巷では「健康寿命」という言葉が流行となり、体を動かすことへの関心が広まっています。皆さんの中にも健康を保つために、フィットネスクラブやジムに通い始めた、もしくは通っているという人も多いのではないでしょうか。 近年は、暗闇でトレーニングをおこなう目新しい施設や、サーキットトレーニングのように短時間でも身体に効果が出るフィットネスの種類も増え、市場は盛り上がりを見せています。 今回解説するフィットネス業界で主に扱うのは、トレーニングの場という形のない商品です。今回は、それらを扱う業界の始まりや今のフィットネスのトレンド、今後の業界動向や人材問題について解説します!
日本全国のフィットネス人口は400万人(2018年時点)を超え、心身の健康に対する意識の高さが伺えます。しかし欧米諸国に比べると、日本のフィットネスに対する意識やジム・フィットネスクラブの利用率はまだ低く、市場規模は世界1位のアメリカに比べると大きく差が開いている状況です。
日本では、東京オリンピック(1964年)をきっかけにフィットネス文化が本格スタートし、スイミング施設が創設されたのがブームの始まりと言われています。
オリンピックを終えたこの頃、本格的に米国のトレーナー文化が日本に流入してくる。
1991年のバブル崩壊の頃に「エアロビクス」「ステップエクササイズ」が流行。1990年代後半に入ると、日本のフィットネス業界は発展期に入る。それにより、プログラムの進化、営業・販促の強化、フィットネスクラブなど施設の増加が進んでいく。
2003年頃には、本格的なヨガブームがスタート。ここから先、ヨガのみを教えるスクールが増えていくことになる。
2007年には、激しいエクササイズとして話題を集めた「ビリーズブートキャンプ」がヒット。翌年2008年には「コアリズム」がヒットし、ダンスや音楽に合わせてトレーニングをおこなう系統のフィットネスは、少しずつ形を変えながら今も人気が継続している。
フィットネス業界は、大手企業のチェーン店から個人経営のものまでさまざまです。大きく分けると、次の3つの業態に分けることが出来ます。
大手総合型は、プール・スタジオトレーニング・マシンなどが幅広く揃い、場所によっては温泉やサウナが完備されているところもあります。24時間セルフ型は、割と新しい業態といえるでしょう。
人経費を削減することで、大手総合型より会費を低く設定していたり、さまざまなライフスタイルに合わせやすいことが売りの業態です。
これまでブームになったものから、最近出てきた最新トレーニングの種類まで、トレーニング方法の種類を見ていきましょう。
実際には呼び方が多少異なるトレーニングもあるかもしれませんが、基本となっているトレーニングはこれらが多く、各施設でアレンジを施していることが多いようです。
2000年代に入ってから人気に火がついた、ダンス系のエクササイズも引き続き人気があります。
また「忙しい日常のなかでもしっかり効果を感じたい」というビジネスマンや主婦層も多いことから、サーキットトレーニングやHIITといった、短時間で脂肪燃焼・筋力アップ効果が高いトレーニングも人気を伸ばしています。
どんな業界にもトレンドがあります。日本の高齢化社会や長時間労働の問題がトレーニングの内容にも反映されている傾向のようです。
たとえば、高齢者向け(カーブスなど)のトレーニング施設は、今とても人気があります。「健康寿命」の言葉が広がったのと同時に、体を動かすことに興味を持った高齢者が増えていっている状況です。
他にも前章でもご紹介した、短時間高強度系ワークアウト(HIITなど)、24時間運営、サーキットトレーニングやヨガトレーニングなどのスタジオ型グループトレーニングは、人気のインストラクターが行っているトレーニング法として紹介されたこともあり、若い層から人気を集めています。
短時間高強度系のトレーニングは、一定の高い心拍を保ちながら有酸素運動と無酸素運動を繰り返すことで、約1時間で500〜800kcalの消費を目指せるという特徴があります。
忙しい人や時間を効率的に使いたい人も多い現代人にはぴったりのトレーニングでしょう。仕事のお昼休みや子供が幼稚園におこなっている間など、うまく時間を作ってトレーニングをしている人が増えています。
新型コロナウイルス流行前まで「フィットネス業界は人材不足」と言われており、市場も2012年以降は右肩上がりに、大きく成長を続けていました。
