第1回も好評をいただいた「フリースタイル書評バトル-芸人編-」。バトル形式で芸人に本をおすすめし合ってもらい、その紹介文を読んだ皆さまからの投票で、今後「連載」の権利を獲得する芸人が決まります。 第2回のテーマはズバリ、「出版芸人」です。喋り言葉で勝負をする芸人でありながら筆をとり、書き言葉でも表現することを選んだ彼らに、本領を発揮していただきました。自らの本を出版するまでに彼らを突き動かした、ルーツの書籍とは?
6月に第1回「今、ラジオが面白い芸人」として開催し、たくさんの方に投票いただいたこの企画。(前回の記事が気になるという方は、こちらの記事をご覧ください。)
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 開催!第1回「今、ラジオが面白い芸人」>
第2回となる今回、本をおすすめする芸人は本を出版したこともあるこちらの4名です。(芸歴順、敬称略)
多種多様な書籍を著した4名ですが、それぞれどんな作品に影響を受けたのでしょうか?
誰がどの本を紹介しているのかは、投票期間終了まで公表しません。ただ、あなたの1票で、連載の権利を獲得する芸人が決まります。
投票は、誰が書いたのかに縛られず、純粋に紹介する文章だけでおこなってください。
【企画概要】フリースタイル書評バトル-芸人編-とは?
【投票方法】Twitterフォームから(投票は締め切らせていただきました)
記事を読んだ皆さんには、投票でこのバトルに参加していただけます。
紹介文の下にも同じ投票フォームを用意していますので、ぜひ記事を全て読み比べてから投票してみてください。
投票終了後にこの企画を知ったという方は、「自分だったらこの作品に投票した」などと想像しながら読んでみてください。
<結果発表を見たい方はこちら!>
それでは早速、バトルの開始です!
小説家になりたいなぁと思って定期的に小説を書いている。なので勉強も兼ねてそこそこ小説を読んでいるのだが、時折何のために本を読むのだろう?と考えることがある。そこそこのそれなりだから偉そうなことは言えないが、それでも僕なりに出した答えがある。
――本を読む前と読んだ後では違う人間になっているということだ――
何でもいい。「その本を読む前はリンドウという花の存在を知らなかったが、調べてみよう」とか「主人公の生き方がカッコ良かったから真似してみよう」とか、そんな程度で充分だ。
得るものがひとつでもあれば、儲けもんでなーんにも心が動かされなかったという本は山程ある。もちろんこれは僕にとっては、という意味で他の人にとっては人生で忘れられない本になることももちろんある。読む年齢や置かれた状況というのが大いに関係がある。なので心が動かされることがあればラッキー。タイミングもバッチリというのは奇跡みたいなものだ。
皆のタイミングに合うかなぁ? 合うといいなぁ。
僕が大学生の時にそれまで生きてきた人生観をグラリと根本的に、抜本的に、そりゃもうね、根幹ぐらぐらになるくらいの本に出会った。
しかも散々、小説の話をしていたのにオススメするものは漫画。しかも4コマ漫画。おまけにギャグ漫画だ。
業田良家先生の『自虐の詩』 。
最初はパラパラと流し読み程度に暇潰しとして読んでいた。はじめはというより上下巻の下巻の4分の3まで暇潰しとして読んでいた。しかし残り4分の1に差し掛かった時に気持ちは鷲掴みされるし、何度も戻り読みさせられるし、そのたびに気持ちを揺さぶられ、最後の頁をめくった時には、22歳の僕はうぉーと叫びながら大号泣していた。大号泣しながら上巻をもう一度読むと、このギャグは必要なひとコマだったのかーと突かれる思いをした。
『生きる』という意味のわからなかった僕は22歳でこの作品に出会えて本当に幸運だった。まさしく読む前とは明らかに違う人間になっていた。
僕にとってこれが読書の意味。皆さんにもぜひ体感してほしいし、願わくば『自虐の詩』を騙されたと思って、手に取ってください。
- 著者
- 業田 良家
- 出版日
- 著者
- 業田 良家
- 出版日
ノンフィクションものの本が好きだ。僕は本を選ぶ時にタイトルのパンチ力がガツンと来ないと、 勧められても手が伸びない。葉山マリヤさんの『29歳の誕生日、あと1年で死のうと決めた。』このタイトルに、29歳をとっくに過ぎた僕はやられた。 誰でも一度は考える、ある日突然「あれ?なんか思ってた人生と違う」……ここからスタートするある女性の物語。
派遣社員の「私」は29歳の誕生日にコンビニで小さなショートケーキを買って帰る。食べようとした時に苺が床に落ち、まだいける、と必死に洗う。この時ふと、私のなかで心の糸が切れる。 あれ?誕生日の日に必死に何してるんだ?と号泣する。
この「掴み」にグッと引き込まれた。僕がネタを考える時に1番大事にしていることが「掴み」。これさえよければ後は適当。ダメなんだろうけど凄く自分のなかで大事だ。
「私」はここから人生を振り返り絶望的になった。ふとテレビを見るとラスベガスのカジノが映る。どうせなら29歳最後の日。華やかなここで人生の全てを賭けて勝負して30歳で思い残すことなく死のうと決めた「私」の人生のカウントダウンが始まる。
かっこよすぎる。僕は、一度芸人を辞めている。芸人をもう一度やろうと思った時に決めたことが2つあった。「今までの自分を変えないとダメ。」「言い訳をやめる」の2つ。でもそれがダメなら死のうとまでは思わなかった。
対して、こうすると決めてからの「私」は全てに前向きで言い訳が1つもない、完全な人間に変わった。お金のためヌードモデルも経験。同時に英語の勉強。徹底的にギャンブルの勉強を始める。いい意味で開き直ったのだ。性格も変わって人脈も広がり友達もできる。そして1年後、絶望しかなかった私が運命の29歳最後の日ラスベガスで全てを賭けた勝負に挑む。死ぬ気になればなんでもできるを本気でやったこの「私」の物語をぜひ読んでほしい。
- 著者
- 葉山 アマリ
- 出版日
今もなお、多大な影響を与えているビートルズ。キリストの生誕を境に BC/AC と分かれたように、ビートルズが売れる前と後では世界が別物に変わったと言われています。
そんなビートルズがデビューする前にもしも行けたとして、自分がビートルズに成り代われるとしたらあなたはどうしますか?
