『幸せになる勇気』は、大ヒット作『嫌われる勇気』の続編。「本当に幸せになるためのヒント」がたくさん詰まった内容です。本記事では、『幸せになる勇気』の内容まとめと要約を中心に、前作の『嫌われる勇気』や名言についても紹介していきます。結婚に役立つと話題の秘密についても踏み込んでいくので、ぜひ参考にしてみてください。 前作を読んだことのある人は、本当の意味でアドラー心理学を知るきっかけになるでしょう。読んだことのない人は、前作とともに『幸せになる勇気』を手に取りたいと思うはずです。
『幸せになる勇気』は、自己啓発書のベストセラー『嫌われる勇気』の続編として2016年に発売されました。作者の岸見一郎氏は、本書のあとがきやインタビューで「『嫌われる勇気』が地図なら、『幸せになる勇気』はコンパスである」と語っています。
『嫌われる勇気』は、アドラー心理学を知り、その思想のもととなる重要な真理を学べる本でした。それに対して『幸せになる勇気』は、アドラーの思想をより深く知って実践することで、幸せな人生を歩んでいくためのヒントを示した本となっています。
大きな特徴として、この本ではアドラーの語る「愛」や「自立」について深く踏み込んでいるという点があげられます。アドラーが提唱する幸福論が、この2つのキーワードをもって示されているのです。
『嫌われる勇気』と同様に、『幸せになる勇気』も、2人の人物の対話を追いかけていくという形式の内容になっています。登場人物も同じく、前回登場したアドラー心理学を修得している哲人と、悩みを抱える青年の2人。前回から3年の月日が経ち、 アドラーの思想に感化された青年は教師になっています。
- 著者
- ["岸見 一郎", "古賀 史健"]
- 出版日
- 2016-02-26
『嫌われる勇気』でアドラーの思想を知り、新しい道を歩むと決意した青年。その彼がおよそ3年ぶりに哲人のもとを訪れ、まさかの告白をするところから物語は始まります。それは「アドラーを捨てるべきか否か」という苦悩でした。
「アドラー心理学は、自分のいる教育現場はおろか現実社会でも通用しない机上の空論だった」とする青年に、「あなたはアドラー心理学を誤解している」と哲人は語ります。
哲人と青年の対話は、教育論から始まり、仕事論、組織論、人生論へと移り変わっていきます。そして「愛」というテーマが浮かび上がるのです。
最終的に哲人が説くのは、誰もが幸せに生きるために為すべき「人生最大の選択」についてでした。その選択とは一体なんなのか?それを知った時、あなたの人生は一変することでしょう。
『幸せになる勇気』は、哲人と青年の全五章にわたる激しい議論で成り立っています。各章の内容を簡単にまとめました。
哲人は、青年の課題である「教育」を軸にアドラーの思想を説いていきます。まず、教育が目標とするところは、無力で不自由なところからの「自立」であるとしました。そして自立の入り口は「尊敬である」と。
それは上司や親に対する尊敬だけではありません。たとえば青年のような教師の場合、子供達に対して尊敬の念を持つことが求められます。すべての人間と横の関係を築くのです。
尊敬とは、ただ単にすごいと思うことではありません。対象となるその人をありのままに見ることです。そして具体的な行動として、「他者の関心事に関心を寄せる」ことを第一歩としました。「他者の目で見て、他者の耳で聞き、他者の心で感じる」(『幸せになる勇気』p.52より引用)のです。
相手と同じ立場に立って課題に直面することで、相手に共感できるようになります。それを見た子どもは、自分を子ども扱いするのではなくひとりの人間として向き合ってくれている、いわば「尊敬」されていると感じるのです。
これは子どもに対してだけでなく、全ての対人関係において重要なプロセスになります。
アドラーは、教育する際に叱ってもほめてもいけないと説きました。その理由を、「問題行動の5段階」の一部を用いて説明します。
まず一段階の「称賛の欲求」。この段階で人は、称賛を得るために努力をします。しかし達成できなかったり努力し続ける根気がなかったりして称賛を得られなかった場合、第二段階の「注目喚起」へ移っていくのです。