未だ、完全収束の兆しがみえないコロナ禍の中で、フィットネス業界がどうなっていくのか予想していきます。
新型コロナウイルスの影響で、身体だけでなく「心の健康(メンタルヘルス )」への意識が、一気に高まりました。自律神経を整えたり、精神の安定を保つ効果のあるヨガは、今後も必要とされ続け、需要が高まると予想されます。
ヨガに限らず、新型コロナウイルスが収束すれば、フィットネス業界は再び大きく成長する産業です。オンラインを利用したレッスンもメジャーになりつつあり、より自分にあったトレーニングを一人ひとりが見つけていく時代となるでしょう。
インストラクターやフィットネス系の経営者は、小規模であったり、コンセプトを絞った出店、フリーランスの活動に注目が集まっていくでしょう。
また「フィットネス×エンターテイメント」や「ショービジネスとの融合」にも注目が集まると予想されています。
フィットネス施設に限らず、空きテナントの中古リノベーションもメジャーになりつつあり、運営する側も利益を上げるには、今後も新しく綺麗な施設を作る方法を模索する必要があるようです。
そもそも、どんな理由やきっかけでトレーニングを始める人が多いのか?解説していきます。
現代は、ただ痩せたい! という目的よりも、健康面の能力アップを目的としている人が多いようです。「お尻を人よりボリュームアップしたい!」というような、自身の個性を活かすためにトレーニングを始める、という人もいます。
ここまでのデータや傾向を振り返ると、「どんな方法でも痩せれればいい」というトレーニング理由はもう古いのかもしれません。
心も身体も両方バランス良く整えることは、医療の現場(心療内科など)でも推奨されていること。絶食やオーバーワークなトレーニングは継続することが難しく、痩せても別の場所(身体、精神問わず)に負担がかかったり影響が出てしまいます。
トレーニングをたまにやる「イベント」にするのではなく、「日常生活の一部」とすることを目指している人が多いのは、とてもいい傾向ですね!
- 著者
- 高稲 達弥
- 出版日
「筋肉を大きくする」という目標は、以前は男性トレーニングのイメージもあったかも知れません。
しかし、今は健康や美しさをを保つために、女性や高齢者にもある程度の筋肉量が必要ということが伝わり「筋肉をつけたい!」という人が増えました。そういった背景も、この業界が成長している要因でしょう。
こちらの書籍は、Youtubeで人気のチャンネル「MuscleWatching」のトレーナー・高稲達弥氏が執筆している1冊です。パーソナルトレーナーとして約10年間、あらゆる悩みに答え続けてきたからこそ知っているボディメイクの基本メソッドが書かれています。
痩せるためのトレーニングではなく、ボディメイクのためのトレーニングをおこないたい。そのためにはどの筋肉をどのように鍛えていけばいいのか? 動画ではなく文章で頭に叩き込みたい方におすすめできる1冊です。
- 著者
- マガジンハウス
- 出版日
実は、出版業界もメンタルヘルスの本や雑誌に注目しており、実際に売り上げを伸ばしているというデータもあります。
トレーニングやボディに関する情報が中心の雑誌でも、自律神経の特集が組まれるほど、心と体の繋がりにおいて関心が高まっています。
最近なんとなく不調な日々が続いている、体がすっきりしていると感じられる日が少ないと感じている方は、本書を通して自律神経を整えることの大切さを知ることができるでしょう。
トレーニングは気合と根性といった考えは古いとされる時代です。科学に基づいた安全で効果的なトレーニング方法を伝えていくことも、業界の役目。
一度でも「なぜ、このトレーニングをするといいのか?」といった疑問を抱いたことがある方に、手にとってほしい1冊です。科学的にトレーニングを勉強したい方向けの内容になっています。
- 著者
- ["Testosterone", "久保 孝史", "福島モンタ(漫画)"]
- 出版日
新型コロナウイルスの影響により、一時的に経営が厳しい状態に追い込まれているフィットネスクラブも少なくありません。しかし、それに反して人々の心と身体の健康への関心は高まり続けているというデータも多く散見されています。
安全に楽しくトレーニングができる環境を整えることで、今後も成長を続ける可能性を秘めている注目の業界といえるでしょう。インストラクターの働き方もオンラインの利用など多様化が進んでいるため、これからの市場動向も目が離せないものとなりそうです。