警備は人や財産の安全を守るといったに社会的に重要な仕事です。緊急事態が起こらない限り、その仕事ぶりや存在はとても地味ですが、現代社会においてなくてはならない職業のひとつです。 しかし重要な仕事にも関わらず年収などが不安定なため、警備に関連する資格取得は給与アップやキャリアアップなどには欠かせません。 この記事では活躍の場の広い警備業務について、やりがいや魅力、就職や転職事情などを解説していきます。本記事を読んでいただき、警備についてより詳しく知りたくなった人は最後におすすめの本を3冊紹介するので、こちらも参考にしてみてください。
警備の仕事は種類の多さが魅力です。警備には施設警備や交通誘導、雑踏警備、輸送警備、身辺警備などのさまざまな種類があります。ここではそれぞれの仕事の内容について解説していきます。
警備の仕事は人々の安全や、施設内での犯罪や事故の防止などさまざまあります。「警備業法」の第2条によれば、下記のいずれかに該当する業務が警備業と呼ばれています。
警備の仕事は裏方であり、とても地味な存在です。しかし事件や犯罪の可能性などを察知した場合には、いち早く駆けつけ、人々の安全を第一に行動します。
普段はあまり気にしたことのない方は多いかと思いますが、警備員がいるのといないのとでは、安心感が異なるでしょう。
一言で警備と言っても、警備場所によって警備の目的はさまざまです。警備業法に記載されている1号〜4号の区分ごとにどんな業務をおこなうのか説明していきます。
一般的に警備員として認識されているのは、施設警備の仕事でしょう。ショッピングモールやスーパーマーケット、デパート、学校、会社、オフィスビルなどに駐在し、警備をおこないます。施設内を見回りしながら異常などがあれば然るところへ報告をして対処します。
また、深夜帯や休日に無人の建物をセンサーで監視する「機械警備業務」もこの1号警備に含まれます。
交通誘導は主に、道路工事現場などで車両や歩行者の誘導をする仕事です。交通の流れを整備し、人の危険を回避します。
また雑踏警備では、イベントや祭りなど人の集まる場所で誘導業務をおこないます。
現金や貴重品などの輸送の際に対象となるものの警備をおこない、盗難や破損を防止します。核燃料の輸送・警備も3号警備の対象です。
いわゆる「ボディーガード」と呼ばれる警備の仕事です。依頼者に付き添ったり、遠隔で見張ったりしながら、身辺を警護します。
特別な資格や経験がなくてもはじめやすい警備員は、間口の広さが魅力でもあります。反面、勤めやすさが給与にどのように反映されているかも気になるところですよね。
警備員の年収は?
その金額に年間賞与などの特別給与額が約25万円ほどプラスされます。両方を合わせた年収で考えると、約255万円が平均年収ということになるでしょうか。
平成27年度:約250万円
平成26年度:約250万円
平成25年度:約235万円
また警備員は雇用形態ごとの違いはあまり見られません。それは雇用形態による仕事内容の差があまりないためです。
人材派遣の場合は、警備会社ではなく派遣会社との労働条件が適用されます。アルバイトの場合の時給は1000円程度ですので、警備会社にアルバイトとして直接雇用されるより時給は高く設定されることが多いようです。
警備員の仕事は1号〜4号まであります。仕事の種類によって年収は変わるのでしょうか。正社員や契約社員をメインに大手求人サイトの掲載情報を見ていきましょう。
◾️施設警備
施設警備の正社員・契約社員の場合、月給は約20万円、年収は約300万円ほど。こちらは資格なしの方の給与額ですので、警備関連の資格保有者ですと年収は約400万円になります。
◾️交通誘導警備・雑踏警備
交通誘導警備・雑踏警備の求人はアルバイトの掲載が多く、日給は1万〜15万円に設定されています。月給の場合は18万〜20万円と比較的、低い設定額です。
◾️輸送警備
輸送警備の仕事は危険をともなうこともあるため、警備業務のなかでも比較的年収が高くなっています。ドライバーを兼ねた求人もあるのですが、月給は約30万円ほどとなっています。現金輸送や核燃料輸送の際に必要な資格を保有していることで、給与額はあがります。
◾️身辺警備
身辺警備は警備業務のなかでも最も危険で、重要も高い仕事です。アルバイトやパートなどの求人は少なく、ほとんどが正社員・契約社員の掲載となっています。
月給は30万〜40万円で設定されていることも多く、警備業のなかでは最も年収が高くなります。
就職や転職をするうえで意外と見落とされがちなのが、警備の仕事の魅力とやりがいです。警備員の仕事としてよく知られていることから、気付きのある内容まで、警備の魅力とやりがいについて解説していきます。
警備員の仕事の魅力は、選択肢が豊富にあることです。警備には施設警備や交通誘導、雑踏警備、輸送警備、身辺警備などの種類があります。「守る」という目的は共通ですが、対象や現場は警備の種類によってそれぞれ。
たとえば、施設警備は見回りが主な仕事内容ですが、交通誘導は車の交通整理をします。仕事内容が異なるため生かせるスキルや適性も違います。