称賛を得ることが目的の第一段階とは違い、第二段階では先生をからかうことなどで周りの注目を集めようとします。つまり誰かに叱られることまで計算した行動なのです。
しかし、ここで叱ってしまうと、相手の問題行動をより助長することになります。そのため、アドラーは叱ることを否定するのです。問題行動を助長させないためにも、「人は特別である必要はない」「ありのままで価値がある」ということを教える必要があります。それはまた、相手に尊敬を示すことにもなります。
ではなぜ褒めてもいけないのか。褒めることは能力のある人が能力のない人を評価することだからです。上下関係が生まれ、結果競争に繋がります。
他者に自分の評価を任せてはいけないのです。それは自立とは程遠い「依存」なのですから。
先ほども説明したように、褒めることは競争が生むことに繋がります。褒められることを目的とした競争原理の中で生きていたら、人は他者を全て敵とみなしてしまうのです。
そこで登場するのが協力原理です。元々人間は不完全なもので、その弱さゆえに共同体を作ります。そして、他者と弱い部分を補う「分業」という画期的な生産手段を身につけてきました。
これがアドラーのいう仕事の定義でもあり、人間の根本的な欲求である所属感、つまり他者貢献に繋がるのです。協力原理の中で生きるためには、他者を信じなければならない。そのために他者を尊敬する必要があり、教育現場である学校はそうした共同体感覚を身に付ける場として定義されるのです。
哲人は交友関係において、相手のことを条件付きで信じる「信用」ではなく、無条件に信じる「信頼」を推奨します。そして、自分のことを信じてほしいのであれば、自分から先に信じろ、というのです。
そんなこと怖くてできない!と思う人は多いでしょう。そんなあなたは、他者どころか自分も信じられていないのではないでしょうか。自分を信じることができなければ、他者を信じることはできません。
人と人は、永遠に分かり合えないからこそ、信じるしかないのです。目の前の人にまず信頼を寄せる。そこから始めてみましょう。受動的ではなく、能動的であるのです。与えてもらうことばかり考えず、自ら与えてみることを、アドラーは提唱しています。
他者を信じるという行為は、受動的なものではなく能動的な働きかけです。ここでようやく「愛」へと議題は移っていきました。
哲人のいう「愛」とは、わたしという一人称でも、あなたという二人称でもない。自らの意思で何もないところから「わたしたち」の幸せを築きあげようとする決意です。
自立とは「自己中心性からの脱却」だと哲人は言います。愛することに向き合い、人生の主語を「わたし」から「わたしたち」へ変えることなのです。それを成し遂げた時、本当の幸せを手に入れることができるはずだと。
しかし、日常の中でその決意を保ち続けることは難しいでしょう。日々の試練に打ち勝つには、愛することを恐れないことが必要です。つまりそれが『幸せになる勇気』なのです。
それではこの『嫌われる勇気』を書いた著者はどのような人なのでしょうか?本書は、哲学者である岸見一郎氏と、フリーランスライターである古賀史健氏の共著となっています。
1956年京都生まれ。京都在住。肩書きは哲学者です。高校生の頃から哲学を志して、大学院では西洋古代哲学、特にプラトン哲学の研究をします。それと並行し、アドラー心理学を研究し、精力的に執筆や講演活動、そして多くの「青年」とのカウンセリングをしていました。
現在は日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。訳書にアドラーの『個人心理学講義』『人はなぜ神経症になるのか』、著書に『アドラー心理学入門』などがあります。
1973年生まれ。フリーランスライターです。書籍のライティングを専門として、ビジネス書やノンフィクションで数多くのベストセラーを手がけています。インタビュー集「16歳の教科書」シリーズは累計70万部を突破しました。
アドラー心理学との出会いは20代の終わり。常識を覆すその思想に衝撃を受けて、その後何年にもわたり京都の岸見氏を訪ね対話を重ねたようです。本書では原案を対話篇へと落とし込みました。
