目のプロフェッショナルである視能訓練士。子どものころにも関わる機会があるため、お世話になったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 視能訓練士という職業は一体どんな仕事をしているのでしょうか。また気になる年収事情や、必要な資格の取り方などについても詳しく解説をしていきます。 記事の最後には視能訓練士に関する書籍もご紹介していきますので、興味のある方は書籍も手に取っていただき、さらに視能訓練士という仕事を知ってみるのはいかがでしょうか。
視能訓練士は、1971年に国家資格化した職業で、「Certified Orthoptist」略してCOと呼ばれるリハビリ職のひとつです。
もともとは、小児の弱視や斜視の視能矯正や視機能の検査をおこなう専門技術職として誕生しました。しかし、現在では、視覚に関する幅広い業務をおこなっています。
視能訓練士の仕事内容は主に4つあります。
◾️視能矯正
視能矯正は、主に子どもに対しておこないます。子どもは視力検査を大人のようにこなすことが難しいため、正確な視力検査ができるようにアプローチをしたり、弱視や斜視という診断が下った方に対しては、視力向上や正常な両眼視機能の獲得を目的とした視能訓練をおこないます。
◾️視機能検査
視機能検査は眼科でおこなわれる検査全般を指します。視力検査や屈折検査、眼鏡処方検査、コンタクトレンズ検査、視野検査や、眼の奥の写真や組織の断層を撮影する画像診断検査、正確な手術をおこなうための手術前の検査などがこれにあたります。
◾️健診
3つ目は健診です。保健所や区役所などで行われる3歳児健康診査の視覚検査や成人の生活習慣病検診などの検査をおこないます。
◾️ロービジョンケア
ロービジョンケアとは、見えにくくなってしまった際にさまざまな方法を用いて見えにくさをサポートし、生活の質を改善させていくという考え方です。
目の病気やけがによって目が見えにくくなってしまっても日常生活や学業、仕事が継続できるようにその方法を一緒に考え、補助具を使用したり、リハビリを継続して行える施設と提携したりしてその生活をサポートしていきます。
視能訓練士の収入がどのくらいか、「視能訓練士実態調査報告書」を参考にすると、2015年の平均年収は366.4万円としています。
また2015年時点の年間所得は、下記の順番で多いとされています。
ですが、この金額には非正規も含まれているため正社員ならばもう少し年収は上がることが考えられます。
また勤務施設ごとの年間所得は下記のようになっています。
実はこの傾向は2010年の調査時から大きな変化は現れていません。もし年収で勤務先を考える場合は、上記の情報を参考にしてみるとよいでしょう。
視能訓練士になるためには、全国におよそ30校ある視能訓練士養成施設に入学して、専門的な知識や技能を修得し、国家試験を受けて合格する必要があります。
具体的な受験資格は下記のようになっています。
上記の条件のうち、どれか1つに該当すれば受験資格を得ることができます。
視能訓練士国家試験は年に1回、例年2月におこなわれます。試験地は東京、大阪のみです。
試験科目は下記の5つ。
基礎医学大要、基礎視能矯正学が午前の部で、視能検査学、視能障害学、視能訓練学は午後の部となっています。午前、午後の部の試験時間はそれぞれ2時間です。
方式はすべてマークシート形式で、五肢択一式の設問のみが計150問、出題されます。
視能訓練士の試験は他のコメディカル職に比べ、助産師の次に合格率の高い試験となっています。実際、過去5年分のデータを見ても合格率は90%台を推移しています。
この数字から見るに、学生時代にしっかりと勉強することで、国家試験への合格が狙えるといえるでしょう。
コメディカル職に従事している方の多くは、複数の資格を保有している場合が多いです。視能訓練士の場合はどうでしょうか。
「視能訓練士実態調査報告書」によれば、2015年時点で視能訓練士以外の資格を保有している方は21%と少なく、残りの77%は資格は持っていないという結果になっています。
資格を複数保有している方は1995年より5年ごとに減少している傾向がありましたが、2015年時点では前年の2014年と同程度の結果におさまっています。
担当する業務の幅が広くなるにつれ、複数の資格が必要になっている場面や、または転職をおこなっている方が増えているからなのかもしれません。
21%の方がどんな資格を保有しているのかも気になりますよね。
