色の持つ性質を理解し、あらゆるシーンで効果的な配色をする職業、カラーコーディネーター。色同士の関係や色の組み合わせによる効果などを知り、ビジネスシーンなどで活用することができます。カラーコーディネーターの資格を活かせる職業は多いため、みなさん兼業して安定した収入を得ています。好きなこと・得意なことを仕事にして報酬をもらえるという点で、やりがいも責任感も感じられる仕事です。 本記事では、カラーコーディネーターの仕事内容のほか、活躍する上で取得しておきたい「カラーコーディネーター検定」の基本情報を解説。また他の検定との違いや、試験勉強でチェックしておきたい書籍についても紹介します。
色の持つ特性を理解し、あらゆるシーンにおいて効果的な色の使い方を提案する職業が、カラーコーディネーターです。インテリアショップでアイテムの提案をしたり、アパレル店員としてお客様に似合うファッションコーディネートを提案したりと、日常のあらゆるシーンにおける最適な色の選定を手助けします。
カラーコーディネーターとして活躍するためには「カラーコーディネーター検定」という資格試験に合格するのがおすすめです。本記事では、カラーコーディネーター検定の基本情報を詳しく紹介するほか、カラーコーディネーターとして実際にどんな仕事があるのかについても解説していきます。
さらに、カラーコーディネーター資格取得のために読んでおきたい参考書や書籍も集めました。
カラーコーディネーターとして活躍するためには、大きく2つの就職パターンがあります。ひとつは、そのままカラーコーディネーターを専業とし、フリーランスなどで活躍すること。仕事を請け負い、顧客の望む色彩の提案を行います。
もうひとつは、カラーコーディネーターという資格を生かし、別の職業に就くこと。インテリアコーディネーターやアパレル店員などの職業では、仕事の一環としてカラーコーディネーターの知識が非常に役立ちます。
以上のことから、職業によってはカラーコーディネーターという資格が就職に有利になるといえるでしょう。もちろん、職業でカラーコーディネーターの資格が役に立たずとも、資格試験の勉強で得られた知識は自身の生活においても役立つことが多いため、持っておいて損はない資格です。
カラーコーディネーターを専業とした場合の平均年収は200万〜250万円です。専門職でありながら平均年収はやや低めの印象でしょうか。
というのも、カラーコーディネーターの仕事のみで活躍することは難しいからです。ですので多くの方は、インテリアコーディネーターの資格と相性のよい仕事も兼業しています。
相性がよいのはインテリアコーディネーター、アパレル関係、デザイナー、ウェブデザインなどの職業です。これらの仕事ではカラーコーディネーターとしての知識や資格を活かした働き方ができるでしょう。またその分、年収も安定します。
色彩に関する資格はさまざまありますが、なかでも「カラーコーディネーター検定」はビジネスシーンに役立つ実践的な色彩の知識を取得できる検定として人気があります。商品のパッケージデザイン、建築の内外装デザイン、広告・WEBデザインなどでその知識を生かすことができます。
特にデザイナーやコーディネーターの職業を目指す人にとっては持っておいて損のない資格といえるでしょう。
資格級は1級〜3級まででしたが、2020年の試験から「スタンダードクラス」「アドバンスクラス」の2階級となりました。
スタンダードクラスでは色彩に関する基礎的な知識について理解しているかどうかが問われ、アドバンスクラスではスタンダードクラスの知識に加え、ビジネスにおける色彩の活用事例など幅広い応用実例の理解が問われます。
カラーコーディネーター資格検定試験の難易度は「やや易しい」とされています。近年の合格率は以下のようになっています。
3級は易しめ、2級・1級はやや難しめといえそうです。2020年から資格級が変更となるため、スタンダードクラスは3〜2級程度、アドバンスクラスは1級程度の実力が求められると考えられます。
3級は70%近くの合格率があるため、カラーコーディネーター検定は比較的取得しやすい資格として知られています。学生から社会人、主婦など、幅広い人々が受験しています。
カラーコーディネーター検定は、毎年6月と11月の2回試験がおこなわれます。申し込み期間はいずれも試験日の約2カ月前から1カ月間で、公式サイトもしくは電話にて受験の申し込みをおこないます。その後届いた申込票で受験料を支払い、受験票が届いたら申し込み完了となります。
試験会場は全国に設けられているため、アクセスしやすい場所を申し込みのタイミングで選びましょう。
受験料はアドバンスクラスが7700円、スタンダードクラスが5500円です。スタンダードクラス、アドバンスクラスは同日の異なる時間に試験がおこなわれるため、併願受験もできます。
カラーコーディネーター検定の試験勉強をすることで、「色彩の持つ特性や性質の知識」を身に付けられます。実際にどんなことを勉強するのでしょうか。基本的な色彩知識を2つ紹介します。
色彩の関係性を学ぶ上でもっともよく使われるのが、「色相環」と呼ばれるものです。赤色→黄色→緑色→青色→紫色の順番に円形に色を配置した色相環を使い、色同士の関係性を学んでいきます。
