介護や福祉の仕事のなかでも、知る機会が非常に少ない職種である福祉用具専門相談員。初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。介護保険のサービスのひとつとして、福祉用具のレンタルサービスがあります。福祉用具専門相談員は、利用者が適切な用具を選べるように支援することが主な職務なのです。 福祉用具専門相談員とはどういった仕事なのか、資格の取り方や年収、就職事情などを詳しく紹介していきます。 また記事の最後にはおすすめの書籍もご紹介しています。この記事を読むことで福祉用具専門相談員という仕事について詳しく知っていただければ幸いです。
福祉用具専門相談員とは「利用者の心身の状況や生活環境に適した福祉用具について提案をおこなうことにより、利用者が適切な福祉用具を選定することを支援する」職業のことを言います。
介護保険のサービスのひとつに福祉用具サービスというのがあります。これは、介護保険の限度額や要介護度に合わせて自分の生活に必要な福祉用具を購入あるいはレンタルができるサービスのことを言い、福祉用具専門相談員は適切な福祉用具が選択できるように支援をしていくという役割があります。
福祉用具と聞いて思いうかべる方が多いのが車椅子や手すりではないでしょうか。そのほかにも福祉用具はさまざまなものがあります。
たとえば、車椅子や手すりなどと同じ移動手段として活用される福祉用具にはほかにも杖や、歩行器などがあります。
ほかにも排泄や入浴など用途に合わせた福祉用具が多数あります。
福祉用具専門相談員の仕事は大きく分けて4つあります。
選定相談では、利用者の心身の状態や使用環境などを調査し、一人ひとりにあった福祉用具を選ぶお手伝いをします。どうすれば安全、安楽に過ごすことができるのかを利用者の身体状況や生活から検討をしていく必要があります。
相談内容にもとづき、福祉用具の利用計画(福祉用具サービス計画)を立てます。
利用者のからだの状態や使用環境に合わせて、福祉用具の調整をおこなっていきます。また、福祉用具を安全で有効に使うことができるように、本人と家族に対して使い方の説明をおこないます。
福祉用具を使っている利用者宅を定期的に訪問します。その際には福祉用具の点検や使用状況の確認などをおこないます。
どの福祉用具を使えば利用者が安全に、安楽に過ごせるのかを考え、継続的に福祉用具を活用して要介護者をサポートしていくのが福祉用具専門相談員の仕事であるといえます。
福祉用具専門相談員の勤務先は福祉用具貸与事業所や特定福祉用具販売事業所です。福祉の資格ではありますが、福祉の施設で働かないということが特徴です。
また、介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所に2名以上の配置が義務付けられているため、就職先はに困るということは少ないでしょう。
また介護関連の法人以外でも、さまざまな業者が介護保険の指定を受けて福祉用具を扱っています。福祉用具専門相談員の活躍場所は広がっているといえます。
福祉用具専門相談員のお給料事情ですが、この資格だけで働くということは非常に難しく、この資格を取得したからといって確実に雇ってもらえる可能性は低いです。そのため、他の職種の方がこの資格を取ることでプラスで手当てを受け取るという考え方が一般的です。
福祉や医療の資格がなく、福祉用具専門相談員のみの資格で働かれている方の年収は280万円〜350万、月収にして19万円程度とされています。
もともと福祉用具の現場で働いてみたかった、現在医療や福祉の資格を所持していてキャリアアップやレベルアップを目的に資格を取得したいと考えている方にはおすすめしたい資格です。
福祉用具専門相談員の資格は都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」を受講しする必要があります。研修後は筆記による確認試験もあります。習ったことを確認するための試験ですのでしっかりと研修を受けていれば解ける問題ばかりとなっています。
カリキュラムは50時間で組まれていて、福祉用具に関する知識や介護保険制度などについて学んでいきます。
受講資格の制限は特にないので誰でも資格を取得することができます。ただし、研修機関によっては、指定講習に定められる到達目標に達することが困難な方の受講をお断りするケースもあるようです。
また、社会福祉士 や介護福祉士といった福祉系の資格、義肢装具士の資格を持っている方はこの研修を受けなくても福祉用具専門員としての業務が可能となります。これは保健師、看護師、准看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ職が該当します。
先述した通り、福祉用具専門相談員として働くには「福祉用具専門相談相談員」の資格を取得するか、福祉用具に関する知識を有している国家資格を取得している必要があります。無資格で福祉用具専門相談員として働くことはできないのです。
福祉用具専門相談員の求人のなかには未経験可で募集をかけている施設があります。「福祉用具専門相談員」の資格は講習を受け、確認試験に合格すれば取得することができます。つまり実技や実務経験などは資格取得時には不要なのです。
そのため資格をとったはいいけれど、福祉用具専門相談員としての経験はないという方もいるでしょう。そのような方は未経験可の転職先を探すのがおすすめです。
それでは、福祉用具専門相談員を目指す方、あるいは福祉用具専門相談員についてもっと知りたいという方におすすめの本をご紹介します。
福祉用具専門相談員の資格について知りたいという方や福祉用具専門相談員はどんな仕事をするのかについて知りたい方におすすめの1冊です。
- 著者
- 金沢善智
- 出版日
福祉用具を使用したことによって要介護者の生活が変わっていく姿を直接見ていた著者が、その時の経験や思いをまとめた内容になっています。
利用者が福祉用具を通じて食事が食べられた、立てた、歩けたという日常生活の変容に着目して福祉用具の重要さをまとめています。
その方一人ひとりに適した福祉用具を選ぶことがその方の生活を変えるということや、福祉用具専門相談員の仕事のやりがいを知ることができます。
イラストも豊富なので福祉用具を知らないという方も目で見て福祉用具を知ることができるのもポイントです。
福祉用具とは何か、福祉用具について知りたいという方におすすめしたいのがこちらの本。
- 著者
- 加島 守
- 出版日
理学療法士という立場から福祉用具に関わってきた著者が、福祉用具にはどのようなものがあり、どうやって活用するのかを詳しく紹介してくれている1冊です。
最初の部分は福祉用具専門相談員の資格を取得している方や実際に福祉用具専門相談員として働かれている方向けの内容もありますが、福祉用具選択に向けた流れも理解できるので、実際に働いたときにどのような流れで用具を選択するのかというところまでわかります。
実際に福祉用具専門相談員として働いてからも活用できる1冊です。
- 著者
- 社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団 なごや福祉用具プラザ
- 出版日
専門職者向けではなく自宅で介護をされている方が福祉用具を選ぶ時に活用してほしいという思いから作られた1冊です。福祉用具のレンタルを実際におこなっている事業団が作っているため、非常に分かりやすい内容になっています。
イラストが豊富であり、字も大きめに書かれています。表現も初心者向けなので介護の世界に身を置いたことのない方でもわかりやすいところが特徴です。
まずは福祉用具について知りたいという方や、資格取得を目指す方、資格取得後の方など幅広い方にお使いいただける1冊です。働いてからも活用できるので入門書として手元に置いておきたいと思える本です。
福祉用具専門相談員の資格は、福祉の資格でありながら施設に身を置かず、会社員として働ける資格でもあります。 記事の最後に紹介している書籍で福祉用具についての理解を深め、資格取得を目指してみてください。