大型船舶の職員がもたなければいけない「海技士」の資格。商船や水産分野で命と海の環境を守りながら職務にあたっています。島国である日本では、いつの時代も必要不可欠な存在だといえるでしょう。この記事では、海技士の仕事内容や試験の内容についてわかりやすく解説していきます。
海技士は、国土交通省が管轄している国家資格。命と海の環境を守り、安全な航海をするために必要な資格です。国土交通省のHPには次のように記されています。
大型船舶(20トン以上の船舶)に船舶職員(船長、航海士、機関長、機関士等)として乗り組むためには海技士の免許が必要です。
海技士の免許を受けるためには、「海技士国家試験」に合格し、かつ、海技免許の区分に応じた「海技免許講習」の課程を修了することが必要です。
航海・機関・通信・電子通信と職域が分かれていて、それぞれが専門的な立場で業務にあたるのが特徴。船長や機関長などになると大きな役職手当がつく業界のため、キャリアアップを目的に上級合格を目指す人も少なくありません。
ただ海の上は常に命がけ。ハードな職業でもあります。平均年収は700万円~800万円ほど。巨大船舶の船長であれば年収3000万円を超えることもあるそうです。新人航海士でも初年度から400万円前後の年収があり、高収入の職業だといえるでしょう。
先述したとおり、海技士の試験は職域によって 航海・機関・通信・電子通信の4種類に分かれています。それぞれに定められた級と、業務内容を紹介しましょう。
通信と電子通信については、試験開始期日の前日までに17歳9ヶ月以上でなければいけないという年齢制限が設けられています。
また海技士の試験を受ける際には、前提として「乗船履歴」が必要です。
商船高等専門学校や海事系大学に進学し在学中や卒業後に乗船実習を受ける、もしくは商船や漁船会社などに就職して乗船しなければいけません。
海技士の試験は、年に4回各地方運輸局などで実施されています。
試験内容は、筆記試験と身体検査、級によっては口述試験もあります。いずれの場合も、筆記試験に合格しなければ身体検査や口述試験を受けることはできません。なお、水産・海洋学校など船舶職員養成課程を修了した場合は、筆記試験が免除になります。
筆記試験の科目は以下のとおりです。
身体検査については、一般的な運動能力があれば問題ないといわれています。視力、弁色力、聴力、眼疾患の有無、疾病の有無が問われるので確認しておきましょう。
また海技士の資格には有効期限があり、5年ごとに更新する必要があります。
このような更新の条件があるので注意しましょう。
級によって異なりますが、海技士の試験の難易度は高いと位置付けられています。階級が上がるにつれて難易度も上がる傾向にあり、特に3級以上を受ける受験者が苦労するそうです。
航海と機関の1級と2級では英語力も求められます。通信・電子通信では、級にかかわらず無線の資格も必要なので別途対策が必要です。
試験の合格率は公表されていませんが、筆記試験の合格ラインはそれぞれの科目で配点総計の50%に達し、かつ全科目の得点総計が65%に達した場合。口述試験の合格ラインは得点の総計が配点総計の65%に達した場合とのことです。
- 著者
- 機関技術研究会
- 出版日
機関技術研究会がまとめた、海技士試験対策のための過去問題集です。「機関」では、機関と執務に関する基礎力から応用力までを養える丁寧な解説がされています。3年分の内容が科目順に並んでいるので、系統的に学習を進めることができるでしょう。
また、何のために何を学ぶ必用があるのか明確に示されているので、納得感をもちながら学べるのも魅力的。初学者の人でも全体像を掴みながら知識を身につけることができる一冊です。
- 著者
- 昌志, 藤本
- 出版日
海上勤務を経て、海事教育に従事する専門家がまとめた海技士の口述試験の問題集です。過去の問題を解説しながら、実践的な対策ができるようになっています。
口述試験は、インプットした知識をいかに要領よく的確にアウトプットできるかが鍵となります。本作で論点別整理をしながら学習を進めていきましょう。