消費生活アドバイザーとは、物を買う消費者、つまり、私たちと関わりの深い職業です。たとえば、ネットショッピングで万が一トラブルがあった場合、相談に乗って解決に導く手助けやアドバイスをしてくれるといった仕事をおこなうのが、消費生活アドバイザーです。消費生活アドバイザー自体は民間資格ですが、受験の際は「消費生活相談員」という国家資格を含めた2つの資格を取得でき、キャリアアップにもおすすめです。 本記事では消費生活アドバイザーの仕事内容や収入事情、資格概要などを解説しつつ、参考テキストもご紹介しますので、ぜひチェックしてみてください!
消費者と企業・行政の架け橋となる存在。身近なところでは、消費者からの苦情や相談に乗ったり、私たち消費者に迅速で適切なアドバイスをしてくれます。
他にも、消費者の声を企業・行政に伝えることで、商品の改善を図る重要な役割を担う仕事もおこないます。
消費生活アドバイザーは、内閣総理大臣および経済産業大臣の事業認定を受けています。民間資格ではあるものの、非常に公共度の高い資格です。そして、消費生活アドバイザーの資格取得と同時に、国家資格である「消費生活相談員」の資格も取得可能という特徴があります。
常に消費者の目線を持つことが重要であるため、家事従事者の割合が多い女性が、資格保有者の6割を占めているという現状です。
大きく分けると、企業または行政(地方自治体など)で活躍することが多いようです。
企業の場合、日本生命保険・第一生命保険などの保険会社から、パナソニック・トヨタ自動車などの大企業まで、幅広く活躍しています。
主な仕事内容を見てみると、アドバイザー的な業務が多いのがわかります。
消費者窓口とは、簡単に言うと「お客様相談センター」と呼ばれるような場所です。そこで商品に関する相談に乗ってアドバイスをおこなうこともあり、時にはクレームを受けたりすることもあります。
企業で働く場合は、お客様相談センターの他に消費生活アドバイザーが商品開発に携わることもあります。また企業の販売戦略に関してアドバイスすることも。さらには、消費生活アドバイザーの知識や経験を活かして、企業の企画・広報に関わる人もいます。
企業などに出向き、消費生活アドバイザーの立場から講習をおこないます。
区または市役所には「消費生活センター」があります。契約トラブルの相談から、製品事故などの消費生活に関する相談に乗るのが主な業務です。
市役所から企業までさまざまな場所で活躍することができます。基本的にはアドバイザーとしての仕事をおこないますが、なかには知識や経験を活かして企画・広報に携わる方もいるようです。
月給は、おおよそ16〜21万円と言われています。企業で働くか行政で働くかによって、細かな待遇面は異なります。同じく一般企業で支払われるボーナスや各種手当も、所属する企業によって差があります。
消費生活アドバイザーの中には、非正規雇用で働いている人もおり、その場合の収入は多少ですが低所得になる傾向に。またフリーランスで働いている人もいるため、企業や行政で働く場合とは金額にバラつきが発生します。
フリーランスや会社の規定によっては、副業をおこなっている人もいます。消費生活アドバイザーの他にも、出来る仕事を持っている人が多いようです。
まずは、日本産業協会が管理する「消費生活アドバイザー資格試験」に合格しましょう。合格すると同時に、国家資格の「消費生活相談員」の資格も取得可能です。
消費生活アドバイザーにおける、2019年の試験合格者数は1万7000人を超えました。実際に「消費生活アドバイザーとして働きたい!」という方のほか「今は違う仕事をしているけれど、自身のキャリアアップのために取得した」という方が多いのも、消費生活アドバイザー資格試験の特徴のようです。
試験の検定料は1万3200円(税込み)となっており、2次試験までおこなわれます。(2020年4月時点)
試験に関する詳しい情報は、日本産業協会HPにて確認することができますので、ご覧になってみてください。
消費生活相談員とは、消費生活センターや消費生活相談窓口にて相談や斡旋をおこなう専門職です。平成26年改正消費者安全法において、消費生活センターには必ず消費生活相談員の設置が義務付けられています。
試験は1次試験と2次試験にわかれており、試験地は全国です。受験資格はないので誰でも受験することができます。
気になった方は、「国民生活センター」のHPにて試験の詳細をご確認くださいね。
消費生活アドバイザーとして活躍するには、消費者問題、行政・法律関係、経済などの分野において幅広い知識が求められます。
