5分でわかる航空業界!今後の大手2社の動きや採用について解説

更新:2021.12.5

子どもの頃から憧れていて、就職を希望しているという人も少なくない航空業界。就職人気企業ランキングでも、毎年上位には大手航空会社がランクインしていますよね。その分、就職活動では競争率も高い人気の業界です。 しかし2020年現在では、世界的な情勢変化のあおりを受けていることは否定できない事実です。現状では先行きが不透明な航空業界ですが、現在の動向について調査し、まとめました。またこれから先に航空業界を志望する人のための参考書籍もあわせて紹介しています。

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2020年に様変わりした航空業界

海外では経営破綻も

2020年、世界情勢の影響を受け、タイやイギリス、オーストラリアなどでは航空会社が相次いで破綻しています。規制緩和が進み、主にLCCなどで価格競争が進んでいた分、体力のない航空会社には非常に厳しい時期が来ているといえます。

しかしなかにはイタリアの航空大手アリタリアのように、完全国有化をして経営再建を図る動きもみられています。他にもポルトガルのTAPポルトガル航空や、フランスのエールフランスなどもすでに日本円にして約8100億円の制作支援を決定しています。

日本の航空会社はどう?

2020年3月決算のJALでは、営業利益が前年の42.9%減である1106億円という結果になりました。しかし、日本の航空会社大手であるJALとANAではすでに巨額の運転資金の確保を済ませています。

JALは三菱UFJ銀行などの取引金融機関に3000億円規模の融資を要請しました。ANAは5月末に日本政策投資銀行から3500億円を借り入れると発表、さらにその他、金融機関からの融資枠とあわせて計1兆円規模の資金を用意し、当面は問題ないとしています。

ですが今後も状況が急激に変化する可能性が捨てきれないためか、JALグループは2021年度の新卒採用を中止しており、楽観的な予測が厳しい状況にあることは間違いなさそうです。同様に、ANAグループも新卒採用を一時中断しています。

今年、航空会社への就職を目指して就職活動をおこなってきた就活生にとっては大変ショックなニュースです。また現状から改善の方向へ向かうにしても赤字からの経営回復は当面の間むずかしいと言われており、来年度の採用がおこなわれるかどうかは未だ予想がつきません。

参照:JALANA

航空業界の今後の予想は?

フラッグキャリアの再登場説

国を代表する航空会社であり、国営であったり政府が大株主となっていたりする航空会社のことを「フラッグキャリア」と呼ぶことがあります。近年では規制緩和によりさまざまな企業が参入している航空業界ですが、情勢の悪化により業界が狭まり、再び寡占化が進んでいくのではないかと予測する人もいます。

ただし、JALは2020年3月現在ではフラッグキャリア再登場説に否定的です。国内の大手航空会社が業績悪化した国では同様の動きが見られる可能性はあります。

貨物の強化説

LCCはひとり当たりの面積を可能な限り狭くし、小さな機体でもたくさんの人数を搭乗させることで格安化を図ってきました。今後は感染症予防の観点からこのような運行は難しくなってくることが予測できます。

そのため、人をたくさん乗せるのではなく、貨物便を強化する方向に転換するという予測が出ています。貨物であれば密集させてもリスクが少ないためです。実際に、JALは中距離貨物専用LCC「ZIPAIR」事業を強化するという方針を打ち出しています。

インバウンド回復説

2020年はあまりよい予測が立てられなくとも、1〜2年のうちにある程度旅行客が回復するだろうという予測もあります。日本の航空業界はここ数年インバウンド需要に支えられていた面が強くあります。特にアジアからの旅行客が回復すれば、業界全体としてはよい方向に向くだろうという予測です。

LCCではない、いわゆるフルサービスキャリアは乗客との距離も取りやすいため、旅行需要が回復してきたときにはそれが強みとして出そうです。

 

これから航空業界を目指すなら

客室乗務員・パイロットの採用は?

最近は「キャビンアテンダント(CA)」と呼ばれることの多い客室乗務員は華やかさから憧れる人も多い職業です。客室乗務員のもっとも大切な業務は、保安です。乗客の安全を図り、万一の場合には避難や脱出などを誘導しなくてはなりません。

空の公用語は英語であるため、客室乗務員には英語力も求められます。大手航空会社では、合格の最低ラインをTOEICスコア600と定めているそうです。

客室乗務員と同様、職種として独立に採用されるのがパイロットです。大手民間航空会社のパイロットは、採用されてから研修によって経験とライセンスを得ていく、いわゆる「生え抜き」のスタッフが少なくありません。入社時に経験は求められませんが、適性がない場合は難しい職種です。

一方、自分でライセンスを取得する方法もあります。この場合はパイロット養成のための学校に通う必要があります。航空大学校や一部の私立大学など、大学卒業資格を得ることのできる学校もあります。学費が高額になるので、ある程度しっかりとした準備が求められます。

