日本が誇る文化である舞妓・芸者。顔に白粉を塗り、きれいな着物を着て、外国人だけでなく日本人であってもついその姿を目で追ってしまいますよね。 広く知られている舞妓・芸者ですが、詳しい仕事内容はどうなっているのでしょうか。なかなか舞妓・芸妓に関わる機会がない人にとっては気になるところです。 今回はそんな舞妓・芸者の仕事内容や働き方、やりがいまで詳しく解説します。舞妓や芸者に憧れがある、目指しているという方にとって背中を押すような内容になっていればと思います。 記事の最後には、舞妓や芸者の世界を知るうえで役に立つ本を3冊紹介しているのでぜひご覧ください。
舞妓や芸者とは、歌や踊りなどの芸で宴会の場に花を添える人たちのことです。芸以外にはお客さんの話し相手になったり、お酒を注いだりするおもてなしのプロでもあります。
舞妓・芸者の起源は古く、約300年前の江戸時代、京都の八坂神社のある東山周辺の水茶屋が関係していると言われています。その店で働いていた茶汲みをする女性が歌を聞かせ、舞を踊るようになったことが舞妓・芸者の始まりと考えられているのです。
その後、お茶や団子を出していた娘たちが三味線や踊りを披露するようになり「舞妓・芸者」が生まれたと言われています。
また舞妓と呼ばれているのは主に京都のみで、ほかの地域では見習のことを半玉(はんぎょく)といいます。同じように芸妓は京都での呼び名で、芸者は関東地方での呼び名となり、どちらも一人前であることを示しています。
舞妓・芸者はひとくくりに呼ばれることも多くありますが、実際にはこの2つには明確な違いがあります。
◾️年齢
舞妓と芸者の一番の違いは年齢です。舞妓は15~20歳の芸者になるため修行中の少女であるに対し、芸者は舞妓を修了し宴会などで芸を披露する20歳以降の女性のことをいいます。芸者には年齢上限はなく、過去には96歳の芸者もいたようです。
◾️格好
また、格好にも違いがあります。舞妓は地毛を結い華やかなかんざしをつけ、柄入りの色鮮やかな着物を着用しています。「だらり帯」と呼ばれる帯を締め、お座敷かごを抱えている姿を見たことのある人は多いでしょう。
髪の毛も舞妓は地毛を結うのに対し、芸者はかつらをし、かんざしは付けず無地のシンプルな着物を着用しています。舞妓は少女らしい華やかさを表現し、芸者は落ち着いていて品のある女性を表現しているのです。
舞妓は見習いのため置屋と呼ばれる養成所に住み込み、三味線や舞の修行をします。また、ある程度スキルがついてきたら先輩の芸者とともに宴会でお酌をするなどして芸者の仕事を学びます。舞妓の期間を経て、20歳になる前に自分が本当に芸者になるのかという適性を見極めます。
芸者はお酌をしたり余興をおこなったりしてお客さんをおもてなしする仕事をしています。しかし、ただ芸を披露するだけではありません。客層は国籍や年齢、仕事などさまざまなので、その場に合った話題集めや、外国語の習得などもする必要があります。
「京都へ行ったときに舞妓や芸者を見た」という方も多いのではないでしょうか。
京都の舞妓や芸者は主に、お茶屋や置屋が多く集まる「京都の花街」で活動をしています。花街には現在、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して「五花街」と呼ばれており、それぞれに歴史も成り立ちも違います。そのため活動する花街によって舞妓・芸妓の色には少し違いがあるでしょう。
しかし、舞妓・芸者は東京・石川・新潟など(ほか多数)さまざまな場所で活動しています。
舞妓と芸者の働き方には大きな違いはありませんが、給料面に関してはかなり違いがみられます。
◾️舞妓の場合
舞妓は見習い期間のため給料はありません。その代わり、月に1〜2万円のお小遣いがもらえ、衣食住の環境は保障されています。
