なりたい職業として、若い世代から人気の「声優」。最近ではアニメや吹替えといった仕事の枠にとらわれず、イベントや歌手活動、Youtuberをおこなっている声優も増えています。 声優になるために必要な資格はありませんが、実力をつけるために多くの方は養成所を経て事務所に所属し、仕事をしています。 本記事ではそうした声優になるルートや、年収などの疑問を、わかりやすく解説。この記事を読めば、声優業界の「やりがい」や「厳しさ」も知ることができます。声優の仕事に憧れている、アニメ・ゲーム・お芝居などのエンターテイメントに興味があるという方は、ぜひ参考にしてみてください!
声優とはその名前の通り声だけで映像作品に出演する俳優のことです。
主にアニメや映画の吹き替えなどを担当している印象ですが、実は広義ではナレーターも声優の仕事に含まれています。これは日本初の声優が『ぶらり途中下車の旅』のナレーターを務めていた滝口順平さんがナレーターとして活躍していたことと関連があるかもしれません。
声だけで表現しなくてはならないため、声優として活躍するには元の声質はもちろんのこと、発声練習や演技の練習は欠かせません。現在人気声優として活躍している人のほとんどが、長い下積み時代を経ています。
声優として働くには、特別な資格は必要ありません。声優プロダクションや芸能事務所に所属しながらオーディションを受け、仕事を獲得するというのが一般的です。また、プロダクションに所属せずフリーで活動している声優もいます。
声優プロダクションに所属したり声優活動の実績がなくても、一般の人が受けられるオーディションが開催されていることもあります。そこで合格すれば、一気に声優デビューすることも可能です。
高校を卒業した後、声優の勉強のために養成所や専門学校で学ぶというパターンが多いようです。
実際には、青二プロダクションが運営する「青二塾」などが有名であり、人気声優の神谷浩史さんや、桑島法子さんも青二塾の卒業生です。2人は青二塾卒業後、青二プロダクションに就職し活動しています。他にもいくつかの有名な養成所があります。
年間授業料にはそれぞれ差がありますし、そもそも入所するにはオーディションが必要な養成所もあります。全体を通していえることは、講師が現役の声優であること。ベテランの声優から細かな指導を受けることが声優デビューへの一番の近道といえるかもしれませんね。
声優の仕事内容はと聞かれて一般的に想像するのが「アニメやゲームのキャラクターの声を演じること」ですよね。
しかし実際は声優に任せられる仕事は数多くあり、一昔前の「裏方の仕事」といったイメージは壊されつつあります。たとえば、以下のような仕事内容が代表的です。
いわゆる「顔出し」の仕事が増えていることが、上記の内容からもわかると思います。このような活動のオファーは、声優としての知名度が上がってきてから声がかかることが多いようです。
若手〜中堅世代の声優の中には、YouTubeをうまく使いながら知名度をあげている人もいます。2019年放送のアニメ『鬼滅の刃』の竈門炭次郎役でも有名な花江夏樹さんもそのひとりです。
ゲームの腕もさることながら、持ち前のトーク力と声優力でチャンネル登録者数150万人を超える人気ユーチューバーとして活動。自分の持ち味を活かした方法で、人気を確立しています。(参照:Youtubeチャンネル「花江夏樹」)
声優の「収入」について気になっている方も多いはず。声優は月給制ではなく、作品ごとに給料が支払われるのが一般的です。よく耳にする「ギャラ」のことですね。プロダクションによっては月給制を採用しているところもありますが、基本的には歩合制のため、仕事がなければ収入が0という厳しい世界でもあります。
皆さんがよく観る、30分アニメで例をあげてみましょう。30分アニメはセリフ量に限らず、1本ごとにギャラが支払われる仕組みになっています。スタートの収入は、おおよそ1本5000〜1万5000円。そのため、駆け出しの若手声優はアニメの仕事だけでは生活が厳しく、アルバイトをしながら声優業に就いていることも多いのです。
また、ギャラには日本俳優連合の「外画動画出演規定」を基に決められた声優の「ランク」が関係しており、ジュニア〜ノーランク(自分で値段交渉できる)まで分かれています。ベテラン声優になるとランクもアップし、1本4万5000円以上の収入を得られるようになります。(参照元:外画動画出演規程)
経験や実績があり、数多くの有名作品に出演している声優は1000万円以上の年収を得ている人も少なくありません。有名声優の山寺宏一さん・林原めぐみさんなどは、それ以上に稼いでいるのではないかといわれています。
声優業界全体でいえば、お正月や夏休みを返上して働くことも多く、年間を通しての仕事の拘束時間は長いといえるでしょう。
アニメの主演や、海外映画の吹き替え、人気番組のナレーターなど人気につながる仕事を獲得するのはもちろん大切です。しかし収入の面では、あまりよくない場合もあります。
最近では某テレビ番組にて、アプリゲームのキャラクターの仕事の単価が高いことが明かされていました。声優という職業で生計を立てることを考えたら、最初は名前の出る大きな仕事ではなく、単価の高い仕事をこなしていくというのもよいかもしれませんね。
そして、なんといっても声優活動で大切なのは「ファンを大事にすること」。特に男性声優は、熱狂的な女性ファンに支えられて活動ができているといっても過言ではありません。
事実、熱愛報道や結婚報道でファン離れが進むといった内容のネットニュースも、過去に取り上げられていました。
イベントや日々の行動でファンへの感謝を伝える、声優の命である喉のケアや体調管理を怠らない、そして演技の勉強をし続ける。これらをすべて続けていく覚悟のある方は、声優として生き残れる素質があるかもしれません!
