AIの発達が目覚ましい現代。自分の仕事がなくなっていくのではないかと不安に感じている人も多いのではないでしょうか。今回ご紹介する『10年後の仕事図鑑』は、堀江貴文氏と落合陽一氏の共著で、これからどのような仕事がなくなり、どのような仕事が生まれてくるのか予測しています。仕事だけでなく、人生をあらためて考え直すきっかけを与えてくれる一冊です。本記事では、『10年後の仕事図鑑』のエッセンスをまとめてご紹介します。読み終わる頃にはもっと深く知りたくなり、『10年後の仕事図鑑』を手に取りたくなるはずです。
『10年後の仕事図鑑』は、これからの人生をあらためて考える際のコンパスとなる一冊です。
よい大学を出て、企業に就職し、結婚して子供ができ、家や車を買い、年金で悠々自適に生活する、といった「人生のロールモデル」も今は昔。そんな時代に、さらにAIが発達し、自分の仕事が奪われるかもしれないと、将来に悲観的な方も多いのではないでしょうか。
しかし、本書の著者である堀江氏は、「心の持ちよう次第で、未来なんていかようにも変えていける」と言います。本書では、過去の常識が通用しない現代のありようをまとめたうえで、なくなる仕事と生まれる仕事を理由付きで紹介。
さらに、働き方の変化にともなう経済、お金の変化の話も取り上げられており、今の時代がどう変化しているのかリアルに知ることができます。
最後に「人生のグランドデザインを描く術」として、AIが発達した現代においてどのような人生設計をすればよいかか具体的なアドバイスが紹介されています。自分の人生を見つめ直し、将来を描き直すきっかけを与えてくれる一冊です。
- 著者
- 堀江 貴文
- 出版日
- 2018-04-05
なくなる仕事・変わる仕事を予想する上で、キーワードとなるのが「コスト」です。技術が発展する中で、「人間対機械」の役割の最適化を検討するとき、機械が行った方がコストが低ければ機械に任せることになります。
たとえばAIに取って代わられないと考えられている「経営者」も、その仕事の中には必ずしも人間がおこなう必要がないこともあります。落合氏曰く、経営者の仕事は2つあり、1つ目は組織にビジョンを語ること。2つ目は組織を管理すること。そして、この2つ目の「組織を管理すること」は人間よりはるかにAIが得意とすることであり、これまで管理しかやってこなかった経営者はAIに仕事を取って代わられてしまうと言います。経営者に高い給料を支払うよりも、的確な管理ができるAIを1台用意するほうがコストが低いからです。
また、落合氏は、携わっている人が多く定型的な仕事の事務職などもいずれなくなっていくと言います。どの会社でも不可欠な仕事ではありますが、特別な能力を必要としないため、誰でもできる仕事はAIに代替されていく可能性が高いのです。
それではここから、堀江氏と落合氏が「これからなくなる・減る」と予想する仕事を具体的に紹介していきます。
専門性が高く、なくなるの?と疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、弁護士の仕事は過去の判例が用いられることが多く、それはつまり過去のデータに基づいた判断であり、AIの得意とするところです。また、弁護士は給料が高いためコストの観点からもAIに代替される可能性は高いと言います。
AIが最も得意としているのが過去のデータを基にした判断です。スポーツの監督は、今の状況から次にどのような手でいくのか指示を出していますが、これもおそらくAIの方がスピーディーに判断し、指示を出すことができるようになります。
しかし、チームメンバーのモチベーションをあげるコミュニケーションや、交代のタイミングの指示などは別の問題であり、人間が担う部分となるかもしれません。
・教員
AIが個々の学生に合わせた最適なカリキュラムを組んで授業がおこなわれる未来は近いかもしれません。たとえばテストも教員が1枚1枚採点していると膨大な時間がかかりますが、機械で行えば一瞬で終わらせることが可能です。AIが発展すればマークシート形式だけでなく、記述式の問題もAIが採点することもできるようになると予想されています。
