近年、日本で注目を集めているアドラー心理学。人間関係の悩みを解決するヒントを提示してくれる学問で、悩みをもつ人々から支持を得ています。 もともと日本では知名度が低かったアドラー心理学ですが、アドラーに関する数多くの本が出版されたことにより親しまれるようになりました。今回はアドラー心理学のおすすめ本をまとめて紹介します。
アドラー心理学とは、心理学者、アルフレッド・アドラーが築いた心理学です。正式名称は「個人心理学」ですが、日本では創始者の名を取って「アドラー心理学」と呼ばれています。
アドラー心理学の特徴は「すべての悩みは対人関係の悩みである」と定義し、同じく心理学者の巨匠、ジークムント・フロイトが唱える「原因論」を覆す「目的論」を用いていることです。
目的論とは「人は過去の原因によって突き動かされるのではなく、今の目的に沿って生きている」という考え方のことです。
フロイトの原因論は、問題の原因は過去にあると定義するのに対し、アドラーの目的論では問題の原因は人間の生きる目的によるものだと定義しています。
たとえば「社会でうまくやっていけない人間」がいるとします。フロイトの原因論ではこの問題を「過去に人から裏切られた経験があるから、人と関わる社会でうまくやっていけない」と、過去のトラウマを原因とします。
しかし、アドラーの目的論では「社会に出て人と関係を築きたくないから、人に裏切られた記憶を思い出す」と考えます。
このようにアドラー心理学ではトラウマを否定し、変われない人は変わろうとする勇気が足りていないのだと主張しています。
アドラーはオーストリア出身の心理学者で、フロイトや「集合的無意識」を提唱したユングに並ぶ心理学の3大巨頭の1人です。
1870年にオーストリアのウィーン郊外で生を受けました。アドラーは6人兄弟の次男です。1911年にアドラー心理学を創始し、1937年(当時67歳)でその生涯を終えました。
自身の幼少期の経験が、のちに創始するアドラー心理学に反映されているといわれています。
有名な幼少期のエピソードには以下があります。
・馬車に轢かれるほどの運動オンチ
・身体が弱く病気にかかりやすい
・下の兄弟ばかり可愛がる母親と仲が悪かった
アドラー心理学のキーワードである「劣等感」は、アドラーのこのような経験が反映されています。
アドラーは元々フロイト理論の賛同者で、フロイトと共同研究をおこなっていました。
アドラーとフロイトは14歳も年が離れていることから、アドラーはフロイトの弟子と誤認されることが多いですが、実際は師弟関係というより同僚のような関係でした。
フロイトと出会う前からフロイトの理論を熱心に研究していたアドラーでしたが、ともに研究する中でお互いの方向性の違いが浮き彫りになり、最終的にフロイトと決別します。その後、独自の理論を確立しアドラー心理学を築き上げたのでした。
アドラー心理学は「勇気の心理学」ともいわれ、悩める現代人から注目を浴びています。
そんなアドラー心理学を題材にした本は数多くありますが、特に人気が高く、アドラー心理学がどんなものか把握するのに適した本を選びました。
アドラー心理学への理解を深めるために、まずはこの2冊から読んでみることをおすすめします。
- 著者
- 岸見 一郎
- 出版日
名前の通りアドラー心理学の入門書として適した本です。
本書はアドラー心理学の見地から、「どうすれば幸福に生きられるのか」という古くからの問いに対して、アドラーがどのように答えようとしていたかを解説しています。
アドラー心理学の要点がコンパクトにまとめられており、基本から学びたい人におすすめの1冊です。
- 著者
- 岸見 一郎 古賀 史健
- 出版日
- 2013-12-13
日本でアドラー心理学の名を知らしめる火付け役となった本です。本屋で見かけたことやタイトルを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
日本におけるアドラー心理学の第一人者・岸見一郎と、数多くのベストセラーを手掛けるライター・古賀史健の共著で、哲学者と青年の対話形式でアドラーの思想を紐解いていく内容です。
アドラー心理学を知りたい人はもちろん、人間関係や人生に悩んでいる人に読んでいただきたい1冊です。
のちほど詳しく紹介しますが、完結編となる『幸せになる勇気』も発売されています。2冊合わせて読むことで真のアドラー心理学を学べるようになっています。
詳しくは「『嫌われる勇気』の内容まとめ&要約!これを読めば全てが分かる!」にて解説しています。要約も紹介しているので、本の全容が知りたい人はぜひチェックしてみてください。
ここからはマンガ形式でわかりやすくアドラー心理学を解説した本や、私生活やビジネスで役に立つ本を紹介します。
- 著者
- 岩井 俊憲
- 出版日
- 2014-07-04
難解なアドラー心理学をマンガ形式でわかりやすく描いた1冊です。
