中学生向けおすすめミステリー小説13選!大人が読み返すのもアリ!

更新:2021.12.10

等身大の今、登場人物とリンクして冒険に出ませんか?もしくは、あの頃の自分と重ねて懐かしい想いを呼び起こしてみませんか?今回は大人が読み返しても楽しい中学生向きのおすすめ小説をご紹介いたします。

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スリルと人情『レベル7』

記憶を失くした男女と行方不明になった少女を探すカウンセラーの事件解明を描くストーリーが綴られています。

見知らぬ部屋で男と女が目を覚ますというところから物語は始まります。記憶のないふたりがいる部屋には大量の紙幣と拳銃、さらには血の付いたタオルが置かれていました。混乱するふたりに共通するのは、腕に書かれた “レベル7”という 消えない文字だけでした。

一方その頃、電話カウンセラーである悦子は、時々カウンセリングに電話をかけてくる少女が行方不明になっていることを知り、行方を追うことにします。そして、その少女の日記に残された謎の文の中に“レベル7”という言葉を目にするのです。

著者
宮部 みゆき
出版日
1993-09-29

物語はふたつの事件に分かれて綴られており、じりじりと展開していくことで、その緊迫感が伝わり物語の中へ引きこまれていきます。共通する“レベル7”、ふたつの事件が交錯するとき、謎が解き明かされるのです。最初はじりじりと、徐々に加速していく展開に読む手が止まりません。

細かく張り巡らされた伏線、それを気付かせない巧みな文に、読者は魅了されるのでしょう。記憶が失われたことによって生じる自分の存在への不安と次々と出てくる謎に緊迫感溢れるストーリー。その一方で、少女を探す過程で関わる人たちの様々な絆や人情深さが胸に沁みるストーリーと、最後までハラハラドキドキが止まらない作品です。物語と自分の鼓動の速さが連動する楽しいスリルを味わってみてください。

心の闇の傍観者『GOTH』

人の黒い闇に強い関心を抱く「僕」と友人の関わった異常な事件が描かれています。

猟奇的殺人者の事件記事を集めたり、殺人現場を歩いたりと、異常殺人に深く興味を持つ「僕」はある日、その趣味を見抜かれたことにより森野夜と関りはじめることになります。森野も同じく人の黒い闇に惹かれ強い関心を抱いていました。そんなふたりが様々な猟奇事件に関わっていくのですが、人の心の深い闇の恐ろしさがじわじわと迫ってくる感覚に襲われます。

著者
乙一
出版日
2005-06-25

ふたりが、放置されている死体を見つけ出そうと動き出すところから、物語は展開していきます。手を切り持ち去る事件や犬の連続誘拐事件、廃病棟での惨殺事件などなど、様々な事件に関わり真相を突き止めていくのですが、それらがひとつに繋がっていきます。

猟奇的恐怖を際立たせていてゾクゾク感がたまりません。ドロドロの気持ち悪い情景描写と、乾いたふたりの心情描写もその恐怖を煽っているように思えます。しかし、その中にも、切なさと優しさに触れる一面もあり、最後まで物語に囚われてしまうでしょう。

読みやすいけれど中学生には劇薬かもしれないミステリー小説『青の炎』

切なき殺人者と化した、家族思いの心優しき少年を描いたストーリーが綴られています。

名門校に通う秀一の前に現れた養父。養父である曾根は、その横暴さから10年前に母と離婚していました。秀一は家族を守るべく法的に訴えるも、法は彼らを守ってくれません。妹にまで曾根の魔の手が伸びたことで、ついに秀一は、曾根の殺害を実行してしまうのです。

著者
貴志 祐介
出版日
2002-10-25

家族を守りたい!でも法は守ってくれない。それなら、自分が……。そんな秀一の意思の強さと正義感に、すごく胸を打たれます。

ちょっとしたことでも激しく揺れ動いてしまう17歳の心。ガラスのように輝き光を放ちますが、脆く簡単に粉々に砕けてしまいます。

正義とは何か、秩序とは何かを改めて考えさせられるのではないでしょうか。

現実に、悲しき殺人者を出さないように支え合い、生きていくことの大切さを感じさせてくれる1冊です。

ドジ刑事と知的猫『三毛猫ホームズの推理』

三毛猫が行動で示し、事件を解決に導いていくシリーズです。

血を見るのが苦手な頼りない刑事片山義太郎は、捜査一課長の命により、羽衣女子大学で起きた殺人事件の捜査のために大学の文学部長である森崎智雄に話を聞くことになります。そして、組織的な売春が行われていたことが浮上し、潜入捜査をすることになるのです。

