ホテルに宿泊したときに利用できる「ルームサービス」。聞いたことはあるけれど、実際に利用したことはないという人も多いかもしれません。 ルームサービスをおこなっているのは、料飲部門や宿泊部門に所属しているスタッフです。しかし、ルームサービスと一言でいっても、彼らは一体どんな仕事をおこなっているのでしょうか。知らない部分は多いですよね。 今回は、そんなルームサービスの仕事についてご紹介します。持っていると有利な資格や気になる収入面、ルームサービスで求められることなど詳細をお伝えします。 ルームサービスに興味がある方やホテルへの就職を考えている方は、ぜひチェックしてみてください。
ホテルは主に「宿泊部門」「料飲部門」「宴会部門」の3つの部門に分かれています。ホテルごとにばらつきはありますが、ルームサービスは料飲部門または宿泊部門に分類されていることがほとんどです。
ホテルに宿泊した際、部屋にルームサービスのメニュー表が置いてあるのを見たことがあるという方も多いでしょう。ルームサービスはゲストの部屋に料理を運ぶのがメインの仕事で、基本的にはルームサービス専用メニューを取り扱っています。
その他にも業務内容には以下のようなものがあります。
ホテルによってサービス内容が異なりますが、ホテル内にあるレストランの料理をルームサービスで提供することもあります。
料理をのせるサービスワゴンを操作しながらゲストの部屋まで行き、ゲストが滞在している部屋に入ってテーブルセッティングをします。ゲストの滞在時間を邪魔しないようにするためにも、素早くスマートな行動が求められるのもルームサービスの仕事の特徴です。
しかし部屋にルームサービスを届けるだけではありません。
部屋の中でテーブルセッティングをしているときに、ホテル周辺の観光スポットを聞かれたり、記念写真を頼まれたり、さりげなくゲストの滞在中の感想を聞いたりと、気を配ることは意外と多いのです。
ルームサービスの仕事を総合的にみると、イメージとしては旅館の仲居さんの仕事に近いのではないでしょうか。
ルームサービスの年収は?
専門学校・大学卒業どちらの場合でも、おおよその年収は200万〜350万円といわれています。接客業界の中ではあまり水準が高くはない職業です。しかし外資系ホテルや有名チェーンホテルの場合、年収が少し高いこともあります。
ルームサービスのリーダー職やその上のマネージャー職まで昇格すれば、年収400万〜800万円ほど稼げるケースも。入社してからの頑張り次第では、平均的な会社員の年収より高額なお給料がもらえる可能性もあります。
高校を卒業していればルームサービスとして入社できる企業もあります。アルバイトとしてルームサービスで働いている学生さんもいるため「職場の雰囲気を知りたい」「今すぐホテルの仕事をしてみたい」という方は、アルバイトの求人に応募してみるのもよいでしょう。
正社員としてリーダー職やマネージャー職につきたいと考えている場合は、専門学校や観光学が学べる大学を卒業することをおすすめします。専門学校は実践的なホテルマナーや語学を習得することができ、大学では、より観光業界やホスピタリティの重要性について知識を深めることができます。
ルームサービスで働くのに必須な資格はありません。しかし、外国人ゲストからオーダーを受けたり、料理の説明をしなくてはいけない場面も出てくるため、語学系の検定を持っておくと就職してからも安心です。また、料飲サービスに関する検定も持っておくと就職試験でのアピールポイントになります。
ルームサービスは料理に関する仕事の割合が多いため「食」の知識をつけたい方には、上記の検定がおすすめです。
◾️レストランサービス技能検定
「レストランサービス技能検定」は、一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会が実施している技能検定制度です。料飲サービスに関する資格としては、唯一の国家資格でもあります。階級は3級、2級、1級があり各6500円の受験料がかかります。
試験は年に1回おこなわれます。試験は学科と実技の2種類を受けなければならず、また試験受付から合格発表までは7カ月間ほどかかるのも特徴です。試験の流れを見てみましょう。
5月:受付開始
8月:学科試験、合格発表
10月〜11月頃:実技試験
12月:合格発表
実技試験を受けるには学科試験に合格する必要があるため、学科試験の対策は万全におこなう必要があります。
また各級にはそれぞれ受験資格が定められています。1級・2級に関しては長期の実務経歴が必須とされていますが、3級に関しては1年以上の実務経験があれば受験可能とされています。ですので料飲サービス業務に携わることになったらまずは3級の取得を目指しましょう。
◾️ユニバーサルマナー検定
一般社団法人日本ユニバーサルマナー協会が実施している「ユニバーサルマナー検定」は、高齢者や障害者に対するサポート方法やコミュニケーションの習得を目的とした検定です。
超高齢化社会が叫ばれる現代で、多種多様な人々をホテルに迎え入れるにあたって、安心・安全で失礼のない行動を身につける必要性は高まっているといわざるを得ません。
