細胞検査士という職業は聞きなれない人が多いかと思います。この職業は医療の世界、特に癌などの病気を治すためにはなくてはならない仕事です。日本だけでなく世界でも働くことのできるので、これからますます活躍が期待できる職業であるといえるでしょう。 細胞検査士がどういった職業なのか、どうすれば資格が取れるのかなどを今回は詳しく紹介させていただきます。細胞検査士に関する書籍もあわせてご紹介するため資格を知るというために活用していただければと存じます。
細胞検査士とは、癌などの疾患を顕微鏡を用いて細胞レベルで検査する臨床検査技師のことをいいます。細胞検査士は日本臨床細胞学会が認定する資格で、日本では約6000人(2006年時点)がこの学会が認定する細胞検査士免許を持っています。
このほかにも国際細胞検査士という資格があります。国際細胞検査士とは国際細胞学会が認定する国際細胞検査士資格で、日本の細胞検査士資格取得後に受験することが可能です。
国際細胞検査士の資格があれば海外で細胞検査士として活躍することが可能で、細胞検査士の免許を取得後すぐに国際細胞検査士の資格まで取得して海外で活躍されている方もたくさんいらっしゃいます。
細胞検査士の働く場所は、ほとんどが病院の病理検査室となります。
医師や検査技師が採ってきた細胞を診てその結果を医師に提出し、最終的な診断を医師がくだして患者さんに検査結果を説明します。
検査室で検査をするという職業のため、患者さんと関わる機会が医療職のなかでも少ないことが特徴です。ですが、最近は「ベッドサイド細胞診」といって、細胞を採取するときに患者さんのところへ同行することもあるため、患者さんと関わることもできるようになりました。
ですので、細胞診を仕事にしたいが患者さんとも関わってみたいという方はその両方が叶うようになってきています。
他にも民間の製薬会社や検査センターで働くこともできます。がん治療のための早期発見に貢献でき、非常にやりがいのある仕事といえます。
細胞検査士の収入は働く職場によって異なりますが、2020年時点では400万円前後が平均であるとしています。
ですが、病院の採用は非正規社員やアルバイトが多い傾向にあります。大学病院や独立行政法人のがん専門病院などで正社員として働くことができれば、年収500万円台も見込めます。
細胞検査士は、臨床検査技師もしくは衛生検査技師の資格がなければ受験できません。そのため、臨床検査技師や衛生検査技師のキャリアアップ資格ともいわれています。
また臨床検査技師は国家資格ですが、細胞検査士の試験は認定資格となります。
細胞検査士資格認定試験を受けるためには、日本臨床細胞学会が定めた下記の受験資格の中の1つを満たしている必要があります。
臨床検査技師ないし衛生検査技師として、主として細胞診検査の実務に1年以上の従事した者、細胞検査士養成所あるいは養成コースのある大学の卒業、卒業見込みの者
試験は1次、2次があります。
1次試験:筆記試験、カラープリントによる細胞診
2次試験:1次試験合格者のみ受験可能、実際の細胞でスクリーニングをしたり標本を作製するなどの実技試験
1次試験の筆記では、総論、技術、婦人科、呼吸器、消化器などを含めた計120問が出題されます。出題範囲をしっかりと勉強して身につけるため、過去問を何度も解くことが合格への近道でしょう。
また2次試験では、典型的な症例に目を通しておくことが大事なポイントとなります。標本作製技術のレベルを問う実技試験では、一連の流れをスムーズにおこなえるような反復練習が必要となるでしょう。
合格率は、一次試験で約50%、二次試験で約50%となり、最終的試験合格率の全国平均は毎年約25%ほどと言われ、認定資格のなかではかなり難解な試験となります。
細胞検査士の資格は、取得から5年間が有効期間となります。その間に細胞検査士の資格を更新するために研修を受けたり、セミナーに参加したり、論文の発表をするなどして更新のための単位を稼がなければなりません。
ですので、資格取得後も日々学びを深めることができる職業であるといえます。
細胞検査士は、先ほどもご紹介したように臨床検査技師などの資格がないとなることができません。そのため臨床検査技師の資格で病院に正社員で就職し、キャリアアップのために資格を取得して、そのまま正社員として細胞検査士の業務をおこなう方が多い傾向にあります。
ですので、国際細胞検査士以外でこの資格のみで就職活動をおこなう方は少ない傾向にあります。
ただ、資格取得者への評価は非常に高いため、資格を取得し経験を積むことで細胞検査をする職場においては重宝される資格ともいえます。
- 著者
- 坂本 穆彦
- 出版日
『細胞診を学ぶ人のために』は細胞診初学者の手引き、細胞診従事者の生涯教育テキストといわれている1冊です。
細胞検査士を目指す技師や学生だけでなく、細胞診専門医を志す医師、ベテランの技師にとっても最初の一歩を踏み出すきっかけとして読まれています。実際に細胞検査士になりたいと考えた方の多くがまずこの1冊を購入しています。
細胞検査について初めて学ぶ方向けということもあ、り解説などが非常に分かりやすいことが特徴です。また、医療業界は日進月歩であり変化が大きい分野です。この変化に速やかに対応d系るように新しく変わった情報もすぐに更新されていくことがポイントです。
この本を出している出版社は医療の世界で精通しており、医療系の多くの学校がこの会社の教科書を使うほど。
細胞検査士になりたいという方はまず読んで頂きたいです。1冊持っていることで、細胞検査士として働く上で長く活用できるでしょう。
- 著者
- ["水口 國雄", "東京都がん検診センター"]
- 出版日
こちらも細胞検査士を目指す方に購入者が多いのですが、先ほどの本と比べると、細胞検査士の資格を取得することを決め、勉強を始めている方に購入者が多い傾向にあります。
写真がオールカラーで非常に使いやすい1冊です。この本の編集は、認定試験の問題作成にかかわっている組織がおこなっています。そのため、本書にも演習問題がたくさん載っており、認定資格試験の出題傾向に沿ってつくられています。本格的に勉強を始めた方は試験対策として活用しやすい1冊でしょう。
他の本と比較すると少々お値段は張ってしまいますが、難易度の高い試験に合格したい、早くからしっかりとした知識を身に着けたいと考えた場合には、コストパフォーマンスがよい本であるといえるでしょう。
- 著者
- 小倉 加奈子
- 出版日
まだ臨床検査技師などの資格も取っていないという方や、今はまだ細胞検査士の試験を受けることができないが将来的に細胞検査士の資格取得をを考えている方に、細胞検査が何かを知って頂くために読んでほしい1冊です。
この本のメインは「病理学」です。細胞診は病理学の1つであるため、もちろん本書には細胞検査についても詳しく書かれています。
イラストも豊富で説明もとても分かりやすいため、医療の世界にまだ身を置いていないという方でも読みやすい1冊です。
癌という病気を診断する上で細胞検査がどう役立つのか、癌と細胞の関係などこれから細胞について勉強する方の基礎としておすすめしたいです。
臨床検査技師などの資格がないと資格を取ることができないため、現在無資格の方がすぐに職業に就くことはできません。
また、細胞検査士という職業だけでの就職も難関であるといえます。試験も難しく合格率も低いですが、生涯勉強ができ、何よりやりがいを感じられる資格であることは間違いありません。
細胞に興味がある、細胞の分野から医療に貢献したいという方は、ぜひ1度ご紹介させていただいた本を読みつつ、この道を検討していただければ幸いです。