森崎の飼い猫である、アジの干物が大好物で紅茶をも嗜む三毛猫のホームズと、大学の学生の協力のもと捜査が行われていきます。そんなある日、ホームズの飼い主である森崎が殺害されてしまうのです。 

著者
赤川 次郎
出版日

ユーモア溢れる第一作に始まり、多くのシリーズを出してきた三毛猫ホームズ。次々と起こる事件から目が離せず物語に引き込まれていきます。巧みに事件にホームズを絡ませ、読者の心をとらえて放しません。

かつて鬼刑事と呼ばれた父の遺言により刑事となった29歳長身の義太郎と、ホームズの飼い主となった活発な22歳の晴美の二人兄妹。ホームズがこの片山兄妹と共にあらゆる事件の真相の謎を解いていく様は、ハラハラドキドキ満載です。人と猫の絶妙な絡みと、巧みに仕掛けられたトリックは事件ごとに読者に新鮮さと爽快感を与えてくれるでしょう。

登場人物の恋愛模様や、ドジな一面など笑いあり涙ありのいろんな楽しみが詰め込まれた作品です。知的な三毛猫ホームズの謎解きをご堪能ください。

故人が繋ぐ“今”『氷菓』

「古典部」シリーズの第一作。緑豊かな地方の都市を舞台に、廃部寸前の古典部に入部した男女が日常の中に潜む謎に挑んでいくというシリーズです。

省エネ主義の太折木奉郎の視点で物語は展開していきます。

一身上の都合で入部していた同じ一年の千反田える。彼女の強い好奇心が太折木奉郎を謎へと引き込み、様々に謎解きをしていきます。

ある日、太折木奉郎は彼女から助けを求められます。幼少時代に、失踪した伯父から聞かされた古典部の話を思い出したいという内容でした。そして、その手掛かりが『氷菓』という古典部文集にあると突き止め、文集に秘められた真実に挑んでいくのです。

著者
米澤 穂信
出版日
2001-10-31

とても読みやすく丁寧に綴られるストーリーに、いつの間にか引き込まれてしまいます。身近な謎から解き明かしていくところも、リアルを感じさせ読み手の心を掴むのでしょうね。

今を生きる自分たちを支えている過去を生きた人達の想い。その心情描写が心に深い何かを植え付け、“今”の生き方を考えさせられる物語です。そして、古典部とは何なのかという謎を残すので、次の作品を読まずにはいられなくなるのではないでしょうか。

中学生にとってはホラーなミステリー小説『告白』

3学期の終業式の日のこと。数ヶ月前、学校のプールで一人娘を死なせてしまっていた中学校教師・森口悠子はもうすぐ教師を辞めるということを生徒たちに告げました。

彼女は、娘は事故死とされているが、ほんとうはこのクラスの男子生徒ふたりに殺されたことと、警察に告げるつもりはないものの、彼らに対して「復讐」を仕掛けたと宣告して去って行き……。 

著者
湊 かなえ
出版日
2010-04-08

湊かなえのデビュー作「聖職者」を第一章としてはじまるのが、この『告白』です。読みはじめたら、ぐいぐい引き込まれて止まらなくなります。ですが、読んでいて簡単に楽しいと言い切れる作品ではありません。

気がつくと、好奇心いっぱいに教師の話を聞いていた生徒たちと同じ感覚で読み進めていく形なってしまう不思議さがあります。危険な香りがするのに、「知りたい」「聞きたい」「覗きたい」の思いに突き動かされる展開です。

章ごとに視点が動く湊かなえ調が既に活かされています。毒に満ちた一冊。でも読まずにはいられない作品です。映画ではわからないそんな彼女の技が光るおすすめ作品です。

綾辻行人の傑作王道ミステリー『十角館の殺人』

綾辻行人の「館」シリーズの第一作目をご紹介します。叙述トリックを駆使していますが、叙述トリックを使うがために発生しやすい違和感のようなものがほとんどなく、最後の最後まで犯人を当てることが非常に難しい作品です。

