幼児教育は、学力のほか、創造性や社会性、心の豊かさなど生きる上で大切なことを教える教育のことです。幼児教育の祖・フレーベルの言葉を借りれば「人間教育」であるともいえます。しかし、子どもが好き、子どもや教育についてもっと学びたいと考えているけれど、どう学んでいけばいいの?と考えている人は多いでしょう。今回は、幼児教育の魅力をはじめ、与える効果やその大切さについて解説します。これから幼児教育を学ぶ方にもおすすめできる「厳選、幼児教育のおすすめ本3選」も紹介しますのでぜひ最後までご覧ください。
幼児教育とは、満1歳から就学前の子どもにおこなわれる教育のことです。文部科学省のホームページでは意義について下記のように記載しています。
幼児教育とは、幼児に対する教育を意味し、幼児が生活するすべての場において行われる教育を総称したものである。具体的には、幼稚園における教育、保育所等における教育、家庭における教育、地域社会における教育を含み得る、広がりをもった概念として捉えられる。
つまり、社会生活を送るにあたって必要な学力はもちろん、コミュニケーション力、思考力や判断力など、生涯にわたる人間形成の基礎をつちかうことが幼児教育であるといえます。そのために家庭、幼稚園、地域社会と三者で連携し、それぞれの場所が有する教育機能を互いに発揮することが重要と考えられています。
進学や受験などを見据え、一般より早い年齢で知識を取得する早期教育とはまったく違う教育内容であることが分かりますね。
参照:文部科学省
幼稚園の歴史は大変古く、世界で初めての幼稚園「幼児教育指導者講習科」は1839年6月1日に設立されました。この幼稚園の創設者が「幼児教育の祖」ともいわれるドイツ人の教育家、フリードリヒ・フレーベルです。(以下フレーベル)この教育所は、1840年の6月28日に「幼稚園」と改名されました。
フレーベルは子どもの発達には「遊び」が大切であると言っています。そのため、学習だけを強いても子どもの能力は伸びません。遊びを通しながら子供は成長していきます。幼稚園や保育所に遊具が多いのも「遊び」による発達を重要視しているからです。
またフレーベルは、幼児教育のみならず教育全般におよぶ人間教育であることを重視していました。幼児の創造力を鍛えることから始まり、幼児の母親への教育にも必要性を見出していたのです。人間教育におけるフレーベルの思想は、下記に引用するフレーベルの詩からも読み取ることができます。
わたしは次のような人間をつくりたい。自らの足は神の地なる自然の中に根を下ろし、その頭は天にとどき直感もて天を読み、その心は地と天との両方を、つまり地なる自然の形象豊かな生命と、天の明澄や平和とを、 神の地と神の天とを一つにする、そういう人間である『フレーベル教育学への旅』
単に幼児教育といっても、学力面だけでなく人間力も鍛えるために必要な人間教育であることが分かりましたね。
しかし幼児教育について学んでみたいと思っていても、どう役立つのかわからないと勉強するにも不安は残るはず。ここでは幼児教育を学ぶことによってどう役立つのか、2つの例をご紹介していきます。
幼児教育を学ぶことによって「子どもの気持ちになって考える」という力がつきます。あなたも、今まで親に強制されて嫌々やっていたということはありませんか? 嫌々やっていては子どもの能力は育ちません。子どもを1人の人間として尊重し、楽しさを交えながら関わることで成長につなげていけるのです。
十分な幼児教育を受けた子どもは、自信を持ち何事にも果敢に取り組むようになります。すると幼児教育が不足していたり、受けていなかったりする子と比較してIQや将来的な学歴、年収にまで差が出ます。
幼児教育について学ぶことは子育てや就職に大変役立ちます。
◾️子育て
正しい子どもとの関わりを知っていることで子どもが非行に走る可能性が減少します。また、子育ては予測不能な事態が日常茶飯事なのでその対応にも余裕を持つことが出来ます。
◾️就職
子どもに関する企業や施設に就く際非常に役に立ちます。子どもは一人ひとり個性があり、飽きずにいろいろな応用が効くことが幼児教育に携わることの魅力です。
幼児教育について学べる所は子ども関係の大学・短大・専門学校・通信講座などさまざまです。以下、取得できる資格について紹介します。
