5分で分かる国税専門官!マルサの仕事とは。年収や採用試験の内容、就職事情を解説!

更新:2021.12.5

テレビのドラマや映画などで「マルサ」と呼ばれる人たちがどんな仕事をしているのか、知らない人は多いはず。女優の山村紅葉さんは、かつてマルサを職業とし、そこから女優に転身したことで有名です。 しかしマルサは「国税専門官」の3つある職務のうちの1つ。国税専門官には国税調査官・国税徴収官・国税査察官の3つの部署があり、マルサとはこのうちの国税査察官のことを指しているのです。 今回は知られざる国税専門官の仕事内容と給料、採用試験について紹介します。税務のスペシャリストとして、実は私たちの生活にも関わる仕事をしているんです。

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国税専門官とは。就職場所は税務署、国税局

国税専門官の仕事内容とは

国税専門官とは、国税調査官・国税徴収官・国税査察官の3つの部署のことを指します。

  1. 国税調査官:個人や会社を訪れて適切な申告をしているか調査・検査をおこなう
  2. 国税徴収官:定められた納税期限までに納付されない税金の督促や滞納処分をおこなう
  3. 国税査察官:裁判所から許可を得て、悪質な脱税者に対して捜索・差押などの強制調査をおこない、刑事罰を求める告発する(マルサと呼ばれている)

どの部署で働くにしても国税専門官は法律、経済などへの専門知識が必要となります。税務のスペシャリストとして納税の不正を防止するために日々あらゆる対象の調査をおこなっているのです。そのため知識だけではなく調査を最後までおこなう精神力や分析力、判断力も必要とされます。

国税専門官が活躍できる場所

国税専門官は主に税務署や国税局に勤務しています。まずは各地方の税務署に勤務した後、実績や経験を積んでから国税局に配属されるのが一般的な流れとなります。国税専門官は国家公務員なので異動も多く、大体3年〜5年ほど経つと別の税務署や国税局に移ります。

税務署と国税局では区分けされている部門が違うため、その意味では税務署と国税局を行ったり来たりする異動は大変さが増すかもしれません。

◾️国税局

  • 国税局調査部
  • 国税局査察部

2020年6月現在、11の国税局が置かれています。国税局は税務署への指導および監督が主な仕事かと思われるかもしれませんが、実は自らも税務調査などの現場業務もおこなう部門を持っています。国税局は国税庁と税務署のパイプ役であると同時に、財務行政の地方拠点として役目を果たしているのです。

◾️税務署

  • 総務課
  • 税務広報公聴官
  • 管理運営部門
  • 徴収部門
  • 個人課税部門
  • 資産課税部門
  • 法人課税部門
  • 酒類指導官

税務署は2020年6月現在、全国に524署、置かれています。国税庁と国税局の監督のもと、内国税の賦課・徴収を担当しています。8つの部門にわかれており、各部門で専門性を発揮しながら働いています。たとえば資産課税部門や徴収部門、個人課税部門などは社会人にとってはわりと身近な部門であるかもしれません。

所得税や個人事業者からの税に関する相談や調査をおこなっているのが個人課税部門に配属された人たちです。その他にも個人事業者向けの説明会や確定申告ための指導・研修も担当しています。そのため年度末の時期はかなり多忙なのだとか。

国税専門官の働き方。担当業務で勤務形態が異なる

国税専門官の働き方

国税専門官は国家公務員です。なので勤務時間は1日8時間、土日祝日は休みです。しかし、調査、査察、納税相談など担当する業務により勤務形態は少し異なります。

例にあげた個人課税部門のように、ある一定の期間にたくさんの人が税務署に訪れれば、受付での対応、書類の整理などの業務量が増え、残業をおこなうことが増えるケースもあります。

出張が多く、心身ともにハードなことも

また出張も比較的多いのが国税専門官の特徴かもしれません。税務調査のため企業や工場に足を運び、時には脱税の疑惑ある人や組織の強制調査をおこなうこともあるので、心身ともにハードであることは間違いありません。

国税専門官は国税庁で勤務しますが、退職後は税理士として活動しています。退職後も資格や知見を生かして仕事をすることができます。

国税専門官の年収。採用当初は300万円台

国税専門官の給与は俸給表で規定されている

国税専門官の給与は、人事院の税務職俸給表により基本の月給が法律で定められています。俸給表とは職務内容や役職を表す1級から10級までの等級と、勤務年数を表す号俸により月給を定めるのに用いられる指標のこと。(公安職や専門行政職などにより級数は異なります)

