司法書士とは、登記や相続など依頼人の財産や権利を守る法律の専門職です。国家資格の取得はかなり難関で、数年かけて取得する方もいるほど。しかし認定司法書士になると簡易裁判所で代理人になることもできるため、法廷で仕事ができる数少ない職業のひとつです。 年収は勤務司法書士だとかなりばらつきがありますが、独立することで1000万円以上の年収を得ている方は多いようです。この記事では司法書士の仕事内容や年収・国家資格の内容について解説していきます。
司法書士法により、司法書士とは下記のような資格を有する者のことをいいます。
一 司法書士試験に合格した者
二 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの
司法書士は、法律に基づいて書類作成や手続きを代行する仕事をしています。
司法書士の業務は多岐にわたりその業務内容は司法書士法にも明記されていますが、主に登記や供託に関する仕事が多く、不動産の購入や相続、会社の設立など財産や権利に関わる職務をこなしています。
成年後見人や破産管財人など財産を管理する代理人になることもできるため、まさに財産を管理するエキスパートといえるでしょう。
また司法書士は会社設立や相続、事業承継など会社や個人・家族の関係に深く携わる仕事です。そのため、専門知識や関係性を活かして経営コンサルタントや資産管理のコンサルタントとして活躍している人もいます。自分次第で、登記や供託の書類作成や手続き代行以外にも活躍の幅を広げられる仕事なのです。
司法書士と同じような職業としては行政書士があげられます。国家資格が必要な法律の仕事で、書類作成や手続きを代行する仕事としてはどちらも似ています。
違いとしては、代行できる書類作成や手続きの範囲が異なります。行政書士は官公署へ提出する書類作成や手続きを業務範囲としており、飲食業の許認可などの手続きをすることができます。
行政書士の仕事内容を詳しく知りたい方は、行政書士の記事もご覧ください。
▶︎でわかる行政書士!仕事内容や年収、試験の難易度などをわかりやすく解説
訴訟の代理人は、司法書士にしかできない仕事のひとつです。司法書士は特別な研修を受けることで「認定司法書士」になることができます。認定司法書士になれば、「簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解など」の代理人を務めることが可能です。
認定司法書士制度は平成15年にできました。以前は弁護士しか訴訟や調停の代理人になれませんでしたが、司法書士でも案件によってはできるようになったのです。書類作成や手続きだけではなく、トラブルや問題の解決までサポートしたい方は認定司法書士を目指すといいでしょう。
日本司法書士会連合会が発行する「司法書士白書2015年版」によると、司法書士(男性)の年収は以下のようになっています。
割合を見ても人によってばらばらだということがわかります。1億円以上と回答した方もいるため、自分次第で年収を上げることは可能です。
しかし司法書士以外での収入がある人も多くいます。男性の場合は44.6%、女性の場合は30.1%が司法書士以外での収入があると答えています。
司法書士の働き方は、事務所で勤務司法書士として働く、もしくは独立するその2つにわかれることが多いようです。
勤務司法書士は一般企業と同じような年収体系で、入所まもない頃は250万〜400万円程度、活躍している方や大手事務所だと500万〜700万円ほどが多いようです。
独立した司法書士は自分次第で250万円〜2000万円以上と年収の幅が広がります。1000万円以上の高所得を得ている司法書士は独立している方が多いので、仕事をどんどんこなして収入も高くしたいという方は、独立を目指すのがよいでしょう。
しかし、登記の手続きや書類作成など司法書士の基本業務は単価を上げることが難しいため、高い年収を得るためには他の専門性や専門分野を持つことが重要です。顧客の経営など他の相談などにのれるだけの知識や営業スキルがあれば、高年収を目指すことが出来るでしょう。
不動産登記などは不動産会社や建築会社などの顧客がいれば定期的に案件が発生します。そのため、独立後すぐでもいくつかの取引先を持っているだけで安定させやすい仕事です。
司法書士として独立を目指すなら司法書士の知識はもちろんですが、社会一般の知識や経営、相続、事業承継など司法書士業務にまつわる周辺知識も勉強しておくと専門性がより深まっていきますよ。
司法書士になるためには国家資格の合格が必要です。ロースクール(法科大学院)に2〜3年通う人が多い司法試験と比べて、独学でこつこつ勉強しながら目指すことができるため、社会人から目指す人も多いことが特徴です。もちろん、大学生で勉強しながら目指している人も多く在学中に合格することも可能です。
司法書士試験の合格率は毎年3〜5%の合格率を推移しており、難関資格の1つと言われています。
