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伝奇小説おすすめ5選!ホラーやミステリー好きにはたまらない傑作たち

更新:2020.9.20 作成:2020.9.20

古典的な伝承や怪奇事件などを題材にした伝奇小説。超常現象や超能力まで登場し、日常では味わえない一風変わった物語が展開され、ホラー好きにもミステリー好きにもおすすめできるジャンルです。ぜひ読んでもらいたい5作の伝奇小説を紹介しましょう。

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得体のしれない怪物の正体は?映画化もされたおすすめ伝奇小説『ぼぎわんが、来る』

新婚ほやほや、娘の誕生も目前に控えたサラリーマンの田原秀樹。幸せいっぱいの日々を過ごしていました。この日もいつものとおり出勤していると、後輩から来訪者が来ているとの伝言があります。

その人物は、なぜかまだ生まれてきていない娘と同じ名前。さらに取り次いだ後輩は謎の怪我で入院してしまいました。

それからというもの、秀樹の周りでは不審な出来事が続きます。このままでは家族にも危害がおよぶのではと心配し、女性霊媒師の比嘉真琴に連絡をすると、「ぼぎわん」という存在を知らされるのです。

著者
澤村伊智
出版日
2018-02-24

2015年に刊行された澤村伊智の作品。「日本ホラー小説大賞」を受賞し、2018年には映画化もされました。「ぼぎわん」という作者オリジナルのおばけが登場する伝奇小説です。

本作は全3章で構成されていて、1章は秀樹、2章は彼の妻である香奈、そして3章はオカルトライターの野崎昆の視点で描かれています。視点が変われば物事の見え方も変わるのが面白いところ。特に2章では秀樹が実はひどい男だということもわかり、興味深いでしょう。

「ぼぎわん」は、扉ごしに動く姿を見せたり喋ったりはするものの、得体の知れない存在。古典的な怖さと現代的な怖さがあいまって、読者を物語に惹きこみます。緻密な設定と緩急のついた展開も面白い、エンタメ性の高い一冊です。

背筋がゾクゾク、閉鎖的な島で展開される伝奇小説『黒祠の島』

調査事務所で働く式部剛は、謎の言葉と自宅の鍵を残して行方不明になってしまった友人の葛木志保を探すことになりました。彼女の故郷である夜叉島を訪問するものの、よそ者を嫌う住人たちは口を閉ざしたままです。

島で医師として働く泰田が協力してくれることになりましたが、彼が発するのは志保の死を肯定する言葉ばかり。真相を調べようとしない住人たちに不信感を抱いた式部は、島の歴史を紐解いていくことにするのですが、殺人事件が起こり……。

著者
小野 不由美
出版日
2007-06-28

2001年に刊行された小野不由美の作品。信仰と迷信、土着の文化、独自の慣習などがふんだんに盛り込まれた伝奇小説になっています。漫画化もされました。

黒祠とは、かつて明治政府がおこなった「祭政一致政策」に与せず、統合されなかった神社のこと。いわゆる邪教として弾圧された宗教です。閉鎖的な島の陰惨とした雰囲気にマッチしていて、読者をゾクゾクさせるでしょう。

またそれだけでなく、ミステリーとしてもしっかりと作り込まれているのが魅力的。予測不可能な展開ながらも違和感のないトリックで、納得感のある一冊になっています。

ホラーもミステリーも楽しめるおすすめ伝奇小説『Another』

持病の気胸を療養するため、都内から祖父母の実家へと引っ越しをした中学3年生の榊原恒一。転入した新しいクラスで、左目に眼帯をして不思議な雰囲気をした見崎鳴という少女に出会いました。

鳴に惹かれていく恒一ですが、クラスメイトはおろか教師まで、彼女を「いない者」として扱っています。異様な光景について誰に尋ねてみても、はぐらかされるだけ。そんななか、ひとりの女子生徒が階段から落ちて亡くなる事故が起こり……。

著者
綾辻 行人
出版日
2011-11-25

2009年に刊行された綾辻行人の作品。中学校を舞台にした伝奇ホラー小説です。漫画化やアニメ化もされています。

3年3組で始まってしまった死の連鎖。次々と生徒たちを巻き込み、とどまる様子を見せません。理解のできない怪奇現象に登場人物たちも疑心暗鬼に陥り、同時に読者にも恐怖が襲いかかります。

後半になると、作品はミステリー要素を帯びてきます。鳴は本当に存在するのか、クラスメイトが隠している秘密は何なのか、次に死ぬのは誰なのか……。タイトルになっている「Another(=もうひとり)」を含め、数々の伏線が張られているのでお見逃しなく。

史実とフィクションを織り交ぜた伝奇時代小説『吉原御免状』

宮本武蔵に育てられた青年、松永誠一郎。師の遺言に従い、江戸の吉原へ赴いて庄司甚右衛門という人物を訪ねることになりました。しかし庄司はすでに死亡していて会うことができません。

その時、突如刺客に襲われるのです。彼らは家康が庄司甚右衛門に下した密書「神君御免状」を探しているそう。徳川幕府における重要な情報が書かれていて、裏柳生の忍びたちが手に入れようと躍起になっており……。

著者
隆 慶一郎
出版日

1986年に刊行された隆慶一郎の作品。「直木賞」の候補にもなりました。吉原成立の裏に隠された真実や、徳川家康の影武者説など、史実とフィクションを織り交ぜた構成が魅力的な伝奇時代小説です。

「神君御免状」をめぐる戦いを中心に、幕府の老中たちの暗躍、武家社会と公家の関係など華やかなだけではない歴史の一面を知れるのが嬉しいでしょう。

また主人公の松永誠一郎の人間性も、作品に深みをもたせています。宮本武蔵に育てられた凄腕の剣豪、女性たちを惹きつける美貌、そして出生の秘密……時代小説に苦手意識がある人でも楽しめる一冊です。

女性たちの活躍を描いたおすすめ伝奇時代小説『柳生忍法帖』

時は1642年春。悪の限りを尽くしていた会津藩の藩主・加藤明成に見切りをつけた国家老の堀主水は、一族を連れて会津から出ていく「会津騒動」を起こしました。

これに怒った明成は、幕府の許可を得て彼らを捕縛。一族の女性たちが匿われていた尼寺も襲撃し、次々と殺していってしまいました。

寺の後見人だった天樹院千姫がその場を収めますが、生き残ったのは堀の娘であるお千絵を含めた数人のみ。彼女たちは、自分たちの手で明成と、彼の部下「会津七本槍」に復讐することを誓うのです。

著者
山田 風太郎
出版日

1964年に刊行された山田風太郎の作品。「忍法帖」シリーズのひとつですが、忍者が登場しない例外的な一冊です。

「会津七本槍」の面々は、いずれも武芸に秀でていて普通の武士でも簡単に手を出せる相手ではありません。そんな彼らに対してなんの心得もない女性たちが、知恵を絞りながら挑むという展開が見どころです。

ひとつひとつの戦いは息を呑む迫力。それでいてどこかコミカルな雰囲気と痛快なやり取りが続き、飽きさせません。ラストシーンはグッとくるものがあるでしょう。