化粧品業界を志望する人は「メイク大好き」という人が多いかもしれません。しかし、実際には化粧についてまったく知らないという人もいれば、女性が出世しやすいからという理由で志望する人もいます。化粧品業界ってどんな感じなの? どういう仕事がある? といった基本的なところについて解説します。 また大手・中小・外資系などの違いについても説明します。転職を考えている人にとって参考になる情報かもしれません。 最後には化粧にまつわるおすすめ書籍も紹介しますので、興味がある人はそちらもぜひ手にとってみてくださいね。
化粧品に関する仕事というと、販売がすぐに思い浮かぶ人は多いのではないでしょうか。それ以外にも化粧品にかかわれる仕事は何種類もあります。職種ごとに見ていきましょう。
新しい機能のあるファンデーションや新開発の保湿成分を含んだ美容液など。新製品を造るために必要な技術を開発する仕事です。研究者としての仕事になるので、生理化学分野などの専門を持つ人が就職することが一般的です。
また、研究開発分野は化粧品メーカー以外も参入してくることがしばしばあります。いわゆる「異業種コスメ」で、医薬品メーカーから食品まで、さまざまな企業がコスメを開発しています。
「コスメ分野を新規事業とする」という戦略を持っているメーカーもありますが、「ほかの製品を開発している際にたまたまできた技術を使いたい」という場合も少なくありません。
開発された商品を製造する工程では、工学系のエンジニアだけでなく工程を管理する責任者なども必要になってきます。自社工場がある化粧品メーカーもありますが、製造を外注しているところもあります。たとえば無印良品などがそうです。製造にかかわる仕事がしたい場合は、「どこが作っているのか」に注目してみるのもおもしろいでしょう。
製品開発に技術は必須ですが、作った商品が売れるかどうかを調査したり、潜在的なニーズを洗い出したりする企画・マーケティング部門も重要です。特に商品としてのコスメに関心が高い人にはやりがいのある仕事になるでしょう。学生時代の専門性にあまり関係なく就職する人が多いようですが、経済学・商学を学んでおくと実務に役立つことも多いでしょう。
販売・流通管理は自社でおこなう企業もあれば、卸のみをおこなっているところもあります。そのため、メーカーに就職した場合は販売の現場にはあまりかかわることができないということも多いようです。特に下記のような大手ブランドは販売員を別枠で採用することがあるので注意が必要です。
百貨店やショッピングセンターに店舗を構える化粧品ブランドには「美容部員(ビューティアドバイザー、BA)」と呼ばれる専属のスタッフがいます。来店客にデモンストレーションとして実際にメイクをしたり、容貌に合わせて商品を紹介したりサンプルを渡したりと、メイクアップのスキルと知識が必要になる仕事です。美容部員はほかの職種とは別に採用をおこなっている企業が一般的です。
化粧品に関わる仕事のなかでも、「メイクをする」ことに関心がある場合は美容師資格取得を視野に入れるとよいでしょう。仕事としてのメイクアップは慶事のときに集中する傾向があり、ヘアセットも同時におこなうことが多いためです。
研究や製造には直接関わることはできませんが、化粧品専門のPR会社で働くこともひとつの選択肢です。新作の化粧品を顧客に届けるために、新聞やテレビ、Webメディアなどにどのようにアプローチしていくかを考えます。
化粧品を専門に取り扱うPR会社や、化粧品PRに強いPR会社などに就職することが一般的なようです。
コスメが好きな人は、国内大手のみならず、外資系・国内外の中小メーカーなど、たくさんの化粧品メーカーの名前をあげることができるのではないでしょうか。しかし、実際に就職活動をしようとすると業界内の構造がどうなっているのか気になってきます。
国内大手の一例として資生堂グループを見てみましょう。これまでの新卒採用実績を見ると、大きくわけて2種類の求人がおこなわれていることが分かります。研究開発に携わる総合職の技術系と、実際に店頭などで働く美容部員です。技術職は理系の学生に限定されて求人が出ています。
大手でも開発・製造に特化した企業だと、技術職のみを少数採用しているというケースもあります。ポーラ化成工業株式会社などが当てはまります。
