広報・宣伝は、対象となる会社や商品・サービスなどを消費者、株主、従業員といったステークホルダーへと伝える職業です。対象物の価値や魅力を広告やイベントなどさまざまな手段を用いてステークホルダーに向け伝え、会社の価値を高め存在を広めたり、商品・サービスの売り上げを伸ばしたりといった目的があります。 本記事では、「広報・宣伝」とまとめられることの多いそれぞれの職業の違いや、未経験で目指す上で持っておきたいスキルや資格について解説します。未経験の人や広報・宣伝職に就いたばかりの人におすすめの書籍も合わせてご紹介します。
広報・宣伝は、対象となる会社や商品・サービスなどを消費者、株主、従業員といったステークホルダーへと伝える職業です。対象物の価値や魅力を広告やイベントなどさまざまな手段を用いてステークホルダーに向け伝え、会社を周知させたり、商品・サービスの売り上げを伸ばしたりといった目的があります。
「広報・宣伝」と一括りにされることが多いですが、それぞれ仕事内容は異なります。広報は「広報・PR」、宣伝は「広告宣伝」と呼ばれることもあります。
本記事では、広報・宣伝それぞれの仕事内容や、働き方・年収といった基本情報を解説するほか、広報・宣伝になるために持っておきたい資格やおすすめの書籍を紹介します。
広報の仕事は、広告費や宣伝費を使わずに対象物の情報を世の中に広めることです。
広報は「社内広報」と「社外広報」に大きく分けられ、それぞれ業務の目的が異なります。社内広報は、社内の従業員などに向け、会社理解を深めるためにおこなわれる広報です。社内向けの広報誌を作成したり、社内でSNSを活用し従業員同士のコミュニケーションを活性化させたりといった業務が該当します。
対して「社外広報」は、社外の人に向けて情報を公開し、会社の価値や商品・サービスの魅力を伝え、利益を生じさせることを目的とします。新商品発売やイベント開催のプレスリリースを作ったり、メディアに取り上げてもらえるよう取材交渉をしたりといった業務をおこないます。
ほか、不祥事を起こした際に会社のイメージをなるべく損なわずに謝罪会見などを実行する「危機管理広報」など、扱う対象によっては専門職がある場合も。
広報の仕事内容の最大の特徴は、宣伝費をかけずに情報を発信するという点にあります。広告を作らずにさまざまな手段でプロモーションをおこなうことが、広報という仕事の一番の特徴です。
宣伝の主な仕事内容は、世の中で私たちが目にするさまざまな広告枠に費用を支払い広告制作・掲載をおこなうことです。テレビや新聞、雑誌、ラジオといったマスメディアのほか、公共交通機関やチラシなど、予算を使って最適な広告を打ち出します。
ほか、商品・サービスの販売促進行動も、宣伝の業務です。サンプル商品の無料配布を企画したり、フリーペーパーを作成したりと、商品・サービスによって適した広告宣伝方法を企画実行します。
「広報・宣伝」の仕事と一緒に考えられる仕事のひとつとして、「IR(インベスター・リレーションズ)」があげられます。
広報・宣伝は消費者や従業員に向けて情報を発信するのに対し、IRは株主や投資家に向けて情報を発信します。取り扱う情報も商品・サービスについてなどではなく、会社の役員交代や社内人事、売上高などといった情報公開をおこないます。
広報・宣伝の働き方は大きく分けて2つあります。一般企業に勤め、従業員として広報・宣伝を担当し自社商品・サービスを世の中に広めていくという働き方と、広報・宣伝を代理で請け負う広告代理店やPR会社に勤める働き方です。
自社の広報・宣伝というポジションを専任でおこなうことは会社の規模によっては難しく、特に広報は、総務などの仕事と兼任で担当する場合が多くあります。総務の仕事と社内広報・社外広報を全ておこなうため、広報の業務に十分に注力できないというデメリットがあります。
代理店での勤務では、広報・宣伝のプロフェッショナルとなり、クライアントの利益に繋がるよう業務をおこなうことが求められます。広報の場合はクライアントとの契約期間内にどれほど商品・サービスがメディアに取り上げられたかが指標となり、宣伝の場合は、商品・サービスがどれほど売り上げを伸ばしたか・認知を広げたかなどが指標となります。