それによると税務職の職員の月給は1級1号俸の15万1500円から始まり、同じ1号俸の10級になると53万2000円となっています。号俸は昇給のような認識で毎年あがりますが、級は昇進によってあがり、1つ昇進すると号俸は1号からのスタートとなります。

採用当初の年収は300万円台

採用当初の額は決められており、1級22号俸である25万560円(2020年度)です。年収に換算すると1年目は300万円以上となります。

国家公務員の月給はある程度の役職までは右肩上がりに増えていくのが一般的ですので、ミスなく数年努めれば年収は俸給表にしたがってあがっていくことは間違いありません。

ちなみに税務職俸給表に照らし合わせた最高月給は57万2900円ですので、最高年収は680万〜700万円となるでしょう。この基本給に加え、地方で働く国家公務員には地域手当が上乗せされます。

こちらは 国家公務員の地域手当に係る級地区分によって定められており、地域や階級により異なります。

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国税専門官に向いている人は?

国税専門官は納税義務のある企業や個人に対して疑い、調査し、時には摘発することが主な仕事です。もちろん「国税調査官」「国税徴収官」「国税査察官」と配属がわかれているので職種によっては異なる仕事をおこなうこともあります。

責任感のある人

そのため強い使命感を持って仕事に取り組める人や、責任感を持って最後までやり遂げられる人が向いているといえるでしょう。またその職種ゆえに強いストレスを感じることもあり、試験に組み込まれている面接ではストレス耐性をチェックされます。

飴と鞭を使い分けられる人

そうした厳しい目を向け調査をする一方で、税に関する相談を受けることもあります。そのときは企業や個人に理解してもらうための説明力や、柔軟なコミュニケーション能力も問われます。場面によって飴と鞭を使い分けることのできる人も適性があるといえそうです。

法律や数字に強い人

税金を扱う業務として、所得税・住民税など税に関するさまざまな知識を有している必要があります。そうした知識と、数字を正確に読み取る能力の高い人は国税専門官に向いているでしょう。

国税専門官採用試験の受験資格、試験内容

国税専門官になるには?

国税専門官として働くには、国税専門官の採用試験に合格する必要があります。試験は一次と二次にわかれており、試験は例年一次が6月、二次が7月となっています。資格試験ではなく採用試験なので合格発表は少し遅く、8月の下旬頃に発表されることが多いようです。

また受験資格が定められており、たとえば2020年における受験資格は下記となっています。

1.1990年(平成2年)4月2日〜1999年(平成11年)4月1日生まれの者
2.1999年(平成11年)4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
(1)大学を卒業した者及び2021年(令和3年)3月までに大学を卒業する見込みのある者
(2)人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者

その他、共通要件として日本国籍を有しない者、国家公務員法第38条の規程に該当する者など試験を受けられない人に関する要件もあるので、受験を考えている人は確認が必要です。

ちなみに国税専門官試験合格には有効期間が3年と決められています。ですので上記の受験資格をクリアしている人は早めに取得しておくというのもよいかもしれませんね。

国税専門官の採用試験の内容

試験科目は一次、二次あわせて5つあります。一次は学科試験で公務員として必要な知識と、国税専門官として必要な専門的知識が身についているかどうかといった内容になります。二次では個別面接と身体検査をおこない、内面からみて適性があるかが判断されます。

<一次試験>
・基礎能力試験:40題(140分)
・専門試験:70題(140分)
・専門試験記述:1題(80分)

 
<二次試験>
・人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
・身体検査:主として胸部疾患(胸部エックス線撮影を含む。)、尿、その他一般内科系検査

一次試験は9時35分〜17時25分までと長丁場なので集中力を切らさずに試験に臨めるかどうかがポイントとなりそうです。二次試験に関しては時間が定められていませんが、個別面接は就職活動の面接と似た雰囲気でおこなわれます。ですので志望動機や併願先、仕事中のトラブルへの考え方などが質問項目としてあげられます。

採用枠はどの程度?

