福祉や医療分野において、高度な専門知識・スキルを持ち重要な役割を担っている「社会福祉士」という仕事。高齢化や虐待問題、メンタルヘルスなどさまざまな福祉的課題が注目されている近年、今後さらにニーズが高まってくる福祉系の国家資格です。 コメディカル職のため就職・転職を考える方は多く、年収はそこまで高くないですが安定して仕事を続けることができます。 この記事では、仕事内容や試験の難易度、社会福祉士に興味を持った方に役立つ、漫画やテキストなどの本3冊をわかりやすく紹介していきます。
社会福祉士は、福祉や医療などの相談援助の場において、病気やケガなどの障害や家庭・学校・仕事場などの環境上の理由により日常生活に支障が出ている人に対し、支障の軽減や解決のサポートをする専門職です。
社会福祉士は、1987年に「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき定められた国家資格であり、福祉や医療分野において相談援助に必要な専門知識・スキルがあることを証明しています。
社会福祉士は、同法に基づく名称独占の国家資格であり、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者
一般的に「ソーシャルワーカー(生活支援員)」と呼ばれることも多いですが、「ソーシャルワーカー」に資格は必要ではない一方で、社会福祉士には資格が必須になっています。
社会福祉士の仕事は多岐にわたります。高齢者や障害者に相談に応じ、必要な助言や利用可能な制度を紹介し、それぞれの状況に応じた支援をおこなっています。またサービス提供者や行政、医療施設などとの橋渡しもおこないます。
また、専門知識とスキルを活かし、その相談者を実際にサービス提供者として援助することもあります。援助内容は、勤務先や対象者によってさまざまです。
活躍の場は、福祉施設や医療・教育・行政機関など、下記のように多岐に渡ります。専門性も高いことから市場価値が高く、日常生活に困っている方のサポートができるというやりがいの大きい仕事だといえるでしょう。
厚生労働省が公開した「社会福祉士・介護福祉士就労状況調査結果の実施概要」によると、社会福祉士の平均年収は300万円台(2008年)となっています。
正規職員の月給状況はこちらです。
最も多いのが20万円以上25万円未満となっています。25万円以上の額をもらえているのは全体の約2割です。しかし意外と多いのが40万円以上もらっている方で、8.8%という数字になっています。
ボーナスなどの賞与については、社会福祉士・精神保健福祉士については支給されていることが多いです。一方で介護福祉士は賞与なしの割合が最も少ないという残念なデータも公開されています。
最も割合が高いのが、60万円以上80万円未満の賞与が支給されている方となっています。また気になるのは100万円以上150万円未満の賞与が支給されている方が13%近くもいることでしょう。
この数字は40万円以上60万円未満の賞与支給割合とほとんど同じ数字になります。
年齢別にみると下記のようなデータとなっています。
このデータを見るに、経験を積むごとに年収があがっていくことが分かります。
しかし一般的にみれば年収はけして高くないというのが現状でしょう。基本給に加え資格手当も付与される勤務先もありますが、その平均は約1万円と多いとはいえません。
社会福祉士になるためには厚生労働大臣が指定した公益社団法人社会福祉振興・試験センターがおこなう「社会福祉士国家試験」に合格しなければなりません。試験は1月下旬、または2月上旬に毎年1回おこなわれています。
◾️受験資格について
受験資格は全部で12パターンありますが、実務経験がない場合には、大きく分けて下記4つに分類されます。
一般の4年生大学や短期大学を卒業していたり、高等教育機関を卒業していなかったとしても、実務経験を積み養成施設を修了すれば、受験資格を得ることができます。(詳細は厚生労働省の「社会福祉士の資格取得方法」をご覧ください)
試験内容は、福祉支援の理論や制度、病気などに関する19科目で構成され、五肢択一形式です。
19科目からそれぞれ複数問題が出題され、総問題数は150問です。1問1点の配点になっています。
試験は午前の部と午後の部にわけておこなわれ、午前135分、午後105の計240分です。問題数と照らし合わせると1問につき約1分のペースで解答しなければ全問に目を通すことは難しいです。
試験の合格率は、例年30%前後で推移しており、他の国家資格と比較して難易度はそこまで高くないといえるでしょう。