海外の書籍や記事の翻訳もなくなると予測されています。Googleの翻訳アプリを使えば一瞬で翻訳される時代となっています。精度についても日々改善されており人がやる意味は今後さらに減っていくでしょう。
また、落合氏の専門分野であるヘッドマウントディスプレイがあれば、翻訳された言語が目の前に表示されるようになるそうです。
これから「なくなる・減る仕事」の一例をご紹介しましたがいかがでしたでしょう。自分の仕事が当てはまる、自分の仕事は大丈夫か、と心配になった方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一方でAIの台頭により新たに生まれる仕事も出てくると堀江氏、落合氏は主張します。
落合氏の主張は、ある経済圏の中でその人にしかできない状況を作ることがこれからの時代に必須となってくるというもの。堀江氏はこの考え方を、元リクルート社フェロー藤原和博氏の「100万分の1のレア人材になる方法」を用いてわかりやすく解説しています。
たとえば、いきなりある分野で100万分の1になるのは、オリンピックの金メダリスト級の難度です。
しかし、ある分野に特化すれば、誰でも100分の1になれるはず。そして異なる3つの分野で100分の1になることができれば、それらを掛け合せて100万分の1の人材になれる、という考え方です。100万分の1になってしまえば、ある経済圏のなかでもあなたにしかできない仕事が見つかることでしょう。
こうした考え方のもと、堀江氏は単純労働や経営者でさえもAIに代替される可能性があるのなら、もはや「本気で遊ぶように働く人」だけが生き残ることができると言います。
つまり、嫌なことを仕事にしても必死になっている人に負けてしまいますし、将来AIに代替されるかもしれない。それならば勝ち負けを気にせずに自分が好きと思うことに没頭し、その没頭によって唯一無二の存在になればよいと言います。
好きなことにハマることで代替のきかない存在となり、ハマった先にできた強みを掛け合せていくことで自分にしかできない仕事ができるようになるのです。
ここからは「生まれる・伸びる」仕事を具体的にご紹介。
おもちゃとしかみられていなかったドローンですが、実は空撮・測量・ビルの壁面の点検など幅広い仕事で使われるようになってきています。人間が入れない場所の撮影はもちろん、流通においてもドローンで空から宅配したり、農業においても農薬の散布など、新しい使われ方の研究が進んでいます。
これまでドローンで遊んできた人は、ローンパイロットという仕事で活躍する時代が来るかもしれません。
・観光業
画像や動画でどの国・どの地域のことでも知ることができるようになりました。しかし、そんな時代だからこそ現地に行かないとできない体験の価値が上がってきています。
海外では、観光地を回ってご飯を食べる、といったような画一的なプランは好まれておらず、現地でしかできない「ちょっとマイナーなアクティビティ」の人気がすごいとか。
このように、「体験価値」を提供している観光業は今後さらに発展していく可能性があるのです。
・AIを操る
AIによって今後仕事が代替されていく一方で、AI自体を操る、AIに関連する仕事も増えていくはずです。AIを含む技術トレンドの中では、次はこういうことをやるはずだ、といったAI関連の予想を立てられる人の需要も伸びていきます。
AI時代に「生まれる・伸びる」仕事の一例をご紹介しましたが、なにもその仕事につきましょう、という話ではありません。大事なのは、どのような仕事がこれから生まれていくのか予測するだけでなく、AI時代を生き抜いていくための価値を提供できる存在となることです。
ここからは、堀江氏、落合氏がAI時代を生き抜いていくために大事となるという考え方の一部を解説していきます。
インターネットの発展により、世の中の変化のスピードはますます速くなり、未来を予測して手を打つことはもはや無意味となっています。誰もが予測しなかった事態が起きる中で、未来を言い当てることも不可能でしょう。
このような話になると、食い扶持をつくろうとして「副業」を始める人が出てきますが、堀江氏は「副業はダサい」と言います。なぜでしょうか?