このように、大手であっても新卒で求人があるポストの種類はあまり多くはないことがあります。「どうしても企画開発がしたい」「マーケティングに関心がある」といった、「業界 × 職種」にまで関心を絞り込んでいる人は、場合によっては大手ではなく中小の求人を探してみるとよいかもしれません。
中小企業は製造のみ、流通のみ、販売のみと、業界のなかでも一部の業態に特化した企業が多いようです。たとえばOEMを主としておこなっている企業であれば、研究開発から製造までの人材を採用します。関心がしっかり定まっている人なら、業種・職種で当てはまる企業が見つかりやすいかもしれません。
就活エージェントを通してみているとあまり新卒に縁がないように見えるのが外資系です。しかし、各社とも一定数の新卒を採用しているので、関心のある企業の採用情報は探しにいくとよいでしょう。
外資系の場合必須になってくるのが英語力です。現在英語にそこまで自信がなくともしっかり勉強する気があるかどうかがポイントになるでしょう。外資系というと厳しい、教育制度がないといった印象が強い人も多いかもしれませんが、社風によっても大きく変わるのでまずは情報を集めてみるとよいでしょう。
参考:レクミー
化粧品業界で今後存在感が大きくなることが予想される「越境EC」についても考えておく必要があります。
越境ECとは、国境を越えて売買がおこなわれるインターネット通販のことです。コスメ好きなら、韓国などから個人輸入をした経験のある人もいるかもしれません。こういった商取引が活発になってくると、国内以外に焦点を合わせて商品開発や販売自体をおこなう企業も増えてくるかもしれません。
化粧品業界は女性が多く働いているイメージがあるかもしれません。実際、就職活動中や転職先としても人気が高く、競争率が激しい業界です。特に大手の化粧品会社は狭き門と言われています。
ですので、新卒では他業界に就職したけれど、経験を積むにつれて「やっぱり化粧品業界で働きたい」と多いことでしょう。では化粧品業界への転職を考えた場合、どんな資格や経験が有利に働くのでしょうか。
研究・開発に限らず化粧品会社では専門的な知識を必要とされる場面は多いです。美容関係の資格を取得しておくことで、企画や営業にも説得力がでます。
◾️日本化粧品検定
日本で最大級の美容に関する検定試験が「日本化粧品検定」です。仕事に直結する仕事として認知されているため、受験者の多くが化粧品業界、美容業界で働いている方となっています。
試験は3級、2級、1級となっています。3級では化粧品や美容に関する正しい知識を身につけることができ、2級では美容に関する悩みの要因や、それに応じた対策などができる程度の知識を身につけることができます。1級は化粧品の専門家を目指す人なら取得したい級になっています。
合格率は3級〜1級を通して60〜70%台で推移しています。そこまで難しい検定ではないので、どの資格を取得しようか悩んでいる人におすすめです。
◾️化粧品成分検定
化粧品の研究・開発での転職を希望する人におすすめなのが「化粧品成分検定」です。この検定では、化粧品のパッケージに記載されている情報を正しく読み解ける知識を問います。より安心・安全な化粧品を製造したり、選んだりする際に正しい知識を身に付けていると安心ですよね。
試験は3級、2級、1級にわけられています。入門・基礎・応用のレベルとなっています。3級に関しては受験料不要で誰でもWebで試験を受けられるようになっているので、気になる人は受験してみてはいかがでしょうか。
合格率は2級64%、1級71%(第7回化粧品成分検定より)となっており、やや難易度の高い試験といえるでしょう。
◾️化粧品検定コスメマイスター®︎
化粧品についての総合的な知識を身につけるなら「コスメマイスター®︎」という検定もあります。化粧品に関する基礎的な知識はもちろんのこと、一般の方では知り得ないような専門的な知識も習得することができます。
コスメマイスターの検定のよいところは、誰でもWebで受験が可能なところでしょう。会場に行く必要がないので、社会人の方もさくっと受験することができます。また合格率も約85%と高水準です。
転職を考えている人のなかには、他業種で働いている人もいるかと思います。一体どんな経験であれば、化粧品業界への転職が有利になるのでしょうか。
◾️接客の経験
なかには研修として美容部員や営業職から始まる会社もあります。ですので接客の経験があると有利ですし、研修の際に心が折れたり、やっぱり違うかなと思ったりすることは少なくなるでしょう。
◾️ECサイトの運営経験