もちろん事務の仕事や製造の仕事にも種類はいろいろありますが、「PC入力」や「組み立てる」といったベースは同じなので、そういった意味では警備職の選択できるというのは、大きな魅力であるといえます。
やはり人から感謝された時が最もやりがいを感じる瞬間でしょう。警備員の仕事は警備することなので、通行人や来店客、請負元の人からしたら警備員に守られることは当たり前です。そのため「ありがとう」といった言葉はあまり聞こえてこないかもしれません。
しかしその行為に感謝してお辞儀をしてくれたり、「ありがとう」と言ってくれたりする人はやはりいます。そんな感謝の気持ちが警備員にとっては1番のやりがいになります。
安心・安全を守ることも警備の仕事の喜びのひとつです。「守る」というのは意識のうえでも実際の業務のなかでも、人々の役に立っている実感を味わいやすいです。人のためになる仕事がしたいと考えている人にもぴったりな仕事です。
警備員は資格なしで誰でも働ける仕事のひとつです。しかし専門性を高め、キャリアアップや年収アップを狙うなら、関連する資格の取得はおすすめです。
警備員に関する資格は3つあり、その全てが国家資格となっています。
このなかでも特に取得しておきたいのが、警備員業務検定です。
「警備員業務検定」は警備業法に定められた警備員の国家資格で、6種類の資格が定められています。またそれぞれの資格には1級、2級の階級がありますが、2級は誰でも受けられるようになっています。
どの資格も取得方法は同じで、2つの方法があります。
1つは公安委員会による直接検定を受けることです。またもう1つは、特別講習指定機関による特別講習を修了することです。もちろん講習を受ければ誰でも資格を取得できるのではなく、学科講習、実技講習の終了後、講習の理解、習得を判定する修了考査をおこない、通過できた方のみが資格を得ることができます。
一般社団法人警備員特別講習事業センターがおこなっている特別講習は、2020年9月現在は5つの講習が開催されています。
それぞれの講習は、すでに警備員として働いている方は連続2日間。これから警備員を目指す方は連続6日間おこなう形式になっています。
すでに警備員の方:学科講習7時限、実技講習5時限、修了考査4時限
警備員を目指す方:学科講習28時限、実技講習14時限、修了考査4時限
1級、2級ともに学科講習、実技講習、修了考査という内容になっており、1時限50分なのでなかなかハードです。
日程は開催場所によって異なりますので、警備員特別講習事業センターに掲載されている特別講習日程表を確認する必要があるでしょう。
令和元年12月末日においての全種類の合格率の総計は63.9%となっています。種類ごとの合格率も見ていきましょう。
級による合格率の差はあまり見られず、最も難易度が高いのは「交通誘導警備業務」という結果でした。
全体的に厳しい内容になっているかとは思いますが、修了考査には再試験も設けられているので、安心して受講することができますよ。
- 著者
- 山中 伊知郎
- 出版日
有事の際に現場に駆けつける警備員から、防犯機器の開発、ネットセキュリティスタッフまで、さまざまな警備の仕事を網羅的に紹介している1冊です。
錠前メーカーや防犯カメラメーカーのスタッフへのインタビューもあり、警備のIT化についての解説など、単純に読み物として面白く読める内容になっています。
警備の種類とその仕事内容を詳しく知り、自分にぴったりの仕事を見つけるためにぜひ読んでおきたい本です。最新のセキュリティー情報から、警備会社や警備員がどんな現場までカバーしているのかなど、警備業の入門書として役立ちます。
- 著者
- 田中智仁
- 出版日
駐車場やショッピングモール、工事現場、現金輸送、空港など、今やどこでも目にする警備員。 世の中のセキュリティ意識は高まり、警備業務の支えなくしては成立しない社会となっています。
そんな警備をビジネス的視点からとらえ「規模」「給与」「健康」「高齢化」などの課題について切り込んでいる本です。警備が置かれている現状を知るのに最適な1冊なので、いつかは警備会社を立ち上げようと考えている人にもおすすめです。
- 著者
- 柏耕一
- 出版日
著者は、2019年時点で交通誘導員として日々現場に立っている70代男性。自身の経験を基にその悲哀と笑いを日記形式で描いた1冊がこちらの本です。
通行人にクレーム入れられたり、現場監督に怒鳴られたり、警察に注意されたりと警備の仕事の厳しさの実態に迫りつつも、喜びや笑いがある現場であることもしっかり伝えています。
業界関係者からの評判がよく、共感したりためになったりとさまざまな読み方をすることができます。読後は、「警備の仕事っていいな」と思える良著です。
給与は決して高い方ではないし、たまに心ない言葉をあびさせられることもある警備員。しかし「なんか割に合わない仕事だな」なんて思うなかれ。自分に合った仕事内容を選べたり、時には感謝されたり、ほっこりしたり、人の役に立てていることを感じたりと警備の仕事は魅力的で、やりがいが十分詰まっています。
そんな警備員に興味を持った人は、ここで紹介している本で、仕事内容や課題、楽しさについてより深く調べてみてください。警備の仕事をより身近かつリアルに考えられるようになるはずです。