特に宣伝は高額の費用を支払い広告を打ち出すため、「売り上げ」という結果にいかに貢献できたかがクライアントの満足度を左右します。
広報・宣伝の平均年収は450万円程度が相場です。世間一般では宣伝の職業の方が認知度が高く、広告代理店などであれば、新卒でも採用をおこななっている企業は多くあります。
新卒として広告代理店に勤務した場合は給与額は20万〜24万円程度が相場であり、年収は平均約350万円です。
対して広報は、まだまだ「お金をかけて広報をおこなう」ということに価値を見出している企業が少ないこともあり、総務などと兼任でのみ採用をおこなっている企業がほとんどです。
いずれも経験・実績が収入に繋がっていく職業のため、年数を重ねると給与額が上がる傾向にあります。
広報・宣伝の職業に就くためには、持っておくと就職時に有利になったり、クライアントから信頼を得たりといった資格があります。
広報業務に関する唯一の資格として知られているのが「PRプランナー」です。PR会社ではPRプランナーの取得を採用条件としている企業も多くあり、広報を目指す人にとっては、取得しておいて損のない資格といえます。
PRプランナーの資格は、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会が主催する資格検定試験で、1次試験〜3次試験までの試験に合格することで、PRプランナーに認定されます。
1次試験のみ合格すると「PRプランナー補」に、2次試験に合格すると「准PRプランナー」として認定を受けられます。
試験は1次から順番に受験していく必要があり、3次試験を受けるためには、2次試験の4科目に合格していること、かつ3年以上の広報・PR関連実務経験者でなければいけません。
広報・PRに関する基礎的な知識・考え方からプレスリリース作成などの実践的なスキルを問われる検定試験です。
日本プロモーショナル・マーケティング協会が主催する、日本で唯一のセールス・プロモーションに特化した専門的な資格です。マーケティングの視点を持ちながら広告・宣伝といったプロモーション業務をおこなえるかどうか、知識と技能を問われます。試験に合格すると、「プロモーショナル・マーケター」の資格を得ることができます。
試験ではプロモーション・メディアやツールの制作に関する基礎知識を問う問題や、プロモーショナル・マーケティング戦略の設計を立案する問題などが出題されます。
広報・宣伝業務は、メディアやイベントへ商品・サービスを露出させるという業務内容から、華やかな印象のある職業です。もちろん商品・サービスの売り上げに直結する業務のため、やりがいも大きいでしょう。
ですが実際は、広報であれば地道なメディアへのアプローチ、宣伝であれば適した広告媒体のリサーチなど、裏方業務が多い仕事でもあります。広告企画のプレゼンのためのパワーポイント作成や、プレスリリース作成など、資料作成が得意という人に向いています。
また、メディア関係者など社外の人とのコミュニケーション力も非常に重要なスキルです。人と話すのが好き、人に何かを伝える・発表することが苦ではないという人にも、向いている職業といえるでしょう。
広報職は、未経験でなるには難しい職業といえます。
大きな理由としては、「広報・PR」という職業自体が認知度が低く、中途で広報・PR職を募集している企業自体がそもそも少ないという点が挙げられます。PR会社であれば広報・PRの専門代理店会社のため採用枠はありますが、経験者の採用のみ行なっている場合がほとんどです。
未経験で広報・PRになるためには、広報・PR業務も兼任できる総務職などの採用枠を探すもしくは、PRプランナーなどの資格を取った上で、PR会社の経験者採用枠に挑戦してみるのもひとつの手です。
対して宣伝職は、未経験でも挑戦できる職業です。その際は、広告代理店の採用を狙いましょう。コミュニケーションスキルや広告に関する知識が武器になるほか、業務内では広告のデザイン制作にも関わる機会が多いため、デザインスキルや編集力といった力も持っておくと有利でしょう。