大学に進学する場合は、生活科学系の学部がおすすめです。家政学・生活文化学・経済学・商学などを学べるか? という点を基準にしてみるとよいでしょう。
書店やネットでテキストを購入し、独学で資格取得を目指そうという人もいるでしょう。しかし、実際にその方法で合格を目指した人の大半が、独学での限界を感じているようです。
自力では補いきれない部分に気づき「結局は専門学校や通学講座に通うことにした」という人が大多数です。自宅で学べる通信講座もありますが、やはり試験の傾向やポイントをしっかり押さえたい!という場合は、通学講座タイプがおすすめです。
現代は、消費者の価値観やライフスタイルが多様化している時代です。簡単な例で言うと、ネットで買い物をするのか、実店舗で買い物をするのか……というような違いがあげられます。
そういった背景を含め、企業側は「よりリアルな消費者の声」を必要としているのです。その橋渡しができる消費生活アドバイザーは今後、幅広く活躍することが予想される職業といえるでしょう。
他の仕事と組み合わせる(兼業やパラレルワーカーのような)といった働き方も、これからの時代に合わせたよい選択かもしれません。
特に消費生活との関わりが強い「主婦」の気持ちがわかる人は、消費生活アドバイザーとして活躍できる可能性が高いようです。
消費者から相談を受けることが少なくない仕事のため、聞き上手な人が求められます。また企業で商品開発に携わったり、講習をおこなう機会もあるため、同時に話し上手であることも求められます。
消費者の相談に乗るからといって、完全に消費者の味方になってしまうのは問題です。消費者と企業の言い分や、相談内容の状況を冷静に判断し、相手の意見を取り入れる姿勢を持つことも大切です。
物の価値とは、常に変わりゆくもの。また消費者が求めるものも時代とともに変化していきます。それらを敏感に察知し、商品開発や宣伝・広告に貢献することで、信頼される消費生活アドバイザーになれるでしょう。
- 著者
- ["東子, 松下", "裕之, 林", "浩之, 日戸"]
- 出版日
団塊世代、バブル世代、そして現代のデジタルネイティブ世代など、各世代の消費者が一体何を求めているのか?
時代とともに移り変わる消費者の価値観を、二極化で分析・解説した1冊です。3年おきに生活者1万人に実施している大規模アンケートの内容から消費者の生活実態をくっきり見て取ることができます。
消費に関する時代の流れを読む、という目的で開くには最適の1冊ではないでしょうか。
- 著者
- ["由美子, 大矢野", "昌代, 安藤", "千草, 工藤"]
- 出版日
本書では「消費生活アドバイザー」の国会試験の過去の出題傾向を分析し、本年度の試験対策を的確に洗い出してくれています。そのため、非常に効率よく勉強することが可能です。
消費生活アドバイザーの国家試験は、試験科目が膨大です。そうした試験の全重要項目を体系的に理解したい方におすすめの1冊です。
専門学校や通学講座などと組み合わせて勉強することで、合格の可能性を高めたい人は手に取ってみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 井出 留美
- 出版日
- 2016-10-28
著者は消費生活アドバイザーであり、食品ロス問題専門家。私たちにも身近な「賞味期限」「消費期限」に対する解説から「食品ロス」のような社会問題まで、1冊のなかで幅広い内容をわかりやすく纏めています。
たとえば卵の賞味期限は実は冬場なら57日間は生食が可能と言われています。また卵だけでなく、ほとんどの食品の賞味期限は2割以上短くされています。消費者はその賞味期限におどらされ、1日でも過ぎれば食品を捨ててしまう。その繰り返しでまだ食べられる食品が大量に廃棄される食品ロスに陥っているのです。
消費活動のなかでも、一番身近な「食品の消費」について学びたい人向けです。消費生活アドバイザーとして、食品メーカーに就職したい!という人も、読んで間違いない1冊でしょう。
今回は消費生活アドバイザーの仕事内容や収入について解説しました。消費生活アドバイザーの仕事は幅広く多様化しており、今回ご紹介した仕事内容や収入の情報が気になった方は、さらにこの職業について調べてみてください。
少し前までは「正社員で働きたい」という考え方が主流になっていましたが、今はいろいろな職業を組み合わせて働いている人も大勢います。「消費生活アドバイザーになる!」と固執せずに、自分のキャリアアップやステップアップのためのツールとして取得してみるのもおすすめです。
今回紹介した書籍も、ぜひ参考にしてみてください!