これは2015年のデータですので現在はもっとさまざまな資格保有者がいるかもしれませんが、やはり多くの方が教育現場や介護支援の現場との接点を持っていることが分かりますね。
視能訓練士の資格を取得された方のほとんどが医療機関で働いています。
2015年の「視能訓練士実態調査報告書」によれば、視能訓練士の資格を取得された方の95%が病院で働いており、残りの5%が企業や養成施設の講師として働いているとしています。
病院で働く場合には大学病院など大きい病院だけでなく一般病院や総合病院、クリニックやレーシックを専門に扱う医療機関などで働くことができます。
他にも健診センターや保健所、メガネやコンタクトを扱うメーカーで働いている方もいらっしゃいます。
スマホやパソコンの普及によって目の病気や目のトラブルに悩まされている人が増えています。また、レーシックという治療法が普及していることや、糖尿病などの病気によって目の障害が起こってしまってもそれと付き合いながら社会復帰をされる方も増えているため、これからも需要のある職業といえます。
斜視など子どもの時にしか治せない目の疾患のフォローをするのも視能訓練士の仕事のため、子どもと関わる機会が多く、子ども好きの方ではやりがいを感じるのではないでしょうか。実際に子どもと関わることが好きで、医療にも携わりたいからと視能訓練士の道を選ばれた方もいらっしゃいます。
視能訓練士は女性の割合が多く、視能訓練士実態調査報告書によれば、2015年における男女割合は、下記のようになっています。
働き方が多種多様で、求人も多く、生涯にわたって働き続けやすい仕事といえます。
- 著者
- WILLこども知育研究所
- 出版日
視能訓練士がどういう仕事をしているのか、視能訓練士になるにはどうしたらよいかなど視能訓練士についての情報が集約されている1冊です。
視能訓練士へのインタビューも多く掲載されているため、実際に働かれている方の生の声を聞くことができます。仕事中はどんなことを考えているのか、どんなやりがいを感じられるのかといった直接聞きたいけれど聞きにくい踏み込んだ質問の回答もあるため、視能訓練士という仕事を知るために非常に参考になります。
この本は全国学校図書館協議会選定図書となっている本です。写真も多く、普段本を読まないという方でも読みやすいことが特徴です。
視能訓練士としてのキャリアアップについても書いてあるため、1冊持っていればあらゆる視能訓練士についての情報を得ることができるため、視能訓練士の仕事を知りたいという方におすすめの1冊です。
- 著者
- 橋口 佐紀子
- 出版日
視能訓練士になりたいと考えている方におすすめな1冊です。公益社団法人日本視能訓練士協会が作成に協力しており、視能訓練士についてのより正確な情報を得ることができます。
1冊目と同様に視能訓練士として実際に働かれている方へのインタビューなども載っているのですが、こちらは、働かれている医療機関(病院、クリニックなど)ごとだったり、対象とする相手(子ども、高齢者など)ごとにいろいろな人にインタビューをしているため、自分が働きたいと思っている現場の声をより知ることができます。
目に関するコラムも載っているため、目のことについても勉強になります。視能訓練士になりたいという方や、視能訓練士の勉強を始めて、どういったところに就職しようか悩んでいるという方にはぜひ見ていただきたい1冊です。
- 著者
- ["小林義治", "松岡久美子"]
- 出版日
視能訓練士国家試験の要点をまとめ、演習問題などを詰め込んだ1冊です。学生を教える立場にある教師たちが筆をとった1冊ですので、解説が非常に分かりやすい本です。
図も豊富で、目でみてわかりやすいというのもポイントです。基本項目を中心に国家試験合格ラインの60%以上をカバーする内容となっているため、1冊をしっかり取り組むことで国家試験合格に近づくことができます。
表紙の見た目が文房具のノートのようでとてもかわいいというところも、持っていてテンションが上がるのではないでしょうか。視能訓練士の勉強を先取りしておきたいという方は、ぜひこの本を活用してみてください。
スマホやパソコンをフル活用する現代において、視能訓練士という職業はますます需要が高まってくる職業と考えられています。
国家資格ですが他のリハビリ職と比較しても合格率が高く、しっかりと勉強することで資格を得ることができます。
視能訓練士という職業に興味があるという方は、ここでご紹介した書籍で視能訓練士の情報を収集し、ぜひチャレンジしてみてください。