私たちの暮らしに「労働」は密接に関わっています。労働基準監督官は、会社や個人事業主に対して、働く人や職場の環境などを監督・指導する仕事です。この記事では、仕事内容や逮捕の権限、採用試験の科目と内容、難易度などをわかりやすく解説していきます。
労働基準監督官は、厚生労働省に所属する国家公務員です。全国の労働基準監督署をはじめ、各都道府県の労働局や労働基準局などに配属されます。
職場の環境や労働者の権利を守るための法律のスペシャリストといえる職業。そのフィールドは多岐にわたり、労働基準法および労働安全衛生法にもとづき、労働環境の整備や問題解決、労災などの業務をおこないます。
時には大きな事故など過酷な現場に立ち会うこともあり、厳しい状況でも物事を冷静に捉える力や、高度なコミュニケーション能力が求められるといえるでしょう。
年収は、国家公務員なので法律に定められた金額が支給されます。月の基本給は通常のサラリーマンと同等の18万円前後からスタートし、勤務年数とともに基本給は上がります。福利厚生がしっかりしていて、残業代やボーナスなどの支給は安定しているでしょう。
労働とともに成り立っている日本社会にとって、労働基準監督官はなくてはならない存在です。2019年時点で、全国で約5300万人が働いています。
そんななか、法律に違反したブラック企業やパワハラなどの劣悪なトラブルに対し、刑事訴訟法による特別司法警察職員として、逮捕・送検できる権利をもっているのが特徴です。
劣悪な環境による労働者の病気や怪我、人間関係のトラブル、各種ハラスメントなど、いたるところで問題は起こっていて、個人の命を脅かすこともあります。労働基準監督官は、これらをどのように取り締まり、解決していくかを示す社会的役割を担っているのです。
労働基準監督官になるための採用試験を受ける際、特別な資格はいりませんが、年齢制限があります。受験する年度の4月1日時点で21歳以上30歳未満の者、もしくは受験する年度の4月1日時点の年齢が21歳未満で、大学を卒業または受験する年度の3月までに卒業見込みの者です。
また日本国籍がない人は受験することができません。
採用試験は、例年1次試験が6月に、2次試験が7月におこなわれます。1次試験は筆記、2次試験は面接と身体検査です。
A(法文系)とB(理工系)の2種類に分かれているので、自身の学部や専門分野をもとに選択するとよいでしょう。それぞれで採用予定者数が定められています。
合格者は採用候補者名簿に登録され、成績順に採用されます。高得点をとることが何よりも重要です。
1次試験の試験科目と内容
A(法文系)
基礎能力試験:多肢選択式、40題、2時間20分
専門試験:多肢選択式、40題、2時間20分
B(理工系)
基礎能力試験:多肢選択式、40題、2時間20分
専門試験:多肢選択式、40題、2時間20分
専門試験:記述式、2題、2時間
2次試験の試験科目と内容
労働基準監督官の採用試験は非常に難関。特にA(法文系)の倍率は高く、高難度です。それぞれ合格者数と倍率を見ていきましょう。
A(法文系)
B(理工系)
- 著者
- ["河野 順一", "寺田 知佳子"]
- 出版日
労働基準監督官の権限と役割がわかる作品。ベースとなる法律をこの一冊でマスターできます。
前半では理論をしっかりと解説し、後半には小説や対話形式の講義を収録しているのが特徴。ただ知識をつけるだけでなく、具体的なイメージをもつことができるのが魅力でしょう。
作者の2人は、労務管理事務所で勤務し、社会保険労務士の資格も取得している法務のプロフェッショナル。現場を知り尽くしているからこそ書ける、経営側の視点も盛り込まれています。労働基準監督官を目指す人はもちろん、労働の法律に関わる人におすすめの一冊です。
- 著者
- ["TAC公務員講座", "TAC公務員講座"]
- 出版日
労働基準監督官の採用試験の過去問題集。資格取得の専門予備校TACは公務員講座に定評があり、受講生からも支持されています。
公務員試験は出題範囲が広いですが、一方でおよそ6割が同じテーマを扱っているそう。つまり過去問題集を解くことが合格に欠かせません。
種類分けされた問題を解きながら、インプットした知識を再確認するようにアウトプットできる構成で、初学者でもわかるよう丁寧な解説もついているおすすめの一冊です。