「プリンター」という職業があるのを知っていますか? 写真の世界のプリンターは別名「暗室マン」と呼ばれ、写真を現像する専門的な技術職です。写真に関係する仕事をしたいと思った方なら、一度は就職を考えたことがあるのではないでしょうか。 しかし写真は好きだけど、どういった仕事なのか、年収はどうなのか、就職や転職はしやすいのかなど疑問は多いですよね。 現像や暗室って何? など写真の世界には専門用語も技術も多い。そんな人に向けた、分かりやすく「プリンター」の仕事を解説していきます。
プリンターという職業について調べてみても、なかなかピンとこない……という人もいるのではないでしょうか。プリンターは別名「暗室マン」とも呼ばれます。縁の下の力持ちであるその仕事について解説します。
「暗室」「現像」といった単語になじみのない人もいるかもしれません。デジタル写真が優勢になるまでは、写真は像や色が反対になって記録されたフィルム(これを「ネガ」と言います)の写真を印画紙などに定着させることが当たり前でした。定着させることを「現像」と呼び、現像されたもののことを「ポジ」と呼ぶこともありました。
フィルムは光の強弱で像を記録します。そのため、強い光が入ってきてしまうとフィルム全体が真っ黒になってしまいます。このような特性があるため、フィルム写真の現像は暗い部屋でおこなう必要があります。
暗い部屋で特別な薬液を使い、ちょうどよい色合いの写真を現像する。そのための特別な設備のある部屋のことを「暗室」と呼びます。プリンターは常に暗室で仕事をするので「暗室マン」という別名がついたというわけです。
現代ではデジタル写真のほうが頻繁に使われるため、現像の言葉の意味も少し変わりつつあります。デジタル写真で「現像」という言葉が使われた場合、それはカメラが記録したRAW形式のデータを編集してJPEGなどに書き出すという技術を指します。
フィルムで撮ったアナログ写真を現像するプリンターは、当然のことながらフィルム写真についての知識が必要です。現像はただ機械的に手順を踏んでおこなえばよいというものではなく、狙った色を出すための技術や経験が求められます。
どんな技術が必要なのでしょうか。現場には、こんな声があります。
たとえば写真家に「写真全体の色味を青っぽくしてほしい」とオーダーされたとしても、その写真家がどのような「青っぽさ」をイメージしているのか分からないことがほとんどです。
引用元:【シゴトを知ろう】写真現像技術者(プリンター) 編 | 進路のミカタニュース
上記は、プロのプリンターへのインタビューから引用しました。「どうやったら写真が青っぽくなるのか」についての知識や技術に加えて、コミュニケーション能力も必要なことが分かります。
現像するのが仕事なのはわかったけど、現像はどういった場所でおこなわれているのと思った方もいるでしょう。
現像技術について学べるアート系の専門学校や大学に進学した後、写真現像所や、写真工房、写真館などに就職するのが一般的です。なかにはそうした学校には通わず現像所で働きはじめ、実際の業務を通して技術を身に付けていく方もいます。
現像の会社や写真工房、写真館ってそんなにあるものなの? と思った方は多いでしょう。ここでは企業の一部をご紹介します。
調べてみるとたくさんあるのですが、企業によってはデジタル専門だったり、プロ仕様の印刷を承っていたりと特色があります。プリンターとしてどんな仕事に携わりたいかを明確にしておく必要があるかもしれません。
就職後は勤務先での取り扱いの範囲にもよりますが、写真を印画紙に焼き付けたり、写真展で展示する作品のプリント制作などをおこないます。
一般の方だけでなくプロの方からの依頼もあり、プリンターとしての技術を活かしながら依頼者の理想を再現するとても繊細な仕事をこなしていくことになります。
プリンターは数も少なく、またあまり知られていない仕事のため年収を調査したデータはありません。今回は一例としてカメラのキタムラのデータを見ていきましょう。
正社員の年収は300万〜400万円が最も多いとされています。その次に400万〜500万円、次に300万円以下となっています。
正社員の場合、店長などに任命されてしまうため現像など現場での仕事は少なくなるかもしれません。アルバイトやパートの場合だと時給は1000円〜1100円ほどが相場となります。
アルバイトやパートの場合は生計を立てるのが難しいといえるでしょう。
