目や感性で愛でて楽しむ庭は、美術的な要素を多く含むいわゆるひとつの芸術作品。一言では表せないさまざまな様式があり、知れば知るほどその奥深さに感嘆するでしょう。そんな庭を作る庭師は、創造性はもちろんのこと、体力や緑への愛がなければ務まらない仕事です。 本記事ではそんな庭師の仕事を紹介します。仕事内容にはじまり、就職先、おすすめの資格、やりがい、年収について触れていきます。また庭師に興味を持った人、あるいは庭師を目指そうと考えている人に読んでもらいたい本もレコメンド。自分のキャリアを築くうえで参考にしてみてほしい本ばかりです。
庭師と聞くと、脚立に上って大きなハサミで樹木の形を整えているシーンを頭に思い浮かべる人は多いでしょう。しかし実際の庭師は本当にさまざまな仕事をこなしています。
この章ではそんな仕事内容について解説するほか、就職先や仕事のやりがいについても解説していきます。
庭師は「造園師」とも呼ばれることから、主に個人宅の庭造りをおこなったり、庭の手入れをして維持・管理などもおこないます。
また庭と一口に言っても、日本庭園やイングリッシュガーデン、ゴルフ場やテーマパークの緑地などさまざまな種類があります。
たとえばゴルフ場であれば芝生の手入れの仕方、テーマパークであれば花壇に植える季節ごとの花の種類など、それぞれ必要な知識やスキルは異なります。そのため、まず身につけるべきは日本庭園を造り方や、手入れの仕方についてでしょう。
実際の庭園造りをおこなうことで経験を積み、さまざまな知識を身につけながら、一人前の庭師として成長することができます。その上で、樹木や草の特性や土の状態、日当たりなどを踏まえ、依頼主に庭造りのアドバイスをおこなうこともできます。
庭師を目指す人の主な就職先は造園業者です。造園業者のなかには、個人宅を中心に仕事をしている企業のほか、設備の緑地化といった大きな公共事業などを中心に請け負う会社もあります。
また少し特殊ですが、エクステリア専門会社や住宅関連会社内に造園部門を持つ会社などもひとつの選択として考えられます。
造園業者と言ってもあまりピンとこないかもしれませんので、有名な造園業者をご紹介します。
これらの他にも造園業の企業は全国にあります。また先述したように個人宅を中心に仕事をおこなっている会社、大きな公共事業を中心にした会社など、会社ごとに特徴があります。
庭師、造園師としてどのような仕事をしたいかを明確にしてから就職する会社を選ぶのがよいでしょう。
庭師の仕事は完成した庭の見た目で評価されることが多く、良し悪しの結果がわかりやすいのが特徴です。依頼主からの反響を直接聞けるため、納得の仕上がりの庭を喜んでもらえた時は大きな達成感を得られます。
また、完成イメージに賛同してもらった時などは、自分のセンスを受け入れてもらえた満足感があり、その後の仕事の原動力にもつながります。
前提は依頼主の意向を最優先することですが、自分のアイデアを表現できるのも庭師の魅力のひとつです。それまでの経験でつちかった技術と専門知識を駆使し、樹木の形や色、香り、石の配置、縁側からの見え方など、イメージをどう表現して創り上げていくかがワクワクのポイントです。
結論から言いますと、庭師として働きために必須になる資格はありません。ただし、能力を証明するものとして所持していると評価される資格はいくつかあります。
庭造りや維持管理に関する国家資格です。この資格を持っていなければ「造園技能士」と称することはできません。都道府県職業能力開発協会が実施する国家資格で、上級の1級から下級の3級の3つの級に分かれており、造園から緑地化まで幅広いジャンルの知識や技能が問われます。
また試験は筆記試験と実技試験の2つをおこないます。そのどちらにも合格することで造園技能士と名乗ることができますので、試験対策は筆記・実技ともにきちんとおこなう必要があるでしょう。
