食べることが好きな人が一度は就職を考えるであろう「食品業界」。文字通り、食べるものにまつわる仕事ならすべて含まれてしまいそうな、規模の大きな業界です。しかし具体的にどんな職種があり、業務内容がどうなっているのか知っている人は少ないのではないでしょうか。 「何となく漠然としたイメージしか持てない」という人向けに、本記事では食品業界の大まかな見取り図を解説します。業界や食について知識を深められそうな書籍も紹介するので、記事とあわせてぜひ読んでみてくださいね。
「食品業界に就職すると自社製品がいっぱいもらえるよ」そんな先輩の話を聞いてちょっと魅力に感じてしまったりすることがありませんか。
就職活動を意識する世代の人は、業界について調べてみたりしたこともあるかもしれません。意外と広い「食品業界」、どのような企業と仕事があるのでしょうか。
「衣食住」という言い回しがあるほど、「食」は人間の生活にとって欠かせないものです。一方で、食にまつわる仕事にはたくさんの種類があります。「食品業界」というネーミングは食にまつわる産業を包括するような考え方なので、「これも食品に含まれるのか!」と思うような仕事が見つかるかもしれません。
学生にとっては飲食業は身近な存在です。普段から牛丼屋によく行くという人もいるでしょうし、居酒屋でアルバイトしているという人も少なくありません。
ただし、これらの外食産業は食品業界の中に含まれないことが多いようです。就職活動で「食品業界」という場合には、家庭内で消費する食品に関する仕事を指すと考えておけばよいでしょう。
農業・酪農・漁業など、食品の原材料を生産する仕事の一部は食品業界に含まれることがあります。企業が自社で使用するために直営で運営している農場などがイメージしやすいでしょう。それ以外にも、独立して経営しているものの、特定のスーパーや加工業などに直接卸の契約をしているところなどもあります。
一部の食品メーカーは、品種改良や生産技術開発に取り組む関連会社を持っていることがあります。農学部系のノウハウを持つ人や研究職がこのような企業に就職することがあります。
食品業界で商社の占める役割は大きいものがあります。できあがった商品の流通に携わるのはもちろんですが、原材料の仕入れもおこないます。
特に、大手の加工業は一定品質の原材料を常に仕入れる必要があります。商社は国内外から原材料を買い付けてきて、安定供給に寄与しています。
商社は「簡単に言うと何でも屋さんだ」と言われることがしばしばあります。その言葉通り、金額の大きい取引をすることもあれば、小売業に投資して経営に携わることもあります。
収穫した果物を切ってカットフルーツにしたり、水揚げされた魚を干物にしたりするのも加工産業です。また、カップラーメンやレトルトカレーを製造するのも加工産業に含まれます。加工業は非常に幅が広く、専門性もそれぞれに分かれます。機械化が進んでいるところもあれば、ほぼ手作業でおこなわれているものもあります。
加工産業は新商品の研究開発が盛んです。離乳食や介護食、災害時に温めなくても食べられるレトルト食品など、社会的な課題に食の切り口から解決策を見いだすという役割もあります。純粋に食に関心があるという人から、専門知識を活かして研究開発をしたいという人まで、さまざまな人に魅力のある業種といえるでしょう。
生活に欠かせないだけに安泰に見える食品業界ですが、今後の見通しはどうなっているのでしょうか。概況を見てみましょう。
日本国内は今後人口が減少していく見込みです。そのため、長期的には国内市場の縮小は避けられないという見通しが立てられています。
ただ、今後海外からの移住者が増えたりするとまた状況が変わってくるかもしれません。そのような場合は現在よりも食生活の多様化が進むため、食品業界に求められるサービスもまた増えてくるでしょう。
このまま国内市場が縮小していくという前提のもとで、業界内で課題となっているのは海外市場の獲得です。たとえばカップラーメンなどは海外でも一艇の評価を得ています。このように輸出できる商品を増やしたり、販売先ごとにローカライズしたものを開発したりと、新たな一手が求められています。
とても幅広い食品業界、まずは業界の見取り図を知って自分の興味関心にあうかを確かめるのが大切です。なかなか実際に足を運んでの就職活動が難しい今だからこそ、書籍を使うことをおすすめします。
- 著者
- 小西 慶太
- 出版日
『食品業界大研究』のような書籍は業界の大まかな構造を知るのに使いやすいでしょう。最新の情報まで網羅されているわけではありませんが、数年では変わらない全体像を見るのに役立ちます。
食品業界で働く前に知っておきたい基礎的な知識や、食の歴史、そして今後、隆盛になると考えられている食品業界の動向などを知ることができます。
なんとなく「食品業界で働きたい」と思っている方にもおすすめです。どんな職種で食品業界で働いていきたいのか具体的なイメージを固めるのにも役立つ内容となっています。
- 著者
- 小倉ヒラク
- 出版日
食にまつわることが好きという人は、自分の好きを深めてみるのもよいでしょう。食はその社会の文化とも密接につながっています。商売をする上では非常に重要な視点を、食を知ることから得ることができるわけです。
発酵もその1つです。日本では納豆や漬物など、さまざまなものを発酵させて食べる文化が盛んです。世界的に見てもアルコールは発酵食品ですし、それ以外にも各社会にそれぞれ独特な発酵食品が存在しています。
『発酵文化人類学』は人類と微生物の関係をわかりやすい文体で紹介している良書です。発酵は世界的なトレンドになってきていることもあり、今後食品業界としても需要が見込める分野です。
- 著者
- 旭屋出版編集部
- 出版日
食の流行に沿った書籍も探してみましょう。たとえばアルコールを飲む習慣がない人が増えてきていると言われています。一方、バーなどのアルコールが不可分な場の雰囲気が好きで、お酒は飲まないけれど雰囲気を楽しみたいという人もいます。
最近では日本初のノンアルコールバーが東京にオープンすることも話題になりました。ノンアルコールドリンクのなかでも、カクテルに似せた(=mock)ドリンクのことを「モクテル(mocktail)」と言います。
『MOCKTAIL モクテル 魅力広がるノンアルコールカクテルの世界』は人気の高いモクテルのレシピなどを掲載した書籍です。自分自身があまりお酒を飲まない、という人だけでなく、お酒が好きな食品業界志望者にもおすすめです。今後ノンアルコールドリンクの需要は増えていくことが予想されるため、早めに知識を付けておきましょう。
企業によって得意分野が異なり、非常に幅広い商品を扱う食品業界について解説しました。専門性の高い研究開発だけでなく、地道な業務もたくさんあり、なかなか食そのものに携わっているという達成感が得られないこともあるかもしれません。しかしやはり食に興味がある、食が好き! という人が意欲的に取り組める仕事がたくさんあるのも事実です。ぜひ自分の「好き」を生かせる仕事を探してみてください。