また、勤務時間は特に決められていません。午前中はお稽古をし、午後18時ごろからお屋敷を2件ほどまわります。そのため帰りは23時以降になることが多いようです。午後には比較的時間があるため、その時間を使い休憩をしたり食事をとったりします。
◾️芸者の場合
芸者は歩合制で給料が支払われます。1回の宴席でお客さんは5万円ほど料金を支払うため、そこから諸費用を差し引いた額が支給され、時給にすると2000~3000円ほどとなるでしょう。高度なスキルを持つ芸者は、時給や宴席の回数も増えるためその分、収入もアップします。
芸者の1日は10時ごろからの稽古から始まり、休憩をはさみつつ、18時ごろから宴席を回ります。芸者の場合、外国人への講師や観光PRなど、いつもとは違った仕事もあるようです。
舞妓や芸者のやりがいは、お客さんの笑顔に触れられることでしょう。
お客さんとかかわる仕事であること、また外国人にも人気があるため国際交流する機会が多いのも楽しいところですね。日本の文化の継承をするうえで大変重要な役割を担っています。
舞妓や芸者の大変なところは修行中覚えることがたくさんあることです。また、全ての業務ができるようになっても常に芸を磨く必要があります。接客に挨拶まわり、芸の鍛錬と多忙を極めます。華やかな職業に見えますが、体力と気力がなければ続きません。
◾️人と関わることが好きな人
仕事をするうえで多くのお客さんや、なかには外国人観光客などさまざまな人とかかわる機会があります。そのため、人前でのマナー力や外国語レベルの向上など常に自分を磨き続けることが必要です。人との会話を楽しむ・会話を盛り上げることが好きな人には向いているといえるでしょう。
◾️粘り強さのある人
舞妓になるにはまず置屋にて「仕込み」を受けなければなりません。この仕込みは10カ月〜1年ほどかかるため、今すぐにでも舞妓になりたいと考える人には厳しいかもしれません。粘り強く、時間がかかったとしても舞妓になりたいと粘り強く頑張れる人は適性があるかもしれません。
◾️協調性のある人
舞妓・芸者の世界は女性だけの縦社会です。そうした上下関係が強く残る業界で円滑な人間関係を作れる人でなければ、舞妓・芸者の世界で生きていくのは難しいでしょう。置屋では先輩の舞妓・芸者とも一緒に住み込みをするので、生活面でも協調性のある人は向いています。
また、舞妓・芸者は今や外国人にも人気のある日本の文化です。この文化を守りたい、次世代に継承していきたいという強い思いのある人は活躍できることでしょう。
舞妓とは芸者の見習いのことを指します。そのため芸者を目指す人もはじめは舞妓としてスタートします。しかし最初から舞妓になれるのではなく、10カ月〜1年間は「仕込み」として基礎を身に付けながら適性を判断されます。その際、学歴などは重要視されません。
①置屋に所属する
まずは、衣食住や芸のいろはを教えてくれる置屋に、仕込みとして所属することが条件となります。置屋には直接連絡を取って面接をしてもらうことが一般的です。未成年者の場合、女将と保護者が面接をするため、保護者の同意が必要となります。
所属が決まったら、先輩の舞妓・芸者がいる置屋に約1年間ほど住み込みます。住み込みの間は、朝は先輩たちより早く起き、夜はお座敷が終わった後の後片付けなどをします。
その間、置屋の掃除や舞踊の稽古をこなし、京都ならば花街での挨拶やしきたりなど行儀作法を徹底的に学びます。なかでも京言葉の指導は厳しく、独特なイントネーションや言い回しを覚えるのは大変です。
この期間を終えた段階ではまだ舞妓でもありません。その後、置屋のお母さんが日々の修行や舞妓・芸者としてのセンスなど総合的に判断し、晴れて舞妓の見習いになることができます。
②舞妓見習いとして仕事を覚える