この漫画の主要人物4人はビートルズの大ファン。本物さながらの演奏テクニックでコピーバンドを組んでいたが、方向性の違いで解散しようと揉めていると電車が迫る線路へ押し出され光のなかへ。気がつくと、なんとビートルズがデビューする1年前の1961年へタイムスリップ。
ここから物語が展開していくんですが、葛藤が実に生々しい。
ビートルズに成り代わってビートルズになろうとする者。
それをすると本物が世に現れなくなってしまうので反対する者。
ビートルズの曲を先に発表しきった後、本物のビートルズがどんな曲を作るのか見たい者。
読んでる途中で頭に浮かぶのは、もし自分が過去に行けたら「誰に成り代わりたいか?」ということ。
作中の彼らのように今や名曲として知られるものも過去に持って行ってしまえば盗作し放題。 サザンにだってミスチルにだってなれるわけです。ITに詳しければビルゲイツやジョブズにだってなれる。
1番胸が躍ったのはダウンタウン結成前にダウンタウンの漫才を先に世に披露するという想像でした。
しかしその後はどうなるでしょう?
盗んだ技術だけでやっていけるのだろうか。
盗作したという罪に苛まれないだろうか。
盗作した事実が誰かにバレないだろうか。
そもそも元の時代には戻れるのだろうか。
そんなその後の「もしも」もこの作品では丁寧に描かれています。
究極のたらればの世界をご堪能ください。
- 著者
- ["かわぐち かいじ", "藤井 哲夫"]
- 出版日
ゴッドファーザーに憧れた。
アンタッチャブルにシビれた。
ブラックレインに打ちのめされた。
いつも「ワル」になりたい自分がどこかにいたが、「悪(あく)」にはなりたくないので踏みとどまってきた。
果たして 「ワル」=「悪」なのか?決してそうとは言いきれない。映画などでは往々にして「ワル」い男にこそ美学があり、「善」のふりした本当の「悪」を倒してくれるものである。
さてこの物語、主人公は「悪」でもなければ「善」とも言いきれない、40過ぎのしょぼくれオヤジである。
会社では年下の上司にいじめられ、家に帰っても居場所はない。そんなダメリーマンが 「修羅の街」に左遷される所から物語は始まる。夢も希望もなく、あるのはただただ絶望のみ。そして左遷された土地で「悪」い人達とのアクシデントに片っ端から巻き込まれてしまう。
しかし、そんなダメ男は仮の姿で実は出来る男。そこから頭を使ってスカッとピンチを切り抜け、悪い奴らを気持ちよくなぎ倒して勧善懲悪!……とはまったくならない。
なんなら、どんどん悪い方向に追い込まれて行き絶体絶命の繰り返し。そのたびに、ほんの少しの悪運で命だけは助かるが身体はボロボロになる一方。しかしいつしか、巻き込まれたヤクザとの繋がりのなかで少しずつ芽生えてきたものがあった……。
街角に漂ってくる豚骨スープの匂い。
店の外の換気扇から出てくる焼肉の煙。
コンクリートにぶつけて折れた歯と、その血の匂い。
雨の日の土の匂い。
鮮明な描写で、絵だけでなく痛みや匂いまでしっかり伝わって来るので、いつの間にか完全に感情移入し物語の主人公に成りきっている自分がいた。
この作品には色んな悪人が登場する(「悪」を強調させるため敢えて悪人と言わせていただきます)。見た目どおりの悪い人、いい人風に近づいて利用しようとする悪い人、自分の保身のため相手を蹴落とす悪い人。
そんななかでこんなセリフをつぶやく怖い人が。
「そもそも、他人に迷惑をかけていない人間なんて存在しません。迷惑をかけていないと思い込んでいる人間はたくさんいますが」
(『Iターン』より引用)
社会に対する冷静な目線を持った人の登場で、主人公の意識にも変化が。
そして、胸のすくような気持ちのいいラストシーン。 最初に申し上げたとおり、主人公が悪をバッタバッタとなぎ倒す勧善懲悪なんてどこにもないが、「悪」に触れ、向かい合った結果生まれた主人公の成長に静かに「よし!」と拳を握れる。
この作品は間違いなく、私の「ヒーローもの」の1冊に加わった。
- 著者
- 福澤 徹三
- 出版日
- 2013-02-08
どの本を1番読みたいと思いましたか?
