CA、キャビンアテンダントとも呼ばれ、国内外を飛行機で飛び回る華やかなイメージの客室乗務員。一度憧れたことがある人は少なくないかもしれません。必須の資格などはありませんが、旅客の安全を第一に考えられたり、英語力が高かったりと、備えておきたい能力はいくつかありますが、突出したスキルの高さではなく、バランスのよさが大切です。 行き届いたサービスを支えるホスピタリティや体力とは。客室乗務員の仕事内容はもちろん、年収や働き方、就職活動、その後のキャリア形成などについてもご紹介していきます。
客室乗務員とは、運転中の旅客機の機内においてサービスをおこなったり、旅客の安全を守る乗務員のことです。日本では客室乗務員のほか、キャビンアテンダントやフライトアテンダント(CA)と呼ばれるのが一般的です。
大きく分けて、客室乗務員(キャビンアテンダント)の仕事内容は次の2つです。
▶︎1.機内サービス
その他、乗客のリクエストはさまざまであるため、臨機応変な対応が必要です。
▶︎2.保安管理
旅客の安全を守り、機内における事故を防ぐ業務は客室乗務員にとって最も重要な仕事です。
客室乗務員の年収や勤務形態、担当する就航路線などは日系エアラインと外資系エアラインで違いがあります。
今でこそ大手航空会社では入社初期から正社員雇用が一般的ですが、今までは契約社員から正社員に登用される流れが少なくありませんでした。ただ契約社員でも契約期間満了で終了ということはなく。よほどのことがなければ契約を延長する方が多いです。
外資系エアラインでの雇用は、正社員雇用は珍しいと言われています。また日系エアラインに勤める客室乗務員と違い、契約満了後はほかの外資系エアラインに転職する方は多いのだとか。
収入にはあまり差が見られないので、どちらの働き方が自分に合っているかを考えてから採用に挑みたいところですね。
憧れの客室乗務員になるには、新卒採用と既卒採用のどちらかを受験し合格しなければなりません。またそのどちらを受験するにも、大学や専門学校を卒業している必要があります。
では客室乗務員を目指す方にとって、進学先はどのように選べばよいのでしょうか。
採用条件に専攻は規定されていないので、純粋に学びたい学部・学科を選んでも構いません。高校卒業前からキャビンアテンダントになることを決めていて、関連した学部で学びたいということであれば次のような選択肢があります。
他にも、大学に通いながらエアライン系の専門学校に通うなど、ダブルスクールの方法を取る方もいます。
航空業界に特化した就職活動の対策ができる点はメリットといえますが、費用対効果を考えるとダブルスクールを選ぶことが必ずしも有利とは言い切れないようです。
▶︎新卒の場合
最終選考時に体力測定がある以外は、他の民間企業の新卒採用と大きな差異はありません。基本的には以下のような流れで登録・選考・試験がおこなわれます。
▶︎既卒の場合
募集時期は各社さまざまで、基本的には人材不足を補う目的で募集が出されるため、新卒と比べ募集枠は狭いと言われています。また募集期間も短いので、こまめに情報をチェックしておく必要があるでしょう。
前職での経験がサービス業など接客に関するものであればアピールポイントになります。接客経験がなくても、顧客折衝経験やコミュニケーション力を要する場面で活躍したエピソードを話せると強みになりやすいです。
新卒、既卒どちらともに共通していえることは、「なぜ客室乗務員になりたいのか」を説明できるように掘り下げておくことと、自己分析が大切だということです。どの職業を目指すにおいても共通して重要なポイントですね。
客室乗務員を目指すにあたって、身体的条件が気になるところでしょう。
客室乗務員にとって必要な身体的条件といってイメージされるのは「身長」と「視力」であることと思います。
▶︎国内の航空会社では身長制限はない
国内の航空会社の場合、身長制限を設けている会社はほとんどなく、150センチ台であっても採用歴があります。反対に国外の航空会社では160センチ以上は求められることが多いようです。
▶︎コンタクトレンズ着用で1.0以上必要
視力に関しては矯正視力(コンタクトレンズをした上での視力)が1.0以上あればよく、こちらはレンズを使用すれば心配ありません。客室乗務員は機体の揺れがひどい時や緊急時などに乗客に指示を出し率先する必要があるため、眼鏡は禁じられていたり使用しない場合がほとんどです。
