「何をしてもすぐ疲れる」「十分に休みを取ったはずなのに、疲れが回復しない」といった悩みを抱えている人は多いでしょう。自分でも気づかないうちに疲労が溜まってしまうのはどうしてでしょうか。本記事で紹介するのは『スタンフォード式 疲れない体』。疲れの仕組みや筋肉と神経の関係性を理解することで、疲れにくい体を作ることができます。アスリートも実践する疲労の解消と予防を積極的に取り入れ、健康な体を手に入れましょう。本記事では、疲労の種類から、疲れにくい体になるための習慣までわかりやすく解説していきます。
誰もが知っているアメリカのエリート大学であるスタンフォード大学。実はスポーツの分野においても超一流なのです。
そんなスタンフォード大学アスリートを指導しているのが、『スタンフォード式 疲れない体』著者の山田知生先生。彼が勤めるスタンフォード大学のスポーツ医局では、選手のパフォーマンスが上がらない、ケガや病気をおこしていまう、などの原因は「疲労」にあると結論つけました。
疲労により筋肉や柔軟性が低下している状態でいつも通りに動こうとしても、体が反応してくれません。無理に動かしてしまうと、筋肉が必要以上の力を出してしまったり、普段より大きな力で体が伸ばされてしまい、ケガに繋がってしまうのです。
そこで、スタンフォード大学では一流のアスリートに育てるために「疲れない体づくり」を重要視しました。疲れない体になるには、最新科学に基づいた「疲れの解消」と「疲れの予防」が大切になると著者は言います。
疲労は、アスリートに特有の問題ではありません。運動以外にも、仕事や日常生活にも大きく関わってきます。
疲れを感じるというのは、心身ともに過度な負荷がかかっている状態です。疲労は、「これ以上、負荷がかかっている状態が続くと体に悪影響です」というサイン。疲労感が溜まったままで仕事をすると、集中が続かなかったり、普段はしないようなミスをしてしまいます。
そうならないためにも、疲れを解消する方法や、疲れを予防する方法を学ぶことが大事なのです。
本書が説く疲れない体のつくり方は医学的な証拠に基づいており、効果を実感しているという声も多くあります。
日々の仕事に疲れがたまっているビジネスマン、家事に追われている方、はたまた部活に忙しい学生も、ぜひ手に取って実践してもらいたい一冊です。
疲労にもさまざまな種類があります。たとえば、脳が疲労する「中枢性疲労」、脳以外の部分が疲労する「末梢疲労」、病気以外での疲労を感じる「生理的疲労」などです。
末梢疲労には、筋肉を動かし続けた後の体のだるさが含まれます。この疲労は筋肉が疲労しているため、しっかりと休ませてあげれば回復できます。
ストレスや過労によるもの、睡眠不足や運動不足といった生活習慣の乱れによる疲れなどは、生理的疲労に分類されます。
疲労は体と神経のつながりに不具合が生じて起こるといいます。疲れない体になるためには、体だけでなく、神経にも気を配る必要があるのです。
疲労と関連する神経として、「自律神経」と「中枢神経」の2つがあります。自律神経は、意識とは無関係に働いている器官を制御し、中枢神経は、体を動かすために司令を出す働きをしているのです。
自律神経は、日中の活動時に活発になる「交感神経」と、夜間や安静時に活発になる「副交感神経」の2つがセットになっています。たとえば、交感神経が活発になると心臓の心拍数が増え、逆に副交感神経が活発になると、心拍数が減ります。このような働きによって体調のコントロールをしているのです。この交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと、疲れがたまりやすくなります。
一方で、体の使い方に関係なく疲れを感じている場合は中枢神経が原因の疲労です。大きいプレッシャーがかかる仕事や長時間の会議の後には、ぐったりと疲れを感じるでしょう。脳に大きなストレスがかかると、筋肉の疲労と似たような反応が起き、脳内にダメージを受けて疲労を感じるようになるのです。
疲労と脳は密接な関係にあるため、脳が疲れる原因は「体の歪み」にあると著者は言います。
姿勢が正しくないと、中枢神経からの命令が正常に伝わらず、小さな動きでも筋肉と神経に負荷がかかるため、疲れを感じやすくなってしまいます。体が歪むと指令がうまく伝わらずに「だるい」「重い」といった疲労感が生まれるのです。
したがって、歪んだ姿勢の体は「疲れやすい体」ということになります。この体の歪みを矯正するために重要な役割を果たすのが、「体内の圧力」。体のゆがみを正すには、この圧力を高める必要があります。具体的にみていきましょう。
筋肉の疲れや、神経の疲れの他にも「内蔵の疲れ」があります。食事はこの内蔵の疲労に関わっているのです。
本書では、「何を」「いつ」「どう食べるか」を中心に解説しています。ここでは「何を」の部分について簡単に紹介していきましょう。