著者
綾辻 行人
出版日
2007-10-16

大学の推理小説研究会のメンバーが無人の孤島を訪れ、半年前に殺人事件があった十角館で一週間を過ごすことになります。一方、本土では研究会のメンバー宛に怪文書が届けられており……。

推理小説研究会のメンバーが著名な推理作家の名前をニックネームとして呼ばれていることや、島と本土のそれぞれの話がうまく絡み合っており、終盤での一行で衝撃を受けることは間違いありません。

王道ミステリーでありながら、前に挙げた4作品に通じる綾辻行人独特の雰囲気がしっかり漂っており、続く9作品も読まずにはいられません。なお、2012年に出版された『奇面館の殺人』で、館シリーズは残念ながら完結するとされています。この『十角館の殺人』を読んだ後、続く9作品もゆっくり楽しんでみてはいかがでしょうか?

また、本作品の推理小説研究会メンバー7人のニックネームである推理小説家の作品を順に読んでみるのもおもしろいかもしれません。

「ゲーム三部作」のひとつ、竹本健治の代表作『囲碁殺人事件』

1980年に発表された推理小説。若干12歳でありながら、IQ208の天才少年囲碁棋士の牧場智久と大脳生理学者の須藤信一郎のコンビによるミステリーシリーズの第一作です。

囲碁のタイトル戦で行われた棋士同士の殺人事件に巻き込まれながら謎を解いていく、という趣向を持っています。この『囲碁殺人事件』を含む「ゲーム三部作」には他に『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』があり、短編には「チェス殺人事件」があります。

著者
竹本 健治
出版日
2017-02-15

これらの「ゲーム三部作」は「囲碁」「将棋」「トランプ」といったプロの選手が存在します。プロフェッショナルとアマチュアが存在するゲームの世界を扱いながら、その狭い世界で作られる人間関係が重要なテーマです。

そこにはそれぞれのゲームの持つ「密室性」が、ミステリー小説自体を客観性を持たせるという、他に類のない構成をしています。「囲碁」のもつ陣地を拡大していくゲームの形式が、人間の心理と類似していく過程が魅力です。また、小説の中に出てくる「鬼」などのオカルト的趣向が、ミステリー小説を読む楽しみにつながります。

探偵の天才少年と助手の脳生理学者のコンビや、天才少年の姉の存在など、キャラクターづくりにも余念がありません。「竹本健治入門編」として持って来いの作品です。 

息苦しさを優しく照らす、すこし・ふしぎな物語『凍りのくじら』

主人公、理帆子は他人から距離を置き、周りの人を“スコシ・ナントカ”と分析する遊びをする高校生です。例えば友人たちを“スコシ・ファインディング”や“スコシ・フリー”と、元恋人を“スコシ・フコウ”などと考えています。また自分自身を“スコシ・不在”とし、息苦しさを感じている中、とある青年と出会うことで、彼女の世界は変わり始めます。

著者
辻村 深月
出版日
2008-11-14

正直、彼女は読んでいて気持ちのいい人間ではありません。しかしその他人に対する、自分自身に対する彼女の鋭い眼差しはどこか共感できてしまい、読んでいるうちに分かる分かると頷いてしまいました。

そんな誰しもが持ちながら、なかなか直視できない冷たさを抱えた彼女ですが、人と出会い、また事件に巻き込まれていくことで、日常が変化していきます。そして平穏は次々と壊れていき、彼女は茫然と立ち尽くしてしまいます。その中で自身の本心に気付き、優しく照らされるのです。

ラストシーンはあまりにも素敵すぎて、涙が止まりませんでした。何度も何度も読み返しては泣いてしまう、お気に入りの一作です。

作者・辻村深月のその他の著作についてもっと知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。

辻村深月の書籍をジャンル別にランキングで紹介!文学賞、映像化、初期、短編

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思春期の少年少女の心理を描くことで、定評のある辻村深月。作風は、透明感のある文章と、各作品で登場人物がリンクしているのが大きな特徴と言えるでしょう。直木賞や本屋大賞を受賞し、多くの作品が映画・ドラマ化されている彼女の著作をジャンル分けして紹介したいと思います。

廃部寸前の吹奏楽部と心温まる謎解き『退出ゲーム』

廃部寸前の吹奏楽部でフルート奏者をする穂村チカは顧問の草壁先生に恋をする高校生です。そして彼を“吹奏楽の甲子園“と呼ばれる普門館に連れていくため、旧友の上条ハルタとともに部員集めに走ります。

