5分でわかる調剤薬局事務!未経験でも働きやすい?有利な資格や年収について解説

更新:2021.12.4

調剤薬局事務という職業は、地域にさまざまある調剤薬局に勤務し、事務作業をおこないます。医療系事務という専門性の高さながら、正社員以外にもパート、アルバイトなど多様な働き方ができるといった特徴から、特に女性に人気の職業でもあります。求人では未経験で募集しているところも多く、就職後に資格取得をすることもあります。 仕事は、「レセプト」と呼ばれる調剤報酬明細書の作成がメインの業務であり、ほかにも細かな事務作業をおこないます。 本記事では、調剤薬局事務の仕事内容や年収、求人の紹介から、採用で有利になる資格、未経験で調剤薬局事務を目指す人におすすめの書籍などを解説します。

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調剤薬局事務の仕事内容とは

調剤薬局事務とは

調剤薬局事務とは、調剤薬局で事務作業をおこなう職業のことです。仕事内容は大きく3つに分けられます。

 

  1. 受付業務
  2. 処方箋の入力・会計業務
  3. 請求業務

 

1.受付業務

受付業務では、調剤薬局に処方箋を持って訪れた患者さんを迎え、処方箋を受け取ります。その際保険証を確認したり、初めての患者さんに対しては患者情報の記入をお願いしたりと、患者さんの情報管理をしながら、スムーズかつ適正な薬の受け渡しができるよう事務的なサポートをおこないます。

2.処方箋の入力・会計業務

処方箋の入力・会計業務は、患者さんからいただいた処方箋内容をPCに入力し、その内容から会計金額を算出して会計業務をおこなうというものです。

3.請求業務

調剤薬局事務のメインの業務ともいえる仕事が請求業務です。具体的には、レセプト(調剤報酬明細書)作成をおこなうことを指します。

レセプト業務とは「組合健保や協会けんぽなど、健康保険の保険者に診療報酬を請求する業務」のことです。

国民皆保険制度に加入している患者さんが医療費の3割を負担し、残りの7割を健康保険の保険者が負担することとなっているため、レセプト業務をおこない、7割分の医療費を請求します。

レセプトは「診療報酬点数」という専門的な計算方法で医療費を算出しており、処方する医療用医薬品の種類などによって点数の付け方が異なります。そのため、調剤薬局事務は専門性が求められる仕事です。

医療事務との違いは?

調剤薬局事務と似た職業に、「医療事務」があります。同じく医療系の事務仕事ですが、調剤薬局事務は医療用医薬品の処方に対して事務仕事をおこない、医療事務は医療行為に対する事務仕事をおこないます。

医療事務では診察や手術など、さまざまな医療行為を対象とするため、より幅広い知識と専門性が必要となります。

調剤薬局事務の働き方。人気の理由は年収?

調剤薬局事務の働き方

調剤薬局事務は、地域にさまざまある「調剤薬局」で働きます。病院やクリニックに併設しているもの、隣接しているもの、ほか処方箋を受け付けている薬局であれば、どこでも調剤薬局事務は働くことができます。

働き方も多様で、正社員として勤務できる調剤薬局はもちろん、パート、アルバイトなどを採用している調剤薬局もあります。業務内容は正社員、パート、アルバイトで大きく変わらず、待遇や勤務時間、給与などが異なります。

調剤薬局事務が女性に人気の理由

調剤薬局事務は、女性に人気の職業としても知られています。その理由は、大きく3つ考えられます。

◾️自分のスタイルで働くことができる

パートやアルバイトとして勤務すれば勤務時間に融通が効き、服装やネイルも自由という調剤薬局も多く、自分のスタイルで働くことができるといわれています。

◾️専門性が高く、重宝される

2つ目は、専門性があるということ。医療系の事務は一定の知識や経験が求められるため、専門性が高く、一度働いて経験を積むと重宝されます。そのため、産休育休後の復帰もしやすい傾向にあります。

◾️全国どこでも働ける

3つ目は、全国どこでも仕事があること。病院やクリニックがさまざまあるように、調剤薬局も全国どこにでもあります。そのため、引っ越ししても職場が見つけやすいというメリットがあります。

業務内容はどこの調剤薬局でもほとんど変わらないため、一度スキルを身に付けてしまえば、どこの調剤薬局でも働くことができるのです。

こういったライフスタイルの変化に応じて働き方や働く場所を変えられる柔軟さや、医療系の知識が身につくという専門性の高さが、女性に人気の職業である理由として挙げられます。

調剤薬局事務の求人にはどんなものがある?

