企業経営のプランニングとその進行に携わる経営企画。複数の事業部門での職務経験を経て一定以上の能力を持った人が抜擢される職種です。また花形部署としてビジネスドラマなどでもよく取り上げられ、主人公級の人物が活躍する部署として設定されることが多くあります。本記事ではそんな経営企画についての仕事内容あや今のうちに勉強しておくべき分野の知識、キャリアアパスに加え、気になる年収までを解説します。また経営企画の実務に役立つ知識が詰まった書籍もあわせて紹介しますので、興味のある方はこちらもぜひ参考にしてください。
経営企画の仕事は高度で多岐に渡ります。本章ではそんな仕事内容について主だったものを解説するとともに、学生はもちろん現在会社の別の部署で働いている人は、今何をすれば経営企画の部署に配属されやすくなるかについて考察していきます。
会社の存続や繁栄を目的に中長期的な経営計画の策定をおこないます。経営計画は理想路線過ぎると絵に描いた餅となってしまい目標を達成できず、現実路線過ぎてもメンバーの大きな成長が見込めません。
適切な目標設定に置いておいて、大切になるのが資源の適正分配です。会社における資源は、「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われていますが、特に有限とされている「ヒト・モノ・カネ」をいかに配分していくかが、経営計画において重要になります。
まず自社がどれだけの資源を持っているかを把握するところからはじまり、続いて競合他社がどのような資源を持っており、今どの市場に対してどのような戦略を実行しているのかを理解する必要があります。そして今マーケットが何を求めていて、何を良しとしているのかも大事なファクターです。大きく分けてこれらを踏まえ、中長期的な経営計画を策定します。
事業ポートフォリオの見直し、いわゆる企業が手掛けている事業の方針転換や修正なども経営企画が大きな役割を担う仕事です。
会社の収益源にるものが基本的に事業になります。会社の規模がまだ大きくないうちは事業の数が多くないので、既存の事業を伸ばしていくことに集中するでしょう。ただし企業が大規模化するにつれ、新しい事業を作り出す動きや、既存の好調事業をより伸ばしていく必要性、不調の事業を切り捨てていく判断などが必要になってくるでしょう。
赤字事業に手を加えず残しておけば単なるコストですし、一方で新規事業を作っていかなければ会社としての成長も止まってしまいます。
ガバナンスとは「統治」の意で、ビジネス用語として使用する場合は、事業をおこなうなかで守るべき規範や指針を決め、社内に浸透させる管理体制を指します。コンプライアンスを中心として、昨今では経営におけるガバナンス論が幅広く唱えられています。これは企業が経済活動をおこなうだけの組織にとどまらず、社会的貢献をする存在であることも期待されているからでしょう。
「企業法に沿った経営を社員全体でおこなえているのか」や「不正、不祥事をおこなっていないのか」など。これらが守られていなければ、企業イメージに泥を塗る結果になってしまいます。
そのためにもコンプライアンス意識を社員全体に浸透させ、行動指針や罰則の規定など、見えない部分で正当性を保つためのガバナンス経営を経営企画の立場からおこなっていく必要があるのです、
取締役など経営陣が集まり、事業や経営について話し合う経営会議で必要な資料を準備したり、会議の議事録を取ったりするのも経営企画の仕事です。また会議で状況説明をしたり、会議の進行役を担当したりもします。
経営企画は高度な職務をこなす花形の部署です。希望した社員全員が必ず配属されるということはまずないでしょう。そのためその可能性を少しでも大きくできるように今から取り組めることをやっておきましょう。
「会計学」や「統計学」の2つは最低限学んでおくべきことでしょう。理由としては、この2つの学問を学ぶことで経営企画でもっとも重視されるデータ分析力の基礎が身につくためです。
経営企画の業務に従事するうえで財務会計や管理会計に精通していることはアドバンテージです。会計学では企業の財務状況を把握する「財務会計」、企業が経営を管理するための「管理会計」などを学べます。
また統計学の基本は、経済学や社会学で学べます。また経営への情報システム活用を取り上げる経営情報学でも統計学に触れることはできます。