参照:日本造園組合連合会
国家資格の造園施工管理技士には、1級と2級の2種類があります。
施工管理技士資格のなかでも最難関と言われるほどで、1級の合格率は20%を超えません。合格するためにはかなりの知識と技能を要する資格です。
参照:全国建設研修センター
「樹木医」の仕事は主に樹木の保護・管理・育成です。樹木に関する専門家として、樹木の調査や研究・治療をおこなったり、緑地化計画の設計をおこなったりと街にある樹木を守りながら、今後も緑ある社会を継続させるためになくてはならない存在です。
かつては国家資格でしたが、現在では民間資格です。植物の育成・管理のエキスパートとして高い信頼を得られます。ただし、最低でも7年の実務経験が必要で、試験も非常に難関。合格率はおよそ20%です。
造園業に関する経験を持ちながら、もっと樹木と直に接するような仕事がしたい、樹木を大切に扱う社会を実現するために尽力したいと考える方にはぜひ取得していただきたい資格です。
参照:日本緑化センター
いわゆる「職人の仕事」は経験がものを言う部分もあり、ある程度長くその業界にいなければ評価はされません。そうなると給与も経験に応じて高くなっていくのでしょうか。見てみましょう。
平均年収:298万円~389万円
一般的な会社員の平均年収は約400万円というデータがありますので、庭師の年収は平均よりやや低いのようです。
では年代ごとの月収を見ていきましょう。
20代の給料:17万円程度
30代の給料:22万円程度
40代の給料:35万円程度
こちらは年代で差が見られます。特に30代と40代の差は大きく広がっており、20年以上の経験値があるとないとでは給与額もかなり変わってきます。ちなみに初任給は10万円~といった会社も多く、最初の数年は我慢が必要かもしれません。
- 著者
- 京都府造園協同組合
- 出版日
京都の庭造り現場で活躍する庭師や造園家たちによる解説で、「造園とは何か」といった定義から、施工や管理といった実務面まで学べる入門書。
概論と歴史、庭造りの基本的手法などの「造園学」についてまず触れ、次に庭造りの現場で必要となってくる計画・設計・施工・管理・造園材料などの「造園実務」についての解説をしてくれます。
入門書ではありますが、こだわりを持ったスペシャルな造園家を目指したいと考えている人におすすめの本です。
- 著者
- 石原和幸
- 出版日
- 2009-03-23
庭師の世界をのぼり詰めたい人におすすめ。庭師として大成するためのマインドセットを学べる1冊です。
著者はガーデニングの世界選手権、英国チェルシー・フラワーショーで3年連続ゴールドメダル受賞をした石原和幸氏。世界が感動する庭をつくり続ける、花と緑のプロフェッショナルです。
花屋の経営者として成功と挫折を味わい、44歳で多額の借金を背負いながら5年で世界一の夢を掴んだサクセスストーリーに胸をグッと掴まれます。一流の胆力、行動力、発想力に触れることで、やる気がフツフツと湧いてきます。
- 著者
- ["英二郎, 藤井", "喬, 松崎"]
- 出版日
現在、造園設計、環境整備計画設計、農村整備計画設計などの仕事に携わるかたわら、東京農工大学で非常勤講師を務める著者が造園実務の基本を教えてくれます。
樹木の特徴や肥料の取り扱いなどが簡潔に解説されており、知りたいことがすぐわかる庭師の手引書となっています。庭師に必要な知識を一通り理解するためにも役立つ1冊です。
庭師はクリエイティブな面が多くあり、創意工夫できるやりがいの大きな職です。ただし体力も必要ですし、給与面でも決して恵まれているわけではありません。厳しい言い方ですが軽い気持ちで初めても長続きはしないでしょう。
本記事を読んで「それでも頑張りたい」と思った人は、ここで紹介している書籍などで庭師についての情報を集め、スペシャルな庭師になるためのマインドをつくっていってください。