声優で食べていくには、激しい競争を勝ち抜き続ける必要があります。前章でもお話しした声優の神谷浩史さんは、ベテランである上に高い人気を得ています。にも関わらず「未だにオーディションに落ちまくっている……」と、テレビ番組やラジオ内でお話しされています。
また、若いうちにある程度の経験と実績を積むことも重要です。声優プロダクションや養成所に入所するには、年齢制限(18〜25歳くらい)が設けられていることも多く、そこで引っかかってしまい断念せざるを得ないケースもあります。
なんとかプロダクションに所属することはできたけど、なかなか声優としての芽が出ず、30歳前後になると挫折してしまう人も業界内では少なくありません。
- 著者
- 梶裕貴
- 出版日
数々の話題作で主役を務める実力派声優の梶裕貴さん。最近ではテレビへの出演もちらほら見られる人気声優の1人です。こちらは、彼が下積み時代に抱えた苦悩や「声優」という仕事に対する想いを、赤裸々に綴った1冊になっています。
綺麗事だけでは人気声優まで上り詰めることができない……という現実を教えつつも、声優をめざす若者への熱いメッセージが書かれています。中学生〜高校生にも読みやすい構成になっており、進路に悩んでいる方にもおすすめです。
そもそも声優業界は作品数に対して声優の数が多いため、ベテランでも役を勝ち取るのが難しい世界。大物声優といわれる大塚明夫さんも「東洋経済オンライン」の記事本文で下記のように言っています。
300脚の椅子をつねに1万人以上の人間が奪い合っている状態
大塚明夫『声優の大多数が仕事にあぶれる理由』(東洋経済ONLINE)
仕事の幅が広がっているといっても、大勢の人から注目を浴びるような映画やアニメ作品の声優として活躍するには、ベテラン声優も新人声優も関係なく競争率の激しい世界なのだということが伝わってきます。
自身も30歳近くまで声優と土木のアルバイトを続け、そこからやっと声優の仕事で食べられるようになり始めた大塚明夫さんだからこその重みのある言葉ですよね。
- 著者
- 大塚 明夫
- 出版日
- 2015-03-26
そんな大塚明夫さんは『声優魂』という著書も出版されています。作品内でも、声優業界の構造や特殊な体制を「声優だけはやめておけ」という厳しい言葉で表現しています。
今日まで声優業界で生き残ってきた人だからこそ「憧れだけでは生き抜くことが難しい現実」を、説得力ある言葉と生々しい体験談で書き綴っています。声優志望者に限らず、全ての職業人に向けた仕事・人生・演技論であり、生存戦略指南書と呼べる1冊です。
なんとなく声優を志望したいなと考えている人が読むと、その真剣さと業界の厳しさに心が折れそうになるかもしれません。それほど厳しい、現実を直視せざるを得ない言葉が並んでいるので、心して読むのがよいでしょう。
- 著者
- ["下野紘", "西原直人"]
- 出版日
こちらは、人気声優である下野紘さんが出している写真集。プライベートショットも載っており、声優の貴重な日常を垣間見ることができます。
下野さんは声優業だけでなく、歌手・ラジオパーソナリティー・テレビ番組のレギュラー出演・俳優として映画『クロノス・ジョウンターの伝説』に出演するなど、幅広く活躍中。
声優としての経験や実力プラスαで、顔がいい・歌がうまい・トークスキルが高い……といった要素がある方は、声優業界のなかでもトップクラスの活躍ができる可能性があるということが分かる1冊です。
夢や目標だけをもって声優の世界にいきなり飛び込むのはかなり勇気のいることでしょう。
たくさんの人から求められる声優になるには、どんなことが求められているのかを知る必要がありますし、アニメと映画の制作現場では求められる技術や表現も違ってきます。
もちろん養成所やオーディションを通して実践的にその感覚を身に付けていくのも1つの手ですが、もっと詳細な現場からの声を知りたい人は、あらかじめ本を読んで知っておくのもよいかもしれません。
- 著者
- 平光 琢也
- 出版日
多くのアニメ作品で音響監督(アフレコ現場の責任者)を務めた平光琢也さんの著書。オーディションでは何を見られているのか?どんなボイスサンプルがよいのか?など、制作者の目線から声優に求められることが書かれています。
初めて声優業界について調べる人にも読みやすい書き方で、声優になりたい、今後オーディションを受ける予定があるという方は、読んでおくべき本といえる内容です。
簡単な言葉で書かれていますし、すでに声優として第一歩を歩んでいる人にとっては当たり前のことと感じるかもしれません。しかしその一つひとつの言葉に重みがあり、制作側から見た業界の厳しさを読み取ることができます。
大塚明夫さんの著書とあわせてぜひ読んでほしい1冊です。
今回は、声優になるための方法と声優で稼ぐためのラジオや舞台出演・歌手活動の必要性など、持ち味を活かす大切さもご紹介しました。
声優になることも、その中で生き残っていくこともまだまだ難しい世界ではありますが、自分の出演した作品が後世まで残る素晴らしいで職業でもあります。まだまだ声優の道を諦めたくない!という方は、紹介した本を読んでから、声優や制作の目線でアニメや映画の演技をもう一度見てみると何か発見があるかもしれません。