ちなみに、客室乗務員の年収は平均550万円、パイロットは平均1000万円超というデータがありました。狭き門で資質や能力を求められるだけに、比較的高収入が期待できそうです。

◾️既卒での採用を目指す人も

2021年度の新卒採用は大手2社とも中止になってしまったのが現状です。そのため今年、就活生として就活に力を入れていた学生からの落胆の声も多いですが、1つの案として上がっているのが「既卒」での就職を目指すということです。

これは1年間は他の企業に就職し、働きながら来年度の採用を目指して勉強を続けるといったものです。本来の道より遠回りではありますが、現実的に考えればこの方法が一番よいといえるのかもしれません。ですが、就活生の心情は複雑であることは間違いないでしょう。

航空運営会社のスタッフ採用は?

業務として航空機に乗るわけではないものの航空業界に関わる方法としては、航空会社のスタッフが思い浮かぶのではないでしょうか。営業や管理など、さまざまな職種があります。空港でのチェックインなどを担当するのも各航空会社のスタッフです。

同様に地上スタッフとして重要なのが、航空運営会社のスタッフです。航空会社と同様管理や営業部門で働く人もいますし、空港のショッピングゾーンなどを担当する人もいます。

◾️航空運営会社のスタッフ採用は?

2020年7月現在、航空運営会社のスタッフ採用も中止になっています。そのため2021年度の就職を目指していた学生は、就職先を変更せざるを得ないのが現状でしょう。客室乗務員や、パイロット志望だった人と同様に別の職種に就職し、既卒での採用を目指すことが現状での一番の近道をいえるかもしれません。

航空関連業界への就職は?

航空に関連する商材を扱う商社や旅行代理店、WEBサービスなど、航空業界と関連の深い業界もあります。

航空業界に魅力は感じるものの、得意分野がほかのところにあるという人もいるでしょう。視野を広くしてみると、意外なところで航空業界に関わりのある業務ができることもあるかもしれません。

航空業界研究に役立つ本

著者
[]
出版日

航空業界に関心はあるものの、現在は直接足を運んでの情報収集ができない。そのような人には、やはり書籍が役立ちます。

『航空業界就職ガイドブック2021』は2020年時点での最新の情報が掲載されたムックです。刻々と状況が変わる現在ではありますが、業界全体の見取り図や職種について知るにはよい参考書となります。

航空業界に就職すると聞くと、客室乗務員やパイロットなどの職種が思い浮かびますが、他にも総合職やグランドスタッフ、運行管理、航空整備士など、航空業界ではあらゆる職種が存在することがこの1冊で分かります。

航空業界での働き方が複数あることがわかれば、自分の特性にあった職種で航空業界と関わっていくこともできるでしょう。

パイロット志望者は適性だけでなく対策を

著者
["パイロット入試問題集編集部", "イカロスアカデミー"]
出版日

民間航空会社でパイロットを目指すのであれば、自分の適性を知るのはもちろん、試験対策もしっかりしておきましょう。対策問題集は各種販売されていますが、できるだけ新しいものを購入することをおすすめします。

『パイロット入試問題集2020-2021』には、自社養成パイロットだけでなく航空大学校や自衛隊などの入試問題も掲載されており、総合的な対策が可能です。

筆記試験や面接などの対策が分かりやすく掲載されており、パイロット志望者必携の問題集であるといえるでしょう。

発売当時、話題沸騰したビジュアルブック

著者
["キース ラヴグローヴ", "Lovegrove,Keith", "真理, 星野"]
出版日

航空業界に憧れを持つ人の中には、幼い頃に抱いた「かっこいい」という感情がきっかけだったという人も少なくありません。

『エアライン―IDENTITY, DESIGN AND CULTURE』はそのような航空業界へ憧れを持つ人たちの心を捉えたビジュアルブックです。

ファッション・フード・インテリア・アイデンティティという切り口から豊富な写真で空の世界を紹介します。クルーの制服や、航空機のインテリアの変遷は写真を見ているだけでも楽しめます。

現在は絶版になってしまっているので新しいものは買えませんが、古書でなら購入が可能です。

自分の適正年収をアプリで診断

世界的な情勢変化に強く影響を受けている航空業界ですが、やはり好きなものは好き、かっこいいものはかっこいい、と憧れを抱いている人も多いはずです。仕事に就くにしても客室乗務員やパイロットなどの花形職業だけでなく、航空整備士や運行管理など航空業界で働くさまざまな職種があることも忘れてはいけません。一口に「航空業界で働きたい」と言っても、さまざまな関わり方があるのです。 
また実際に足を運んでその魅力を実感するのはもちろん大切ですが、本で空の世界を楽しむこともたまにはよいでしょう。採用試験を受けるためにいろいろと知っておきたいという人は、業界研究に役立つ書籍にも目を通してみてくださいね。

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