同じような国家資格である行政書士の合格率は15〜25%で推移しているのを見ると、やはり難易度は高いといえるでしょう。
参照:法務省 司法書士試験
司法書士試験は例年4〜5月に受験手続きや出願がおこなわれ、試験の実施は7月、合格発表は10月と長丁場となっています。
試験は1日間だけで、午前の部、午後の部とわかれておこなうのですが、その試験範囲は、行政書士に比べて広く設定されています。
法律の基礎知識と業務に必要な登記・供託の知識に加えて、民事の事件に関する法律全般の知識が求められます。
出題形式は多肢選択式と記述式の2つがあり、受験する年によって出題形式ごとの基準点と、合格点が設定されています。つまり、総合得点が合格のラインを超えていたとしても、各基準点をクリアしていないと合格判定を受けられないのです。
範囲の広さや、内容の難しさゆえに、1年以上の年単位で勉強しながら試験に備える人がほとんどです。
司法書士の勉強に関しては予備校もたくさんありますので、講義を受けて勉強したい方や質問しながら勉強したい方は予備校を探してみるとよいでしょう。
また、テキストや問題集を用いて独学でおこなう方もいます。まずは入門書やテキストを買ってみて独学で勉強するか予備校で勉強するか考えてみてはいかがでしょうか。
司法書士へのなり方はわかりましたが、実際に資格取得後はどのような働き方ができるのでしょうか。司法書士の就職・転職事情をみていきましょう。
司法書士の資格取得後の流れとしては、司法書士事務所に就職することが一般的なルートでした。しかし近年では一般企業で司法書士の求人が出ていることもあり、企業内司法書士として企業に就職する方も増えてきています。
最終的に独立することを考えている場合は、事務所や企業で働きながらどのように人脈を築いていけるかが重要なポイントとなりますね。
先述したように、司法書士として働くには司法書士の国家資格を取得しなければなりません。そのため司法書士として転職したくとも、資格がなければ転職することはもちろん厳しいでしょう。
それなら働きながら資格を取得すればいい話じゃないかと思う方は多いはず。ですが司法書士の資格は難易度が高く、本気で目指すのであれば休日は10時間以上、平日は仕事終わりに3〜4時間と相当な勉強量が必要となります。
どうしても司法書士に転職したい方は、かなりの覚悟をもって目指すことをおすすめします。
- 著者
- 大越 一毅
- 出版日
司法書士の仕事内容や業界の実情などが、現役司法書士によって赤裸々に書かれている本です。
資格試験や司法書士の仕事内容など「仕事を知る本」によくある内容だけではないのがこの本の特徴です。研修時や独立開業時のリアルな話や結婚事情といったプライベートまで書かれています。裏話も多く載っているので楽しく司法書士の世界を知ることができるでしょう。
司法書士のような法律系国家資格の仕事は、一般企業とはまるで違います。特に独立した後は収入の変化や休日をいつ取るのかなど、細かいところまで気になる方も多いでしょう。
独立のリスクも含めて書かれているので、進路として考え始める方には非常に参考になる1冊です。
ゼロからスタート! 海野禎子の司法書士1冊目の教科書
2019年01月19日
司法書士試験など、資格の予備校LECの人気講師である著者が書いた司法書士試験の入門本です。
試験範囲全てを細かく網羅しているわけではなく、司法書士に必要な法律の基礎知識や勉強すべき科目などについて書かれています。
法律は専門用語も多く、いきなり広範囲の勉強を始めると挫折してしまう方も多いです。まずは入門書を読んで基礎知識を頭に入れた上で、細かく勉強をしていくと理解しやすくなり結果的に効率よく勉強することが可能です。
法律に興味を持った方や司法書士を目指そうとしているけれど法律の勉強をしたことない方に特におすすめの1冊です。まずはこの本で法律に触れることから始めてみましょう。
- 著者
- 伊藤塾
- 出版日
司法書士試験の試験科目範囲を網羅しているテキストの民法版です。他の法律に関してもテキストがあるので合わせて購入して勉強していきましょう。
法律系の資格予備校大手である伊藤塾が長年の受験ノウハウを活かした内容からは、学べるところが多いでしょう。的確に捉えたポイントをイメージ図を交えて解説しているので、非常に理解しやすいテキストになっています。
ドリルと解説付きで反復して学ぶことが出来るため、勉強し始めた時から試験直前の復習・対策までずっと使えるのが、このテキストの特徴。特に独学で勉強したい方におすすめしたい1冊です。
司法書士は、人々の財産と権利を守る身近な法律家。家を購入する方など一般の人にも関わる機会が多い仕事です。現在は書類作成や手続き以外に、企業や個人の相談者として幅広く活躍している方も多く、自分次第で業務を広げられる楽しさもあります。
難関資格のひとつですが、その分専門性が高いため、合格すれば、活躍できるチャンスは多い業界。法律に興味のある方はぜひ一度、詳しく調べてみてください。