積極的に摂取しておきたいのが、タンパク質。スポーツをしている人にはプロテインという言葉でおなじみでしょう。タンパク質は、髪の毛や爪、筋肉、ホルモンを作る働きがあります。タンパク質を多く含む食材には、牛肉や、白身魚、鶏むね肉などがありますが、特に鶏むね肉には、疲れに効果のある成分が含まれているためおすすめされています。
次に紹介するのは、炭水化物。ライ麦パンや玄米、クスクスなど色が茶色いものを選びましょう。茶色い炭水化物は白い炭水化物より栄養素が多く含まれています。一方の、白米や食パンなど白色の炭水化物には、糖質が多く含まれているため取りすぎには注意です。
このタンパク質と炭水化物は、1日の食事で比率が3:1になることがベストな食事法になります。
疲れない体になるための考え方について説明していきます。
思考法は「マインドセット」とも呼ばれます。マインドセットとは、これまでの環境や経験から形成された思考のクセのようなものだと考えてください。実は、このマインドセットの持ち方次第で、疲労に強くなることができるのです。
本書では、「成長型マインドセット」と「固定型マインドセット」の2つを取り上げています。
成長型マインドセットというのは、何事にも関心を持って、失敗しても成功するまでやり続けようとする考え方。子どもが疲れを感じにくいのは、このマインドセットの効果でもあります。
固定型マインドセットは、失敗することを避け、できないことを諦めてしまう考え方。この思考では、頭がモヤモヤしたままになり、脳に疲れが出てしまいます。
疲れない体を作るには、固定型マインドセットから成長型マインドセットに切り替える必要があるのです。たとえば、できないことに「できない」と考えるのではなく、「まだできない」と「まだ」を付け加えてみます。今はできないけれど「これからできるようになる」というようにポジティブに捉え直すクセをつけ、成長型マインドセットに慣れていきましょう。
「体内の圧力」を高め、疲労予防する方法として本書では「IAP呼吸法」を推奨しています。IAP呼吸法とは、息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法です。お腹にある横隔膜の動きを意識することが重要になります。
この呼吸法を実践すると、体幹がしっかりと安定するようになり、歪みのない正しい姿勢が身につきます。正しい姿勢になることによって、中枢神経が正常に働き、体の動きがスムーズになります。無駄な体の動作がなくなることによって、ケガや故障のリスクが減り、体のパフォーマンスが上がるのです。
実際におこなう際には、筋肉に力を入れず、リラックスしておこない、無理をせず、体調がすぐれないときは中断することに注意しましょう。
ここまで疲れない体を作るメソッドを簡単に紹介しましたが、本記事では触れられなかった重要なポイントはまだまだあります。詳しい内容が気になる方は、ぜひ本書を手に取って実践してみてください!
- 著者
- 山田知生
- 出版日
疲れない体についてイラストでわかりやすく解説したこちらは、イメージが掴みやすく直感的に理解ができます。文章を読むことが苦手な人におすすめです。
- 著者
- ["木野村朱美", "中村知史"]
- 出版日
体の表面でなく、骨格を意識して必要のない動きをなくすことで、疲れない体が手に入れられます。
46種類の日常生活のつらい動きや悩みも紹介されているため、あなたの「しんどい」もきっと解決されるでしょう。
疲れない体になるために必要な呼吸法について、他の著者が書いたものも読みたい人はこちら。
- 著者
- ["パトリック・マキューン", "桜田 直美"]
- 出版日
オリンピック金メダリストも指導した著者が、人生を変える呼吸法について語ります。
一般に知られている「深呼吸」が実は体に悪かったという衝撃的な内容から始まります。呼吸、フィットネス、健康という3つのパートからなる本書。最高の呼吸法を通してあなたも人生を変えてみませんか。
疲労に強い体を作るには食事も欠かせません。こちらは、口にするものは全て自分への投資と考えることを読者に勧める書籍になります。
- 著者
- 満尾 正
- 出版日
何を食べるかという選択は同時に、何を食べないかという選択でもあります。避けるべきものにも意識を向けることが大切なのです。食生活が偏りがちな人は、栄養知識を身につけることもできるので特におすすめの一冊です。
今回はスポーツ分野でも有名なスタンフォード大学の学生選手に指導する著者から学ぶ、「疲れない体になる方法」についてお伝えしました。本記事では触れられませんでしたが、他にも疲労回復に有効な体の動かし方や、1日3食への反論など面白い内容が盛りだくさんです。気になる人はぜひ本書を読んでみてください。簡単に行動に移せるものから始めて、「疲れない体」を手に入れましょう。