人気洋菓子チェーン店に勤務する主人公・由香里が、ひょんなことからアドラーの幽霊と出会い、助言を貰いながら成長していく物語です。
マンガと解説のサンドイッチ形式で、初学者でもわかりやすくアドラー心理学を学べます。
普段本を読まない人やアドラー心理学を楽しく学びたい人におすすめです。
- 著者
- 小倉 広
- 出版日
- 2014-02-28
本書は「自己啓発の父」とも呼ばれる、アドラーの言葉をまとめた名言集です。
各名言にそれぞれ解説があり、具体例をイメージしながら読むことができます。
行動や捉え方を変えるだけで人生は変わるのだと気づかせてくれる1冊です。
人間関係や人生に悩んでいる人は、本書でアドラーの言葉に触れてみてください。新たな気づきがあるでしょう。
- 著者
- 岸見 一郎
- 出版日
ベストセラー『嫌われる勇気』の著者・岸見一郎による、子どもと良好な関係を築くためのアドラー心理学本です。
子育てにも使えるアドラー心理学の考え方をもとに、子育ての悩みを解決していきます。
わかっているようでわかっていない、子育てにおける大切なことに気づかされます。
いつも子どもを叱ってばかりで辛い親御さんに手に取ってほしい1冊です。
- 著者
- 齋藤 孝
- 出版日
アドラーの教えを子ども向けにわかりやすく翻訳した、親子で学べる本です。
アドラーの思想と世の中を生き抜くヒントが載っています。
多様なイラストやギャグを交えた内容で、子どもでも飽きずに楽しめます。
理解しやすさにもこだわっており、アドラー心理学が難しく感じる人にもおすすめです。
- 著者
- 岩井俊憲
- 出版日
アドラー心理学の普及に尽力してきた著者が、経営者に向けてマネジメントを解説している本です。
著者は、アドラー心理学の研修やカウンセリングをおこなっていた経験があります。その経験とアドラーの教えをもとに、これからの時代で必要になるマネジメントについて述べています。
アドラー心理学を経営に活かす方法を学べるので、部下をもつ上司や経営者は一度目を通してみてはいかがでしょうか。
- 著者
- ["ゆうきゆう・原作", "ソウ・作画"]
- 出版日
本書は、ゆうきゆうとソウのコンビによる「マンガで分かる心療内科」シリーズのアドラー心理学編です。
難しい言葉を使わずに、アドラー心理学の要点をギャグを交えながら解説しています。
楽しみながら学べるため、初学者にもおすすめの1冊です。
- 著者
- 小倉 広
- 出版日
本書はアドラー心理学の見地から、実際に効果のある部下育成方法を解説しています。
「褒めて育てる」「叱って育てる」「教えて育てる」といった常識的な育成方法を見直し、効果のある部下育成ができるようになります。
部下の成長に悩んでいる人は必読です。
- 著者
- 小倉 広
- 出版日
職場でアドラー心理学をうまく活用するためには、コツが必要です。本書では職場でアドラー心理学を当てはめるためのコツを、小説仕立てで解説しています。
ダメダメ営業マン・リョウが上司のドラさんが出す12の宿題を実行しながら成長する物語で、共感しながらスラスラと読み進められるでしょう。
「アドラー心理学を学んだものの、どうやって役立てればいいかわからない」という人はぜひ読んでみてください。
- 著者
- ["岸見 一郎", "古賀 史健"]
- 出版日
- 2016-02-26
本書は日本でアドラーブームを巻き起こした『嫌われる勇気』の完結編です。
前作の『嫌われる勇気』で、アドラーの教えを学んだ主人公の青年が、3年後アドラーの教えを捨てるべきか否かで悩んでいるところから物語は始まります。
再び哲人のもとを訪れた青年が、真のアドラー心理学を学んでいくという内容です。
『嫌われる勇気』を読んだ人には特に手に取ってほしい1冊で、前作で学んだことをより深く理解できるでしょう。
全容を知りたい人は「『幸せになる勇気』のまとめと内容を解説!結婚に活かせると話題の理由は?」にて詳しく解説しているので、こちらも合わせてチェックしてみてください。
- 著者
- 岩井 俊憲
- 出版日
難解とされているアドラー心理学を、図やイラストを交えてわかりやすく解説している1冊です。
アドラー心理学本の多くは自己啓発の色合いが強く、紹介される内容にも偏りがありました。
本書ではアドラー心理学の全容を学びたい人に向けて、全体像を体系立てて解説しています。
また、アドラー心理学の生かし方をシーン別で紹介しており、実践しやすい点でもおすすめです。
アドラー心理学は他人の目を気にしすぎる日本人にこそ必要だといわれています。
世の中が生きづらいと感じていたり、対人関係に悩んでいる人にぜひとも学んでほしい学問です。
アドラー心理学に関する本は数多く出版されているので、誰でも気軽に学ぶことができます。
気になった本があればぜひ手に取ってみてくださいね。