思い返してみると「体育の先生」と呼ばれる体育教師は、教師のなかでも生徒にかなり近いことが多かったように思います。彼らは教育学部で学び、教員免許をもち、運動、体のしくみ、体と心の関係などを生徒に分かりやすく教えています。その親しみやすさから、体育の先生だけは覚えているという方はたくさんいるのではないでしょうか。 地方公務員のため仕事は安定しており、年収もいい。現代でも人気ある職業のひとつでしょう。 今回は、体育教師の仕事にまつわる疑問にお答えしていきます。教師の仕事に興味がある方、人に教える仕事に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください!
体育教師は大きなくくりでいえば「学校の先生」です。男女比は6:4で、やや男性の多い職場ですが、男女ともに活躍している職業といえるでしょう。
勤務先は、私立または公立の違いはあれど、小学校・中学・高校のうちどこかに勤務する方が大多数です。小学校は全科目を教える必要があるので「体育をメインに教えたい!」という方は、中学か高校への就職を目指すのがおすすめです。
主に教える科目は、体育実技の授業と保健体育の2科目です。
▷実技
▷保健体育
最近は、世間でも心の病への関心が強くなってきました。心の病は大人に限ったことではなく、子どももかかりうるもの。
子どもたちが、体育の授業で体を動かす・周りとコミュニケーションを取る・身体と心の仕組みを正しく理解することによって「健全な精神づくり」をおこなうことへの期待も高まっています。
体育の授業はそういった意味合いも含む教育の場であり、今後も体育教師の活躍が期待されています。
生徒指導の業務に関しては、服装や頭髪で注意されたことがある人も多いのではないでしょうか。コミュニケーション力を必要とする体育教師だからこそ「生徒をよく観察し指導する仕事を任せている」という学校が多いのかもしれませんね。
また近年は、学校と保護者間のトラブル問題も耳にします。子供との付き合い方だけでなく、保護者との付き合い方やフォローの仕方にも気を配らなければならない時代となりました。
現代は子供の数も減ってきており、子供が自由に遊べる場所も少なくなっています。そんななか、集団でコミュニケーションを取ったり体を動かすことのできる体育の授業は、重要な役目を担っています。
運動やスポーツ競技の楽しさを教え、部活動の顧問としても子供たちの体の成長を手助けし教育する立場、それが体育教師という職業です。近年は子供のメンタルヘルスの問題も増えてきているので、心の健康についても理解を深める必要があることも覚えておきましょう。
今回は、常勤講師を例にして収入の説明をしていきましょう。常勤講師は、自身が採用された年度や自治体・学歴・学校の区分で異なることもありますが、新卒の平均収入は22万〜26万円ほど。
世間では教師の仕事がいわゆる「ブラック」だと揶揄されることもありますが、さまざまな制度がしっかりしているのは確かです。
その点は、社会人として働く上では安心材料のひとつになるのではないでしょうか。また中学校教師より、高校教師の方が収入は高い傾向にあります。
実際に高校教師の収入がどうなっているのか、平成25年〜平成27年の「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」から確認していきましょう。
こちらは月収の値です。基本的に月収は40万円前後となることが多く、月収だけでも1年で換算すると約480万円ほどになります。ここにボーナスや諸手当が加算された額が、高校教師の年収となるわけです。同年のボーナスの金額も見ていきましょう。
夏、冬と2回のボーナス額となります。教師は地方公務員に属しますが、ほかの行政職にくらべ、月収もボーナスも高く設定されています。
というのも高校教師は休日に家で採点の作業をしたり、部活の顧問であれば部活での引率をしたりと時間外労働が多くあります。その分の金額をおぎなうために、月収とボーナスを高くしているのです。
教師の雇用形態には「常勤講師」と「非常勤講師」と呼ばれる2種類があります。
簡単に言えば、常勤は担任をしていて一日学校にいる正社員のような働き方。非常勤は授業だけをしに学校に来て、ホームルームや部活動にも直接は関わらないアルバイトのような働き方です。