「副業」という考え方には対立概念として「本業」が存在し、本業と副業の構図に、強烈なリスクヘッジの意識が見え隠れします。本業により食いっぱぐれないようにし、副業を本当にやりたいライフワークとしている人が多いかと思います。しかし堀江氏は「なぜ本当にやりたい仕事で人生を満たそうとしないのか、理解ができない」と言い切ります。
家族を養うために本業を離れることはできないが、空いた時間でやりたい副業をする、という考え方では中途半端で信用されず、誰からも応援されません。「ピュアな情熱と社会的な使命感」を持ってやりたいことに取り組んでいる人こそ、誰も想像できないスケールの大きなことを成し遂げることができるのです。
落合氏は「21世紀はワーク"アズ"ライフの時代」だと言います。これまで「ワークライフバランス」という言葉が流行し、仕事とプライベートのバランスを大事にしようとする考え方が広まっていました。
しかし現代はパソコンやスマホ一つあればどこででも仕事ができる時代。平日の朝から晩まで画一的に働く必要性もなく、仕事か趣味か区別できないことでお金を稼ぐ人もいます。もはや「ワーク」と「ライフ」を完全に切り離した考え方は適しておらず、これからは人生の価値を仕事と仕事以外の両方で生み出し続ける「ワークアズライフ」を体現する人が生き残ることができるのです。
そのような中で、彼はワークアズライフの時代を生き抜く生存戦略は2つあると主張します。
1つ目は「他人と違うことをやっていく」ブルーオーシャン戦略。今、誰が何をやっているのかはインターネットで調べればだいたいのことはわかります。競合他者がいないか徹底的に調べ上げ、他人と違う「価値」を作り出すことを基本スタンスとし、利潤を集めていく考え方です。
2つ目は「プラットフォームに吸収されて、責任と生存戦略をコンピュータに任せる」という考え方。たとえばカーシェアリングサービスの「Uber」の運転手という仕事は、「どうやってお客さんを拾うのかという戦略と「そのサービスの責任は最終的に誰になるのか」という責任をコンピュータに任せています。そしてコンピューターの指示に従ってお客さんを運んでいるのです。
この2つはどちらかを選ぶというものではなく、どちらもまだらに採用されるもの。予定管理は完全にコンピュターに任せつつも、自分の仕事の責任は自分が負っている、という状態です。2つのうちどちらかという二元論的に考えるのではなく、まだらでよいのだと理解して、自分の人生に当てはめてみてください。
好きなことに没頭し、仕事になるまで遊び尽くす
(『10年後の仕事図鑑』p146より引用)
AIに仕事が代替されていく時代において、どのような人が価値を持つのでしょうか。
答えがわからないという人に向けて堀江氏は「ウサイン・ボルト」を見習え、と言います。ウサイン・ボルトは100メートル走の世界記録を打ち立てた人物ですが、100メートルをいかに速く走れるかは実社会ではそれほど役に立ちません。しかし、彼は世界中で人気があります。なぜでしょうか。
それは、人々は彼の「代替不可能性」に熱狂し、価値を見出しているからです。どのようにしてその代替不可能性を手に入れたかというと、もちろん生まれつきの才能もありますが、彼はおそらく走るのが好きで仕方なかったはず。つまり、好きなことに没頭し、仕事になるまで遊び尽くす。さらに、自分の好きなこと同士を掛け合せていくことで他の人にはない価値、代替不可能性を持つことができるようになっていくのです。
今以上に、"いかに生きるのか"が大事になる
(『10年後の仕事図鑑』p198より引用)
堀江氏は、今後医療のさらなる発展によって、最終的に人は事故死以外の病気や老衰による死はなくなるのではないかと予測します。そうなった場合、今以上に大事になるのが、"いかに生きるのか"ということ。
超高齢化が進む日本ですが、テクノロジーの進化により、たとえば高性能のメガネやパワードスーツのようなものが出てきて、高齢でありながらも活動的でいれる人が増える可能性は大いにあります。
そうなったときに、自分がどのようにして生きていたいのか、長期的な視野で考えてみてもよいのではないでしょうか。