前述したように化粧品業界では、今後ますますインターネット販売が大切な販路となっていきます。そのためECサイトの運営に力を入れている会社も多いでしょう。店舗での販路をもたない化粧品ブランドならなおさらです。
そうした方面で戦力となるのが、ECサイトの運営経験者です。Webでの最新の動向にも強く、新しい見せ方を取り入れたり、サイト内の回遊率を上昇させる施策を考えるなどに長けていれば、転職でもアピールできるかもしれません。
◾️企画立案・実行の経験
化粧品業界では、製造・営業・マーケティング・PRなどの一連のプロデュースを一任されることもあります。そうした際、企画立案・実行の経験があると重宝されるでしょう。最初から最後まで関わり、プロデュースをした経験があれば有利と考えてよさそうです。
◾️英語での営業経験
大手では英語でのコミュニケーションが必要ですし、越境ECが盛んな今は中小でも英語を話せることが必要となってきます。そのため、他業界でも英語での営業経験があれば採用が通りやすいといえるでしょう。
化粧品業界は専門的な知識を持っている必要があるため、未経験よりは経験者の方が採用されやすいのが現状です。また大手では新卒採用に力を入れているところが多いため、中途採用の求人がそもそも少ないこともあります。
しかし越境ECや、オンラインショッピングの利用率増加などで、化粧品業界は売り上げを伸ばしています。新しく誕生するブランドも多いため、今後は中途採用での求人なども増えていくと考えられています。
その際、経験があった方がもちろんよいですが、最近では製品や企画などにも今までになかった新しい発想が強く求められています。化粧品業界ではあり得なかった発想が、他業界にいたからこそできるというメリットも考えられるでしょう。
また経験よりも大切なのは、動機や目的です。なぜ化粧品業界で働きたいのか、なぜこの会社なのかを深ぼって考えられておくことも重要です。
- 著者
- 博美, 山村
- 出版日
現代でも「化粧は女性がするもの」という価値観がまだ強く残っています。化粧は社会的な規範や構造と大きく結びついてきました。「そもそも、なんで人間は化粧をするんだろう?」という根本的な疑問に答えるのが『化粧の日本史』です。
「マナーとしての化粧」という考え方はおかしいのではないか。ジェンダーにかかわらず化粧を楽しむことができるのが理想では? という、現代の問題提起にも通じる歴史を学べます。これから仕事として化粧品を扱う人は、一度化粧が置かれてきた歴史的な役割についても考えてみることをおすすめします。
- 著者
- 佐藤 亘
- 出版日
OEM、ODMを主としておこなっている企業が自社ブランドを作るといった流れは、業界を横断して活発になってきます。これから開発・製造に携わる人は、販売についても考えなくてはいけなくなるかもしれません。
越境ECは各国で異なる税制や個人情報規制などに対応する必要があります。そもそもどんなサービスがあるのか、自社ではどのような準備をしなければならないのかなど、ざっと概観を知ることができる書籍は一読しておくと便利です。
- 著者
- ["小西 さやか", "日本化粧品検定協会"]
- 出版日
美容部員になりたい、化粧品が好きなのでどんどん知識を身につけたいという人には資格取得がおすすめです。
対策テキスト1冊で合格することができる人もいる「日本化粧品検定」は民間資格ですが、化粧品業界では役に立つ資格です。実際に受験者の多くは化粧品業界や美容業界で働いている人が多く、取得の目的も「仕事にいかせそうだから」という理由がほとんどです。
化粧品や美容関係の資格のなかでは最も知名度が高く、信頼性もある資格です。関心がある人はぜひ勉強してみて資格を取得するのはいかがでしょうか。
化粧品業界について、業種や職種、業界の動向を紹介しました。社風も企業によって大きく異なることが多い業界ですので、まずは積極的に情報収集をしてみましょう。
また就職・転職に関しては、新卒採用枠が最も多く、現状では中途採用は狭き門である傾向があります。しかしオンラインショップの隆盛や、化粧品ブランドの増加などにより、化粧品業界での職種幅も広がりつつあります。転職は難易度が高いと言われていますが、働きたい会社の動向をきちんと調べて、自分の経験がいかせることをアピールすることが採用に繋がるはずです。
性別問わず憧れる人が多い化粧品業界。今後どのようなブランドが出るのか楽しみですね。