地球温暖化を防ぐために、エネルギー政策は大きな転換を迫られています。こうした状況下で注目が集まっているのが「再生可能エネルギー」です。この記事では、代表的な再生可能エネルギーの種類や、メリットとデメリット、現状と課題などをわかりやすく解説していきます。
再生可能エネルギーとは、自然界に存在するさまざまなエネルギーのこと。太陽や生物学的、物理学的なものに由来し、自然界によって補充されるものです。
1950年代から60年代にかけて「エネルギー革命」がおこなわれた結果、日本はエネルギーのほとんどを石炭や石油などの化石燃料から得るようになりました。しかし、公害問題の深刻化やオイルショックなどをきっかけに、エネルギー政策の転換を迫られます。その過程で、再生可能エネルギーは「枯渇しないエネルギー源」として注目を集めるようになったのです。
その後、国際的に地球温暖化対策の機運が高まり、再生可能エネルギーは環境への負担が少ないことから、温暖化対策の観点でも重視されています。
このような状況を背景に、日本では1974年に定められた「サンシャイン計画」のもと、再生可能エネルギーに関する本格的な研究が始まりました。
その後も再生可能エネルギーの普及を図り、さまざまな政策が進められています。たとえば2012年には、温室効果ガスの排出削減の取り組みとして、再生可能エネルギーで発電された電気を一定の価格で買い取ることを電力会社に義務付けた「再生可能エネルギー固定価格買取制度」が導入されました。
2019年に、環境エネルギー政策研究所(ISEP)が発表した日本国内における発電量の電源別内訳によれば、再生可能エネルギーが占める割合は約17%まで拡大し、今後もさらに拡大を続けていく見通しとなっています。
一方で、後述するようにコスト面や安定的な電力供給の面で、再生可能エネルギーには課題も残されている状態です。
代表的な再生可能エネルギーの種類と、発電方法を紹介します。
戦前から導入されていた再生可能エネルギーです。
ダムや河川の流れなどを用い、水の流れや落下の運動エネルギーでタービンを回転させて発電。ほかの再生可能エネルギーと比較して、電力供給が安定的なだけでなく、1度に大量の電力を供給できるメリットがあります。
「サンシャイン計画」で主な研究対象とされたことをきっかけに、現在日本でもっとも普及している再生可能エネルギーです。光のエネルギーを直接電気に変換する作用をもつ「太陽電池」と呼ばれる機器を用いて発電します。
最大のメリットは、規模の大小で発電効率が変化しないこと。そのため、ほかの再生可能エネルギーより小規模な運用に適していて、産業用の大規模なものだけでなく、各家庭で利用するような小規模な発電システムも普及しています。
風で風車を回転させ、タービンを回すことで発電します。再生可能エネルギーのなかでもエネルギーの変換効率が比較的高いほか、日夜を問わず発電できる、洋上に発電施設を設置することができる、などのメリットがあります。
火山活動などによって作られた熱水や蒸気を用いて、タービンを回し発電します。水力発電と同じように安定的にエネルギーが供給できるほか、発電に用いた熱水や蒸気を二次利用できる点がメリットです。
バイオマスとは、木材など動植物から生まれたエネルギー源として再利用できる生物体のこと。木材以外にも農産物の廃棄物などがあります。これらを燃焼させてガスや蒸気を作り、タービンを回して発電します。
発電方法は火力発電と似ていますが、化石燃料を用いる火力発電よりも環境への負担が少ないことがメリット。環境負担が軽いのは、「カーボンニュートラル」と呼ばれる、燃料となる植物が光合成で吸収する二酸化炭素量と、発電で排出される二酸化炭素量が等しい現象が起こるためです。
ここまでいくつかの再生可能エネルギーを紹介してきましたが、それぞれに共通するメリットとしては次のことが挙げられます。
特に近年は、地球温暖化への対策が急務といわれていて、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは「持続可能な社会」を構築するうえで必要不可欠といえるでしょう。
一方で、それぞれの発電方式には課題も残されています。主なものは次のとおりです。
現状では、すべてのエネルギーを再生可能エネルギーに頼ることは困難です。それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、火力発電なども組みあわせながらエネルギーを確保する必要があるでしょう。
最後に日本における再生可能エネルギー事業の取り組みを紹介し、展望と課題についてまとめます。
日本は1970年代に起きた「オイルショック」以後、再生可能エネルギーの普及を図ってさまざまな政策を実施してきました。
近年ではエネルギー確保のためだけでなく、「京都議定書」や「パリ協定」で定められた温室効果ガスの排出削減義務を達成するうえでも再生可能エネルギーの利用拡大が求められるようになっています。
その結果、全発電量に占める再生可能エネルギーの割合は増加を続けてきました。一方で、ドイツのような再生可能エネルギー大国と比較すると、その割合は依然として低いことが指摘されています。
そこで日本政府は、安全性(Safety)と自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を並行して実現する「3E+S」を目標に掲げ、その一環として2030年度までに再生可能エネルギーの割合を、22~24%程度まで増加させることを目指しています。
ただ再生可能エネルギーには先述したようにデメリットもあります。また発電施設を整備する過程でもトラブルが頻発しているのです。
たとえば、「再生可能エネルギー固定価格買取制度」の導入をきっかけに大規模な太陽光発電システム(メガソーラー)が各地で建設されました。しかし用地確保のために無理な開発がおこなわれた結果、自然環境や景観が損なわれていると地域住民の反発を招いたことも。
今後も再生可能エネルギーの導入は拡大を続けていく見通しですが、そのためには、コスト削減や安定供給の実現だけでなく、地域との共生を図ることも求められていくでしょう。
- 著者
- 山家 公雄
- 出版日
本作は2020年現在の日本の電力事業を批判的に検討し、その問題点や課題を整理したうえで、改善の方策を提言したものです。
最新の情勢を反映し、再生可能エネルギーの比率を拡大するために何が障害となっているのかをわかりやすく提示します。
また、ドイツを中心に欧州各国の取り組みが紹介されているので、世界的な電力政策の動向も整理することができるでしょう。
- 著者
- 安田 陽
- 出版日
作者は、日本における風力発電の第一人者。本作は「電力システム編」「経済・政策編」「系統連系編」「風力発電編」とあるシリーズのうちの一冊です。シリーズすべてを読むことで、再生可能エネルギーに関する個別の事項から全体像まで理解できるでしょう。
さまざまなデータが細かく提示されているだけでなく、クイズ形式で内容をまとめるなど、読みやすくなるような工夫がされているのが魅力的。現状や課題、今後の展望について考えるうえでよいきっかけになる一冊です。