たとえば、平成30年度の受験者数は4万1639名だったのに対し、合格者数は1万2456名、合格率は29.9%となっています。
また、合格者の福祉系大学等の卒業者の割合は58.1%、養成施設の卒業者の割合は41.9%と合格率に差はあまりありません。合格基準は、問題の難易度などに応じて多少の補正はあるものの、総得点の60%程度とされています。明確な合格基準(令和1年度)については下記の通りになっています。
(1)
ア:総得点150点に対し、得点88点以上の者(総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正した。配点は1問1点である。)
イ:試験科目の一部免除を受けた者(社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第5条の2)総得点67点に対し、得点37点以上の者(総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正した。配点は1問1点である。)
(2)
(1)のア又はイを満たした者のうち、(1)のアに該当する者にあっては①から⑱の18科目群、イに該当する者にあっては⑫から⑱の7科目群すべてにおいて得点があった者
しかし合格率はあまり低くはないものの、学校で福祉について学びながらも独学の勉強は欠かせないでしょう。今回は社会福祉士の仕事の面白さをより知ることのできる本や、試験勉強に役立つ本などをご紹介していきます。
- 著者
- 飯塚 慶子
- 出版日
社会福祉士と介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持ち、社会福祉士実習指導者でもある筆者が自身の体験と取材をもとに社会福祉士を目指す人に向けて書き下ろした解説書です。未だに十分理解されていない「社会福祉士」について資格取得法から具体的な仕事の内容やその楽しさまで全てを網羅したガイドブックです。
高齢社会に立ち向かう国家資格「社会福祉士」。AIには代われない、心のヒダを癒す仕事。認知症・うつ病・虐待に寄り添う仕事。(本書より)
実際に現場で働く社会福祉士の様子や、日本の福祉施設の現状なども知ることができ、社会福祉士を目指していない人でも一読の価値がある内容になっています。
高齢者が増え、介護や福祉のサービスが重要視されると見込まれる今後の日本社会において、どんな選択をとって暮らしていけるのか。そんなことも考えながら読みたい1冊です。
- 著者
- いとう総研資格取得支援センター
- 出版日
社会福祉士国家試験の膨大な出題範囲を4領域に分類し、重複した内容を効果的に整理できる1冊です。全ページオールカラーで図表やイラストなどを多用しながら、「試験の全体像」をつかめるように解説しています。
出題分析表をもとに単元別の重要項目や出題頻度を「見える化」し、複雑な制度のしくみや医療知識も効率よく勉強ができます。
まだ学び始めたばかりという人には勉強の指南書として、すでに試験の出題範囲を一周している人は要点の再確認用のテキストとして利用できると思います。
- 著者
- 戸部けいこ
- 出版日
社会福祉士が対峙している、一言で説明するのは難しい自閉症についてより分かりやすく理解できるおすすめの漫画が『光とともに…』です。著者は亡くなられて未完結ですが、時が経った今でも多くの人が手にとっている名作です。
知的障害をともなう自閉症を抱えている少年を主人公に、他者とのコミュニケーションがとりにくい自閉症児の子育てや成長の様子が丁寧に描かれています。
実際におこなわれている福祉支援(視覚支援など)や自閉症という障害から生じる日常生活の大変さや家族の葛藤など、要支援者のよりリアルな気持ちも学ぶことができる作品です。
自閉症とはどんな病気なのか、どういった教育が適しているのかなど、スタンダードともいえる自閉症患児の姿から学べることは多く、福祉の仕事に携わる人にぜひ手にとっていただきたい1冊です。
この記事を通して、社会福祉士がどんな仕事をしているのかが少し分かってもらえましたでしょうか。介護が必要な高齢者の増加にともない、社会福祉士や介護福祉士など、福祉に携わる人材の需要が高まっています。社会から強く求められているという現状は、社会福祉士としてのやりがいも大きくしてくれるのではないでしょうか。またそういった側面から、別の仕事に就いてから国家試験にのぞむという人も少なくありません。相性のよい資格をあわせもつことで給料アップものぞめるでしょう。今回ご紹介した本をどれか1冊手にとって、社会福祉士という仕事への道を進む後押しができたらと思います。