通常の就職採用試験と同じですのであらかじめ大体の採用枠数が決められています。2019年度においては約1200名の採用を予定していますが、対する申込数は約1万4000人ほどあり、最終合格者数は3514人。試験の倍率でいえば3倍ということになります。

しかし最終合格者が全員採用されるわけではありません。合格者は採用候補者名簿に記載され、この中から採用面接を経て、採用が決まります。

また採用面接は8月下旬に3日間にわたっておこなわれます(東京の場合)。採用面接のスケジュールは直接連絡がくるのでそれまで少しリラックスしながら待つのがよいでしょう。

参照元:国家公務員試験 採用情報NAVI

一般企業から国税専門官への転職

結論からいうと、民間企業に就職した後からでも国税専門官への転職は可能です。先述したように、大学を卒業し、21歳以上30歳未満であれば、国税専門官の採用試験を受けることができるのです。

独学でも可能だけど

社会人での転職で一番重要なのが勉強時間の確保です。公務員試験では法律系の科目から問題が出題されます。憲法・民法・商法から問題が出されますが、その学習範囲は幅広いため、1日10時間の勉強時間を目安に試験に挑む方が多くいます。

そのため独学でも可能ですが、独学で挑む方のなかには仕事を休職したり辞めてアルバイトとして働きながら勉強する方も少なくありません。

向き不向きがはっきりしている

先述したように、国税専門官は正義感が強く、法律や数学も得意な人に適性があります。しかしそれ以上に、普段の業務や基本的に縦社会であることなど、向き不向きがはっきりしている職場環境となっています。

また転勤も多くあるため、知り合いのいない環境でも問題ないと思える人には向いているでしょう。

新人マルサも参考にしている?伝説の本

著者
田中 周紀
出版日

こちらは新人国税査察官など関係者の間で参考書として活用されていた伝説の本に加筆がおこなわれた文庫本。

著者は大型のスクープ記事などを手掛けたフリージャーナリスト。東京国税局査察部から唯一、講演の依頼を受けた有名な人物でもあります。

記者として真実を追い求める著者が書くマルサの世界は、私たちからは離れた世界の話なのにぐっとひきこむ力があります。

日本でおこなわれていた脱税事件の詳細だけでなく、日本一口が堅いと言われている国税査察官から記者たちはどんな手で取材をしているのか。国税査察官と記者のそうしたやりとりも面白く、新鮮に読むことができます。あまり重い内容ではないので、国税査察官の仕事ぶりをさっと知りたい人におすすめの1冊といえるでしょう。

国税査察官の仕事内容を知る

著者
立石 勝規
出版日

この本では、ロッキード事件や金丸脱税事件など巨額脱税事件を摘発してきた国税査察官(マルサ)が、どのようにして捜査するのか、また脱税の巧妙な手口についてが書かれています。

普段耳にしている脱税事件の裏側を知ると、国税査察官の仕事はかなりスリリングでまるでフィクションのようにも感じられてきます。企業や個人の納税義務を平等におこなってもらうために奔走する査察官にはとても頭がさがります。

国税査察官の歴史なども書かれているため、その点を学びながら脱税事件についても知りたい読者におすすめです。

試験対策するなら過去問集を網羅して

著者
資格試験研究会
出版日

この本に載っている専門職の過去問は財務専門官・国税専門官、労働基準監督官、皇宮護衛官(大卒程度)、 法務省専門職員(矯正心理専門職、法務教官、保護観察官) 、食品衛生監視員、航空管制官です。
 

また国税専門官の場合、教養科目・専門科目の多肢選択式の問題が課されます。記述式の専門試験については憲法・民法・経済学・会計学・社会学の5教科の中から1科目を選択して解答します。

「公務員試験 合格の500シリーズ」には他にも教養だけに特化した過去問集や政治・国際区分・法律区分・経済区分に分けて問題が掲載されているものなどがあります。本によって学習できる分野が違ってくるので、自分の得意・不得意にあわせて本を手にとってみてくださいね。

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今回はマルサで有名な国税専門官について取り上げました。マルサというのは国税専門官の中で捜索・差押などの強制調査ができる国税査察官のことで、他には国税調査官、国税徴収官と、国税専門官は3つの職種があることがわかりましたね。なるには採用試験に合格する必要があり、合格後の給料は勤務年数により年々あがっていくことが保証されています。国税専門官の仕事には責任感やストレスがつきものですが、その分やりがいも大きいようです。マルサが出ているテレビのドラマや映画などを見て興味を持った人は、この機会に国税専門官を目指してみてはいかがでしょうか。

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