広報・宣伝の職業は、いずれも未経験で挑戦するためには、持っているスキルを面接時に最大限にアピールする必要があります。履歴書に志望動機を書く際には、以下の点が盛り込まれているかどうかに注意しましょう。
まったく異なる業界から広報・宣伝職へと未経験で飛び込む場合、志望するに至った考えにブレがないかどうかや、これまでの職務経験の中からどんなスキルが広報・宣伝職に活かせるかなどを志望動機に盛り込みましょう。
今回は、広報・宣伝を目指す人におすすめしたいそれぞれの仕事内容や考え方のヒントになる書籍を集めました。
- 著者
- 山見 博康
- 出版日
初めて広報職に挑戦する人におすすめしたい基本のキを学べる書籍が『この1冊ですべてわかる 新版 広報・PRの基本』です。
広報・PR担当者が現場でおこなうべき仕事内容や必要な知識を網羅しており、まずは本書を一度読むことで、広報・PR職の基盤を知ることができます。
本書は2009年に発行した「この1冊ですべてわかる 広報・PRの基本」が、2020年に新版として登場したもの。変化の速いウェブ媒体などを活用するネットPR方法についても解説されています。
- 著者
- 野澤 直人
- 出版日
中小企業やベンチャー企業など、「広報」というポジションを社内で設けていないような企業に向けた広報・PR術を学べる書籍です。
自社で広報ポジションを採用している企業の多くは大企業であることから、広報がどんな役割で会社にどのような影響をもたらしてくれるのかしっかりと知っている経営者や役員というのは、中小企業にはほとんど存在しません。
そのため、多くの広報・PR会社は大企業をクライアントに持つことが多く、大企業向けの広報・PR術を学ぶ機会はあるものの、中小企業を対象にした広報・PR術はなかなか学べません。
本書では、中小企業における広報・PRの必要性や実践できる広報・PR術を紹介しています。実際に業務をする上で、メディアに訪問営業や電話でアプローチする際のトーク内容・方法といった実用的なノウハウまで取得できます。
- 著者
- ["横山 隆治", "榮枝 洋文"]
- 出版日
これから宣伝・広告職に就きたいと考えている人に、まず読んでほしいおすすめの書籍がこちらです。
「広告マンの8割はいらない」という大胆なキャッチコピーが印象的な本書では、これからの時代の広告ビジネスについての展望が書かれています。
ウェブを使ったデータマーケティングが主流になってきた現代において、広告マンは個人としてどのようなスキルを身につけるべきかなど、宣伝・広告職で活躍する上で時代の動きを踏まえて持っておきたいスキルや知識について学べます。
自分が目指す広告マンの姿をイメージする上でも、役に立つ書籍といえるでしょう。
- 著者
- 一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)
- 出版日
インターネット広告の業界団体「日本インタラクティブ広告協会(JIAA)」が発刊しており、ネット広告の戦略立案をする際に役立つ書籍です。
「インターネット広告」の概念やこれまでの歴史、マーケティングの中での位置付けといった基本的な情報から、ネット広告を展開する上で覚えておきたい指標・測定の基礎〜応用といった実用的な情報も盛りだくさん。
ネット広告をおこなう上で気をつけたい個人データの取り扱い方を海外事例などを交えながら解説するなど、正しくネット広告を作るための情報が記載されています。
「商品・サービスを世の中に広める」という意味で、「広告・宣伝」とひとまとめで紹介されることの多い2つの職業ですが、実際の仕事内容や業務の目的は異なります。また広報・宣伝職に就くのに必須な資格というのはありませんが、実際に働くうえでは関連の資格を取得しておくと就職の際に有利です。さらに広報・宣伝の手法は時代とともに流行り廃りがあるため、情報を常にアップデートさせる姿勢は欠かせません。
広報・宣伝の職業に興味があるという人は、それぞれの特徴を正しく理解し、自分にとって適した職業を選んでみてはいかがでしょうか。