
- 出版日
時間の経過とともに話が進んでいく舞台とは異なり、映画は細かいシーンごとに撮影をおこないます。後のシーンを先に撮ったり、「涙を流す場面のみ」など、非常に細かいカットで撮影が進んでいくこともあります。そのような映画特有の事情に即した演技ができるようになる必要があります。
俳優が直接関わるわけではありませんが、CGなどの技術面についても一通り知っておくと、映画で演技するということについてより理解を深められるでしょう。
仲間と一緒に映画を撮ってみたい、という人にもおすすめです。
映画俳優に限らず、俳優は「演じること」に日々向き合わなくてはなりません。実際に体を動かして話すだけでなく、台本を読んで考える時間がとても大切なのです。
そのような俳優志望者向けに、考えること・演じることの両側面から参考になりそうな書籍を紹介しました。事務所に所属することやデビューすることももちろん大切ですが、俳優としての技術を磨くことにもぜひ取り組んでいってください。