大学に進学した多くの学生がお世話になる大学講師。高い専門性を持ち、講義の仕事だけでなく専門としている分野の研究も日々おこない、国の未来のために成果を残しています。その専門性の高さから大学院、もしくは博士課程を修了している必要があり、就職の道のりは想像以上に長いです。常勤の場合は年収の水準は高いですが、今は非常勤講師として1コマ単位で働く方も少なくなく、実際に社会人として一線で働いている方の講義は、大学にとっても学生にとっても有意義なものと認識されつつあります。 本記事ではそうした大学講師の仕事やなり方、適性ある人物像など徹底解説。非常勤講師で働きたいと考えている方もぜひ参考にしてみてください。
2018年時点で日本の大学数は768大学となり、その数は年々増加し続けています。大学数の増加にともない、大学教員の需要も高くなってきており、自分の専門分野を生かせる大学講師という存在が増えています。
大学にかかわる人というと高い学歴や、研究の実績が必要なのかと思う方が多いと思います。今回はそんな疑問だらけの大学講師について詳しく解説します。
大学講師は、常勤講師と非常勤講師に分けられます。
常勤講師は大学には必ず設置しないといけないポジションです。講義をおこなう以外に、大学に関わる会議にも参加するなど、大学運営にかかわる仕事もします。基本は助手を経てから常勤講師となることが多いようです。
それに対して、非常勤講師は大学が必要としたときに設置する役割で、授業時間のみ出勤する講師のことをいいます。授業時間のみでいいので大学内の会議や研究に参加する必要がなく副業としてやる人が多いです。最近では有名人が非常勤講師として活躍する姿も注目されています。
大学講師の仕事内容は、自分の専門科目を学生にわかりやすく講義することです。ただ大学講師の仕事はそれだけではありません。
授業だけでなく、自分が専攻している分野の研究も進めなくてはなりませんし、その上で事務や大学運営に必要な仕事もこなしています。特に大学運営に関する仕事は土日におこなわれることが多く、なかなかカレンダー通りの休日が取れないこともあるようです。
また講師は自分の講義を持つことができますが、研究室をもつことはできません。学生によりわかりやすく専門的な講義をするために、常に自分の専門分野についての勉強を続けていく必要もあります。
大学講師の平均年収は常勤か非常勤かによって大きく違います。
厚生労働省が公開している「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」では、大学講師の平均月収は以下のようになっています。務める大学によって差はありますが、常勤の大学講師となると一般的には40万円前後の月給となっています。
ボーナスの平均は約150万円前後となっているため、平均年収は約700万円ほどとなります。20代でも平均月収約30万円、ボーナスは約45万円と他業種と比べて比較的高いほうといえるのではないでしょうか。
対して非常勤講師は1コマあたりのお金になるので、1コマ6000円~3万円ほどとまちまちです。また、交通費や研究費は支給されないない大学が多く、社会保険などの加入は自分ででする必要があるため、副業として仕事をしている方が多いようです。
小学校や中学校、高校に比べて比較的、時間に余裕のあると思われている大学講師ですが、先述したように授業だけでなく雑務が多いのも事実です。
そんな大学講師の1日はどのようなスケジュールになっているのでしょうか。
大学の授業では担当する講義や、1年間の講義スケジュールなども決まっています。毎年まったく代わり映えのしない講義をおこなう講師もいますが、それでもその年の生徒の様子によって授業を微調整しなくてはなりません。
そのような授業に関わる仕事をしたり、あいている時間で研究に関する仕事もおこなっています。講義を受けていた生徒から質問されることもありますし、事務からの要望にも対応しなくてはなりません。日々さまざまな仕事を大学講師はこなしているのです。
大学講師の休日も常勤か非常勤かによって違います。
常勤の場合、労働時間は週に40時間程度です。普通の会社員と同じような時間数ですね。また、夏休みや冬休みには学生研究に没頭したり、オープンキャンパスの運営に携わったりするなど仕事がなくなって給料が出なくなることはないようです。
一方非常勤講師の場合、授業時間のみ出勤しコマでお金を得ているので、授業がなければ給料は出ません。また、有給休暇もない場合や、あっても少ないことが多いため、本業としてやるのは難しいでしょう。
大学講師になる方法は意外と知られていませんよね。
大学講師になるには、ある分野での専門的な知識や経験が必要となります。そのため多くの大学では、最低でも大学院を卒業して修士を取得していることが前提とされているところも多いのです。また分野によっては博士号を取得している方のみを採用している場合もあります。
大学の常勤講師になるには、大学卒業後に以下の道のりが一般的です。
なかなか長い道のりです。また助教の任期は5年と言われているため、その間に審査を通過して准教授になることができて初めて、大学講師として就職できたということができます。
一定の高い専門性が必要とされる分野であれば、その分野での知り合いから紹介されて大学講師になるケースも多くあります。そうした場合は大学から直接依頼があったり、知り合いの大学教授から頼まれる形で常勤の講師となるようです。
もし常勤の大学講師を目指すのであれば、そうしたコネクションを大事にしておくことも欠かせません。
一方、非常勤講師は大学卒でもなることができます。今では芸能人やスポーツ選手などが特別講義をしてくれることもありますよね。求人も結構出ているので違う業界で専門性を高めてから副業としてやる人が多いようです。
それでは大学院に行っていない場合は、常勤の大学講師への道は残されていないのでしょうか。もちろん厳しくはありますが、道が途絶えているわけではありません。
まずは大学で公募されている職種に関する情報を収集します。大学とのコネクションがない場合は、募集されている職に応募して採用をもらうしかないので、まずはどんな職種であれば公募されている確率が高いのかを知りましょう。