あなたの1票で、連載の権利を獲得する芸人が決まります。
投票はこちらから、7月24日(金)12時50分まで受け付けています。(※既に終了しました)
(おひとりにつき1票まで。Twitterへのログインが必要になります。)
結果発表は7月24日(金)18時にホンシェルジュのTwitterアカウントで行いますので、フォローしていただけると最新の情報をチェックしていただけます。
また、第1回の記事が気になったという方はこちらからご覧ください。
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 開催!第1回「今、ラジオが面白い芸人」>
たくさんの投票、ありがとうございました。
投票結果と、それぞれの本が誰のおすすめだったのかを発表します!(敬称略)
皆さんの執筆者の予想は当たりましたか?
ということで、優勝者は、Hi-Hi・上田浩二郎さんでした!
優勝したHi-Hi・上田浩二郎さんには、コラムの連載を依頼します。
連載開始は8月後半の予定です。お知らせはホンシェルジュのTwitterやnoteでおこないます。こちらをフォローしていただくか、honciergeのトップページでもチェックできます。どうぞお楽しみに!
それまで待ちきれない!という方は、第1回の記事もぜひご覧ください。
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 開催!第1回「今、ラジオが面白い芸人」>
今回ご紹介いただいた本も、どれも興味を引くものばかりでした。気になった本は、この機会にぜひ手に取ってみてください。
また、ご参加いただいた芸人の方々自身が執筆されている本も、多種多様な書籍ぞろい。ここからはその書籍を紹介していきます。芸人の方々のことをより知りたい方はチェックしてみることをおすすめします。
芸人としてのみならず、役者や振付師、脚本家としても多彩な活動を見せる芋洗坂係長による絵本が『みならい天使のさんたろう』。特技の貼り絵によってデザインされたイラストの優しい手触りとともに、心温まるお話を楽しむことができます。お子さまへの読み聞かせにもおすすめ。予想のつかない展開は大人でも楽しめます。
- 著者
- ["芋洗坂係長", "芋洗坂係長"]
- 出版日
Hi-Hi・上田浩二郎による、芸人生活の苦悩と喜びを綴ったノンフィクションの自伝作品が『リストラ芸人』。元々所属していた事務所をクビになってしまったり、月収が0円だったり……そこから「THE MANZAI」で日の目を浴びるまでの物語が、淡々としかしドラマチックに胸に届きます。相方・岩崎一則の陽気な言葉にも注目。応援している芸人がいる方は必読です。
- 著者
- 上田 浩二郎
- 出版日
- 2012-09-14
本業(芸人は副業⁉)のゴミ清掃員としての経験から、誰もが知っておくべきゴミにまつわる話をピックアップ。マシンガンズ・滝沢秀一によるエピソードを、妻である滝沢友紀の作画で紹介した1冊が『ゴミ清掃員の日常』です。間違えやすい分別の方法や分別の理由がここまで伝わるのは、すべてが実体験だから。この本を読んで、楽しくゴミについて考えてみませんか。
- 著者
- 滝沢 秀一
- 出版日
- 2019-05-30
呪文を唱えるように楽しく、難しい漢字を覚えられたら……。Twitterでも話題になった、「鬱」などの書けたらちょっとかっこいい漢字の覚え方。それを初めて書籍にまとめたのが『オジンオズボーン篠宮暁の秒で暗記!漢字ドリル』です。本人の言い方を真似したいという方も、この書籍のそれぞれのページにあるバーコードを読み取れば動画で見ることができます。他にも漢字が楽しくなる仕掛けが満載です。
- 著者
- 篠宮 暁
- 出版日
第3回以降も定期的な開催を予定しています。記事への感想がありましたら、Twitterにてハッシュタグ「#フリースタイル書評バトル」をつけてツイートをお待ちしております。「次はこの芸人さんにオファーをしてほしい」などの声もお寄せいただけますと嬉しく思います。
フリースタイル書評バトル
毎月4名ほどの芸能人が本のおすすめバトル!どの本を読みたくなったか、投票で参加していただけます。