5分でわかる検疫官!国家公務員で年収・働き方は安定。就職資格や仕事内容などご紹介!

更新:2021.12.4

新型コロナウイルスだけでなく、さまざまな感染症を防ぐため、空港や港湾に設けられている検疫所の役割はとても重要です。そこで働く検疫官は専門職であるため、看護師免許、医師免許、3年以上の臨床経験がなければ就職することはできません。また国家公務員の看護職の1つであるため、安定した収入と働き方は確保されています。水際での対策は大変な場面も多いですが、感染症の対策での業務や経験は、国民の健康と密接しているため、やりがいもある仕事です。 本記事では、そんな検疫官採用試験の受験資格から試験内容、年収や働き方について紹介します。記事の最後には、過去の感染症への歴史が気になる人に向けて歴史の本も紹介しています。

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検疫官とは

検疫官とは、空港や港湾の検疫所において検疫業務、健康相談、予防接種などの業務をおこなう専門職の方々のことです。海外からの感染症が国内に持ち込まれるのを水際で防いでくれています。

検疫官は、厚生労働省に所属する国家公務員。そのため採用試験を受け、合格する必要がありますが、その際、看護師資格の保有、もしくは応募時点で3年以上の臨床経験(医療機関)のあること、そして普通自動車免許を所有していることが受験の条件となります。

海外から日本への旅行客が増加傾向にある令和の時代においては、今後も必ず必要とされる職業のひとつですよね。

検疫官の仕事内容

検疫官の仕事は大きく5つにわかれます。

  1. 検疫業務(港湾、空港)
  2. 衛生調査
  3. 船舶衛生検査(港湾のみ)
  4. 健康相談業務
  5. 予防接種業務

参照:厚生労働省

トラブルが起きる前に、事前に食い止めるのが検疫官の仕事です。どんなに重要な感染症を防いだとしても、その活躍が大衆に知らされることはほとんどありません。しかし社会にとってなくてはならない仕事であることは間違いないのです。

水際対策で最前線で行動し、自国民の健康や安全に密接な関わりを持つ、やりがいある仕事です。

検疫官の働き方

検疫官は国家公務員です。そのため基本的な勤務時間は7時間45分と定められており、勤務時間の上限も決まっています。シフト制ですので休日は人によってばらばらですが、長期の夏季休暇も取得することができ、ライフワークバランスの取りやすい職業です。

勤務地は全国にわたります。全国に転勤があるため、たとえば福岡検疫所門司検疫所支所検疫衛生課に勤務している主任看護師の門司秀陽さんは、10年間で東京、愛媛、大阪、福岡と異動しながら仕事をおこなっています。

検疫所には本所・支所・出張所があります。検疫所の設置状況一覧表については厚生労働省のホームページにあるので参考にしてくださいね。

仕事も大きくわけて説明した業務以外に、大きなものから小さなものまで多岐にわたっています。知的好奇心を刺激され、さまざまな業務を通して魅力的な体験をしながら働くことができますよ。

参考:厚生労働省検疫所 先輩職員の紹介(平成30年10月)

検疫官の年収

検疫官の給料は、初任給19万2400円からスタートします。勤務後の給料は経験年数に応じて調整されますが、全体的な平均月給は約30万円です。一般的な会社員の平均年収と同等の収入を得られるといえるでしょう。

平均年収は勤務年収や役職によって差はあるものの、500万円〜600万円までの間となっています。これは年間賞与も含まれた額です。

参照:厚生労働省

検疫官は医師の募集もある

厚生労働省が採用募集しているのは看護師資格を持った方のみですが、実際に求人サイトで見ると医師の募集も多くみられます。

看護師の場合は時給3000円前後であるのに対し、医者の場合の時給は5500円前後。月給は29万円〜60万円と高収入です。医師の資格があり、検疫官に興味のある方は、就職を検討してみるのもよいかもしれませんね。

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検疫官に就職するには。採用試験の概要

この章では、検疫官に就職するための採用試験の内容をご説明します。就職・転職を目指している方は参考にしてくださいね。

検疫官採用試験の応募資格

検疫官の資格条件は厚生労働省のホームページによれば次の通りです。

  • 看護師免許を取得している方
  • 応募時点で、3年以上の臨床経験(医療機関)のある方
  • 業務上普通自動車を運転するため、普通自動車免許を取得している方

検疫官は国家公務員の看護職のひとつです。しかし国家公務員試験を受ける必要はなく、厚生労働省が掲載している採用募集のページから応募するのが就職ルートとなっています。

検疫官採用試験の内容

  1. 書類選考
  2. 人物試験

採用試験は、書類選考を通過した人を対象にした人物試験(面接試験)のみです。公務員試験といえば、教養試験と専門試験があるので勉強が大変だという印象が強いかもしれませんが、検疫官の採用試験には筆記試験はありません。

書類選考は約1カ月〜2カ月ほど。合格・不合格いずれの場合にも通知する体制となっています。

検疫官採用試験への応募方法

応募の際は以下3つの書類を提出します。

  1. 履歴書(写真貼付)
  2. 看護師免許証(写)
  3. 横書き1200字程度の作文

3つ目の作文は毎年テーマが変わります。令和2年度6月以降の採用でのテーマは「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた感染症対策について」です。

検疫官の採用については、令和2年度6月以降、随時募集がおこなわれています。看護師資格を持っている方で、この記事を読んで検疫官に興味を持った人は応募を検討してみるのもよいかもしれません。

