5分で分かる印刷業界!最近の動向・事業内容や推移について

更新:2020.8.6 作成:2020.8.6

本が好き、紙が好き、デザインに興味があるなど「印刷」という仕事に目が向くきっかけはさまざまです。印刷業界では、出版物を取り扱う出版ソリューションから、印刷技術を応用したエレクトロニクス事業など、調べてみると意外にも幅広く事業を展開しています。 現在では紙の本は年々、売れなくなってきていると言われています。実際、歴史ある雑誌などは休刊・電子化をしているところも少なくありません。そのなかで印刷会社としての価値をどう高めていくかは今後ますます重要となっていくでしょう。 本記事では、印刷業界の現状と、印刷業についてより知識を深められる書籍を紹介していきます。

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印刷業界って印刷だけしているの?

印刷業界は、その名前からして、ひたすら印刷だけをしているような印象を受けるのではないでしょうか。しかし、印刷業界には規模の大きい企業も存在します。ペーパレス化が進む現代において、これらの企業がどのような事業をおこなっているのかまずチェックしましょう。

現代の業務内容は多岐にわたっている

ここでは業界1・2位と言われる「凸版印刷(凸版)」と「大日本印刷(DNP)」の例を見てみましょう。企業のWEBサイトを見ると、事業内容の広さが分かります。

印刷
エレクトロニクス
ヘルスケア
ビジネスソリューション
建築材
包装材など

大日本印刷には7事業にわかれた18の分野があり、凸版印刷では3事業にわかれた13の分野があります。建築材や包装材など、印刷技術を応用して展開されている事業も多いのです。

印刷

印刷業界は名前の通り印刷を専門とする企業から成り立っているわけですが、特に規模の大きい企業のWEBサイトを見ると印刷事業を見つけるのに苦労するかもしれません。しかし、大企業でも中小企業でも印刷事業はおこなわれています。

大企業では大手出版社の出版物を扱うことが多いようです。DNPの印刷事業紹介には『広辞苑』の写真がサムネイルとして採用されています(2020年6月現在)。

『広辞苑』は非常に情報量が多い辞書であるため特殊な用紙を使用していることで有名です。部数が多かったり、既存のやり方では十分な成果を出せなかったりする種類の印刷が大企業に回ってくることが多いといえます。

また、大企業は印刷を活用した新製品の開発にも力を注いでいます。特殊な技術を使った商品パッケージや、壁紙などの建築材料があげられます。研究開発志望の人にとっても興味が持てそうな業界です。

一方、中小企業はそれぞれに得意分野を開発し、ニッチ産業として生き残りを続けています。同人誌や、キーホルダー・缶バッジ・Tシャツなどのグッズ作成に特化した印刷所に、学生時代に実際にお世話になったという人もいるのではないでしょうか。

エレクトロニクス

印刷の技術を応用した事業もおこなわれています。簡単に連想できるところでは書籍の電子化などがありますが、大企業ではさらに踏み込んでエレクトロニクス事業を展開しています。

スマートフォンなどのディスプレイ、各種フィルム、半導体部材などが生産されています。意外にも思うかもしれませんが、印刷業界の技術は身近な生活にも役に立っているのです。

ヘルスケア

フィルムやパッケージ製造のノウハウは他分野にも応用されています。たとえばヘルスケア部門では、介護・医療用のパッケージ生産のほか、IoT技術を組み合わせた製品なども開発しています。

ビジネスソリューション

大まかに「ビジネスソリューション」とまとめられるものは、主にクライアント企業からの委託により業務を遂行するものです。もともと印刷業は印刷から配達・配本までを担っていましたから、受注して業務遂行することに関してノウハウの蓄積があります。

これはBPO(ビジネスプロセスソリューション)と呼ばれる業態で、身近なところだとコールセンターや病院などの受付業務のみを外注するような仕組みがあげられます。そのほかにも紙製品を活用したマーケティングなどもあります。

このように、一見すると「印刷そのもの」とはかけ離れていると思われるような業務まで幅広くおこなっているのが現代の印刷業界なのです。

業界の動向や収入を知りたい!

