栄養士と混同されやすい「管理栄養士」という資格。資格の名前がよく似ていますが、管理栄養士は国家資格であり、栄養士よりも多彩な働き方ができ、年収も栄養士より高く、魅力的な仕事のひとつです。これから就職や転職を考えているという方も多いでしょう。 この記事では、管理栄養士の仕事内容や資格の取得方法、年収事情などをご紹介します。また、管理栄養士になりたいと考える方に読んでいただきたい書籍もあわせてご紹介します。管理栄養士とはどういった資格なのか、書籍からも理解を深めていただけると嬉しいです。
管理栄養士とはどのような職種であるのかというと、以下のように定義されています。
厚生労働大臣の免許を受けて、管理栄養士の名称を用いて、傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導並びに特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等をおこなうことを業とする者
一方、栄養士はというと「都道府県知事の免許を受けて、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者」と定義されており、多様な職種でありますが、定義の文章がかなり異なっていることにお気づきになられた方もいらっしゃるかもしれません。
実際に、「管理栄養士養成施設の卒業生の就職実績(2017年度)」を見てみましょう。
幼稚園や保育園といった児童施設は栄養士ひとりだけで雇われているというところも多いようです。しかし病院や企業においては管理栄養士とタッグを組んで仕事をしているなど、管理栄養士と栄養士が協力してそれぞれの強みを生かして働いている施設が多く見受けられています。
混同されやすい管理栄養士と栄養士の仕事ですが、仕事内容を詳しく見てみるとさまざまな違いがあることが分かります。
違いの前に、管理栄養士と栄養士のどちらにもできることを見ていきましょう。
仕事内容は管理栄養士も栄養士も共通しており、主たる業務は個人あるいは集団に対する栄養管理や栄養指導です。
学校給食や病院・施設などの給食、企業の社員食堂などにおいて栄養バランスを考えて食事の献立を作ったり、栄養指導をおこなったりします。ほかにも、区役所や市役所における栄養指導も管理栄養士や栄養士の仕事です。
このほかにも管理栄養士や栄養士はさまざまな働き方ができます。
レストランのメニューをプロデュース
また、近年では講演会やセミナーを中心におこなうフリーランスの管理栄養士や栄養士も多く活躍しています。
最も大きな違いは、管理栄養士は厚生労働大臣から免許を受ける国家資格だということです。一方、栄養士は都道府県知事から免許を受ける資格となります。
しかし、共通してできる仕事がある一方で、管理栄養士と栄養士では互いにできる仕事、できない仕事もあります。
管理栄養士が栄養士の資格と最も異なる点は、病める人も対象にできるということです。たとえば、糖尿病の方や腎臓病の方の食事管理や栄養指導など、病気の方の管理・指導は国家資格を持っている管理栄養士でなければできません。そのため、病院や介護福祉施設で働けるのは管理栄養士だけとなります。
また、管理という言葉のついている職業名だけあり、人々の健康や栄養を管理することも仕事となります。
特に近年は健康志向が強く、健康に特化したレストランが続々とオープンしています。そういったレストランのメニュー監修を管理栄養士がおこなうこともできます。
ほかにも栄養系の資格の上級資格であるということもあり、学校教員や食品メーカーでの研究・市場調査なども管理栄養士が就く傾向にあります。
一方、栄養士は管理という言葉がつかないこともあり、栄養のアドバイスをおこなうアドバイザーというポジションに立つ職種となります。
そのため、健康な方を対象にした活動が主な内容となります。
また勤務先も、先述した管理栄養士の勤務先との違いがみられます。
管理栄養士として管理栄養士名簿に登録されている数はまだ約20万人(2015年)と少なく、栄養士の約102万人(2014年)の5分の1の数となります。そのため管理栄養士の給与水準はいまだに正しい統計が存在しません。
例として栄養士の給料平均を見てみましょう。厚生労働省が公開している「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によれば、月給は下記のようなデータになっています。
平成25年度〜平成27年度間では月給の変化はあまりみられませんでした。こちらを1年に換算すると約265万円となります。この金額にボーナスなどの特別給与額が57万〜60万円ほど加算されます。
ですので平均年収は300万円台ということになります。
またそこに資格手当がつく場合もあります。栄養士の場合は2000円〜5000円、管理栄養士の場合は5000円〜1万円ほど支給されます。さらに栄養士とは業務の幅が異なることから、管理栄養士の年収は栄養士より高いことが多くなっています。