入社後は経営戦略の方法、課題と解決策発見のプロセスなど、経営企画で求められる手法を専門書やセミナーなどで学ぶのがおすすめです。
また公認会計士、中小企業診断士などの資格を取るための勉強をおこない、業務の基礎を学ぶのもひとつの手です。
経営企画という職種の給与は、他の職種と比べて高めに設定されています。実際に数字で見ていきましょう。
平均年収は約522万円とされています。20代では約437万円。30代になると一気に500万円台を飛び越えて約614万円にもなります。
一般的な会社員の平均年収は400万円ほどとされていますので、20代のうちにその年収を上回る可能性が高いということです。
また大企業であればさらに平均年収はあがります。たとえばパナソニック株式会社の経営企画の年収は約900万円ほどと推測されています。経営企画は会社の花形部署のひとつであり、経営陣に最も近い立場で働くことができ、経営に重要な計画立案などをおこなうため、年収が高くなる傾向にあるようです。
さまざまな業務を担当しているうちに、経営企画の部署で働きたいと考え始める方は少なくありません。特にコンサルティング会社で働いていた方が志望する場合が多いです。
理由としてはコンサルタントとしてさまざまな企業の経営戦略を打ち出し、よい結果へ導いた経験から、今度は自分が実際に会社の経営陣として実行したいという想いが生まれやすいからです。
彼らはもともとコンサルタントとしての経験があるので、経営企画への転職は比較的しやすい立場にあります。しかしそれでも経営企画はある意味、会社を担う立場にある職種ですから、腕があったとしてもその企業の方針にマッチしない場合はなかなか転職するのが難しいかもしれません。
経営企画はそもそも採用人数が少なく、また経営感覚があり、財務や会計、統計学に明るい方が歓迎される傾向にあります。そのため未経験では転職は厳しいのが現状でしょう。
また資格よりも経験や実績が有利に働くことの方が多いですが、未経験の場合はそもそも資格がなければアピールできる点もなくなってしまいますので、未経験の方は以下の資格の取得をまず目指しましょう。
これらの資格では経営企画の業務に必要な知識を習得することができます。すでに転職活動しているけれど経営企画での採用がなかなか得られないという方は、まず資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
はっきり言うと、経営企画の仕事に必要な資格というのはありません。しかし独学で知識を身に付けたというよりも、きちんと資格を取得している方が説得力があるのは間違いありません。経営企画の仕事をするにあたっておすすめの資格をご紹介します。
公認会計士は国家資格であり、会計関連の資格のなかで最高峰の資格です。受験資格がないため誰にでもチャレンジすることができます。
試験内容は、短答式試験が4科目、論文式試験では6科目の試験科目があります。試験内容にボリュームがあるため、試験勉強もかなり時間をかけてやらなければ全部の範囲を学習することは難しいでしょう。これが公認会計士の試験の難易度が高いと言われる理由です。
公認会計士の資格を取得していれば、会計に関するプロとの証明にもなるので転職の際に有利となるでしょう。しかし合格率は例年10%前後となっているため難易度が高く、また資格取得まで時間もかかります。
もう少し簡単で有利な資格を取得したい方は、日商簿記検定1級を取得するのもいいかもしれません。
参照:日本公認会計士協会
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言をおこなう専門家です。経営コンサルタントの国家資格として、コンサルタント業に携わる方が取得していることの多い資格です。
企業の成長戦略を実行するにあたり経営計画を立て、その後の経営環境の変化を踏まえた支援もします。これから経営企画の仕事で活躍したいと考えている方にぴったりの資格でしょう。
資格を取得するには、2つのルートがあります。ひとつは、第1次試験合格後、第2次試験を受け、実務補修をする、または診断実務に従事するルートです。もうひとつが、第1次試験合格後、中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程を修了するルートです。