「印刷業界の業務内容が広がっていることは分かったけれど、本業の印刷は大丈夫なのかな?」そんな不安を持っている人もいるかもしれません。

大手以外の印刷業に就職することを希望している人ほど、印刷そのものの業界動向が気になるのではないでしょうか。実際はどうなのか見ていきましょう。

業界規模や推移

経済産業省の調査を元にした「業界動向サーチ」の集計によると、印刷業界のうち「印刷そのもの」の出荷数は年々、減少を続けています。ただし、大手各社の業績は基本的に横ばいが多く、大手に限っていえば大幅に業績を悪化させているところは少ないといえます。

ただし、大手各社の業績は印刷以外によるところが大きいと考えておきましょう。そのため、大手で印刷に直接関われる部署を希望している人や、中小の印刷業への就職を考えている人にとっては、印刷業の先行きはやや不安に感じられる面もあるかもしれません。

参考:調査の結果|工業統計調査|経済産業省

平均年収は?

前項と同様「業界動向サーチ」の集計によると、業界全体の平均年収は519万円です。業界動向サーチが集計している136業界中では114位と、年収的には中央値よりも下であるという結果が出ています。

デジタル化をキーワードに印刷について知ろう

著者
前田 秀一
出版日
書籍などの印刷物はとても身近なものです。そのため、印刷については「何となくは分かっているけれど、詳しくは知らない」ということが多くなりがちです。

本書では紙と印刷について基本的なところから分かりやすく解説します。また、デジタル化についても言及があるので、現状がどうなっていて、ここからどうなっていくのかを考える材料としても役に立つでしょう。

印刷物が好きだけれど今後避けては通れないデジタル化についての知識も知っておきたいという人におすすめの1冊ですよ。

現代だからこそ受ける、味のある印刷

著者
レトロ印刷JAM
出版日
手作り市や個展DMなどで、味わいのある印刷物を受け取ったことはないでしょうか。あえてのずれやかすれなどのレトロ感は、デジタル化が進んだ現代だからこそ逆に一定の層に好まれているという事実があります。

なかでも特に有名なのが、大阪の「レトロ印刷JAM」によるシルクスクリーンの印刷です。実例は書籍化もされています。

大企業ほどの他分野展開ができない分、多くの中小企業はこのように「一般向けではないが確実にニーズのある」という商材を展開して生き残りを図っています。

こちらの『レトロ印刷コレクション』にはそうした風合いや味わいあるレトロな印刷物が約300点掲載されています。アイデアの詰まったコレクションブックです。

業界研究にはまずこの1冊

著者
["印刷業界研究会/編", "印刷業界研究会"]
出版日

就職活動の際には、積極的な業界研究が欠かせません。とはいえ、セミナーや説明会などに出かけていくことができず、十分に情報収集ができないという人もいるでしょう。そんなときこそ本の出番です。

『印刷業界大研究 新版 (大研究シリーズ)』は2014年の版であるため、やや情報が古いのではないかと思う人もいるかもしれません。ただ、2014年の時点では、すでに現在の印刷業界で比重を占めている事業展開が始まっていました。2014年時点から業界の基本的な動向は大きく変わっていないといえます。

そのため、業界の大まかな全体像を知るためには十分、活用できる内容です。2014年時点で立てられていた見通しが数年経ってどのように実現したか、もしくはしなかったか、といった見方で読むこともできるでしょう。

印刷に軸足を置きつつも、さまざまな事業を展開するようになっている「印刷業界」について紹介しました。事業内容やターゲット、収入に至るまで、各企業によって大きくばらつきがあるのも特徴です。本の売れ行きをみて印刷業界に就職するのは怖いと考えていた人にとっては、また違った視点を得られるきっかけになったのではないでしょうか。
ぜひ納得できる会社を見つけることができるように、資料を活用してみてください。