正社員とアルバイトと説明すると語弊があるかもしれませんが、給与形態や各種手当についても、それに当てはめて考えると理解しやすくなります。また常勤と非常勤の大きな違いは、副業が認められているかどうかです。
非常勤講師は副業が認められているため、他の仕事と掛け持ちしている教師もいます。
そもそも、体育教師になるには「教員免許」を取らなければなりません。もちろん体育系の学部でも取得することは可能ですが、授業の内容が教育に関して専門性の低いことが難点です。
教師を目指すのであれば、大学か短大の教育学部の修了を目指しましょう。そこでは、体育学・教育学・スポーツ学の他にコミュニケーション学なども学ぶことが出来ます。その後、教育実習を経て教員免許試験に合格し、教員採用試験(年に一度)に合格することができれば、晴れて「体育教師」になることができます。
教育学部系のある国立大学は、全国に8校あります。
過去にはさらに5校ほど教育学部のある国立大学もありましたが、現在はこちらの8校のみとなっています。また私立大学については60校近く置かれています。
以前は「教員採用試験の難易度は高い」と言われていました。しかし、近年はその倍率も下がってきており、ピーク時には18倍もあった倍率が、2018年には倍率6.8倍となりました。
自治体によって多少の差はありますが、年齢制限もほとんどなく、なんと59歳まで受験可能なところもあるほどです。ポジティブに考えれば、本気で体育教師を目指したい人にとってはチャンスの幅は広いといえるでしょう。
体育教師を目指すにあたって有利になる傾向はあります。
運動が苦手であったり、部活動にはまったく所属していなかったという方よりは「自身も体を動かすことが好きである」「長年部活動を頑張ってきた経験がある」「身体の仕組みに興味・関心がある」といった人の方が有利になる傾向にあるようです。
身体を動かせればいいという単純な考えではなく、心と身体の関わりについて深く興味を持っている方は、現代の教育現場に必要とされる人材である可能性が高いといえます。
心理学などの分野に興味がある・実際に学んでいるという方も、将来の選択肢のひとつとして体育教師を検討してみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 白旗 和也
- 出版日
これを読めば体育の全てがわかると謳われている本書。実際に中身を読んだ方にも「読みやすい!」と好評の声が多数あり、小学校だけでなく中学の体育授業にも使えるような知識も含まれています。
「体育とは何を教える授業なの?」という基本的な疑問にも、著者が丁寧に答えてくれていますよ。
- 著者
- 浩, 齋藤
- 出版日
本書では本来の「教育」という仕事以上に、接客業と化した仕事ぶりを求められるようになった教師たちのリアルな体験談を紹介。実際に教育現場で働く現役教師からも、共感の声が多数寄せられています。
教師というのは、対子どもに注力すべき仕事のはず。しかし、昨今エスカレートする保護者の要求にどう答えるべきなのか教師の置かれている現状を知りたい方、もしくは教育現場への就職を控える方におすすめの1冊です。
- 著者
- ["辻 和洋", "町支大祐", "中原 淳", "辻 和洋", "町支大祐"]
- 出版日
近年ワイドショーなどで目にする、教師のサービス残業問題をはじめとする「教員の働き方改革」について、本書では具体的な改善策を提案しています。
どうやったら教師になれるのか?という不安はもちろんあるけれど、果たして長く教師として働いていけるのか?どんな働き方ができるのか? という不安が思い浮かぶ人も多いはず。そういった疑問や働き方に悩んでいる人へ、ぜひ手にとってほしい1冊です。
今回は、体育教師の仕事内容や収入について解説しました。勉強を教えるだけではないのが体育教師の大変さであり、やりがいでもあります。 仕事を通して人間関係や信頼関係が広がり、自身がいくつになっても生徒から慕われ続ける素晴らしい先生もたくさんいます。
自分が教師という職業に憧れたときのように、現代の子どもたちが憧れる先生になりたいという方は、ぜひ大学や短大への進学も検討してみてはいかがでしょう。