著者
初野 晴
出版日
2010-07-24

吹奏楽部を中心に穂村と上条が日常の謎に挑んでいく連作短編集です。科学部から盗まれた劇薬の行方、全ての面が白いルービックキューブ、演劇部との即興劇に色彩辞典にもない色の絵画など、魅力的な謎に巻き込まれていきます。そしてそれらの謎は関わっている人物たちの思いと重なっており、解決とともに謎も彼らの気持ちも大きく変えていくのです。

中でも表題作である「退出ゲーム」はシチュエーションが面白く、また浮かび上がる心情は感動的で、ほろりと涙がこぼれる作品です。

落語×学園ミステリー『オチケン!』

学園ミステリーと落語ミステリーが融合した、大倉崇裕の人気シリーズ。落語に関する事件を2編収録しています。落語のうんちくも満載で送る連作集です。

廃部の危機にある、オチケンこと落語研究会に半ば無理矢理入部させられることになった大学生の越智健一は落語には関心がありませんでしたが、落語の天才・岸と爽やかながら武術の達人・中村という個性の強い2人の先輩に振り回される毎日を送っていました。さらに、部室の争奪に関わる陰謀にも巻き込まれていくことになります。

著者
大倉 崇裕
出版日
2011-11-17

収録作は、誰もいないはずの部屋に落語の「寿限無」が流れるという、不可思議な状況に隠された真相を巡る「幽霊寿限無」。そして、大学内でも権力を持つ馬術部のスキャンダルにまつわる事件「馬術部の醜聞」。キャンパス内で巻き起こる奇妙な事件を中心に、物語が展開していきます。

元々は中高生をターゲットにして発表された作品のため、殺人の起こらないライトなミステリーとなっています。どちらかといえばほのぼのとした作風で、ストーリーのテンポも比較的ゆっくりとしているので、登場人物の個性や落語に絡んだ謎解きをじっくりと咀嚼することができます。もちろん落語の豆知識もきちんと掲載されているので、今回も初心者に安心の内容です。

部員が3人を切ると強制的に廃部になってしまうため、「オチケン」という名前を理由に連れて来られた健一。2人の先輩のおかげで授業にもろくに出られず、しぶしぶ事件解決に乗り出します。彼のキャンパスライフはいかに?著者による落語解説も収められており、隅々まで楽しめる1冊です。

大人気シリーズの初長編。映画化もされた有名作!『容疑者Xの献身』

天才数学者でありながら高校の数学教師をし、不遇な生活をしている石神。彼は娘と暮らしている隣人の靖子の殺人に気づき、彼女らを救うべく、完全犯罪を計画します。

著者
東野 圭吾
出版日
2008-08-05

主人公は物理学者の湯川学です。本シリーズの探偵役であり、石神と親睦が深い人物です。彼の頭脳によって作り上げられていく推理は想像のわずか先にあるもので、真相が明かされた時には鳥肌が立ちました。

また浮かび上がってくる石神の思いはあまりにも悲痛で、胸が締め付けられます。さらに友人である湯川は早い段階で、真相と石神の気持ちに気付いており、そんな中での行動はあまりにも切なく、読み返しては涙が溢れてしまいました。

彼の慟哭は映画でも有名なシーンですが、映画ではカットされていたりする部分もあるため、ぜひ原作もお楽しみください。

人のあたたかい心『一番線に謎が到着します』

蛍川鉄道の藤乃沢駅では、霊が出たとの噂があり、日常的にトラブルが発生していました。

料理が得意な鉄道員の主人公・夏目壮太は、どんな緊急事態が起きても冷静。藤乃沢駅の同僚たちと協力しながら、蛍川鉄道で起こるトラブルを解決していきます。

著者
二宮 敦人
出版日
2015-05-13

第三章では、大雪により電車の運行が厳しく運転見合わせという事態が起きるシーンがあります。一本の電車が藤乃沢駅と一つ前の駅の間で身動きが取れなくなってしまうのですが、藤乃沢駅員総出で救援が向かって行くのです。

また、このシーンでは、ホームで列車の復帰を待つ乗客も、力を合わせて除雪をするのです。人は、誰かの為に一生懸命になれるんですね。心が温まる作品になっていますので、是非読んでみてください。

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