階級は3級、2級、1級とあり、検定ではなく講座を受講することで認定証を取得することができます。高齢者や障害者への基本的な向き合い方から、当事者のリアルに触れる形でユニバーサルマナーの習得が可能です。
講座を受講する前の研修も充実しているため、まずは研修に参加してから講座を受講するのがよいでしょう。
◾️和食検定
「和食検定」は、日本の食文化を正しく理解し、発信・継承するための必要な専門知識、実務知識を測る検定です。和のおもてなしを学ぶことで、ルームサービスだけでなく日常生活にも活かせる知識と技術を身につけることができます。
試験は毎年、2月と10月の2回おこなわれています。階級が初級、基本、実務の3つのレベルにわかれており、初級、基本レベルは誰でも受験が可能です。実務レベルに関してのみ、基本レベルの認定者が受験資格保有者となっています。
試験内容はすべて筆記です。どんな内容が出題されるのか、例として初級レベルの内容を見てみましょう。
日本人としては馴染みある単語が並んでいますが、基礎知識があるかと問われたら難しいところです。この機会に学んでみたいと思うような内容になっていますね。
合格率についても見てみましょう。
初級レベル:51.6%
基本レベル:38.7%
実務レベル:74.1%
数字を見る限り、難易度の高い検定であることが分かりますね。実務レベルの受験者は、実務などを通して知識を身に付けられているため、合格率が高くなっているようです。
ルームサービスの仕事に限らず、社会人として持っておいて損はない検定です。興味がある方はぜひ試験を受けてみてください。
前章でもお伝えしたとおり、ルームサービスはゲストの部屋の中まで入って料理のセッティングをおこないます。清潔感やコミュニケーション能力(言葉遣い)もとても大切です。身だしなみは髪の毛から爪の先まで手入れが行き届いている状態が望ましいとされています。
料理が冷めないよう素早い行動も必要とされるため、立ち居振る舞いから仕事のスピードまでスマートさが求められます。
ホテルでは基本的に「自分から気づいて積極的にサービスをおこなう」というのがセオリーの世界。しかし、ルームサービスは「ゲストからのオーダー(要望)を一つひとつを正確にこなす」若干受け身な印象を受けるサービスが多いため、就職してからギャップを感じることも。
コンシェルジュなどに比べると、同じことの繰り返しに感じることも多いかもしれません。ロビーに立つことも少なく、意外と裏方の仕事でもあります。
ホテルマンとして「ホスピタリティ(おもてなしの心)」はもちろん欠かせません。どうしたら相手が喜んでくれるかを考えることが好きな人にはおすすめの職業です。ホスピタリティを発揮するには、フロントやレストランスタッフといった他部署の仲間との連携も大切です。
- 著者
- 日本ホテル教育センター
- 出版日
和食検定は、日本人として日本の食文化を正しく理解し伝えていくための基礎知識と、和の食文化を継承・発信していくために必要な専門知識や実務知識の理解度を測るための筆記試験です。
日本への観光人気はこれからも高まっていくと考えられます。自分自身の和食マナーや知識を深め「日本の素晴らしさを世界に伝えたい」という志がある方は、こちらのテキストを参考に、ぜひ検定に挑戦してみてください。
- 著者
- 村松 友視
- 出版日
- 2013-12-04
ルームサービスで有名なのが、東京・日比谷にある「帝国ホテル」です。部屋のグレードによってルームサービスのメニューやサービス内容が異なり、ハイクラスな部屋ではフルコースを楽しむことができるのも特徴です。
こちらの本は、帝国ホテルに勤める30人の職人への取材内容を元にしたインタビュー集。どの章からでも読めるタイプの本で、カラー写真も掲載されているため、どなたでも読みやすい作りになっています。
インタビューは、帝国ホテルで働く職人の仕事ぶりや流儀を感じることができる内容になっており、読み進めていくうちに「ホテルではこんなこともするのか」という驚きにも出会えます。
- 著者
- 七條 千恵美
- 出版日
サービスのプロといえば、業界は違いますがCAの徹底した接客からは学ぶところが多いはずです。
『接客の一流、二流、三流』の著者は、日本航空(JAL)の客室乗務員として、お客様・会社から最高の評価を受けた元CA。サービス教官として1000人以上を指導した実績をもとに、一流の接客者になるための考え方・心構え・対応力などを紹介している本です。
「接客とは?」という素朴な疑問を抱えている方の入門書としておすすめの1冊です。
今回はルームサービスの仕事内容や収入について解説しました。
ホテルと聞くと一見華やかなイメージですが、ルームサービスは受け身で地道に感じる仕事も意外と多いポジションです。
しかし、ルームサービスから他の部署に異動することもあるため「ホテルで働きたい!」という方は、今回ご紹介した情報が役立つ場面もあるはず。今度ホテルを利用する機会があるときは、ルームサービスを利用して彼らの「スマートさ」を直に感じてみるのもいいかもしれません。