三四郎相田周二のべしゃり書き漫画道【連載第5回】

三四郎相田周二のべしゃり書き漫画道【連載第5回】

更新:2021.11.28

単行本『サマ』を出版し、サイン会や出版記念トークライブといったイベントも大盛況のうちに終えた三四郎の文豪・相田周二さん。 第5回目の今回は、当サイトでも注目作品として取り上げた新作漫画を読んで語ってくれました!『サマ』を読んだ方はもう、心の中でツッコミを入れながらでないと読めない体になっているかもしれませんね。

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ガセじゃなかった!RPGのエンディングから始まる『葬送のフリーレン』

今回おすすめする漫画はコレだ!!

『葬送のフリーレン』

この漫画実は少し前にホンシェルジュのTwitterアカウントで紹介されてた漫画なんだけど、「勇者たちのその後に涙する」と紹介があってこの一文だけで興味を惹かれ読んでみようと決めた漫画。

 

だからこの一文以外はわからない状態で読み始めたんだけどさ……おんもしろいぞっ!!

まずね、RPG好きな僕としてはめちゃくちゃ好きな設定ですよ。一応ゲームやらない人のために説明すると大体RPGってね、魔王討伐したら王様の所に戻って、王様が「よくぞやってくれた。今日は宴じゃ。」とか言いだして街のみんなが祝ってくれて花火が打ち上げられて「世界はまた平和を取り戻したのでした。めでたしめでたし。」で終わるんだよ。9割これだと思ってもらっていい。

で、この漫画はそっからが始まりなんだよ。エンディングから始まるんだよね。でもね、勇者たちはもう魔王討伐っていう最終目標を言わば終えた状態なわけで、世界的はもう平和なわけよ。たまにエンディングのあとに裏ラスボスがまだいてクソ強い、みたいのもあんだけどね。そんな設定も存在しない。ん?ホンシェルジュにガセ掴まされたか!?物語的に詰んでないか!?と思ってしまったのだけどすいません!ちゃんとスゴい作品でした!

著者
["山田 鐘人", "アベ ツカサ"]
出版日

この漫画は勇者たちの寿命の差に焦点を合わせたストーリーなんだよね。主人公はエルフの魔法使いフリーレンって子なんだけど、エルフだから寿命が極端に長いんだよ。仲間たちと旅した10年間も彼女にとっては人生のほんの一瞬に過ぎない。

その一瞬じゃフリーレンは人間に興味を持てなかったのだけど、50年後年老いた勇者ヒンメルが死んだ時、なぜ自分がこんなにも悲しいのかわからず、フリーレンは「人を知る」という旅に出る。寿命が長い故に周りを葬送していく際の切なさ、そして自分が置き去りになる哀しさを含みながらも細かく笑いが散りばめられた、考えさせられる漫画。

僕はフリーレンの「…人間の寿命は短いってわかっていたのに…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」というセリフが印象に残った。

『葬送のフリーレン』1巻より引用

 

なくなってから後悔してももう遅いんだよね。僕の実家の近くの、僕が日本で1番美味いと思ってる町中華のお店が去年突然閉店した時のことを思い出した。本当に餃子が美味くてね、もやしそばと一緒に頼む人がほとんどで、ちっちゃい頃から通ってて、20歳過ぎたらそこで瓶ビールと餃子頼んで胃に流し込むっていう至福の時を過ごしてたんだけど、実家出てからはあんまり通えてなかったんだよね。

30分で帰れる距離ならもっと通っときゃよかったな。餃子のレシピ聞きたかったな。2年前くらいに行ったらパートのおばちゃんが「ご活躍見てますよ」とか言ってきて嬉しかったんだよね。うちらのDVDあげときゃよかったな。今だったら本も付けときゃよかった。サインもしときゃよかった。ホンシェルジュも紹介しときゃよかった。なんかちょいちょい定休日以外でも休んでたから心配はしてたんだけど、閉まるとは思ってなかったんだよねなぜか。勝手に閉まるわけないって思ってたんだよ。すげー今後悔してるもんな。

ご本人より写真提供

みんなも後回しにしないで思い立った時すぐ行動に移した方がいいよ。通い詰めた方がいいよ。なくなってからじゃ遅いから。もうあの餃子は食べれないんだから。そんなん考えさせられる漫画だったなー。

まだ2巻しか発刊していないのでこの先のストーリーの展開を期待してしまう作品。フリーレンが先の長い人生どう歩んでいくのかが楽しみで仕方ない。でももう彼女は長いとは思ってないかもしれないね。


編集追記(編集者より)

ホンシェルジュをとおして、新しい漫画に出会った相田さん。まさに当サイトが目指す「人と本との出会い」実現の瞬間でした!

さてこの連載はついに次回最終回!!12月25日(金)の23時~翌朝4時にラジオリスナー限定先行公開、30日(水)の12時に正式更新の予定です。Twitter(@honcierge)で最新情報をお届けします。どうか最後までお見逃しなく!

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