「看護助手」って、みなさんは聞いたことがありますか?大きな病院に受診した時に、看護師とは違う色の制服に身を包みながら、忙しそうに動き回っている人たちをがいます。彼女たちが「看護助手」です。病院や看護師にとっては必要不可欠な存在であり、実は資格がなくても従事することができるため、未経験での転職者も多くいます。 医療従事者として働いてれば、毎日お世話になる職種なのですが、臨床の場にいないと関わることはないかもしれません。今回は、そんな看護助手の働き方、やりがいなどを現役25年目である看護助手さんに実態調査した結果とともにご紹介していきます。
看護助手の主な業務は、「看護師の仕事全般をサポートすること」です。ひとことで書くと、とてもシンプルに感じますが、その請け負う業務の範囲はとても広く、業務量もかなり多くなります。
看護助手の募集がある施設は、大きな病院や介護施設であることがほとんどです。クリニックや小さな病院だと、看護助手が請け負う仕事を看護師がこなすこともあるので、施設の規模により求められる基準は異なるでしょう。
看護師業務全般のサポートをおこなうのですが、看護師について回るわけではなく、ほぼ全ての業務を自主的・主体的にこなしていくことが求められます。
おむつ交換や入浴介助など、患者さんの身体介護から、備品発注・補充などの雑務、シーツ交換や清掃などの環境整備まで、マルチに業務をこなしてく能力が求められます。
看護助手として働く場合、病院で勤めるか、介護施設などで勤めるかによって年収は変わってきます。やはり大きな病院に勤める方が、平均年収は高い傾向があります。
看護助手の一般的な給与平均は216万4000円(2019年)ですが、そこに夜勤手当が付加されたり、危険手当や待機手当が加算される場合がありますので、状況により大きく変わる傾向があるのも事実です。また年間賞与も加わってきます。
夜勤手当は、準夜勤・深夜勤とわかれていたりもしますので、1回につき1万~2.5万ほどの開きが出ることも多々あります。夜勤手当を加算すると年収は300万~400万くらいの開きが出ます。
夜勤手当が高いと、おむつ交換や体位変換(※患者さんの体のポジションを変えること。認知症や麻痺・睡眠薬の使用により自力で体を動かくことができない場合に介助する)の必要度が高く、介護度が高い環境である傾向があります。
看護助手としての業務は、その働く部署や施設により業務内容は大きく異なりますが、看護師業務のサポートであることは変わりません。すなわち、その場所で看護師がどのような内容の業務をおこなっているかによって、看護助手の業務も変わってくるのです。
さまざまなセクションを経験した看護助手さんに聞いた、実際の業務例をいくつかあげてみました。
そもそも医療行為が少ない場所になるので、看護助手の出番も多くなります。その業務内容は入浴介助や食事介助、更衣介助、おむつ交換、移動介助など多岐にわたります。
必然的に看護師よりも看護助手のほうが人員配置としても多くなる場合があり、看護助手間のチームワークが重要となってきます。
また、身体的な負担が多くかかる場所でもあるため、膝や腰などを故障してしまう看護助手さんも多く、ボディメカニクスやキネステティックをしっかりと学び、習得する必要が出てくるでしょう。
クリニックや病院内の外来というセクションは、日々何十人、何百人という患者さんが受診に訪れます。決められた診療時間内にその受診患者さんをさばかなくてはならないため、看護師は環境整備や使用された器械類の洗浄・滅菌まで手が回らないことが多いです。そのため、それらの業務は必然的に看護助手の仕事となります。
内視鏡検査や外科的処置がある施設であれば、特殊な洗浄方法や滅菌方法を習得する必要があり、さらに患者さんの検査予約を逆算し、検査が滞りなくおこなわれるよう消毒作業や滅菌作業を進めなくてはなりません。
また、検査説明や患者さんを案内する業務も、ほかのさまざまな業務と同時進行でおこないます。さらに衛生材料の補充やリネン類の管理、ゴミ出しや書類整理など、その業務は多岐にわたります。
手術室や中央材料室に勤務の場合、ほかの助手業務より特殊業務が増えます。基本的に手術中に使用する材料や器具を管理するので、洗浄や滅菌についての技術や知識の習得が必須事項となります。
なかには在庫保有数が少ない機器を管理する場合もありますので、手術の進行に支障が出ないよう迅速に洗浄滅菌し、看護師をサポートしながら滅菌作業をおこなわなくてはなりません。
また、滅菌された機器類や衛生材料類は使用期限がありますので、使用期限の確認や破損の有無、管理状況を確認し、安全な医療を提供できるよう、医師や看護師をサポートする業務が中心となります。
また、手術開始前の手洗い終了後、医師や看護師に滅菌ガウンを着用させるサポートをすることもあります。手術前や手術中に不足した器具類や衛生材料を開封し、受け渡しをすることもありますので、滅菌環境下を汚染しないような介助をする必要があります。
業務内容から考えると少し上級者向けの業務環境といえそうです。
看護助手は資格はなくとも業務に従事することはできますが、看護助手として働くうえで取得しておいて損はない資格がいくつかありますので、ご紹介したいと思います。
「看護助手認定実務者試験」は、民間資格となっていて、全国医療福祉教育協会が掲げる看護助手が医療施設において即戦力として活躍するための知識、技能を客観的に判断する試験です。(全国医療福祉協会参照)
学科問題(マークシート)35問を90分で解いていきます。在宅受験ができるのがメリットで、年3回受験日が設けられています。6割以上の正答率で合格となり、合格率はおおよそ60~80%です。
即戦力として業務ができるということを雇用者側にアピールできますので、これから看護助手として就職を目指している方にはおすすめの資格です。