実際、調剤薬局事務のどのような求人が出ているのでしょうか。都内を例に見てみます。

2020年7月末現在、400件近くの調剤薬局事務の求人がネット上に上がっています。パートやアルバイトであれば平日1日4時間〜勤務可能なものや、週3日からの勤務でOKな調剤薬局も。

正社員でも、未経験者歓迎の求人も見受けられます。ほか、ブランクがあってもOK、学歴不問など、柔軟な条件で採用をおこななっている調剤薬局が多いようです。

調剤薬局事務の給与・年収は?

正社員として調剤薬局事務で勤務する場合、年収の平均は270万~320万円とされています。月収にすると平均18万円で、勤務地によっては25万円前後の月収が見込めるところもあります。

パート・アルバイトであれば、時給は1000円〜1200円が平均値。専門性があるといえど誰でも挑戦できる仕事であることから、一般的なパート、アルバイトの時給とほぼ変わりません。勤続年数や経験によっては昇給も見込めます。

調剤薬局事務におすすめの資格

調剤薬局事務として働くためには、レセプトの知識はもちろん、医療用医薬品を取り扱う上での基本的な知識を身に付けておく必要があります。未経験でも調剤薬局事務で働くことは可能ですが、知識を測るための資格を事前に取得しておくと、実際の業務で役立つこと間違いなしです。

ここでは、調剤薬局事務として働く上で持っておくと有利になるおすすめの資格を紹介します。
 

調剤報酬請求事務専門士

調剤報酬請求事務専門士」は、一般社団法人専門士検定協会主催の検定試験に合格した人が得られる資格です。1級〜3級までの試験級があり、1級は調剤薬局事務の資格のなかでもっとも難易度の高い検定試験とされています。3級は学科のみ、1・2級は学科と実技です。

毎年7月と12月の年2回試験が実施され、どの試験級でも受験資格はなく誰でも受験可能です。

薬剤の基本的な知識から、レセプト作成についての知識、医療保険制度の知識といった調剤薬局事務の業務をこなす上で必要な知識を全て学ぶことができます。

実技では、処方箋から調剤報酬明細書(レセプト)の設問箇所点数を求め手書きのレセプトを作成する問題も。資格を取得することで、十分に調剤薬局事務としてのスキル・知識を習得していることが証明できます。

調剤事務実務士

調剤事務実務士」は、技能認定振興協会(JSMA)が主催する試験に合格することで取得できる資格です。医療保険制度や薬剤用語についての知識を問う学科、レセプト作成の実技など、調剤薬局事務に必要な知識・スキルが身に付きます。

受験資格はなく個人でも受験可能で、毎年奇数月(1月・3月・5月・7月・9月・11月)の第4土曜日に試験が実施されます。難易度は調剤報酬請求事務専門士よりも高く合格率60%程度で、しっかり勉強しておけば十分に合格可能です。

試験実施回数も多いため、独学で受験してみたいという人はまずは調剤事務実務士の資格試験から挑戦するのがおすすめです。会場受験が必須ですが、試験会場は北海道(2会場)から沖縄まで32カ所に設けられており、気軽に挑戦できる点も魅力です。

医療保険調剤報酬事務士

医療保険学院が主催している「医療保険調剤報酬事務士」の資格検定は、毎月開催・在宅受験可能という特徴があります。受験することで、医療保険制度、保険請求業務の基礎知識や、レセプト作成の実務スキルが身につきます。

ただし、受験資格を取得するためにはまず医療保険学院が主催する「調剤報酬事務教育講座」で実施されるテストを3回合格しなければならず、さらに、テストを受けるためには調剤報酬事務教育講座を受ける必要があります。

講座参加・テスト受験には3万3000円の費用がかかるため、資格検定受験費用の4000円を合わせると、4万円近く費用がかかることとなります。

しかしその分、まったくの初心者でも講座をしっかりと聞きテキストで勉強することで資格試験の対策ができるため、独学でどのように勉強したらいいのかわからないという人におすすめです。

調剤事務管理士

特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会が主催する資格検定で、調剤薬局事務の基本的な知識からレセプト作成までの知識までが身につく検定です。試験級はなく、合格することで「調剤事務管理士」と名乗ることができます。

本資格検定の一番の特徴は、教育指定校および団体受験での受験のみ受け付けているという点。個人で受験ができないため、専門学校に通い知識・スキルを学んだ上で団体受験に申し込むという形式でのみ受験可能です。

専門学校でしっかりと知識とスキルを身に付けたことの証明にもなるため、信頼性の高い資格としても知られています。合格率は60%とさほど低くなく、しっかりと勉強していれば十分に合格できる資格でもあります。

未経験で調剤薬局事務になるには?