舞妓見習いの期間は約1カ月ほど。先輩の芸者についてお座敷へ行き、現場で仕事を覚えます。そうして見習いとしてお座敷での仕事を覚えたら、やっと舞妓としてデビュー。このデビューを「品出し」といいます。
ここからお座敷に行って仕事をしながら、日本舞踊以外に三味線、囃子、唄、茶道の修行が開始します。実はここからが本当の修行の始まりなのです。
また、客席での所作や言葉遣いも大変重要な修行です。姐さんと呼ばれる先輩が付き、芸者としての立ち振る舞いを学びます。修行には終わりがなく、芸者である限りは常に高い目標を持って努力し続けることが大切です。
将来、芸者として働くために一番ネックなのが年齢制限があることです。舞妓として置屋に所属し修行するためには15~20歳という年齢制限があります。中学卒業後の15歳から修行をし、成人になるタイミングで芸者として活躍することが一般的です。
最近では高校卒業後の18歳からでも受け入れている置屋もあるようです。しかし舞妓は少女っぽさが売りで、かつ多くの修行があるため、高校卒からでは修行の期間が短く、他人より倍の努力が必要となるでしょう。
また、時代の流れから成人を超えて芸の道に入る人も多くなっています。その場合は、舞妓を経ずに芸者として修行を積むケースもあるようです。ただ、結婚を機に芸者をやめる人が多いため、なかなか年齢が高くなってから目指す人は少ないです。
- 著者
- ["ひろし, 溝縁", "有紀子, 松田", "圭子, 田中", "真紗子, 山本", "詩音, 片山"]
- 出版日
芸者が集まる花街(かがい、はなまち)。花街は京都だけでなく全国にあります。近年では観光客も多く集まり、日本の文化を継承する場所として知られています。
具体的に、日本にはどのような花街があるのでしょうか。そのことについて詳しく解説しているのが『花街と芸妓・舞妓の世界:継がれゆく全国各地の芸と美と技』です。
この本では全国の花街について、歴史や文化などの視点から詳しく紹介しています。舞妓や芸者のみならず、それを支える職人たちにも焦点を当て、写真付きで分かりやすく解説しているので、そういった視点で見てみたい方はぜひご覧ください。
- 著者
- 浅原 須美
- 出版日
実は、東京には6つの花街があり、それぞれの花街によって雰囲気は全然違います。写真を通して詳しく東京の花街について知りたい方にはこちらの本がおすすめです。
浅原須美氏著作の『東京六花街 芸者さんから教わる和のこころ(地球の歩き方GEM STONE)』という本です。
「一見さんはお断り?」「舞妓と半玉の違いって?」といった疑問を詳しく解説しています。京都やほかの地域との違いを感じられる本で、中国語や英語での解説も少し載っているので、外国の方に紹介する際のガイド本としても活躍してくれますよ。
- 著者
- 西尾 久美子
- 出版日
舞妓・芸者の写真や紹介をする本は多くありますが、経営学の視点で解説している本は意外と少ないのではないでしょうか。
舞妓や芸者をビジネスとして知りたい方には、西尾久美子氏著作の『京都花街の経営学』がおすすめです。
この本では舞妓と芸者の見分け方や花街のIT化、さらには芸者と結婚できる条件について独自の視点から詳しく解説しています。美しいだけでない舞妓・芸者の魅力を知りたい方はぜひご覧ください。
時間をかけて厳しい修行を積む、おもてなしのプロである舞妓・芸者。舞妓は見習いであり、芸者は一人前であることを指します。また活動する地域によって呼び方にも違いがあり、舞妓・芸妓の呼び名は京都だけということもわかりました。
舞妓になるにも、芸者になるにもそれなりの時間がかかります。資格取得など明確な指標がないため、日々の修行への姿勢や、舞妓・芸者という職業への強い情熱などが必要とされます。想像以上に厳しい世界です。
日本の文化をこれからも継承していきたい、国際交流にも興味があるという方はぜひ紹介した本を読んでみてくださいね。