うちのクローゼットはいつも綺麗に見える。

服の種類もバラバラで、季節感なんてあったもんじゃないが。

それでも綺麗に見える。

単純に色が少ないのだ。

手持ちの服の4割は黒で、3割は白、2割がベージュ。

残りの1割でやっとこさ緑や黄色なんかが現れる。

柄物なんてほとんど持っておらず、ボーダーさえもドキドキする始末だ。

冒頭で『お洒落が苦手』と言ったが、

じゃあなぜ苦手かと言うと。

あまりにも答えがないからだ。

「今年の流行色は◯◯です♪」

「今季はビッグシルエットに注目♪」

「あえてダサめなアイテムを入れるのが逆にオシャレ♪」

こんなかんじのキャッチフレーズが並ぶと、僕の頭の中は途端にクエスチョンマークいっぱいになる。

あえてダサめなアイテムが逆にオシャレ? どういうことですか? とんちですか?

もうパニックです。

だから逃げました。お洒落の波から。

それからは、出来るだけシンプルなアイテムを、シンプルなアイテムと合わせ、シンプルな顔をして、シンプルに着こなす。

これだけを心がけて洋服を着ていました。

「mixiの初期アバターみたいだねw」

なんて言われた事もありましたが、

正解のわからないお洒落に挑んで大怪我をするよりマシです。

しかしそんな僕が、ドライフラワーを吊るしてみたんです。

きっかけは掃除終わりにコーヒーで一服していた時。

綺麗になった部屋を見渡して思ったんです。

「……つまんねぇ部屋だな」と。

服のみならず、インテリアもシンプル・オブ・シンプル。

え? 何が楽しいん? ここに暮らしてて何が楽しいん?

そう思うほどに何も無さすぎたんです。

「ファッションは毎日を生き抜くための鎧である」

と、アメリカのファッション写真家。ビル・カニンガムは言っていた。

僕は、鎧も着ずに戦いに出ることさえもしていなかったのだ。

僕は一気にコーヒーを飲み干したあと、出窓にただ置いていたドライフラワーを、丁寧に麻紐で吊るした。

お洒落って、意外と簡単なのかも知れない。

プラダを着た悪魔

著者
["ローレン ワイズバーガー", "Weisberger,Lauren", "史子, 佐竹"]
出版日

ファッション誌『ランウェイ』編集部の新人アンドレア。ファッションには興味ゼロだけど、1年後に夢の文芸誌へうつることができるなら頑張って見せる!だけど、悪名高い編集長ミランダの傍若無人ぶりに息も絶え絶え…果たして1年も耐えられるのか?ちょっと生意気なインテリ娘アンドレアと、ファッション界の権威ミランダのバトルやいかに?アメリカ中の女性を共感の渦に巻き込んだベストセラー、待望の文庫本。

ランウェイ・ビート

著者
原田 マハ
出版日

ある日現れたおしゃれな転校生ビートは、いじめられっ子犬田のファッションを大改造して一躍クラスの人気者に。「誰でもポテンシャルはある!」ビートの魔法の言葉に勇気づけられ、ファッションに興味のなかった仲間たちが前代未聞の現役高校生ファッションブランドを立ち上げる。彼らはファッション業界に革命を起こせるのか?日本ラブストーリー大賞作家が贈る感動の青春小説。

もうすぐ夏が来る。 
僕は、本当に着たい、鎧を買いに行こうと思う。

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