先ほどデジタル写真のプリンターについて簡単に解説しました。デジタル写真の場合、カメラに保存されたRAWという形式のデータをJPEGなどのファイルに書き出す仕事をプリンターが担います。
この場合も、単に機械的に画像を書き出せばよいというわけではありません。必要に応じて色合いを調節したり、余分な情報を消したりするレタッチの技術を磨く必要があります。
レタッチは多くの場合Adobe Photoshopによっておこなわれているようです。プリンターはこれらの実践的な技術を身につけておく必要があるでしょう。
デジタル写真は、その気になればコピー用紙などにも印刷できます。フィルム写真と比べてプリントする対象が多いのは魅力ですが、何にプリントするのかによって書き出す画像を調整する必要が出てくることがあります。
それは、写真を焼き付ける対象によって発色や見え方が変わってくるためです。デジタル写真のプリンターは印刷方法がインクジェットなのかレーザーなのか、紙は何を使うのか、そのときにどのような違いが出てくるのかを念頭に置いて作業しなければなりません。
また、デジタル写真を一度フィルムに変換してから印画紙に焼き付けるといった複雑な手順を取ることもあります。そのため、デジタル写真のプリンターであってもフィルム写真についてしっておくに越したことはないのです。
- 著者
- ["岡村昭彦", "東京都写真美術館", "戸田昌子", "岡村昭彦", "<br>"]
- 出版日
フィルム写真に関心がある人は、ぜひフィルム写真をいろいろ見てみる機会を作りましょう。写真の撮り方だけでなく、現像の仕方でどう写真が変わるのかについて、数を見ていくと分かってくることがあります。
本来であれば実際の写真を生で見るのが一番です。しかし難しい場合は、写真集などもおすすめです。商業出版の写真集でも古いものの多くはフィルムで撮られています。また、写真家の展覧会図録は印刷の質がよい写真が多数掲載されているのでよい参考になります。
東京都写真美術館は写真専門の美術館です。特別展を多く企画しており、『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて all about life and death』など展覧会の内容も含めて勉強できる図録が多数刊行されています。
- 著者
- []
- 出版日
表現としての写真を考えるときに避けて通れないのがモノクロ写真です。「白と黒だからカラーより簡単なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、シンプルだからこそ表現の幅が広く、プリンターとして技術を求められる部分です。
写真や図などを用いた解説になっており、モノクロ写真に関する知識が足りない方にとっても丁寧な内容になっています。
『モノクロ写真の現像とプリント』を一読すれば、どうしてモノクロ写真が好まれるのか、どのような表現が可能なのかなど、モノクロ写真への理解が深まるはずです。
- 著者
- 村上龍
- 出版日
- 2010-03-25
タイトルの通り、13歳に向けて書かれた職業紹介本です。127万部を売り上げたベストセラーなので、学校の図書館でも見かけたことがあるかもしれません。全589にもおよぶ職業について分かりやすく解説されているので、まず気になる職業、業界について考える際の出発点として利用できます。
各職業の詳細に加え、どんな人に向いているか、好きな科目から就きたい職業を見つけるにはどうしたらいいかなど、子供だけでなく大人も楽しく読める内容になっています。働くすべての人にエールを送る1冊。
- 著者
- 高嶋 一成
- 出版日
現在のプリンターにとって欠かせない画像レタッチの技術。美大や専門学校に通えば授業で学ぶことができますが、自分のペースでしっかりとトレーニングするために参考書を買っておくのもおすすめです。
Photoshopはバージョンによって操作方法が異なることがありますので、自分の使うバージョンについて解説されているものを選ぶようにしましょう。
仕事に欠かせないソフトを感覚で使うのではなく基礎から習得し、応用までこなしたい方にとって、常に手元に置いておきたい1冊になるはずです。
知る人ぞ知る、しかし写真の世界には欠かせないプリンターについて紹介しました。もともと写真を撮ることが好きで勉強をはじめた結果、プリンターの技術に魅了されたという人もいます。写真の世界が知りたい、仕事にしたいという人は、一度各地で行われている現像ワークショップに足を運んでみるのもよいでしょう。書籍と実体験からその魅力を探ってみてください。