その上で、公募されている職種と、自分が専門としている分野を学問として結びつけることができるかどうかを考えます。たとえば「ビジネス実務」の公募がある場合、財務会計や産業カウンセリング、キャリア教育などの経歴は大学運営において重宝されるスキルになり得ます。
学会と聞くとハードルが高いように思いますが、実際はそうでもありません。自分の専門分野とマッチする学会に入会し、研究誌で論文を書いて発表していきましょう。
学会によっては査読という制度があるため、そこで論文を修正してもらうことで大学講師としての成長が見込めます。
学会で経験や知識を積み、実績などもできるようになったら教員公募に応募していきます。その際、応募条件に修士課程を修了している者との記載があるかもしれません。応募条件をよく読んでから応募するようにしてくださいね。
大学講師は自分の専門分野を大学生に教えることが仕事なので、教えるという行為に抵抗がない人が望ましいでしょう。また、授業中や授業外など学生やほかの先生とかかわる機会が多くあります。学生とコミュニケーションがとれるかとれないかで授業の集中度が違います。
きちんとオンオフをしっかりできる方は向いているでしょう。大学生は真面目に授業を聞いている人ばかりではありません。なかには騒がしくする人や態度が悪い人がいるでしょう。そこで気を落とさずに気丈にふるまえる人は仕事をするうえで楽です。
また、研究は常に試行錯誤の繰り返しです。そういった意味で我慢強い人は向いているといえるでしょう。
大学講師は高い専門性が求められます。そのため、新しい課題に真剣に取り組み、常に発見をし続ける人は授業の質の向上や研究の成果を出すことができるため向いているでしょう。
自分の好きな分野の研究ができ、また、企業のように上下関係などもあまりないのでのびのびと仕事ができます。
教授の一番のやりがいは、若い人を育てることができるところです。若い人は目がキラキラしていてとても元気をもらえますし、教え子が社会で立派に活躍しているところを見ると嬉しくなるようです。最も社会人に近い方たちなので自分の教えの効果を感じやすいこともよいところです。
大変なところは、常に成果を求められることです。自分自身の研究も並行してしていかなくてはならず、学生にも高い授業料を払ってもらっているので、プレッシャーはあります。これは一般的な企業にもいえることですね。
高い授業料、月収がある分、きちんと授業をおこない、学生によい成績を残してもらうよう指導することは大学講師という仕事の大変な部分でしょう。
大学で教える人にとって最も大切なのは高い専門性。あなたの専門性を求めて多くの学生が学びにきます。その専門性を高めるためには研究をして成果を出す必要があります。
しかし、研究をしようにも道のりは長く、挫折してしまうことも多いです。それはゴールとプロセスが見えていないからなのです。ゴールもわからずに研究をしていてもどうしたらよいのかわかりませんよね。
「研究の仕方がわからない」「研究って何から始めればいいの?」というあなたにおすすめなのがこちら。
- 著者
- 近藤 克則
- 出版日
近藤 克則氏著作の『研究の育て方: ゴールとプロセスの「見える化」 』という本です。
この本では研究の進め方や論文の書き方などが詳しく記載されており、研究をするうえでの基礎用語などもわかりやすく解説しています。そのため、まだ研究をやったことがないという方にもおすすめの1冊となっています。
ぜひこの本を読んで研究の進め方を学んでみてください。
いま大学側で多く求人を出している職種をしっていますか?
それは、何度か出てきている「非常勤講師」という職業です。現在ではそれぞれの業界の第一線で活躍している人たちが副業として非常勤講師をやることが多いようです。需要も高まっていますし、大学卒でも教える機会があるのは嬉しいですよね。
また、2020年現在コロナウイルスが大流行しており、収入源が本業だけでは不安な要素もあります。今後はさらに副業としての需要が高まるのではないでしょうか。
そこで副業としておすすめなのが非常勤講師。そして、非常勤講師のなり方について詳しくまとめた本がこちらです。
- 著者
- ["石川和男", "千葉善春"]
- 出版日
石川和男氏、 千葉善春氏が著作した『一生モノの副業 この1冊でわかる大学講師のなり方 』という本です。
非常勤講師なら大学卒でも専門性があればできます。むしろ、あなたの実務経験をもとに感じた学びを大学側は欲しているのです。
この本を読んだ方のなかには「もしかして大学講師に私もなれるかも。やってみたい」と思う方もいるでしょう。
大学講師に限らず、社会で活躍するうえで必要な力が「人前で話したり、それをわかりやすく教えること」です。
文化やノウハウ、技術を教える、学ぶ、それによって常に人は成長していきます。
大切なのはただ自分の知識をひけらかすことではありません。その人の心を掴むような話し方や教え方である必要があります。ただ、そんな話し方や教え方は難しいですよね。
そこでおすすめなのがこちらの本です。
- 著者
- 寺沢 俊哉
- 出版日
寺沢 俊哉氏著作の『人前で話す・教える技術 』という本です。
この本はタイトル通り人前での話し方や教え方について詳しく説明されています。また、テンプレートもついているのですぐ実践できるでしょう。
この技術は社会人はもちろん学生にとっても大変重要なスキルです。誰でも読んでおいて損はない内容ですので、人前で話すことが苦手な方は本書を本で、ぜひ実践してみてください。
今回は大学講師について解説しました。大学講師といってもなり方はひとつではありません。いくつかのルートがありますし、また専門分野や雇用形態によっては大学院を卒業していなくても講師として働くことができます。
教えるのが好きな人、自分の専門分野を生かしたい人はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
最後に紹介した3冊は、大学講師を目指す方はもちろん、さまざまな業種の方に役立つ内容となっているのでぜひご覧ください。