保育士の資格は、国家資格に合格するか、保育士養成課程のある大学や短大、専門学校を卒業する必要があります。
保育士の国家資格は、勉強次第では高卒や他学部の学生、仕事をしている人でも取得することが出来ます。独学でも取得は可能ですが、通信講座などで勉強したほうが勉強すべきポイントがまとまっているのでおすすめです。
幼稚園教諭や保育士の他にも、子どもに関する資格はたくさんあります。
筆者も取得しましたが、たとえば日本能力開発推進協会の「チャイルドカウンセラー」や「家族療法カウンセラー」などがあります。どちらも通信講座で学ぶことができるので、仕事をしている人でも挑戦しやすいでしょう。
幼児教育は家庭でもおこなう必要のあることですから、幼児教育初心者の方にも、もっと子どもに対する理解を深めたいという方にも資格取得はおすすめです。
まずは幼児教育について簡単に知りたいと思った方におすすめなのが、小笠原道雄氏が著作した『人と思想 164 フレーベル』という作品です。
幼児教育の祖・フレーベルから幼児教育の歴史や想いを通して、まずは幼児教育の意義や目的を学んでいきましょう。
- 著者
- 小笠原 道雄
- 出版日
フレーベルは教育の道に辿り着くまでかなりの時間を要しました。世界で初めての幼稚園を設立した時、フレーベルはすでに58歳になっていたのです。幼児教育の道を歩み始めるまでの歴史を本書で辿ることで、フレーベルの教育思想の全体像が把握できるはずです。
また、今日の教育課題である「母親=子ども」の教育的関係についても詳しく記載されています。
これから幼児教育を学び始めようと考えている人も、すでに幼児教育の現場に関わっていて、一から教育について考え直したいという人にもおすすめの1冊です。
子どもによりよい人生を歩んでもらいたい、きっとそう思う方が多いのではないでしょうか。
そんなあなたにおすすめなのがポール・タフ氏が著作した『成功する子 失敗する子ーー「何がその後の人生」を決めるのか』という作品です。
- 著者
- ["ポール タフ\"", "\"Paul Tough", "高山 真由美"]
- 出版日
成功する子どもになるために、大人は子どもとどう関わっていくべきなのか、教育は子どもにとってどのような影響を及ぼすのか、そんな興味深い内容が集約されている本です。
実際にアメリカでおこなわれた事例研究とその結果をもとに書かれているため、幼児教育の必要性への説得力があります。内容が非常に深いのも特徴です。
受験を見据えた早期教育も大事だけれど、長期的に考えれば、生涯にわたる人間の基礎力をつちかう幼児教育の方が大切だと私たちは知っている。けれどどうしても十分な愛情を注ぐことができず、日々のコミュニケーションを疎かにしてしまっている。
正しく豊かな幼児教育によって子どもの未来がどう変わるのか。幼児教育が与える影響についてしっかり勉強してから臨みたい人におすすめです。
結局、幼児教育をするかしないかで子どもの学歴や年収には差がでるの?
そう考えたことのある人必見の1冊が ジェームズ・J・ヘックマン氏が著作した『幼児教育の経済学』という本です。
- 著者
- ジェームズ・J・ヘックマン
- 出版日
- 2015-06-19
幼児教育をなんてしなくても中学生や高校生でしたらいいや……と思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、幼児教育をしないとその後の高等教育の効果が十分に発揮されないと言われています。するとそこで子どもの将来での成功に差が出てきます。
この本はそんな教育格差をなくすことを目指し、幼少期からの教育を大切としたノーベル賞経済学者が40年以上かけて調査した内容になっています。
脳科学と幼児教育の意外な関係性とは?この本を読めば、幼児教育がいかに大切か気づくことができるでしょう。
今回は幼児教育について知ってみたいという方向けに、幼児教育の歴史や、学べる場所などを紹介しました。幼児教育の最大の魅力は、自分の力で子どもの可能性を広げられることや、人と人との関わりを大切にするのでAIにはできない仕事であることです。今回、幼児教育に興味を持っていただけた方はぜひ本を読んだり、幼児教育の勉強に挑戦してみてくださいね。