水際でウイルスを食い止めた女医の物語

著者
小林 照幸
出版日

この本は、日本初の女性検疫所所長・女医の岩崎恵美子氏を主人公にしたノンフィクション小説です。

岩崎氏はウガンダ・インド・タイ・パラグアイ・パラグアイなどで治療に当たりました。エボラ出血熱がアフリカで流行していたとき、間近で治療していた医師として知られています。この医師としての活動が評価され、1998年10月から検疫所所長となりました。

この物語は日韓共同開催のワールドカップにおける生物兵器・化学兵器によるテロへのテロ対策、SARS・MARS、新型インフルエンザ対策が中心となっています。

この本の序章では、2009年当時の新型インフルエンザ対策が書かれています。2009年の新型インフルエンザと新型コロナウイルスに体する国の方針として、インフルエンザとおぼしき症状があれば発熱外来に相談するということです。国の対策が変わっていないことに驚く人がいるかもしれません。

当時、仙台市の副市長だった岩崎氏は、国の方針である発熱外来に集めるのは無理であると判断し、軽症であればかかりつけ医に相談、重症になれば病院に搬送するという方針を出しました。仙台市の方針は国と異なっていたので注目されていました。

新型インフルエンザ以外では、日韓共同開催のワールドカップにおける生物兵器・化学兵器によるテロへの対策もあります。感染症対策だけでなくテロ対策にも活用できる本です。当時の感染症対策について振り返りたい方におすすめしたい本です。

新型コロナウイルスの真相を知りたいなら

著者
門田隆将
出版日

この本は、ノーベル生理学賞・医学賞受賞者ジョシュア・レダーバーグ氏の言葉「この星を支配し続ける人類を脅かす最大の敵はウイルスである」という言葉で始まります。

2020年は、新型コロナウイルスというウイルスの脅威にさらされた年です。

中国の湖南省武漢が発生源とされています。武漢の2人の医師が新型コロナウイルスの発生をキャッチしましたが、中国共産党の規律検査委員会と警察の公安部門はウイルスの存在を隠蔽しようとしました。新型コロナウイルスの発生源であるにもかかわらず、中国は感染症を克服して経済活動を再開しています。なぜ克服できたのか。著者の門田氏が取材を通して分析しています。

この本では、日本と台湾の感染症対策も比較しています。

台湾はSARS・MARSの教訓を生かして新型コロナウイルスの封じ込めに成功したと言われています。一方で、日本の感染症対策は後手にまわり、緊急事態宣言を発出する事態にいたりました。なぜ日本政府の対策は後手後手になったのか。足枷となった障害とは何か。取材を通して分析しています。

日本政府の危機管理について疑問を感じている方、危機管理に対する意識について知りたい方は一読するのをおすすめします。

日本人が感染症にどのように対処してきたのか?日本史を通して知りたいならこの本

著者
道史, 磯田
出版日

現時点で新型コロナウイルスの有効な治療薬やワクチンは確立されていません。このような時には歴史を見つめ直し、ヒントを得ることが重要です。

新型コロナウイルスのニュースを耳にして2000年代に流行したSARS・MARS、2009年の新型インフルエンザ以前の感染症対策について振り返った方がいるかもしれません。そのなかで、日本史においてこれまでどのようにして感染症に対処してきたのか気になっている方は多いでしょう。

この本では、平安時代の史書、江戸時代の随筆、100年前の政治家や文豪らの日記から感染症と対峙してきた日本人の知恵に焦点を当てています。

第6章「患者史のすすめ」では、患者の立場から見た歴史がないことが筆者によって指摘されています。この章では、スペイン風邪にかかった京都の女学生の日記から当時のパンデミックの特徴と感染症対策を知ることができます。

皇室・政治家・文豪の日記から感染症のことを知りたい場合、第7章「皇室も宰相も襲われた」と第8章「文学者たちのスペイン風邪」で紹介されています。

日本史から日本人がどのようにして感染症に対処してきたのか知りたい方におすすめしたい本です。

感染症について世界史を通して知りたいならこの本

著者
神野 正史
出版日

人類の歴史は感染症との戦いであると言われています。

どのようにして人類は感染症と戦ってきたのか。コレラ・結核・スペイン風邪・梅毒・エボラ出血熱・エイズ・インフルエンザなど世界史におけるパンデミックをイラスト入りで解説しています。

感染症との戦いの始まりは、原始時代に農耕を始め、移住民族から定住民族に移行したときと言われています。紀元前から現在に至るまで感染症との戦いは続いているといえます。

世界的に感染症が流行する背景として、領土拡大があげられます。日本も世界の感染症とは一切関係がないとはいえず、大航海時代には日本に天然痘や梅毒が持ち込まれたという記録が残されています。また、植民地獲得競争とともに世界規模でコレラも流行していたことが分かります。

世界史から感染症の歴史的背景を知りたい読者におすすめしたい本です。

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今回は検疫官について紹介しました。検疫官は国家公務員ですが、本来の国家公務員試験とは別のルートで採用をおこなっています。令和2年度6月以降は随時募集をおこなっており、その需要の高さが分かりますね。

延期となった東京オリンピックと新型コロナウイルスに備えて、検疫官は激務である印象を受けますが、基本的には1日の勤務時間は7時間45分で、上限も決まっています。シフト制のため休みは不規則ですが、長期休暇や福利厚生が整っており、働きやすい環境といえるでしょう。

感染症の水際対策を担うので大変な仕事ですが、自身の業務が国民の健康や安全に密接していることを考えれば、とてもやりがいのある仕事といえますね。看護師、そして医師免許を持っている方は、病院以外で働く方法として頭の片隅にとどめておくのもよいかもしれません。

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