本作はまるで、ソクラテスとプラトンの対話のような形式で哲人と青年のやり取りが描写されていますが、それは岸見氏と古賀氏の重ねてきた対話そのものなのかもしれません。
前作の『嫌われる勇気』は世界累計485万部の大ヒットを記録しました。2013年の発売以降、2020年現在もなお売れ続けているロングセラーとなっています。
- 著者
- 岸見 一郎 古賀 史健
- 出版日
- 2013-12-13
『嫌われる勇気』は一言でまとめると、「アドラー心理学のわかりやすい解説書」です。創始者のアドラーは、元々精神科医でした。患者の治療をしたり、目に見えない心について考えたりしていくなかで自身の考えをまとめたものがアドラー心理学です。
アドラーは「すべての悩みは対人関係にある」と説きます。そして対人関係のスタートは自分と他者の課題を分離すること、ゴールはすべての人は敵ではなく仲間だという共同体感覚だ、としました。
アドラー心理学を修得している哲人と、悩みを抱える青年との非常に激しい議論が全五夜にわたって描かれています。二人の対話を追いかけているうちに、読者はアドラー心理学の真理に迫ることができるのです。
われわれが語り合うべきは、まさにこの一点、「これからどうするか」なのです(『幸せになる勇気』p.73より引用)
私たちは過ぎてしまった過去を変えられることはできませんが、未来を選ぶことはできます。どの道を歩むかの選択権はあなた自身にあるのです。
あなたは過去の失敗を悔やむだけで終わってはいませんか?多くの人は「悪いあの人」を非難するか、「かわいそうなわたし」をアピールしているとアドラーは言います。本質的な解決に繋げるためにも、未来の話をしよう、と気づかせてくれる一言です。
「人と違うこと」に価値を置くのではなく、「わたしであること」に価値を置くのです(『幸せになる勇気』p.153より引用)
そんなの無理だ、と思う人もいるでしょう。わたしもそう思っていました。
アドラーは、承認欲求を強く否定します。他者からの承認を求めてしまうと、自分の人生ではなく他人の人生を歩むことになるからです。「人と違うこと」に価値を置いたら、承認を求めて他者の人生を生きることになるでしょう。わたしがわたしであることこそ、本当の個性です。
わたしであることを受け入れ、承認できたら、生きやすくなる気がしませんか?
運命とは、自らの手でつくり上げるものなのです(『幸せになる勇気』p.266より引用)
運命を信じていた人、ごめんなさい。アドラーは運命論を退けます。
でもよく考えてみてください。運命を努力で築き上げることができるのならば、夢があると思いませんか?「運命の人」に出会いたければ、自分が愛することを決断すればよい。運命の人といえるだけの関係を築き上げればよいのです。
今というこの瞬間だけを見て、そばにいる人の手を取ることが大切です。行動をする決断をせずに、傍観しているだけではいけないと私たちに教えてくれる一言です。
『幸せになる勇気』では最終的に「愛」について説いています。結婚について悩んでいる人は活かさない手はありません。あなたの幸せは、あなた自身でつかむのです。
「昔、恋愛で痛い目をみたから……」と、恋愛に臆病になる人は多くいます。いわゆる、トラウマですね。しかし、アドラーは言います。「過去のトラウマ」なんていうものはない、と。それは、現在の恋愛がうまくいかないことを過去のせいにするための言い訳なのです。
たとえば、「気になるあの人から連絡がこない」とします。それを「嫌われた」と捉える人もいれば、「返事をじっくり考えてくれている」と捉える人もいる。要は受け取り方の違いです。
だったら過去に違う意味付けをすればいい。もっといい恋愛をするためのステップだったのだ、と、これからのためにポジティブに捉えてしまえばいいのです。過去の恋愛で痛い目をみたことは事実でしょう。でも前を向かないことには一歩踏み出すことはできません。これからどうするかが問題なのです。
アドラーは、愛することは、何の保証もなしに行動を起こすことであるとしています。「あの人は私に好意があるかもしれない」「私が好きと言ったら受け入れてくれるはず」といったような担保を求めないのです。
