パン職人はベーカリーでパンを製造するパン作りのプロフェッショナル。別名ブーランジェともいいます。 2010年代後半から高級食パンや、若年層によるパンブームが起き、日本人のパン需要は増えています。そういった現状においてはパン職人を志す方もいることでしょう。しかし実際にパン職人を目指すにはどうすればいいのか、またどんな就職先があるのかは知らないことばかり。 今回はそんなパン職人の仕事内容や年収、活躍できる就職先について詳しく解説します。記事の最後にはパン職人を目指すにあたっておすすめの本を3冊紹介しますのでぜひ最後までご覧ください。
早朝から仕事をはじめ、街の人たちに美味しいパンを作っているパン職人。昔から小学生の将来の夢で1、2を争う人気の職業ですよね。
そんなパン職人は日々どんな仕事をおこなっているのでしょうか。ご紹介していきます。
完成までに時間がかかるパンもあるため開店の4時間ほど前から仕込みや成型、焼き作業をおこない、開店に向けて準備をします。一つひとつ作り方や材料の配合、焼き加減が違うため、全部の工程をできるようになるには努力が必要です。
パンができた後は商品を陳列しお客様を待ちます。お客様に買いたいと思ってもらえるようなポップの作成や陳列方法の工夫が大切です。接客業務では会計やお客様の対応などをおこないます。
オリジナル性のあるものや季節のものを取り入れるなど新しいパン開発でお店の独創性を出すことが可能です。新しいパンを開発することでお客様を飽きさせずリピートしてもらったり口コミで集客できたりなど効果が期待できます。
パン職人の仕事は早朝から始まります。オープンに合わせてパンを並べられるようにパンを焼き上げ、その後もパンを切らさないように連続してパンを焼き続けます。
朝早いこともそうですが、重量のある小麦粉を運んだり、工房内が暑かったりと体力が必要とされる場面が多くあります。技術力はもちろんですが、体力をつけておくこともパン職人になる上で大切なことです。
パン職人の月収は店にもよりますが20万円前後で、年収は300万円前後がボリュームゾーンです。ボーナスや昇給もほとんど望めないシビアな面がありますが、お客様の嬉しそうな顔が見られたり、自分が好きなパン作りをすることができることはお金以上のやりがいを感じられます。
すべてのパン屋で月収が低いわけではありません。大手スクラッチベーカリーのパン職人になれば、年収400万円〜500万円ほどもらえることもあります。
また長期間におよぶ高級食パンブームが、パン職人の労働環境改善を後押ししてくれるかもしれません。
2013年頃から始まった高級食パンブームは2017年には本格化。そして2021年1月現在もブームは止まることはなく、日本各地で新店舗がオープンしています。その背景として日本人の主食が米からパンへと移行しているという現状があります。
若年層の米離れも加速していることから、パン屋やパンを作るパン職人の需要は今後まだまだ増していくと考えられます。そうなればよりよい条件の店舗で働くという選択肢も増えていくことでしょう。
パン職人に必要な学歴や資格は特にありませんが、基本的に未経験の求人が少ないため、専門学校で学んでから現場でさらに修行を積むという方が多いようです。ほかにもアルバイトとして入って現場で修行するという方法もありますが長い年月と努力が必要となるため、このルートで働いている方はあまりいません。
今回は将来パン職人になるため専門学校への進学を考えているという方に向け、おすすめの専門学校をいくつかご紹介します。
「製菓総合本科(2年制)」や「製菓衛生師科(1年制)」、「wライセンスシステム」の3つの学科でパン職人を目指すことができます。こちらの専門学校では毎日実習があり多くの実践経験を積むことができます。また、2年制の学科ではフランスへの海外研修があり、プロの現場を感じることもできます。
参考:山手調理製菓専門学校
「製菓技術マネジメント学科(2年制)」や「フランス校留学コース」、「ダブルライセンスコース」の3つの学科でパン職人を目指すことができます。こちらの専門学校はカリキュラムが充実しており就職に強いことが魅力です。また、フランス校留学コースなど専門的なコースもあり、学ぶ環境が充実していることもよい点です。
参考:辻製菓専門学校
「製菓技術科」、「調理技術科」の2つの学科でパン職人を目指すことができます。「プロを目指すなら一流を目指せ」という教育理念のもと、実力派の教師陣が揃っています。また、サポートが充実しており調理師と製菓衛生師の合格率が高いのも魅力です。
参考:東海調理製菓専門学校
「製菓・製パン・ショコラ科」や「カフェ科」、「製菓・調理師科」の3つの学科でパン職人を目指すことができます。こちらの専門学校は業界や企業、地域とのかかわりが強いのが魅力です。また、現地でしか体験できない授業として「お出かけ授業」があり、本物を見極める力やコミュニケーション力を身につけることができます。
パン職人が活躍できる就職先はいくつかあります。
ここで言う街のパン屋とは、個人経営のパン屋さんのことです。大手パン製造メーカーと比べ、さまざまな種類のパン作りをおこなうことができます。チャレンジしやすい環境といえるでしょう。しかしパン職人の数が多くないため、労働時間が長かったりと、ひとりあたりの作業量が多かったりとネガティブな面はあります。
