接客が必要な業態はたくさんありますが、そのなかでも近年、特に成長が見られたのがスーパーマーケット業界です。家でご飯を作る機会が増え、需要にこたえるようにしてECサイトも整備され始めました。また無印良品をお手本に、プライベートブランドを展開する企業が業界内で増えてきました。 また吸収合併も積極的におこなわれ、他業態との競争も気になるようになってきました。 そんな注目集まるスーパー業界。本記事では最近の気になるトピックと、スーパー業界での働き方を解説しています。記事の最後にはおすすめの書籍も紹介していますので、そちらもぜひ一読ください。
2020年にはスーパー業界全体に好調な様子が見られています。まずは最近のニュースや気になるトピックについて見ていきましょう。
スーパーマーケット関連の大きな話題というと、ダイエーがイオングループの傘下に入ったのが記憶に新しいところです。すでにダイエーブランドの廃止が進んでいます。「近所のダイエーがイオンになった」というケースも珍しくないのではないでしょうか。
ダイエーのような規模の大きな企業だけではなく、中小のスーパーマーケットも吸収合併が進んでいます。ブランド自体は残っているものの、実はイオングループやセブン&アイ・ホールディングスの傘下であるというスーパーは珍しくありません。
吸収合併により体力をつけて競争力を上げているスーパーマーケットですが、他業態との競争も始まっています。目立つ相手はドラッグストアです。
医薬品・日用品にとどまらず、さまざまな商品を販売するドラッグストアが増えてきました。大型店舗では生鮮食料品売り場が広がってきています。ハムやソーセージといったちょっとした加工品だけでなく、惣菜や弁当を扱う店舗もあります。
背景には「大型店ですべての買い物を一度に済ませてしまいたい」という消費者側のニーズがあると言います。実際に一部のドラッグストアはスーパーマーケットの買収に乗り出しており、今後「ドラッグストアの中にミニスーパーがある」という業態が出現していくと考えられます。
参考:食品産業新聞社
企業が独自に企画する「プライベートブランド」。有名なのはイオングループの「トップバリュ」ですが、コンビニやホームセンターなどの業態でも展開が広がっています。
一般的な仕入れと異なり、自社で生産を発注して販売できるため中間の卸業者を通す必要がありません。削減できた手間賃や輸送経費分割安になっているのがプライベートブランドの大きな売りです。
スーパー以外の傘下にある小売店でも販売されるため、ドラッグストアやコンビニでスーパーのプライベートブランドを目にすることもあります。
プライベートブランドは「安い」以上の可能性を秘めていることもあります。現在では世界的に人気のある「無印良品」は、もとを辿れば西武グループのプライベートブランドでした。コンセプト・品質・デザイン・価格がそろうと、ひとつのブランドとして競争力を持ちえます。
「生鮮食料品や消耗品は直接目で見て買いたい人が多い」という理由で、積極的な展開が見られなかったネットスーパー事業。社会情勢の変化により自宅から買い物をする需要が増加しました。
ECサイトなどの大手プラットフォームが提供するサービスが市場を制するか、国内のスーパーマーケットが勝つかは注目されるところです。
成長の余地が大きいように見えるスーパーマーケットですが、生鮮食料品以外の部門は苦戦しているといいます。とくにファストファッションと価格帯・需要が重なる衣料品は難しい立場です。
「一箇所で買い物が済ませられる」ことが求められる時代に、生鮮品以外を重視するのかしないのか、売るならどのように売るのかは工夫が求められるところでしょう。
食料品を扱う業態のなかでは躍進度合い・今後の可能性で注目度が高いスーパーマーケット。プライベートブランドの企画や独自の売り場作りなど、マーケティング的な点から魅力を感じているひともいるのではないでしょうか。
実際にスーパーマーケットに就職した場合はどのような働き方になるのか、調べてみました。
実際の求人を見てみると、就職後は店舗スタッフとして働くことになるケースが多いようです。ある程度の規模があるスーパーでは野菜・肉・魚介などで部門が分かれており、専門的な知識を持ったスタッフが必要になります。入荷した野菜をパッキングしたり、魚を捌いたりといった作業をすることもあります。
現場で経験を積むと店長などの責任者へ昇進していきます。また、どのような商品を扱うかを決めるバイヤーや、企画・マーケティングなどの本部勤務になることもあります。経理・総務といった管理部門に異動になることもあります。