これらどちらのルートで合格することで、中小企業診断士として登録することができます。合格率は20%台と低めですが、経営企画の仕事をするにあたって取得しておいて損はない資格でしょう。
参照:中小企業診断協会
このほかにも、経営企画に関する知識全般をおさえられる「MBA」や、データドリブンの時代に取得しておきたい「基本情報技術者」など、経営企画の仕事に活かせる資格がいくつかあります。
しかし覚えておいてほしいのは資格を取得すれば必ず転職できるわけではないということです。経営企画の採用人数はかなり少数です。ということは、その企業にとってかなり優秀で、かつ企業の成長を経営陣と同じように描ける人が求められています。
知識も経験もなくては経営企画の仕事はつとまりませんが、それ以上に大事なのは転職を希望する企業をどのように成長させたいかを語れることが大事なポイントとなってきます。
経営企画が企業の花形部署であることを何度も述べてきましたが、そしたら気になるのはキャリアパスです。いったいどのような将来展望を描けるのでしょうか。
まず最初に目指すのが、マネージャー職です。マネージャーの資質として重要になるのは経営者視点。経営企画のアドバンテージは経営陣にもっとも近いところで仕事ができること。
「経営に携わる」という視点を養え、会社に対して責任を負う意識が高められます。ゆくゆくはCOO(Chief Operating Officerの略。 最高執行責任者)やCEO(Chief Executive Officeの略。最高経営責任者)などのトップに上り詰めることもできる部署です。
経営企画の部署で勤めていた人が、転職して経営コンサルタントになるというケースは多く見られます。その理由が企業経営について多方面から考え、企画に基づいて随時軌道修正させながら実行を続けてきた経験が、経営コンサルティングファームにおいて大きく評価されるためです。
また経営企画の経験を活かしてコンサルタント会社で活躍した後、独立して自らコンサルタント会社を立ち上げる人もいます。
- 著者
- ["井口 嘉則", "柾 朱鷺"]
- 出版日
経営企画の仕事についてまずは構えずざっくり知りたい人に最適なマンガ版入門書。
本書のストーリーは、経営企画に配属になった若手社員・安奈がいろいろな困難に直面しながら成長するといった設定。ストーリーを通して経営企画について学べる1冊となっています。
経営会議の議事録をとったり、予算の進捗会議の資料を作ったり、新規事業を企画したり、海外進出や海外事業を強化したりと、基本的なところから数年後に任されるであろう仕事までを分かりやすく教えてくれます。
- 著者
- 丹羽 哲夫
- 出版日
経営企画という業務範囲が広く捉えどころのない仕事は、文字だけで小難しい説明をされてもなかなか頭に入ってきません。そこで読みたいのがこちらの入門書。図解を多用し画で直感的に理解できるため、文字では難しい内容もスムーズに頭に入ります。
内容は経営企画部の機能から業務内容、重要な仕事の進め方、必要な知識・スキルまでを網羅。配属間もない新任社員はもちろん、ユニットリーダーなどを任される勤続5~10年ほどの社員、管理職まで幅広い層をターゲットにしている1冊です。
また部門に関する用語集を巻末に添付し、業務マニュアルとしても活用できます。
- 著者
- 内海康文
- 出版日
経営企画としてよい仕事をするためにはまず経営について知ることが大切。この本は、経営とは何かを著者の考えたフレームワークで解説してくれる1冊です。
中身は経営戦略のPDCAを回すこと、経営計画を作って実行すること、従業員一人ひとりが自律的PDCAサイクルを回し、するべき行動をとることなど、経営戦略のサマリーを体系的に解説。
一見難しそうな内容ですが、秀逸なフレームワークを活用することで理解をサポートしてくれます。
経営企画は花形部署で人気も高い。ただしエリートコースであると同時に採用数も少ないため、配属されるには日ごろから企業経営や経済の動向チェックを欠かさず、つねに知識を更新をしていく必要があります。
努力なくしては難しい職種です。入社してからはもちろんですが、会計学や統計学など今からでも勉強できる学問も多くあるため、しっかり準備しておきましょう。