独学で調剤薬局事務を目指す方法

未経験でも、調剤薬局事務になることは可能です。ですが、まずは独学で勉強をし、資格試験を受け、調剤薬局事務に関する資格を取得することで、採用で有利になるでしょう。

独学で勉強する際は、テキストなどを購入し自身で知識を身に付ける、もしくは通信講座などを利用し知識を身につける方法があります。

調剤薬局事務で必要となるのは主に医療に関する保険や用語、業務内容に関する知識のため、独学でも十分に身に付けられるでしょう。レセプト作成のスキルに関しても、仕組みや医療用医薬品の点数などを覚えることで資格受験に対応できます。

調剤薬局事務に向いている人とは

調剤薬局事務では、「コミュニケーション力」と「業務の正確さ」が求められます。調剤薬局の窓口でもある調剤薬局事務は、接客業と同じようにコミュニケーション力が必要となります。さらには処方箋の内容を薬剤師に共有するなど、連携も必要になります。

また、処方箋内容をPCに入力する、患者さん情報を管理する、レセプトを作成する、といった事務作業がメインとなる調剤薬局事務。情報を取り扱う上での慎重さや、業務の正確さなど、細かいところまでしっかりとチェックできるかどうかが業務を正しくこなす上で重要になります。

素早く正確に仕事をこなせる、数字を扱ったり計算したりが得意、という人は、調剤薬局事務に向いているといえるでしょう。

 


 

調剤薬局事務を目指す人におすすめの書籍

最後に、独学で調剤薬局事務を目指す人におすすめしたい書籍・テキストを紹介します。

レセプト作成の基本から教えてくれる初心者向けのテキストから、薬剤に関する用語がまとめてあるテキストなど、さまざまな書籍があります。自分の勉強のスタイルに合わせて選んでみてください。

レセプト作成の方法をわかりやすく解説した入門書

著者
水口 錠二
出版日

2020年4月に改訂された診療報酬・薬価基準に合わせて作成された最新版の教科書。レセプトの進め方を1から丁寧に解説している、初心者におすすめのテキストです。

本書では、レセプト作成に関する情報だけでなく、調剤薬局事務の実務に関連する用語の解説や、仕事の流れなども細かく解説しています。

レセプト作成の練習問題も掲載されており、資格試験の対策にも使えます。ただし、練習問題には解答はあるものの解説がないため、本書を十分に読み込み理解してから問題に取り掛かることをおすすめします。

実際に調剤薬局事務として働き始めてからの実用書として持っている人も多く、長く使える1冊です。

入門書でわからない知識をカバーする1冊

著者
NIメディカルオフィス
出版日

入門書では解説が少なく、十分にレセプトについての知識が得られなかったという人におすすめしたいのが、こちらの書籍。

調剤技術料などの調剤薬局事務に必要な基礎知識を丁寧に解説しているほか、処方箋やレセプト作成の例を掲載・解説しており、さらに知識を深められる1冊です。

基礎の部分はなんとなく理解しているという人であれば、本書を読み込むことでさらに理解が深まるはず。まったくの初心者にとっては少し難しい内容になっているため、入門書など別の書籍と併用することをおすすめします。

持ち運びにも便利な調剤薬局事務の必携書

著者
北海道医薬総合研究所
出版日

2020年度の調剤報酬改定内容がすぐに分かる必携書。数年ごとに改定がおこなわれる調剤報酬の基準についてどこがどのように変わったのか、おさえておくべき要点はどこか、といった実務に必要な知識と情報をまとめた1冊です。

覚えておくべき調剤報酬点数表、薬剤師行動規範といった基本知識はもちろん、診療報酬以外で薬局にとって重要となる法律の追加・変更点などについても解説されています。

60gというコンパクトさで、鞄に入れて持ち歩くのにもぴったり。気になった箇所や勉強中に生じた疑問点などをささっと確認できる使い勝手のよさが魅力です。

今後、少子高齢化にともない介護や医療現場の人手不足が懸念されることから、医療系の事務である調剤薬局事務という職業の需要はますます高まっていくと予想されます。柔軟な働き方ができ、専門性のある知識・スキルが身につくというメリットのある調剤薬局事務は、自由に、かつしっかりと働きたいという人にぴったりな職業でもあります。未経験でも挑戦できる医療系の仕事であるため、ぜひ資格取得、採用を目指してみてはいかがでしょうか。

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