管理栄養士は国家資格であるため、国家試験を受けなければ資格を取得することができません。ですが、栄養士は養成校を卒業するだけで資格が取得できます。これが、従事できる業務の差につながっているといえます。
管理栄養士の国家試験を受けるための受験資格は下記のように定められています。
この栄養指導をする年月は、卒業した施設での修学年数によって異なります。
2年制の養成校を卒業した方は3年、3年制の養成校を卒業した方は2年、4年制の養成校を卒業した方は1年間の栄養指導が必要となります。
これを終えることで晴れて国家試験を受験することができるようになるのです。
管理栄養士の国家試験は毎年3月の第1週におこなわれ、200点満点中120点以上の得点をすることができれば合格となります。
試験科目は10つあり、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、岡山県、福岡県および沖縄県の全8都道府県にて試験が実施されます。
なかでも難易度が高いと言われているのが「応用力試験」です。「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定検討会報告書」によれば、2020年よりこの応用力試験の問題が10問多くなりました。これにより試験の難易度や合格率に影響が出るかもしれません。
しかし、管理栄養士の国家試験の合格率は2020年においては61.9%と過去最高の結果が出ています。
毎年60%から50%台で推移していますが、20%台や30%台の年もあるため、こつこつと学習をしていくことが必要であるといえます。
できる仕事はほぼ同じですし、試験の合格率を見ても栄養士の資格のままでもよいのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、医療の世界に栄養という観点で関わりたいという方は管理栄養士の資格がなければ働くことができません。
特に、将来的にフリーランスで活躍したいなど多方面で活躍の場を広げていきたいと考えている方においては、管理栄養士の資格の方が活躍の場がたくさんあります。
さらに近年では国家資格であるという観点もあるのか、栄養系の求人を見ていくと、特に企業やスポーツジムなどにおいては栄養士もできる仕事でありながら管理栄養士を募集するところも多く見受けられます。
管理栄養士は栄養に関する職業のなかでも需要のある職種といえるため、国家試験があり大変ではありますが、管理栄養士資格の取得を検討するのもよいでしょう。
それではここからは、管理栄養士に関する書籍をご紹介します。
- 著者
- ["末永美雪", "新井英一", "金田一秀", "川上栄子", "篠原啓子", "高塚千広", "髙野沙織", "末永美雪"]
- 出版日
管理栄養士という資格について詳しく知りたい方におすすめの1冊がこちらです。
管理栄養士だけでなく栄養士についても書かれているため、栄養士の資格と比較しながら資格についての理解を深めることができるところがポイントです。
また、資格の概要だけでなく働き方や働ける場所、さらには管理栄養士としての学生生活まで詳しく紹介 されています。
漫画で描いてあるため読みやすく、時間がないという方でもすらすらと読むことができるでしょう。学校生活から資格取得までの過程をイメージしやすいため、これから資格取得までの道のりを知っておきたいという方には読んでおいていただきたいです。
- 著者
- 医療情報科学研究所
- 出版日
管理栄養士が扱う栄養という分野について知りたい方におすすめしたいのがこの1冊です。国家試験の試験科目を網羅しながらも栄養学について詳しく学べる内容になっています。
こちらもマンガなので非常に読みやすいです。管理栄養士を目指す学生、管理栄養士と一緒に仕事をする管理栄養士以外の有資格者も読者対象になっているため、誰にでもわかりやすく記されています。
栄養士の養成学校に入る前に栄養学を先取りしたい、まだ資格取得は検討段階だがとりあえず栄養学を学びたいという方に読んでいただきたい1冊です。
- 著者
- 日本ハム株式会社
- 出版日
管理栄養士の資格を取得したいと考えており、資格取得後にスポーツ関連への就職を検討している方、スポーツが好きな方におすすめしたい1冊です。
日本一を何度も経験してきている日本ハムファイターズは、プロ野球で初めてスポーツ栄養の大切さに着目した球団です。この球団を支えてきた管理栄養士の視点からスポーツ選手における栄養管理が学べます。
管理栄養士の栄養管理が結果としてスポーツ選手の身体を作っていくということなどから、管理栄養士が与える影響を知ることができます。
医療施設や介護施設、企業以外にもさまざまな場所で管理栄養士が活躍できるということを知れる1冊です。
管理栄養士と栄養士は資格としてできることは共通していますが、知っていていただきたいのは、管理栄養士は多様な働き方ができる国家資格であることです。管理栄養士の資格取得を考えている方はまず、紹介した本を手に取ってみて、管理栄養士の学ぶ栄養学や働き方についてイメージを膨らませてみてはいかがでしょうか。