なんだか難しい言葉ばかりで近寄りがたいと思われてしまう社会学。しかし社会学は誰にでも関係のある興味深い学問で、分野も多岐にわたるため興味をもって研究できる人は多いはず。今回は「そもそも社会学ってなに?」と思っている方向けに、社会学という学問の定義や、日常生活への関わりまで分かりやすく解説します。また、社会学をとりあえず学んでみたい方から、もっと深く知りたい方までおすすめの本を紹介しているのでぜひ最後までご覧ください。
社会学とは簡単にいえば「社会を研究する」ことです。個人と社会のかかわりをすべて対象とし、それに関連するさまざまな社会事象について考える学問です。
目に見えない社会という存在に疑問の目を向け「なぜ社会と呼ぶのか」や「社会を構成するものは何か」、「なぜわたしたちは見えない社会に縛られるのか」など、社会に対する根源的な疑問が社会学を学ぶうえでの出発点になります。
さらに一言で社会といってもさまざまな規模のものがあります。家族や友人との数人で作られる社会もあれば、特定の地域に属する人たちで作られた地域社会、さらにはデジタルツールを利用したソーシャルネットワーク上の社会も発達しています。
こうして人々が作り上げた社会がどんな特徴を持ち、個人にどんな影響を与えているのか。ミクロな視点からマクロな視点まで、社会を見る範囲を変えながら研究する学問が社会学です。
社会学は細かく分けると国際社会学、家族社会学、スポーツ社会学など、さまざまな分野から成り立っています。そのため、非常に広く深く研究することのできる学問といえるでしょう。ここで、社会学の例として3つほどご紹介します。
まだ比較的若い分野である国際社会学は、国際関係や民族関係を社会学的観点から分析していく分野です。
たとえば難民や少数民族、黒人差別、また市民を巻き込んだテロや戦闘なども対象となります。こうした世界の現状を分析し、問題に対してどんな国際的な働きかけをして解決に導いていくか考えることが目的です。
「世界中の社会課題を多角的に分析する力を付け、国際的に活躍したい!」と思っている方にはおすすめの学問です。
家族社会学では、集団としての家族の機能や形態を分析していきます。2020年現在では核家族や夫婦の関係性、また高齢化による介護問題などについて研究することが多く、かなり身近に考えられる分野といえるでしょう。
「日本の抱える問題の原因を考え、問題解決をしてよりよい家族関係を構築したい!」と思っている方におすすめの学問です。
スポーツ社会学では、スポーツを通して人と人との変わりを分析していきます。意外にもスポーツ社会学が扱う問題は多岐にわたり、教育的、文化的などにもさまざまな関わりを持っています。国内外のスポーツに関する事象も取り扱うため、グローバルな視点からスポーツを論じる力も身につけることができるのです。
「スポーツを通してひとの生活をより豊かにしたい!」と思っている方におすすめの学問です。
社会学に関する分野は数えきれないほど多く、一説によると社会学者の数だけ社会学の分野があるほどなのだとか。その分野の多さから、誰にでも関係があり、そして誰にでも開かれた学問であるということがうかがえますね。
しかし、社会学を学ぶには独学では少し難しい面があります。社会学の研究にはフィールドワークも関わってきますし、統計解析などの知識が必要な場面もあり、想定以上に時間と労力がかかります。その点、大学の社会学部や社会学科に入学したり、社会人であれば通信制大学に通えば授業として研究の経験ができるので、おすすめといえるでしょう。
社会学は実例をもとに内側から実証的に調べていくこと主な手法として用います。より社会学への理解を深めるため、社会学が深く関わっている実例をいくつかご紹介します。
パラサイトシングルは日本の人口の1割を占めていると言われている社会問題で、未婚で、なおかつ高齢な親と同居し、生活を頼っている状態の人ことを指します。
パラサイトシングルが増えた原因の1つとして就職に関する社会背景が考えられます。35歳〜40歳のパラサイトシングルは就職氷河期により新卒入社ができず、中途採用もなかなか難しい。そうした不景気による不利益を被った世代からパラサイトシングルになる人が生まれているのです。
