「最近どう?みんな、パスタ巻いてる?」というユニークなツカみの漫才でお馴染みのHi-Hi。そのネタも書く、ボケ担当の上田浩二郎による本連載は「ツカみ」に心をグッと持っていかれるような本を厳選し、魅力をドッと語ります。2回目となる今回、ノンフィクションが好きというご本人の本棚から1冊紹介していただきました!
どうもね!最近どう?みんな本のしおりスーッと挟んでる?産まれてからずーと上田です。
今回の本はこちらパイ~ン!
『プリズンガール アメリカ女子刑務所での22か月』
僕の大好物のノンフィクション。遊び気分の語学留学でのほほ~んとニューヨークに行った日本の20代の女の子が、ある朝寝てたら「FBIだ!鍵を開けなさい」って、経験したくてもできない映画のような展開。これも本当にあった話。
まず何がツカまれたかって、文庫版のカバーの絵がやまだないと先生の描く切長の目の、おしゃれなスレンダー女子。先生が描く女性のタッチがたまらなくタイプなんです、僕。表紙で手に取った完全なるジャケ買い。そんなんでいいでしょ読むきっかけなんて。
- 著者
- 朋美, 有村
- 出版日
そんで1行目が「私がニューヨークで出逢い、好きになった男はロシアンマフィアで、大物ドラッグディーラーでした。」こーきた日にゃ~まらないよね?ま~この人、イケメンだわ、優しいわ、セレブしか入れないレストラン連れてくわ、誰だって好きになっちゃう要素満載。
でもその恋人は本当は裏のあるヤツだったもんで、勝手にいない間に彼女の部屋を麻薬の取り引き場にされたりして、知らないうちに巻き込まれる。彼氏が「大物」だったせいで、無実なのに2年間アメリカの刑務所に入ることになるんだけど、この子「刑務所に入った今だって、はっきりした理由は言えない。ただ愛したから。それだけ」とくる。かっこいい~「そんだけ~」よ!40超えて「どんだけ~」ってしか言えないような恋愛しかしてねぇ~よ俺!焦るわ!
入所の日、映画とかでよく見る、「全裸になって後ろ向け」をまんまやらされるんだけど、そこでもこの子「リアルだけどなんか笑える」って、いや笑えないでしょ!
その後、刑務官のミスで入所当日に間違って独居房に入れられちゃってボロボロに泣くんだけど、「毎日泣くより、アメリカの刑務所面白いじゃんのノリで過ごしちゃってた方がいいでしょっ」って思い直す。もう前向き全開宇宙レベル。でも、こんな風に思える人大好き!どーにもなんねぇ~ならどうせなら楽しまないと精神。
いざ入ったら怖い人ばっかで大変なのかと思いきや、出会う囚人みんな陽気で親切。ただ、いい人だと思ってもそこはアメリカ刑務所。銀行強盗や殺人犯、マフィアが盛りだくさん。ツライ事もあるし、親友になった囚人がボコボコにされるって事件も起こる壮絶な獄中記なんだけど。作者の性格と文才で、ここにいる懲役何十年レベルの重犯罪者と会ってみたいとさえ思っちゃうぐらい。
刑務所から出た今も「私、男運は、そう悪くないと思うんだよねぇ」なんて言えちゃう。そんな彼女は、読み終えても表紙のあの子のイメージぴったりだった。純粋で人を裏切る事が嫌い、ゆえに刑務所に入れられてしまった女性の恐いほどポジティブな話に、少しだけ生きてく勇気をもらえる1冊だぉ。
編集追記(編集者より)
壮絶な経験も面白おかしく書き綴った本作は、上田さんの自伝『リストラ芸人』にも通じるものを感じますね。主人公である作者の魅力が直球で伝わってくる点は、ノンフィクション小説の魅力。今までとっつきにくかったという方も、この機会にノンフィクションに手を伸ばしてみては?本連載は毎月第3水曜の18時に更新予定です。次回も乞うご期待!
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