滅菌技師(滅菌技士)とは、医療施設における滅菌供給に関わる業務などの知識や技術を認定する資格です。基本的な知識を習得している第2種滅菌技師と、より専門的な知識・技術を習得している第1種にわけられます。 (日本医療機器学会参照)
滅菌技士の試験は3の地域で年に1回、講習終了後に実施されます。( 第1種の講習は2日間です)認定更新のために、学科試験の合格者は2年以内に実技講習を受講する必要があります。
滅菌技師を持っていると、手術室や中央材料室での勤務を有利にすることができます。なかには現場で働いている看護師よりも、滅菌や洗浄について詳しい方も多々おられます。この場合、資格手当や危険手当が加算されますので、さらなる年収アップが期待できます。
「看護助手」は、臨床の現場に置いて花形職業とは言いにくい立場かもしれません。ですが、看護助手が多くの業務を請け負ってくれるおかげで、臨床の場の負担は軽くなり、業務効率が向上し、スムーズに業務をまわすことができるのです。
そんな「縁の下の力持ち」であるからこそ見えてくることもたくさんあります。
筆者が看護師として働く現場で今も現役として働いている看護助手25年目のスタッフは、看護師それぞれの性格などを把握し、抜群のタイミングで必要なサポートをしてくれます。「なぜ、そんなに的確で求められていることができるのでしょうか」と不躾ながらも質問をしてみました。
看護師の性格や性質の把握は、実は同じ同僚である看護師同士よりも、一歩引いたところから現場を見ている看護助手さんのほうが把握していることも多くあります。
少し離れた場所からみているからこそ見えてくることもあり、そのうえで必要なサポートを提供してくれているのです。
看護助手として長年働いてきた方は、行き詰っている看護師に「この子辞めちゃうな」とか「この子は頑張れる」などはなんとなくわかると言います。さまざまな医師や看護師のもとで働く機会のある看護助手だからこそ、看護師の異常なども分かるのでしょう。
看護助手のナナちゃん(1)(ビッグコミックススペシャル)
2011年03月30日
『看護助手のナナちゃん』は、そんな縁の下の力持ちである看護助手のお仕事がコミックとしてわかりやすく表現されています。実際の業務だけではなく、患者さんや、看護師などの関わりを心理的側面も交えながらの内容になっていて、ときに笑い、ときに涙ありの作品となっています。
かわいらしいタッチの絵にリアリティのある看護助手の現場を、ショートストーリーを集めた内容で描かれるこの書籍は、看護助手という職業を知らない人でも読みやすくわかりやすい内容になっています。
とくに看護や介護の現場を、絵で見て感じてみたいという方にはおすすめです。2020年6月現在、10巻まで発売されています。電子書籍などでも購入することができますので、気になる方は一度手に取ってみることをおすすめします。
- 著者
- 千葉県民間病院協会看護管理者会 編
- 出版日
こちらの書籍は、看護助手・看護補助者として就職するにあたり、あらかじめ保有しておいたほうがよい知識の基礎基本を簡単に掲載しています。病院や施設についての概要や、主に担当する可能性のある知識・技術の基礎の部分がまとめられています。
新卒の社会人として勤める予定がある看護助手の方や、ブランクがあり久しぶりに勤める予定のある方にはとくにおすすめです。人体の構造や働きにについてもまとめられているので、現場で簡単に振り返りがしたい方にもよいでしょう。
ページ数が少なく、コンパクトな作りなので、持ち運びにも便利です。看護助手としての仕事内容や心構えについて、いま一度振りかえるのには最適の1冊です。
看護助手として働いている人に最も人気であり、介護福祉系の資格のなかでは唯一の国家資格なのが「介護福祉士」です。身体の介護がメインとしての業務になりますが、いくつかの医療行為が許可されています。(口腔・鼻腔・気管カニューレの吸引と胃ろう・経鼻経管栄養など)
介護福祉士を取得すると、介護の現場で指揮をとるリーダーとして能力を発揮することができますし、国家資格を取得することで、飛躍的な年収アップにつなげることもできます。
介護福祉士の年収はおおよそ350万円前後といわれていて、夜勤手当を入れると450万円近くを取得することもできそうです。
国家試験は毎年3月におこなわれます。受験資格を得るに専門のカリキュラムがある専門学校で必要単位を履修したり、3年以上の実務経験の上で実務研修を履修し受験資格を得る方法などがあります。
試験内容には筆記と実務試験両方をパスする必要があり、50~60%の合格率と言われています。(条件により実務試験を免除される場合もあります。)
- 著者
- TAC介護福祉士受験対策研究会
- 出版日
介護福祉士国家試験を目指すうえでおすすめの書籍が、『みんなが欲しかった!介護福祉士の教科書 2021年』です。直近の介護福祉士国家試験の内容を反映し、わかりやすくまとめられています。
暗記問題を習得するのに便利な赤シートつきで、カラー図表でわかりやすくポイントが抑えられており、基礎基本を覚えるにはもってこいの内容です。
このテキストを購入し網羅することで、国家試験対策としての要素をしっかりと抑えることができるでしょう。テキスト内容を十分理解したうえで過去問や問題集で腕試しをして、不足している部分や、弱点となっている部分を明確化し、再度テキストを使用して弱点克服をしていくという使い方がおすすめです。
なかなか日常生活のなかだとお目にかかることはない「看護助手」がどんな仕事をしているのか、少しでも伝わりましたでしょうか。患者さんとのかかわりだけでなく、医師や看護師のサポートも担うので、とても大変な職業ではあります。責任感もともないますが、やりがいもとても感じることができるでしょう。これから超高齢化社会を迎える日本では、今後もとくに需要がある職業のひとつといえます。「看護助手」という職業に興味があるようでしたら、ぜひ一度紹介した書籍も手にとってみてくださいね。