さらにパラサイトシングルにはさまざまな問題点があります。たとえば、高齢な親に生活を頼っていたら親の死後生活が困窮し、生活保護を受ける可能性が高いことです。また親の年金をもらい続けるために親の死を隠蔽したり、わざと罪を犯して生きるために刑務所に入るなどの事例も頻発すると考えられています。
アメリカで開発され、日本での利用者も多い婚活サービスは、2019年には5人に1人が利用しているといったデータが発表されています。実は1995年にはサービスがリリースされているマッチングアプリは、なぜ年々、利用者が増加しているのでしょうか。こうした問題も社会学からアプローチしていくことができます。
理由①:「婚活」や「マッチングアプリ」が一般化した
時代により人々の恋愛の仕方は常に変わっています。SNSが普及したため、誰でも簡単に情報が得られるようになりました。2020年6月現在では、自宅にいながらオンラインデートをするというサービスもあるようですね。今後はオンラインも婚活の一部となるのでしょうか。
理由②:出会いの減少
出会いの減少については、女性の社会進出や草食系男子の増加、また結婚する時間的・金銭的余裕がないことが理由として考えられています。
その点、婚活サービスは出会うことを目的としているので交際や結婚に至りやすく、婚活サイトやマッチングアプリを利用する人が増えているのかもしれませんね。
- 著者
- 古市 憲寿
- 出版日
- 2016-10-18
社会学について簡単に学んでみたいな、と思われた方におすすめなのがこちら。
メディアでも多く出演している古市憲寿氏の『古市くん、社会学を学び直しなさい!(光文社新書))』です。
「社会学って、何ですか?」といったそもそもの疑問を社会学者12名が熱く語る対話形式の1冊で、それぞれの視点から社会学のよさを伝えてくれます。
この本ではなかなか理解の難しい社会学の役割や重要性が明確になるため、社会学を深く知るというよりは、12人の専門家の意見を通して社会学の全体像を知りたいという方におすすめの本です。
- 著者
- 山田 昌弘
- 出版日
- 2010-06-11
社会学が日常生活に深くかかわっている事例として挙げた婚活についてもっと深く関連性を知りたいと思った方には『「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま』がおすすめです。この本の著者である山田昌弘氏は、パラサイトシングルを提言し、格差社会という言葉を世の中に広めた家族社会学の専門家です。
実際におこなわれている婚活の内容を踏まえ、婚活に対する「誤解」とそれを改善する考え方について詳しく言及されています。
また、婚活というテーマから今日の日本で社会課題ともなっている少子高齢化や労働問題などについての見解も載っているので、社会学における多角的視点を読みながら学べるでしょう。
日本の社会課題と社会学の関わりを学びたいという方におすすめの1冊です。
- 著者
- ["ミルズ", "Mills,Charles Wright", "広, 鈴木"]
- 出版日
社会学を学ぶ意味や起きる社会現象についてどう解決していけばいいのか、そのことについて考えるには「日常生活と社会学のかかわり」を関連付けて考えなければいけません。この考えることを『社会学的想像力』といいます。
そして、その社会学的想像力について言及した本が『社会学的想像力』です。アメリカの大学で最も多く使用されている、アメリカの社会学者であるミルズ・C・ライトの著作です。
彼は、最近の専門家は理論や調査を重視しすぎており、社会学的想像力という知性が社会学の一番の魅力であるはずなのに、そのことを忘れているのではないかという考えを示し、また、社会学的想像力を高めることの良さについて詳しく言及しています。
古くから親しまれている書籍となるので、社会学についてもっと詳しく知りたい方はぜひ手に取ってみてください。
社会学は私たちのすべての生活に関係しており、さまざまな分野から成り立つ非常に広くて深い学問であるが魅力的ですよね。あなたも、普段の生活を「社会学的」視点から感じてみませんか。社会学的視点をもつことで普段は気付かなかった日常生活と社会学のかかわりを感じることができます。
初めて社会学を学ぶという方やもっと社会学について知りたいと感じた方にも、上記3冊はおすすめの本となっているのでぜひ手に取ってみてくださいね。