なんとなく聞いたことあるけど、詳しくは知らない「危険物取扱者」の仕事。専門性の高い国家資格ですが、最も身近なところでいえばガソリンスタンドで働く方は、危険物取扱者の丙種の資格を保有しています。本記事では具体的な仕事内容や、活躍できる就職・転職先、年収事情などを丁寧に解説。また国家資格の受験資格や試験内容などもご紹介します。 記事の最後には、危険物取扱者の仕事や資格取得に興味を持っている方に役立つ本3冊の紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
危険物取扱者とは、「危険物」に関する取り扱いや定期点検、保安の監督をする技術者のことです。消防法では、火災の危険性の高い物質の総称を「危険物」と定義し、一定数量以上の危険物を貯蔵もしくは取り扱う施設では必須の資格になっています。
主に、化学メーカーや石油メーカーの研究所・工場・コンビナートで扱われる化学品や引火性液体を指します。引火性液体は、身近なところだとガソリンスタンドやタンクローリーで目にすることができます。
危険物取扱者は、1948年に交付された「消防法」に基づき定められた国家資格です。「危険物」の取り扱いや保安、管理に必要な専門的な知識とスキルを有していることを証明しています。
化学品や引火性液体などの火災の危険性が高い物質は火災の恐れだけではなく、人体にも多大なる影響を及ぼす可能性があるため、我々が安全・安心に過ごせるように「危険物」を管理する重要な仕事だといえるでしょう。
危険物取扱者の資格は大きく3つの種類に分類され、危険物は6つに分類されています。保有資格の種類によって扱える危険物と権限が異なるので注意が必要です。「甲種(こうしゅ)」「乙種(おつしゅ)」「丙種(へいしゅ)」の順に上位資格になり、「甲種」は定められた全ての危険物の扱いと立会いが可能で、「丙種」は受験類を選ぶ必要があります。
毎年約40万人近くが受験する危険物取扱者の中で、最も人気で有名な資格が「乙種第4類」であり、通称乙4(おつよん)呼ばれています。例年、資格受験者の66%以上が乙4を受験しています。
「乙種第4類」危険物は、危険物全体の約80%を占めると言われており、ガソリン・軽油・灯油など身近な危険物を取り扱うことができるため、活躍の場が多いことが大きな理由です。
危険物取扱者試験は、「消防試験研究センター」が全都道府県で実施しており、都道府県ごとに開催日程や回数が異なっています。
例年約40万人近くが受験する人気資格で、前期と後期で分かれて試験日程が設定されているため、最も開催が少ない県でも半年に1回以上は受けることができます。受験地の制限はないため居住地以外の都道府県で受験することも可能です。
「乙種第4類」が最も受験者が多いため、「乙種第4類」のみ受験可能や「乙種第4類」のみ受けれない日程もあるものの、基本的には全種類・全資格が同じ試験日で同時におこなわれています。最も開催日が多い東京都では、「乙種第4類」の試験日程が1〜2週間おきに設定されており、資格取得のチャンスは他の国家資格に比べて多いといえるでしょう。また、同一試験日に複数類の同時受験も可能であり、県ごとに同時に受けることができる数が決まっているため、各センターに問合せする必要があります。
危険物取扱者試験の受験資格は、「甲種」のみ条件が定められています。「乙種」「丙種」は受験資格が設けられておらず、学生や業界未経験者など年齢や学歴、経験を問わず誰でも受験が可能です。「甲種」の受験資格は、下記いずれかに該当する者に限定されています。
(注1)大学など:大学、短期大学、高等専門学校、専修学校、高等学校の専攻科、中等教育学校の専攻科、防衛大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学などを含む
試験は、全種類ともにマークシート形式の筆記試験で「甲種」「乙種」は五肢択一式、「丙種」は四肢択一式です。資格の種類によって筆記試験の出題範囲が異なり、実技試験は設けられていません。
合格基準は、各試験科目の正答率が60%以上の方と定められています。試験全体の合格率は例年45%前後を推移しており、「甲種」と「乙種第4類」が40%未満、他の種類は50%〜68%になっています。「甲種」と「乙種第4類」が特に難易度が高く、対策をしっかり取る必要があるといえるでしょう。
また、「乙種」「丙種」試験において、試験科目の一部免除の対象となる方もいます。一部免除受験者は、免除された科目に応じて試験時間が短く設定され、願書提出の際に所定の書類の写しを提出することが求められています。
試験科目の一部免除の対象者は、下記のページより確認してみてくださいね。
参考:消防試験研究センター
危険物取扱者の活躍の場は、下記のように多岐に渡ります。業務を遂行する上で必要な資格になるため、就職や転職において有利な資格といえるでしょう。
危険物取扱者は取得している資格の種類で収入が変わります。丙種のみ、乙種のみ、乙種を複数取得、甲種で年収が高くなります。甲種は最も取得者数が少ないですが、その分仕事の幅が広くなるため、年収をあげたい方は甲種の取得を目指すとよいでしょう。
大手求人サイトなどをみても分かりますが、危険物取扱者の資格取得者の平均年収は500万円ほどで設定されています。資格取得だけでなく経験も重視する仕事なので、まずはガソリンスタンドなどから働いてみてもよいかもしれません。
また6カ月以上の実務経験があれば保安監督の職務に就くことも可能です。その際は昇給や資格手当の増額などがあり、収入はアップする可能性があります。
- 著者
- 株式会社ウェルネット
- 出版日
マンガとイラストで楽しく勉強したい方におすすめの1冊です。電子書籍として購入するこができるので、移動中や外出先でもスマホやパソコンで学習することが可能です。
最新の試験傾向に対応した内容と試験の出題傾向を押さえた模擬試験(2回分)によりテスト対策を万全におこなうことができます。また、項目ごとに理解度の確認ができるチェックテストも付いており、勉強の進捗具合を確認しつつ、効果的な勉強ができます。
- 著者
- 本山健次郎
- 出版日
効率よく最小限の努力で合格点を取りたい人におすすめの本です。長崎県の工業高校で長年に渡り危険物乙4の受験指導をしてきた著者が記した「これだけ覚えておけば合格ラインは突破できる」虎の巻をまとめています。
10日間の勉強で合格できるよう10日ごとのパートに分かれた構成になっているので、勉強の計画を立てやすいのも本書の特徴です。「解説ページ」で出題ポイントと専門用語を理解し、「丸暗記ノート」と「過去問題」を活用する流れになっています。とても効率よく学ぶことができます。
- 著者
- ["公論出版", "公論出版"]
- 出版日
2012年~2019年の過去問題が476問収録されており、「テキスト」「過去問」「解説」が1冊になった本書は、問題の網羅性の高さが特徴です。過去問題を解く上で覚えるべき内容を「テキスト」にまとめ、「過去問題」を解いた後の「解説」で補足をしています。
項目ごとにまとめられているため、頭の中で整理がしやすく覚えやすい構成になっています。出題傾向が高い問題も分かるため、優先順位をつけて学ぶこともできます。
いかがだったでしょうか。危険物取扱者は、社会的意義が高く、やりがいが大きい仕事だということが伝わっていれば嬉しく思います。専門性が高い国家資格のため、取得後は社会的信頼が高く、活躍の場は多数。収入面も悪くなく、上級資格は取得者が少ないためさらなる収入アップが期待できます。
記事の最後にご紹介した書籍は、危険物取扱者への理解を深めるためにもぜひ読んでみていただきたいものばかりです。資格取得を目指す方向きの書籍を選書しましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。