コンタクトレンズの着用時間や衛生管理には普段から気を付けて、目の健康には気を付けましょう。
その他では、呼吸器・循環器・耳鼻咽喉・脊椎などが航空機業務に支障がないことが条件にあげられます。入社前に身体検査があるのはこういった部分を確認するためです。
多くの日系航空会社が条件として掲げる英語力は、「TOEIC600点または英検2級」レベルです。大学生の平均点が約560点、上場企業の7割が国際部門での業務遂行に700点以上を求めていることから見ても、600点は決して高すぎる条件ではないことがわかります。
高校卒、専門学校卒、短大卒で入社できる航空会社は段階ごとに国内外問わずあります。よって、最低限高校を卒業していれば客室乗務員を目指すことは可能です。4年制大学を卒業していればすべての会社から選択することができます。
また、客室乗務員を目指している段階では目が届きにくい部分ですが、夢を叶えた後ずっと続けていくのかどうか考えたときに最終学歴は重要になってきます。
客室乗務員を生涯続けるつもりでいたとしても、結婚出産などライフイベントや、健康上の理由でいつ辞めたり転職を余儀なくされるかは誰にもわかりません。
「客室乗務員になりたい」と目標を掲げる姿勢は素敵です。しかし、職業そのものというより、それを仕事にすることでどのような人になりたいのか、どのような生き方をしたいのかというところまで考えてみたうえで、学ぶ場所を選びたいものです。
体力のいる仕事内容であり勤務環境が不規則なため、結婚や出産といったライフイベントを機に退職や転職をする人が一定数います。
しかし一時期と比べ、家事育児と両立しながら客室乗務員を続けるための制度やサポートが整ってきているのも事実です。将来の選択肢に、どのようなケースがあるのか見ていきましょう。
20~30代の方が多いイメージの職業ですが、結婚出産後も継続する方や、客室全体を統括する責任者(チーフパーサー)にステップアップするなど現役のまま活躍を続ける方もいます。
ステップアップを経ることにより、収入や福利厚生面の優遇が増え働きやすくなるメリットもあります。
入社後、乗務するようになる前の新人がトレーニングを受ける研修施設にて新人教育を任されることがあります。そのまま長く研修の場にいる方もいれば、また現場に戻る方もいます。
客室乗務員職から、社内の別の部署に異動する場合があります。本人の希望や評価が反映されてのことですが、数は多くはないようです。
勤務形態や待遇も変わることと、客室乗務員になるためのトレーニングに時間や費用がかけられているだけに、社内での部署異動はレアなケースだといえるでしょう。
20代、30代前半あたりの転職活動では、業界や職種にもよりますが大きくキャリアを転向することは十分に可能です。
キャビンアテンダントの経験を活かそうとすると、ホテルや販売など観光業、接客業があげられます。
また、企業に属さず、キャビンアテンダントの経験を活かしてマナー講師やワイン講師など、得意とする分野に磨きをかけて発信するフリーランスの働き方を選ぶ方もいます。経験もとに自己啓発本など本の執筆をしている方もいます。
客室乗務員は人によって向き不向きがはっきりとわかれる職業です。接客が好きだったり、1日に何往復もするフライトに対応できる体力があったりと、客室乗務員としての適性を見ていきましょう。
サービス業のなかでも特に質の高いサービスが求められる客室乗務員にとって、きめ細やかな対応をするためのおもてなしの心は最も重要です。新人はもちろん、ベテラン乗務員であっても、よりよいサービスを目指す心がけが大切です。
心地よいサービスを実施するには、清潔感ある身だしなみ、正しい言葉遣いや姿勢などは前提条件として捉えられます。キャビンアテンダントを目指す人は、普段から言葉遣いや身だしなみを意識して過ごすことをおすすめします。
また、クレームの対応力が問われる職業でもあります。キャビンアテンダントのサービスに対する直接的なものもあれば、別の乗客の振舞に対する内容など、必ずしもキャビンアテンダントに非があるわけではないものまでさまざまです。
純粋な要望も、感情的なクレームも、目の前のお客様が何を求めているのかを察知し、可能な範囲で臨機応変に対応する能力が求められます。
