「文系だとIT企業ってやっぱ難しいのかな」「SIerに入ったら文系でもプログラマになれるって聞いたけど?」IT関連業界を志望している人のなかには、開発に興味があるけれど経験はない方は多いのではないでしょうか。特に企業数が多く、さまざまな製品が作られているソフトウェア業界は気になるものの、用語や必要とされている技術が分からない、そんなこともあるかもしれません。本記事ではソフトウェアって何だろう? というところからソフトウェア業界のトレンドなどをわかりやすく解説していきます。
何気なく使っている「ソフト」という言葉。ソフトウェアの略だということは分かっていても、きちんと説明することが難しいという人もいるのではないでしょうか。どこからどこまでがソフトウェアで、アプリとはどう違うの? ということをまず確認しておきましょう。
日常的に耳にする「OS」や「アプリケーション」以外にもさまざまなソフトウェアがあります。それぞれどんな役割を果たすソフトウェアなのかを解説をみていきましょう。
パソコンやスマートフォンなど、コンピュータの機械そのもののことを「ハードウェア」と言います。名称からも分かるとおり、ハードウェアとソフトウェアは対になっています。
ソフトウェアは、ハードウェアの中で使うさまざまな機能です。特徴としては形がないことがあげられます。インストールにCD-Rなどの形あるメディアが必要となるソフトウェアもありますが、CD-Rはソフトそのものではなく、ソフトを入れている容器なのです。
そのようなわけで、私たちが普段使っているコンピュータの機能は外側であるハードウェアと内側で働くソフトウェアの組み合わせで構成されています。まずは「ハードウェアの中で動くものはだいたいソフトウェア」と覚えておきましょう。
現在一般的に使われているコンピュータには「OS」というソフトウェアが入っています。この言葉になじみのない人でも、WindowsやAndroidといった名称には馴染みがあるのではないでしょうか。
OSは一般の人がコンピュータを使うのに最低限必要な機能を提供するソフトウェアです。コードを打ち込む代わりにボタンを押すことで起動や終了ができたり、アイコンをクリックするだけでソフトウェアを立ち上げることができたりするのはOSの機能のおかげです。
スマホのアプリと、パソコンのソフト。違うもののように見えて、Microsoft Officeのようにどちらでも使える機能もあります。
実は、アプリとソフトはどちらも同じ分類のものなのです。正式名称は「アプリケーションソフトウェア」。これを「アプリ」と略すか、「ソフト」と略すかの違いだったのです。ここでは便宜的に「アプリケーション」と呼びます。
身近なアプリケーションについて考えてみましょう。音楽再生、お絵かき、写真撮影・加工、表計算、ワープロなど。音楽再生アプリケーションでは写真を撮ることができませんし、画像を加工できるアプリケーションでMicrosoft Officeのファイルを編集することはできません。
このように、アプリケーションはそれぞれの目的や用途に特化した機能が与えられています。アプリケーションの元々の意味は「応用」。OSがコンピュータを動かすための「基本」ソフトだとすると、アプリケーションはそこから「応用」を加えてよりコンピュータを活用するために作られています。
新しく買ったイヤフォンやプリンタを使ってみようとしたとき、「ドライバをインストールしてください」と表示が出たことはありませんか?