波を待つな、自ら波を起こせ
(『10年後の仕事図鑑』p213より引用)
落合氏はよく学生に「やりたいことがありません」と相談を受けるそう。しかし、そのような姿勢では、ロボットが人間より正確で効率的に仕事をこなす時代において、未来はおぼつかないと言います。
機械が代わりに労働するようになるということは、人間が自由に使える時間が増えるということ。その時間を無駄にしてしまうのか、それとも自分のオリジナリティや個性を磨いていくのか、未来の仕事を作るうえで重要なことになるのです。
波は待っていても決してやってきたりはしません。自分で波を起こしながらモノを生み出していく人に、価値は付加されていくのです。
それではこの『10年後の仕事図鑑』を書いた著者はどのような人なのでしょうか?本書は実業家の堀江貴文氏と研究者の落合陽一氏の共著となっております。
堀江貴文(ほりえたかふみ)氏は、1972年、福岡県八女市生まれ。東京大学在学時にインターネット事業会社オン・ザ・エッヂを設立しました。社名をライブドアへと変更した後は、時価総額8千億円の企業へと成長を遂げます。ライブドア代表取締役CEOだった2006年、証券取引法違反で逮捕され、懲役2年6ヶ月の実刑判決が下り、2013年11月に刑期満了。
現在は、実業家・作家・Jリーグアドバイザー・コンサルティング・プロデューサーなど多くの肩書きを持ち、幅広い分野で活躍しています。
落合陽一(おちあいよういち)氏は、1987年、東京都生まれ。日本のメディアアーティスト、研究者、大学教員、実業家、写真家、随筆家、ビデオブロガーと、こちらも多くの肩書を持っています。時に研究者として研究に従事し、時に経営者として技術開発の社会実装に取り組み、またある時は技術と文化による社会の進展のため、アートによる公益性があるプロジェクトにも着手しています。
次の章では、数多くの本を出版している両名の、おすすめの本を3冊紹介していきます。
『10年後の仕事図鑑』は仕事の未来予想図でしたが、こちらは落合氏が考える経済の未来を描く一冊です。
- 著者
- 落合 陽一
- 出版日
この本はSDGsの枠組みを借りながら、世界の問題点を掘り下げると同時に、今起こりつつある変化について落合氏が語ります。
「テクノロジー」×「地政学」×「データ」というこれまでにはない切り口で未来を見通しており、昨今耳にすることの多いSDGsについて、より理解を深めることもできますよ。
少子高齢化や人口減少など、解決の見えない大きな問題と向き合う日本。『日本再興戦略』では世界の中で日本が再興するにはどんな戦略が必要となるのか、落合氏がテクノロジー、政治、経済、外交、教育、リーダーなどの切り口からグランドデザインを描いていきます。
- 著者
- 落合 陽一
- 出版日
- 2018-01-31
『10年後の仕事図鑑』は個人の仕事、個人の人生を描き直すための提言でしたが、こちらは国家のアップデートがテーマとなっています。
日本が今どのような状態にあるのか、どのような道を進むべきなのか。自分なりの答えを出す、手助けになる一冊です。
『時間革命 1秒もムダに生きるな』は堀江氏の著書で、時間に対する彼の考え方を一冊にまとめたものとなっています。
「バカに恵む時間は1秒もない」「報告会議は時間の集団自殺」など、堀江氏は人一倍時間に対する意識が高く、1秒をも意味あるものとするために、どのような考え方が大事となるのかを教えてくれます。
- 著者
- 堀江貴文
- 出版日
- 2019-09-20
やりたいことはあるけれど時間がない、といった悩みを持っている人はこの本を読んで時間に対する考え方を見直してみてはいかがでしょうか。
仕事の未来、自分の生き方について見つめ直すきっかけとなりましたでしょうか。『10年後の仕事図鑑』ではさらに詳しく「なくなる仕事」や「生まれる仕事」の事例や解説が紹介されていますので、ぜひご自身で読んでみることをおすすめします。本書は、AIがさらなる発達を遂げると予測される未来に向けて、自分の人生を描き直す際のコンパスのような存在と言えます。本記事が、あなたの人生のグランドデザインを見直すきっかけとなれば嬉しいです。