たとえば、基本の5色相(赤・黄・緑・青・紫)に加え、それぞれの中間色相(黄赤・黄緑・青緑・青紫・赤紫)を足した色相環を「マンセル色相環」と呼びます。合計20色相で表現されることが一般的で、向かい合う色同士を混ぜると灰色になるように各色を配置しています。国際的に通用する基本的な色相環で、アメリカの画家・マンセルが発案したことからこの名が付けられました。
同じく色相環の一つ、「PCCS色相環」は合計24色で作られます。心理的な色彩の性質に基づき設計された色相環で、心理四原色(赤・黄・緑・青)を主要としています。心理四原色の向かい側には、一定時間、ある色を見続けた後に白いものに目を移すと見えてくる「残像」として見える色が配置されています。
色相環で向かい合う色同士を「補色」、向かい合う色とその近辺色をまとめて「反対色」と呼びます。互いにちょうど反対側に位置する色彩のため、隣合わせで補色や反対色を使うと目がチカチカしてしまうといったデメリットが生じます。ですが、補色・反対色は互いの色味を際立たせてくれる色同士でもあるため、広告デザインなどで用いることで、消費者の目を引きつけるといったメリットも生まれます。
このように、カラーコーディネーター検定の資格試験を通して、色彩同士の関係を知識として得ることができます。資格を取得することで、ビジネスシーンだけでなく、日常のあらゆるシーンにおいて色を効果的に使えるようになると期待できます。
色に関する検定や資格は、カラーコーディネーター以外にもさまざまあります。それぞれカラーコーディネーターとはどのような違いがあるのでしょうか。
公益社団法人色彩検定協会が主催する検定で、色彩の基本的な知識が学べるのが「色彩検定」です。カラーコーディネーター検定よりも基礎的な内容を中心とした試験で、カラーコーディネーター検定よりも難易度は低めといわれています。
もともとは「ファッションカラーコーディネーター検定試験」と呼ばれていたこともあり、ファッション分野に特化した色彩の基礎知識を学ぶことができます。ファッション業界に就職したいという人におすすめの色に関する資格検定です。
「ADEC色彩士検定」は、全国美術デザイン教育振興会が主催する検定です。ADEC(アデック)とも呼ばれています。
色彩に関する知識・技能を問う検定という点ではカラーコーディネーター検定と変わりませんが、合格することで「色彩士」に認定され、就職などに有利となります。
カラーコーディネーター検定との一番の違いは、1級の試験では実技のスキルも問われるという点。1級を取得するためには大学院で2年以上の教育を受けたレベルの知識が必要といわれており、合格率はカラーコーディネーター検定1級よりも低いとされています。
1〜3級までの資格級があり、色彩士検定1級は2級に合格していないと受験することはできません。
カラーコーディネーター検定と同じく「ビジネスシーンに強い色彩の資格」として、「カラーデザイン検定」があげられます。
最大の違いは、カラーデザイン検定では色彩の知識だけでなく、マーケティングの基礎知識や、プレゼンテーション手法の知識といったビジネススキルも問われるという点です。
1〜3級までの資格級があり、3級・2級はインターネット試験となります。1級はマークシート・記述試験と、実技試験が設けられています。
NPO日本パーソナルカラー協会が主催する「色彩技能 パーソナルカラー検定®️」。人それぞれに似合う色「パーソナルカラー」を診断できる資格を得られる検定です。
カラーコーディネーターと異なる点は、パーソナルカラーは「人に似合う色彩」に注目しているところにあります。アパレル店員として消費者それぞれに似合う色を提案したい、パーソナルカラリストとして活躍したいといった人におすすめの資格検定です。
カラーコーディネーターの資格を取得することで、専門的な職業のキャリアアップやスキルアップを図ることができます。
特にカラーコーディネーターの資格が役立つ職業として、「インテリアデザイナー・コーディネーター」「広告・WEBデザイナー」「ファッションデザイナー・アパレル店員」があげられます。
商業施設や一般家庭の内外装をコーディネートする職業である「インテリアデザイナー・コーディネーター」は、カラーコーディネーターの知識を持っていると有利です。
カラーコーディネーターの資格を持っていると、外装の壁、屋根、門、アプローチの石畳、内装の家具、カーテン、クッションなど、色彩についてトータルでアドバイスすることができます。顧客の望むイメージの住まい・施設が出来上がるよう、「色」という観点も踏まえたコーディネートが可能となります。
デザイナーは、色と非常に関係深い職業でもあります。街にあふれる広告やWEBサイト、ほかパッケージデザインなどは、すべてデザイナーが手がけているもの。そこに用いられている全ての色彩の決定において、カラーコーディネーターの資格が役立ちます。
消費者の性別・年齢・ニーズ、商品のイメージなど、あらゆる要素から最適な色彩を選定し、デザインを施すことができます。
