ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの「生き様」を楽しむ5冊

ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの「生き様」を楽しむ5冊

更新:2021.12.1

私がやっている音楽は、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル。その名の示すとおり、ハードであり、ヘヴィであります。それはサウンドを示す言葉なのですが、そこに込められたもの……リフを刻み、哀愁とともに貫き通す。そんな無骨さが、聴く人それぞれの“生き様”みたいなものに共感する部分を含んでいるからこそ、ハードに、ヘヴィに、感じるものなのかもしれないと常々考えています。 今回は、そんな観点から逆に遡り、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの「生き様」を感じるハードボイルド本を紹介したいと思います。

高校在学時、ヘヴィ・メタル/ハード・ロックを聴き、音楽を始める。特にジャパニーズメタル、LAメタル、メロディック・メタルに深く傾倒。小野正利ライブでのローディー時にスカウトされ、進学した洗足学園大学・音楽科JAZZコース・在学中よりプロ活動を開始。いくつかのバンドでCDをリリースし、森川 之雄(現アンセム)率いる「THE POWERNUDE」に加入。脱退後、サポートギタリストなどを経て、 五十嵐 充(ex Every Little Thing)と「RUSHMORE」を結成。2009年、アルバムをリリース。 2010年よりGIBSON USA傘下の「Kramer Guitar USA」と契約。その後は、ゲーム/アニメ音楽への制作や浜田麻里への楽曲提供なども行っている。2014年には、かねてから敬愛する「BLIZARD」の30thに松川“RAN”敏也の代わりとして参加。現在、正統派メロディックHM/HRを体現すべく自身のプロジェクト「DESTINIA」を始動。ジャパニーズメタルの新たな道を切り開く。キングレコードより2014冬1stアルバム『Requiem for a Scream』をリリース。2015年はデビュー作でコーラスとして参加したFukiと榊原ゆいをメイン・ヴォーカルとしたコンセプトEP『Anecdote of the Queens』を発売し、8月にはレコーディングに参加したキャストがほぼ参加した初ワンマン・ライヴ「A Live for a Scream ~One Night Only Requiem」をShibuya O-WESTで行い、チケットはソールド・アウトとなった。
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私がやっている音楽は、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル。その名の示すとおり、ハードであり、ヘヴィであります。それはサウンドを示す言葉なのですが、そこに込められたもの……リフを刻み、哀愁とともに貫き通す。

そんな無骨さが、聴く人それぞれの“生き様”みたいなものに共感する部分を含んでいるからこそ、ハードに、ヘヴィに、感じるものなのかもしれないと常々考えています。

今回は、そんな観点から逆に遡り、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの「生き様」を感じるハードボイルド本を紹介したいと思います。私も生まれ変わったら、でかいヤマを追ってみたい。

ロング・グッドバイ レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳

著者
レイモンド・チャンドラー
出版日
2010-09-09
私立探偵フィリップ・マーロウが活躍する長編小説。ハードボイルドの代表的な作家の一人、レイモンド・チャンドラー作。ロスを舞台に、酔っ払いとの友情が芽生え、愛憎劇に巻き込まれつつ少しずつ真相が明らかになっていくのだが、むしろその部分よりも圧倒的にカッコいい台詞、その情景の描き方が凄まじい。芸術的な名言の宝庫です。原文ももちろんですが、村上春樹さんの訳し方もカッコいい。ギムレットは飲めないけど、ラストの哀愁を帯びる感じは何度読んでもしびれます。フィリップ・マーロウの台詞のようなフレーズを表現できるギタリストになりたいなあ。

新宿鮫 大沢在昌

著者
大沢 在昌
出版日
2014-02-13
新宿署の警部、鮫島。キャリアでありながら防犯課に飛ばされるという特殊な境遇があるが故、疎まれており、単独行動で動いている。高い正義感で悪を追う中でピンチに陥りながらも、バイタリティやクレバーな頭脳で切り抜けていく。わかりやすく真っ直ぐな刑事像のカッコよさと、周りに出てくるキャストの人間的な個性が相まって、ハードな中でもエンタテインメントな印象が強く読みやすい。ロッカーの彼女がいるっていうのも見逃せないポイントです。今読むと時代背景も新鮮に感じます。続編も多数出ているのですが、どんどん面白くなっていく。一人でも信念をもって突き進む姿は、自分が憧れる音楽的進み方でもあります。

百舌の叫ぶ夜 逢坂剛

著者
逢坂 剛
出版日
2014-03-20
TVドラマでもお馴染みのシリーズです。公安部に勤める倉木警部が、妻の死の真相を追いつつ大きな流れに突き進んでいきます。その後、暗さと重みが増していく倉木の人生は、ドラマチックなメタルでも感じられるところだと思います。ダークヒーロー的な生き方は読む人を惹きつけます。ミステリーの要素も強く、かっとんだ展開もありますが、徐々に暗部に触れていく感じ、たまりません。時系列の流れも本ならではの楽しさがあり、ドラマしか知らない人にもぜひ読んでいただきたい。逢坂さんの別作からもわかりますが、フラメンコギターに造詣が深いあたりが、いい感じでマイナーコードとスパニッシュフリジアンの匂いを生んでるのかもしれません。

私が殺した少女 原尞

著者
原 りょう
出版日
先ほど紹介したチャンドラーの日本版といってもいいカッコよさを秘めている本書。それもそのはず、原さんはチャンドラーを心酔していることでも有名だったりするのですが、日本でそのカッコよさを表現することって、実はとても難しいのです。もちろん、主人公は私立探偵。この沢崎って探偵はとても切れ者なのですが、ちょっとかっとんでいる感じで、そして強気。その格好のつけ方がカッコいい。それこそ、日本人離れしていて暴力組織にも強気。その台詞の良さにしびれます。それでいて、話の構成もビシッとしている。チャンドラーよりも決まってる気がします。ジャパニーズメタルだって遜色なくカッコいい。そんな先輩バンドのような風格です。

さむけ ロス・マクドナルド 小笠原豊樹訳

著者
ロス・マクドナルド
出版日
1976-09-01
ロス郊外の私立探偵、リュウ・アーチャーが、複雑にからんだ事件を徐々に解いていきます。上記までの登場人物と比べると、少しクールな印象があるのが特徴です。1980年代のLAメタルを好きな自分からすると、60年代の空気に面食らってしまうところもありますが、そのストーリーは圧巻。カテゴリーはミステリーに近いかもしれませんが、秀逸だと思います。リュウ・アーチャーの口調のように、やや感情を抑えるようなクールさもいいです。何かを抑えることで、伝えたいこと全体が引き立つ。それも音楽に通じるところかもしれません。

こうしてみると、やはり音楽と本は感覚的に結ばれるポイントがたくさんあると思いました。リフを刻むように、人生を紡ぐ。ハード・ロック/ヘヴィ・メタルにハードボイルドな生き方がにじむように、私の音楽もそうありたいものだ。

生まれ変わらずとも、でかいヤマを追ってみよう。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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