ドライバとは、特定の機器をコンピュータで使えるようにするのに必要なソフトウェアのことです。
機器の出す信号をOSが受け取れる状態にして伝えるという役割があります。アプリケーションというよりはOSに近い立ち位置にあるソフトウェアです。
ここまで、OSが基本的な機能、アプリケーションソフトウェアが応用の機能というかたちで解説してきました。しかし、OSとアプリケーションの間に入る「ミドルウェア」というものもあります。
これは名前の通りOSとアプリケーションの中間にあるソフトウェアで、「複数のアプリケーションが必要とするけれども、OSの中に入れるほど基本的ではない」というような機能を担当します。
やや専門的になりますが、たくさんの情報をまとめて検索しやすくする「データベース」の機能などがこれに当てはまります。
先述したように、一言で「ソフトウェア業界」と言っても、作っているものはさまざまな機能や需要があります。流行なども、ソフトウェアのどの部分を開発しているかによって異なってくるのです。ただ、業界全体として注目されているキーワードがいくつかありますので、それらを見ていきましょう。
最先端の技術を活かした機能がさまざま登場しているソフトウェア業界で注目されているキーワードはこのあたりでしょうか。耳慣れた「AI」、「IoT」は今後も引き続き注目され続けるでしょう。
また「SaaS」はそれだと意識せずに使っている場合の多いサービスです。それぞれどんな機能なのかを解説していきましょう。
ここ数年、社会の流行ワードだった「AI」と「IoT」。AIは「アーティフィシャル・インテリジェンス=人工知能」、IoTは「インターネット・オブ・シングス」の略です。
▶︎AI
AIは人工知能ですから、コンピュータの中で動く機能です。まさにソフトウェアのことなのです。AIとロボットを混同してしまう人もいますが、AIはあくまでもソフトであり、ハードウェアであるロボットと組み合わせるにはさらに別の技術が必要であることを覚えておきましょう。
ちなみに、ここ数年AIが話題だったのは、自分でデータを学習して作業ができるようになるという性能が大幅にアップしたためでした。Google翻訳の性能が向上したことなどがあげられます。
▶︎IoT
一方、IoTはというと、「ものがインターネットに接続できるようになる」という機能のことです。スマートスピーカー経由で操作ができる家電や、飼い猫が迷子になったときに居場所を発信してくれる首輪などが当てはまります。
技術としてはさまざまなソフトウェアが使われているのですが、それを今までインターネットに接続されることがなかった「もの」にどう活用していくのかがトレンドになりました。
現代の若年層なら当然のように使いこなしている「クラウド」ですが、ソフトウェアそのものをクラウドがしてしまおうというのが「Saas」です。Software as a Service、「サービスとしてのソフトウェア」の頭文字を取っています。
SaaSの特徴は、ソフトウェアの機能を、ソフトウェアをダウンロードせずにインターネット上で使えるということです。Googleが提供するドキュメントやスプレッドシート、会議ツールのハングアウトなどがわかりやすい例です。
2020年は日本のみならず世界中でリモートワーク・テレワークが広く行われるようになりました。この結果、仕事の作業だけでなくコミュニケーションなどもインターネット上でおこなわれることが増えています。
この傾向が続けば、ソフトウェアはよりどこでも、どのようなデバイスでもアクセスできるような形態に変化していくことが想像されます。今後ソフトウェア業界で働く人は、リモート化の需要に応えられるような製品を開発していく機会が増えるかもしれません。
- 著者
- ["川添愛", "花松あゆみ"]
- 出版日
上記でAIについて触れましたが、分かりやすく解説した書籍が『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』です。
本書に出てくるイタチたちは働くのが嫌で、代わりに働いてくれるロボットが作りたいと思っています。しかし、「代わりに働くってどういうこと?」「言葉が分かるって、何?」といった難問が立ちはだかります。
イタチたちと一緒に疑問を追いかけていくことで、現在のAIについて深く知ることができます。いたるところで「将来的に多くの人間の仕事がAIに奪われる」という言葉を聞きますが、そうした未来が本当にくるのか、この書籍を読めば自分の頭で判断することができるでしょう。
- 著者
- ["阿部 彩芽", "笠井 琢美"]
- 出版日
コンピュータやソフトウェアについて真面目に勉強しようとすると、数学的な知識が必要になります。まったくの初心者には難しいものですが、『チューリングの考えるキカイ』を読むととっかかりが掴めるかもしれません。
「計算機の父」「人工知能の父」と呼ばれることもあるイギリスの数学者アラン・チューリングは、現代のコンピュータに欠かせない「チューリング完全」などさまざまな理論を生み出しました。チューリングの理論を追いながら、計算機科学の歴史を学ぶことができます。
- 著者
- 青野 慶久
- 出版日
- 2015-12-18
国内でSaaSの開発に力を入れている企業はいくつもありますが、なかでも有名な「サイボウズ」は、働きやすい会社としても人気です。
ソフトウェア開発という本業が、どうやって働きやすい会社を生んでいったのかを知ることができるのが『チームのことだけ、考えた。』です。
進路を考えている方には、「自分にとって働いていて楽しい、かつ働きやすい会社とは何だろう?」ということを考えるきっかけにもなりそうです。社会人として過ごす時間をどのように生きていきたいのかも自然と考えられるかもしれません。
製品やサービスの幅が広いソフトウェア業界について解説しました。まったくの未経験から業務を始めるというパターンも珍しくなくなってきた昨今ですが、事前にある程度知識をつけておくと躓きにくいでしょう。ぜひ紹介した書籍も参考にしてみてください。