色の持つ性質を理解しているカラーコーディネーターは、ファッション業界でも有利とされています。
ファッションコーディネートを顧客や消費者に提案する上で、色彩の知識は欠かせません。色が与えるイメージや、色同士の関係性を踏まえ、シーンや相手にあった最適なファッションアイテムのカラーを提案することができます。
カラーコーディネーター検定を主催する東京商工会議所が手がけている公式テキストです。
2020年より資格級が「スタンダードクラス」「アドバンスクラス」に変更されたことで、公式テキストも全面リニューアルしています。購入の際は、2019年以前のテキストと間違えないように注意しましょう。
- 著者
- 東京商工会議所
- 出版日
公式テキストはスタンダードクラスとアドバンスクラスそれぞれで用意されており、いずれも図や写真を用いてわかりやすく解説されています。
スタンダードクラスのテキストでは、チャプター1〜6を設け、色相環を用いた色の分類や配色の基礎知識、消費者に対して効果的な色使いのポイントなどを学ぶことができます。
対してアドバンスクラスのテキストは、チャプター1〜16までとボリューミーな内容。スタンダードクラスのテキストが約200ページであるのに対し、こちらは約400ページと倍以上のボリュームになっています。
アドバンスクラスのテキストではカラーコーディネーターの実務について、ファッションやメイク、インテリアにおける色彩設計など、より実務的な内容の知識を身につけることができます。
カラーコーディネーターの桜井輝子氏が手がけたこちらの参考書は、公式テキストでは難しいという方におすすめの教本として人気です。
- 著者
- 輝子, 桜井
- 出版日
要点を分かりやすくまとめているため、必要な知識を漏れなく学ぶことができます。各章に確認問題が設けられているほか、巻末には模擬試験2回分が用意されているため、試験対策に有効です。暗記用の別冊本と赤シートも付録として付いているため、用語を覚えるのにも効果的。
ただし、2020年以降のスタンダードクラス・アドバンスクラスに対応したテキストではないため、公式テキストのおともとして、分かりにくい部分を補足してくれるサブテキストとして持っておくことをおすすめします。
カラーコーディネーターにとって欠かせない色彩の基礎知識を解説した入門書。多くの大学や専門学校の色彩テキストとして採用されており、色彩について知識がゼロの状態から学びたい!という人に手に取ってほしい教本です。
- 著者
- ["大井義雄", "川崎秀昭"]
- 出版日
全12の章では、「色とは」といった基本的な色の概念についての解説から始まり、「色彩調和」「色彩計画」といった配色のコツといった実務的なポイントまで細かく解説しています。図を用いていますが、教科書のような構成になっており、繰り返し読むことで知識が身につくテキストです。
2007年に改訂されているものの、初版から20年以上が経過しているため、検定の対策テキストとしては内容が不十分な部分も。まずは色についてしっかり理解を深めたいという人にとって最適な教本です。
カラーコーディネーターが実務をしていく上で欠かせない実務として「配色」があげられます。こちらは、シーンやニーズに合わせた最適な色を組み合わせるというスキルを磨くために、ぜひ手に取っておきたい図版です。
- 著者
- ["色彩文化研究会", "城 一夫"]
- 出版日
取り上げているのは、アリストテレス、ニュートンといった哲学者から、モネ、ゴッホといったアーティストまで、歴史に名を残した偉大な人物たちが考える「色彩の使い方」についてです。
本書では、彼らが理論的に考え導き出した「美しい配色」を、図を用いながら解説しています。
歴史上の人物たちが理論的に発見した美しい配色が、どのように展開されどのように現代に用いられているのかが詳しく解説されており、色彩を歴史的な観点から紐解くことができます。
「日本の伝統色」と呼ばれる美しい色たちが、いつどのように誕生し使われてきたかを紹介している書籍です。
- 著者
- 城 一夫
- 出版日
日本ならではの美しい色彩たちの歴史を辿っていく本書は、写真や図などが豊富に掲載されており、図版のように読むことができます。奈良・飛鳥時代など、各時代で流行していた配色の例をあげながら、その特徴について詳しく紹介されています。
平安時代の十二単で用いられた配色や、その意味など、日本で古くから愛されてきた色彩たちの特徴を学べます。
色名にはそれぞれCMYK値、RGB値、Webカラー値、マンセル値の4つの色情報が掲載されているため、カラーコーディネーターの実務などで配色を再現することも可能です。
私たちの日常生活において、色彩はきってもきれない関係です。カラーコーディネーターはその色彩を理論的に理解し、シーンやニーズに合わせた最適な組み合わせを提案できる、私たちの日常に欠かせない存在でもあります。デザイナーやコーディネーターとして活躍したい人はもちろん、色彩に興味がある人は、ぜひカラーコーディネーターの検定試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。