誰もが愛されることを望み、愛されてこそ幸せだと思うことでしょう。しかし、「自分を愛してくれる人を愛する」という姿勢でいて、幸せになれるでしょうか?「この人は私を愛してくれるのか」を見るあまり、結局自分のことしか見えていないのです。
愛することは、あなた自身の課題。それをどう受け入れるかは、相手の課題です。課題を分離し、恐れずにただ愛してみましょう。
あなたは幸せになりたいと思い、結婚に向かっていますか?実はその本質は、「楽になりたい」ではないでしょうか?早く結婚して楽になりたい、子供を産んで焦りから解放されたい、と。
愛することで直面するのは、楽しいことだけではありません。むしろ苦しいことの方が多い可能性だってあります。それでも、ただ愛することができるか。どんなことが起こってもともに歩んでいくという強い信念があるかが重要です。
「楽になりたい」という気持ちだけで生きていたら、ただ一瞬の楽を得るだけで終わってしまい、その先に本当の幸せはありません。愛する覚悟を持つのです。
- 著者
- 岩井 俊憲
- 出版日
こちらの本の著者は、アドラー心理学カウンセリング指導者の岩井俊憲。彼はアドラー心理学をビジネスの現場に応用し、コンサルティングを行っています。ビジネスパーソンの悩みをアドラー心理学で解決しているのです。
誰かに認められたいという承認欲求と、周囲から浮かないようにしなければという同調圧力に悩む人は多いでしょう。『嫌われる勇気』や『幸せになる勇気』を読んでみたものの、アドラー心理学をビジネスでどう実践したらいいかわからない……。そんな戸惑いがある人におすすめしたい一冊です。
- 著者
- ["永藤 かおる", "岩井 俊憲"]
- 出版日
こちらの本はコンビニで限定発売し、5万部を突破した『図解 勇気の心理学 アドラー超入門』を再編集をした完全版。図解と漫画が豊富に使用されており、アドラー心理学のポイントや、具体的にどうするかなど、重要な部分が凝縮されています。
また、「他のアドラー心理学の本を読んだ後に読むとストンと落ちてくる」という意見も多く、アドラー心理学がいまいちピンとこなかった人には推したい一冊です。『幸せになる勇気』の復習として読むのもよいでしょう。
- 著者
- 小倉 広
- 出版日
『幸せになる勇気』で、青年が「アドラー心理学は机上の空論」と呆れる場面がありますが、そう感じている人にぜひおすすめしたい本です。
こちらの本では、アドラー心理学を実際の仕事場で活用する「ちょっとしたコツ」を小説仕立てで描いています。主人公の営業マン、リョウが上司であるドラさんの宿題を実行し、成長していく物語。物語に引き込まれながら、「なるほどこうすればいいのか」と、現実世界にアドラー心理学を応用できることでしょう。
「こういう上司のもとで働きたい」と感じる人も多数。あなたもそんな理想の上司になるべく読んでみてはいかがでしょうか?
最後に、『幸せになる勇気』について紹介・解説したYouTubeも合わせて紹介します。
【嫌われる勇気(続編)】「幸せになる勇気」を10分で分かりやすく解説!(アドラー心理学)
こちらの動画は、アニメーションを用いてわかりやすく『幸せになる勇気』を解説しています。また、『嫌われる勇気』でも語られているアドラー心理学の基礎についても解説があるので、『嫌われる勇気』を読んでいなくても理解することができます。
こちらは、動画を見るというよりも作業用BGMとして本を聴くイメージのものです。ながら作業で聞けるので、通勤中や、家事をしながら聴いてみてはいかがでしょうか。
『幸せになる勇気』、気になっていただけたましたか?本書は、『嫌われる勇気』を読んだことのある人は特に読むべき一冊です。
アドラー心理学を「現実味が薄く、どこか受け入れきれなかった」と感じている人は多いかもしれません。『幸せになる勇気』を読めば、本当の意味でアドラー心理学を知ることができるでしょう。この記事が、『幸せになる勇気』を手に取り、本当に幸せになるための行動を起こすきっかけになれば嬉しいです。