おもてなしの姿勢に次いで重要な資質は、ずばり体力です。国内線のみ運航する航空会社であっても、1日に数回のフライトをこなさなければなりません。制服にもよりますが、ヒールの靴を履いて美しい姿勢で気を配りながら機内サービスをするという仕事は、想像以上に体力を使います。
国際線のフライトを任されるようになれば、その度に時差が異なる国へ行くこともしばしば。時差に体が追いつかず、うまく眠れないまま睡眠不足の状態で次のフライトへ発つことは珍しくありません。10時間以上の長距離フライトもあります。
睡眠以外でいうと食事面が挙げられます。ステイ先で外食をしたり、機内で客室乗務員用食事をとることがほとんどであるため、日々の食事はほぼ全て外食になります。オフの日に意識して自炊をする人もいますが、材料を用意しても食べきれずに廃棄してしまうことがもったいないということでそもそも自炊しない人もいます。
睡眠と食事という生活習慣の柱2本が揺らぎやすいハードな環境。オフの日には体を休め、できるだけ良質な睡眠と食事をとるようにしてセルフケアをすることが大切です。健康な心身があって初めて、質のよいサービスを提供することができます。
客室乗務員には、機内サービスと保安管理という大きく分けて2つの仕事があります。イメージされやすいのは1つ目の機内サービスですが、保安要員として乗客の生命を預かり、非常時には率先して誘導するという仕事はとても重要です。
安全に目的地へ送り届けるのはもちろんのこと、フライト中の安全や健康管理にもきめ細かな気配りが求められます。気分の悪くなった方、妊娠中の方、持病をお持ちの方など乗客の状況に合わせてできる限りの配慮をすることがあります。
客室乗務員の仕事は常にチーム体制でおこなわれます。フライトをともにするメンバーは毎回異なるため、初対面のキャビンアテンダントたちと短時間でチームワークを発揮できる状態にならなければなりません。
パイロットや整備士など、コミュニケーションを取るべきメンバーは他にもいます。初めての顔ぶれのなかでスムーズに意思疎通をはかったり、仕事を指示したり任せられたりする環境において、協調性の重要さは言うまでもありません。
学生時代や前職で、仲間や同僚と協力して何かをやり遂げたり苦楽を味わった経験があれば、採用活動の時にアピールポイントになることでしょう。
- 著者
- ["ヤン カールソン", "猶二, 堤"]
- 出版日
30年前に書かれたものの、今なお読み継がれるロングセラーの著書がこちら。 カスタマーサービス、顧客満足の原典とされ、サービス業に携わるのであればまずおすすめということで、上司から勧められた方もいらっしゃるはずです。
スカンジナビア航空の経営再建を担った筆者の奮闘記でもあるこちらは、ひとつの企業内において、職種を問わず経営者意識を持つことの重要性も語られています。
旅客に心地よいサービスとはどのようなものなのか、知りたい方はぜひ一読してみてくださいね。
- 著者
- 飯塚 訓
- 出版日
1985年、御巣鷹山の尾根に日航機が墜落した事故を扱っている著書。著者は、520人というこの事故による犠牲者全遺体の身元確認を、127日間かけて最前線でおこなった責任者です。
起こりうる最悪の事態について、客室乗務員の立場としてどう考えるか。もし自分がその場にいたらどう振舞うことができるのか。
乗客、客室乗務員、パイロット、その航空機に乗っていた一人ひとりの人生と最後と残された人たちの生きざまに、言葉で表現できない思いがひたすら募ります。
- 著者
- 三枝 理枝子
- 出版日
- 2010-10-25
キャビンアテンダントの間で語り継がれる、実際に空の上で起こった物語33選が描かれている本です。
1話ずつ読み切り型で読みやすく、キャビンアテンダントとしての心構えを確認できるだけでなく、乗客として飛行機に乗ることが楽しみになるような本です。
これから目指す方はもちろん、すでにキャビンアテンダントの仕事をしている方が読むことでやりがいや魅力を再確認できるような、心温まる実話集です。
いかがでしたでしょうか。憧れの職業として人気の客室乗務員を目指すのに、特別な条件などはないことがわかりましたね。憧れの職業を憧れで終わらせるのはもったいないことです。今からでも挑戦することは遅くはないでしょう。
興味・関心があり、少しでも働く自分がイメージできた方は、客室乗務員の仕事にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。