インストアベーカリーとは、スーパーの中にあるパン屋さんのことです。
街のパン屋さんに比べるとキッチンは小さく、作業量も少ないでしょう。しかしパンの種類があらかじめ決められているため、自由なパン作りをおこなうことはできません。生地は工場から冷凍されたものが送られ、成形し焼き上げるだけなので初心者でも働きやすい職場ではあります。
先ほど説明した職場とまた違った動きをしなくてはならないのが、レストランのベーカリー部門です。
こちらの就職先では開店から閉店までずっとパン作りをおこなうのではなく、お客様のペースや他の料理が出るタイミングに合わせてパンを焼き上げなくてはなりません。
最も収入が安定しているのが大手パンメーカーへの就職です。パンメーカーでは、コンビニなどで売られているパンを製造するため、新作のパン作りを自分で考え、作り、販売するといったことは難しいでしょう。
また作業も比較的簡単で、生地作りからおこなったり、焼いたりすることはほとんどありません。
どの職場も一長一短です。直接パンを作りたいのか、出来るだけ多くの方に食べてもらえるパンを作りたいのか、それとも街の人に愛されるパンを作りたいのか、就職先を選ぶ基準はさまざまです。パン作りにおいて自分は何を重視しているのか、しっかり考えてみてください。
パン職人になるうえで特になくてはいけない資格はありません。しかし、「パン製造技能士」や「パンアドバイザー」、「パンコーディネーター」などの民間資格を取る方は多くいます。店によって資格があると給料に関係することもあるので、不安な方は技術の証明として取っておくといいでしょう。
パン職人に向いているのはどんな人なのでしょうか。さっそく3つの適性を見ていきましょう。
パン屋さんとして一人前になるには多くの努力を必要とします。朝が早く、他業種と比べても年収が低いこともありますからパンが本当に好きな人には向いているでしょう。
パン屋では新商品の開発がお客様を集客するうえで大きな効果があります。そのため、ほかの人が思いつかないようなパンを開発できる人はパン屋になって活躍するチャンスがあるでしょう。
パン作りは失敗と成功の繰り返しです。お客様においしいと思ってもらえるように諦めずに試行錯誤できる人がパン職人に向いているでしょう。
- 著者
- 成瀬 正
- 出版日
- 2016-07-21
「TRAIN BLEU(トラン・ブルー)」という客の絶えないパン屋をご存じでしょうか。こちらのお店は2005年、クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリーで個人店の代表として出場し世界3位の実績を残し常に客の行列や弟子入りが絶えません。
飛騨高山にある小さなパン屋がこのような大人気店に慣れた理由を知りたい方はこちらの本がおすすめです。
成瀬正氏著作の『世界も驚くおいしいパン屋の仕事論』という本です。こちらの本では小さなパン屋から世界へ羽ばたくまでのストーリーや成功する秘訣が収録されています。将来自分の店を持ちたい人にもプロの仕事論を学びたい人にもおすすめの1冊となっているのでぜひご覧ください。
- 著者
- ぱんとたまねぎ
- 出版日
パン職人を目指すにあたって知っておきたい用語や知識は多くあります。パン作りの技術のみならず知識も身に付けたいという方におすすめの本がこちら。
ぱんとたまねぎ氏著作の『パン語辞典: パンにまつわることばをイラストと豆知識でおいしく読み解く』という本です。こちらの本はパンの歴史やパンにかかわる言葉や人物など筆者の見解や漫画を交えながら詳しく収録しています。
パン初心者の方にも読みやすい1冊となっているのでぜひご覧ください。
- 著者
- [" ", " ", "ぱんとたまねぎ (林舞)"]
- 出版日
世界で愛されそれぞれの国の特色が出るパン。それぞれの国を代表するパンをまとめたパン好きにはたまらない本がこちら。
ぱんとたまねぎ氏著作の『世界のかわいいパン』という本です。こちらの本では写真やイラストを用いてパンに込められた文化的な背景を解説しています。こちらで紹介されている本は東京近郊で買えるパンがほとんどなのでパンめぐりが実際に楽しめるのも魅力的ですね。
パン職人を目指している方にも、パン好きの方にも気軽に読める本になっているのでぜひご覧ください。
今回はパン職人の仕事内容や年収、就職先などを詳しく解説しました。一言でパン職人といっても作業内容には違いがあることがわかりましたね。けれど共通していえるのは、多くの方がお客様の「美味しい」の一言や、パンを前にしたときの嬉しそうな顔にやりがいを感じているということです。
やっぱり、パンは人を幸せにする食べ物ですね。日本人の米離れで、今後もまだまだパンの需要は増えていきます。食パンの味を極めたり、今までになかった惣菜パンや菓子パンを考えるなど、そういった面でもパン職人の仕事はやりがいがあります。
最後に紹介した3冊はパン職人を目指す方にもパンが好きな方にも読みやすい本となっておりますのでぜひご覧くださいね。