最初は店舗で働くというコースをとる企業がほとんどですが、その後の進路についてはそれぞれ異なっているようです。希望する職種に就けるのかどうか、どのような研修や教育が用意されているのかは調べておくとよいでしょう。
大規模店を郊外に出店していくのか、都市部を中心にコンパクトでも他店舗展開をしていくのか。スーパーと一言で言っても、会社や店舗ブランドごとに方針・課題はさまざまです。
出店エリアや店舗の規模以外のところでも、違いが見られます。店長が自店舗の方針をある程度自由に決められるスーパーもあれば、本部の方針をそのままなぞることが求められるという企業もあります。企業の経営方針は働き方にも大きな影響を与えます。自分に合ったスタイルのスーパーを選んでいきたいところです。
たとえば関東で店舗を展開しているヤオコーの求人では、キャリアパスは以下のように例にあげられています。
すべての正社員が最終的に本社で企画・営業の部署として働くわけではなく、財務や人事、店舗開発なども候補としてあげられています。
またもちろん、店頭での接客や店舗運営に身近なところで貢献していきたい方は、店長の職に就くことも可能です。
ディスカウントスーパーマーケットとして展開するオーケーでは、実際にどんな人が働いていて、どんなキャリアの道があるのかをインタビュー形式で掲載しています。こちらもぜひ参考に就職・転職を考えてみるのもよさそうです。
参考:オーケー株式会社採用情報
都心部ではどの駅前でも見かけるようになってきたミニスーパー。品数は少ないものの、夜遅くでも生鮮食料品が買えるので便利に利用している人もいるのではないでしょうか。
- 著者
- 石田 衣良
- 出版日
- 2001-07-10
ちょっと昔であれば、駅前には小さな八百屋や肉屋、果物屋などがありました。今でも「こんなところで売れるのかな?」と思ってしまうような都心部に生鮮食料品を扱う個人店を見かけることがあります。
ミステリー小説『池袋ウエストゲートパーク』の主人公の実家は、都心にある青果店です。どうしてそんなところに生鮮食料品店があるのか? そんな疑問にも答えてくれるので、ぜひ読んでみてください。
上記でも紹介した、プライベートブランド生まれの「無印良品」。ユーザー側から見ると商品の質、デザイン性、価格など、全体のバランスが良く取れた使い勝手のよいラインナップが魅力です。
- 著者
- 松井 忠三
- 出版日
- 2013-07-10
『無印良品は、仕組みが9割』は、このような「無印良品スタイル」をどうやって生み出しているのかを解説しています。
38億円の赤字からV字回復した無印良品がおこなったこととは? 2000ページのマニュアルはなぜあるのか? 商品だけでなく企業としての姿勢やスタイルへのファンも多い無印商品を深く知るにはもってこいの1冊です。
「無駄なことはしない」という理念が仕事の仕方にも商品にも反映されているのが分かります。
『スーパーマーケットほど素敵な商売はない』の著者は、スーパー「サミット」の創業者。スーパーマーケットの客がアルバイトとして働いてくれることなどを指摘し、いかに消費者の信頼に応えるかを重視した経営者です。
- 著者
- 安土 敏
- 出版日
働いていると、毎日の仕事に追われて「なんでこんなことやってるんだっけ?」と思ってしまうこともあるかもしれません。そういうときに読み返したい内容になっています。
「その店に置いてある商品のなかで、もっとも魅力のないものがその店の魅力を決める」など、消費者目線ではなかなか見えなかったスーパー経営者ならではの視点の数々にはっとさせられます。
人気があり、根強い消費者のいるスーパーとは何を大切にしているのかを知りたい方や、経営者が考えていることを知りたい方におすすめの1冊です。
いわゆる「巣ごもり需要」により、成長が期待されるスーパー業界。最近のニュースと働き方について解説しました。企業によってカラーがかなり異なるので、ぜひ自分の理想のスーパーを探してみてください。
記事の最後にご紹介した書籍は、消費者に直接関わることのできる業界だからこその視点の詰まった魅力的な本ばかりです。これらの本に書かれていることはとてもシンプルで、一見すれば当たり前のようにも感じる本質が余すところなく書かれています。
きっと他の場面でも活用できる考えになっていると思いますので、気になる方はぜひご一読ください。